知財高等裁判所 平成24年(行ケ)10171号 判決 2012年11月26日
原告
ザジェネラルホスピタル
コーポレイション
訴訟代理人弁理士
正林真之
新山雄一
芝哲央
青木和夫
岩池満
被告
特許庁長官
指定代理人
小野寺麻美子
岡田孝博
田部元史
田村正明
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が不服2010-17774号事件について平成23年12月27日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,特許出願に対する拒絶審決の取消訴訟である。争点は,容易推考性の存否である。
1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成15年(2003年)1月24日(米国)の優先権を主張して,平成16年1月26日,名称を「低コヒーレンス干渉計を用いて組織を識別するためのシステムおよび方法」とする発明について国際特許出願(PCT/US2004/002563,日本国における出願番号は特願2006-503161号)をし,平成17年9月14日に特許庁に翻訳文を提出したが(国内公表公報は特表2006-516739号),平成22年3月31日付けで拒絶査定を受けた。そこで,原告は,平成22年8月6日,拒絶査定に対する不服審判請求(不服2010-17774号)をするとともに,同日付けの補正(甲10)をしたところ,特許庁による平成23年6月10日付けの拒絶理由通知を受けたことから,平成23年11月14日付けの補正(甲17)をしたが,特許庁は,平成23年12月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成24年1月10日,原告に送達された。
2 本願発明の要旨
平成23年11月14日付けの補正(甲17)による特許請求の範囲の請求項1に係る本願発明は,次のとおりである。
【請求項1】
組織の特性を識別するための装置であって,
注射針を含む針手段を通して照射を提供するように構成される当該針手段と,
前記針手段の前記注射針を通して前記照射を用いて前記組織の注射針軸方向走査を行なうように構成された照射源と,
前記注射針軸方向走査に基づいて前記注射針から注射針軸方向走査照射を受けとり,スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計または光学周波数ドメイン反射率計のうちの少なくとも1つに基づく前記注射針軸方向走査照射に関するデータを受けとり,前記組織の特性を自動的に識別するために前記データを加工するように適合された画像システムと,を含む装置。
3 審決の理由の要点
(1) 国際公開第02/083003号(刊行物1,甲1)には次のとおりの引用発明が記載されていると認められる。
【引用発明】
ニードル28の前方の組織構造を識別するための識別装置であって,
ニードル28,低コヒーレンス光源32,ソースファイバー34,テストファイバー30,参照ファイバー38,検出器ファイバー44,ファイバーカプラー36,走査参照反射体40,検出器46,信号プロセッサー48,及び,コンピューター50を備え,
前記ニードル28は,体液を抽出するか,薬剤を注入するためのニードルであり,前記ニードル28には,その長手方向に沿って,前記テストファイバー30が埋め込まれ,
前記識別装置は,一軸のOCDR(Optical Coherence Domain Reflectometry)システムを使用し,前記ニードル28が組織24を貫通する動きの軸方向に,組織24が走査され,
前記コンピュータ50は,組織24を通って前記ニードル28が進入するにつれて,前記ニードル前方の組織24の1軸断層像を表示するために,検出器46からのアナログ出力を処理する前記信号プロセッサー48からの出力を分析する,識別装置。
(2) 本願発明と引用発明との間には,次のとおりの一致点,相違点がある。
【一致点】
組織の特性を識別するための装置であって,
針手段を通して照射を提供するように構成される当該針手段と,
前記針手段を通して前記照射を用いて前記組織に対して針軸方向走査を行うように構成された照射源と,
前記針軸方向走査に基づいて前記針手段から針軸方向走査照射を受けとり,干渉計に基づく前記針軸方向走査照射に関するデータを受けとる画像システムと,を含む装置。
【相違点1】
針手段が,本願発明では,「注射針を含む」針手段であるのに対し,引用発明では,そのような構成であるかが不明な点。
【相違点2】
干渉計が,本願発明では,「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計または光学周波数ドメイン反射率計のうちの少なくとも1つ」であるのに対し,引用発明では,OCDRである点。
【相違点3】
画像システムが,本願発明では,「前記組織の特性を自動的に識別するために前記データを加工するように適合された」画像システムであるのに対し,引用発明では,コンピュータ50は,組織構造を識別するためのものであるものの,当該構造を自動的に識別するためにデータを加工するものであるかが不明な点。
(3) 相違点等に関する審決の判断
相違点1について,引用発明のニードル28は,体液を抽出するか,薬剤を注入するためのニードルである。そして,体液を抽出するか,薬剤を注入するためのニードルとして,注射針を用いることは,常套の技術手段である。したがって,引用発明について上記常套手段を採用し,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば,容易に想到し得る。
相違点2につき,測定対象物の深さ方向のデータを取得するための干渉計として,スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計及び光学周波数ドメイン反射率計は,国際公開第00/42906号(刊行物2,甲2),特開2002-214127号公報(甲4),特開2002-82045号公報(甲5)等に開示されるように周知である。引用発明も上記周知技術も,測定対象物の深さ方向のデータを取得するための干渉計に関するものである点において共通していること,刊行物1(4頁28行~5頁3行)には,引用発明についてウェーブフロント情報を分析するためOCDR以外の手段を用いることが示唆されていること,刊行物2の記載からすると,測定対象物の深さ方向のデータを取得するための干渉計として,具体的にどのタイプの干渉計を用いるかは,当業者が適宜選択し得る事項であることを総合的に考慮すれば,引用発明に上記周知技術を適用して,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば,容易に想到し得る。
相違点3について,組織構造を識別するコンピュータが,当該構造を自動的に識別するために取得したデータを加工するようにすることは,例えば,特表2001-508340号公報(刊行物3,甲3)に開示されるように周知である。そして,引用発明も上記周知技術も,組織構造を識別するものである点で共通していること,自動化は,分野を問わず周知の技術的課題であること,刊行物1には,ロボットを使用する実施例が記載されており,ロボットを使用する場合には,組織構造の識別は,自動的に行われなければならないのが自明であることからすれば,引用発明に上記周知技術を適用して,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば,容易に想到し得る。
本願発明の効果は,引用発明,刊行物2,3に開示された事項,周知技術及び常套手段から当業者が予測し得たものであり,格別顕著なものとはいえない。
以上のとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2,3に開示された事項,周知技術及び常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第3原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(引用発明の認定誤り)
審決は,引用発明について,「前記コンピュータ50は,組織24を通って前記ニードル28が進入するにつれて,前記ニードル前方の組織24の1軸断層像を表示するために,…分析する,」と認定しているが,この認定は,刊行物1(国際公開第02/083003号)の「…analyzed by computer 50 to display an axial tomographic image of the tissue in front of the needleas the needle progressesthrough the tissue.」(8頁13行~14行。下線部分は本判決で付したもの。)の下線部分を,「組織を通ってニードルが進入するにつれて,」と翻訳したことによるものである。この翻訳は,上記の「as」を,比例を表す接続詞として翻訳したものと考えられる。しかしながら,ここにいう「as」は,時を表す接続詞であり,「progresses」(進入)と「display」(表示)とが同時性を有しているように翻訳すべきであるから,上記下線部分は,「組織を通ってニードルが進入している時に,」のように翻訳すべきである。
このような翻訳を行うことは,引用発明がOCDRに係る画像システムであることに起因して,測定中は試料を制止しておかなければならないという技術常識とも整合するものである。すなわち,引用発明は,OCDRに係る画像システムであり,参照部40の走査参照反射体40を機械的に走査させ,参照部40における光路長を変化させることにより軸方向走査を行っているところ,このようなOCDRでは,機械的走査が必須であるため機械的振動の発生が不可避であり,速い速度での走査距離の制限や,走査速度の制限があるため,測定中は試料(生体)を制止しておかなければならないというのが技術常識であった。
したがって,上記引用発明の認定は誤りである。
2 取消事由2(一致点の認定誤り,相違点の認定誤り)
審決は,本願発明と引用発明との一致点として,①「前記針手段を通して前記照射を用いて前記組織の針軸方向走査を行うように構成された照射源」を含む点と,②「前記針軸方向走査に基づいて前記針手段から針軸方向走査照射を受けとり,干渉計に基づく前記針軸方向走査照射に関するデータを受けとる画像システム」を含む点を認定した。
ここにいう「針軸方向走査」は,所望の一次元画像を得るために必要な処理を含むものとして理解すべきところ,引用発明は,OCDRに係る画像システムであり,参照部40の走査参照反射体40を機械的に走査させ,参照部40における光路長を変化させることにより軸方向走査を行っているのに対し,本願発明は,組織内部深く焦点をあてる照射によって組織の注射針軸方向走査を行うものであり,参照部での機械的な走査を行うことなく,組織への照射に基づく軸方向走査を行っているのであって,両者の測定原理は大きく異なっている。
刊行物1には,低コヒーレンス光源32の帯域幅が干渉計の深さ解像度に関与していることは開示されているものの,ニードル28を通して組織24に照射される光を軸方向走査することを示す開示はないから,審決の上記①の認定は誤りである。また,引用発明のようなOCDRでは,測定中は試料(生体)を制止しておかなければならないという技術常識も踏まえて勘案すると,上記②の認定も誤りである。
以上のとおり,本願発明と引用発明とでは1軸断層像を得るための測定原理が大きく異なっていることを看過した審決の一致点の認定は誤りであり,本願発明の「針軸方向走査照射」に係る構成を相違点として認定しなかった審決には,結論に影響を及ぼす違法がある。
3 取消事由3(相違点2の判断の誤り)
審決は,スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計や光学周波数ドメイン反射率計は周知技術であると認定したが,それらは,測定対象物の深さ方向と直交する方向の機械的走査を伴うものであり,一次元の軸走査を行う際に全体として機械的走査を行わないという本願発明の特徴的な技術的思想を開示又は示唆するものではない。
4 取消事由4(相違点3の判断の誤り)
相違点3の「前記データ」は,「注射針軸方向走査照射に関するデータ」を意味しているところ,審決は,相違点3の判断において,本願発明の画像システムが,注射針軸方向走査照射に関するデータを加工していること,すなわち,測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行っていることについて実質的な検討を行っていない。したがって,この点について検討しなかった審決の相違点3に関する判断は誤りである。
第4被告の反論
1 取消事由1に対し
審決は,「as」について,比例を表す接続詞として翻訳したのではない。審決は,「the needle」の述語が「progress」であって,単に挿入するのではなく「進入する」であることを考慮した上で翻訳しており,その真意は,「ニードルを徐々に進入させながら,その出力を分析していく」ということである。「as」は,時を表す接続詞として,whenやwhileより同時性が強いものであるから,直訳すると「…しながら」,「…しつつ」などとするのが妥当であり,これを「…につれて」と翻訳したことに誤りはない。
仮に,原告の主張するように,「…時に」と翻訳したとしても,「…につれて」と「…時に」とで技術的意義にどのような差が生じるのか不明であり,一致点及び相違点の認定,ひいては審決の結論に影響を与えるものではない。
2 取消事由2に対し
当初明細書の記載からすると,本願発明において,「針軸方向走査照射」は,針軸方向に組織の針軸方向走査を行うために照射される照射光の反射光であり,「針軸方向走査照射を受けとり」とは,針軸方向に照射された当該照射光の反射光を検出することであるといえる。これに対し,引用発明においても,刊行物1の記載に照らすと,OCDRシステムによりニードル22のような組織貫通医療機器が組織を貫通する動きの軸方向,すなわち針軸方向に組織を走査しており,また,「組織」からの反射光を検出するものであって,本願発明と同様に,「針軸方向走査照射」を「受けと」っているといえる。
したがって,審決の一致点認定に誤りはない。
なお,原告は,本願発明と引用発明とで,1軸断層像を得るための測定原理が大きく異なる旨主張しているが,この点について審決は,相違点2として認定し,判断しているのであって,審決に誤りはない。
3 取消事由3に対し
相違点2に関する審決の判断に誤りはない。
4 取消事由4に対し
本願発明の画像システムが,測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行っている点については,本願発明が「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計または光学周波数ドメイン反射率計」を使用するものであることに関係する事項である。そして,「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計または光学周波数ドメイン反射率計」において測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理が必須であること,及び「光学時間ドメイン反射率計」において測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理が不要であることは,自明の事項であるから,測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行うか否かは,相違点2に含まれる事項である。
審決は,相違点3として,「組織の特性を自動的に識別する」ために「データを加工」しているか否か,すなわち「組織の特性を自動的に識別」しているか否かについて判断したものであるから,相違点2に関する内容である「測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行っていること」について検討がなされていないことを理由に相違点3の判断を誤りとする原告の主張は失当である。
第5当裁判所の判断
1 取消事由1(引用発明の認定の当否)について
原告は,審決が,国際公開第02/083003号(刊行物1,甲1)の「as the needle progresses through the tissue.」を「組織を通ってニードルが進入するにつれて,」と翻訳したことは誤りであり,これに伴い,引用発明について「組織24を通って前記ニードル28が進入するにつれて,」と認定したことは誤りであると主張する。
しかしながら,刊行物1によれば,引用発明は,組織を貫通する医療機器の前方の組織構造を識別するための装置であり(1頁9行~11行),医療機器が深く貫通しすぎて組織構造を不必要に損傷することのないよう,貫通の深さをコントロールするためのものであって(1頁14行~20行),時間の経過(貫通の進行)に応じて,組織の境界からの反射が変化することを識別可能とするものである(8頁23行~29行,Fig.6)ことが認められる。そうすると,引用発明においては,ニードルが組織に進入する際に,1度だけ表示(display)のためにコンピュータ50による分析が行われるのではなく,時間の経過(貫通の進行)に伴い,連続的に分析や表示がされるものと認められるから,審決が,そのような時的変化を含意するよう「進入するにつれて」と翻訳し,この翻訳に基づき,引用発明について,「組織24を通って前記ニードル28が進入するにつれて,」と認定したことに誤りはない。
したがって,取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(一致点の認定の当否,相違点の看過の有無)について
原告は,OCDRシステムに係る引用発明では,走査参照反射体40の機械的走査により針軸方向走査が行われるのに対し,本願発明では,機械的な走査が行われないという相違があることから,審決が,「針軸方向走査」や「針軸方向走査照射」を一致点として認定し,これを相違点としなかったことは誤りである旨主張する。
しかしながら,本願発明の「前記針手段の前記注射針を通して前記照射を用いて前記組織の注射針軸方向走査を行なう」という構成と,「前記注射針軸方向走査に基づいて前記注射針から注射針軸方向走査照射を受けとり,」という構成の文言に照らすと,本願発明において,「(注射)針軸方向走査」は,針手段(の注射針)を通した照射を用いて行われるものであり,「(注射)針軸方向走査照射」についても,注射針から受けとられるものであるから,「(注射)針軸方向走査」や「(注射)針軸方向走査照射」は,針手段(の注射針)に係る構成であると認められる。これに対し,刊行物1(8頁6行~12行,Fig.4)によれば,引用発明における走査参照反射体40の機械的走査は,ニードル28に係る構成ではなく,これとは別個の参照体に係るものである。したがって,機械的走査の有無は,「針軸方向走査」や「針軸方向走査照射」とは無関係である。
また,本願発明と引用発明とで測定原理が異なるのは,引用発明がOCDRを採用し,本願発明がスペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計又は光学周波数ドメイン反射率計を採用しているという相違に起因するものと解されるところ,この相違は相違点2として認定されているのであって,これにより審決の一致点の認定が左右されるものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
3 取消事由3(相違点2の判断の当否)について
原告は,審決が,刊行物2(国際公開第00/42906号),甲4公報(特開2002-214127号),甲5公報(特開2002-82045号)等に基づき周知技術として認定したスペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計や光学周波数ドメイン反射率計について,測定対象物の深さ方向(針軸方向)と直交する方向の機械的走査を伴うものであり,一次元の軸走査を行う際に全体として機械的走査を行わないという本願発明の特徴的な技術的思想を開示又は示唆するものではない旨主張する。
しかしながら,そもそも,いかなる種類の干渉計を用いるかという技術的事項と,干渉計を用いた測定装置において,走査の方向を測定対象物の深さ方向(針軸方向)とするか,これと直交する方向とするかという技術的事項は,次元の異なる技術的事項である。したがって,周知例たる上記文献に,スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計や光学周波数ドメイン反射率計を用い,かつ,測定対象物の深さ方向(針軸方向)と直交する方向の走査を行う装置が開示されているとしても,審決が,これらのうち干渉計の種類に着目し,スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計及び光学周波数ドメイン反射率計を周知技術として認定したことに誤りはない。測定対象物の深さ方向(針軸方向)を走査する点は,引用発明として認定されているのであり,その点が周知例に開示されていないことは,相違点2に係る審決の判断を左右しない。
したがって,取消事由3も理由がない。
4 取消事由4(相違点3の判断の当否)について
原告は,本願発明の画像システムが測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行っていることについて実質的な検討を行っていないことを理由に,審決の相違点3の判断には誤りがある旨主張する。
しかしながら,本願発明の画像システムが測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行っていることは,本願発明がスペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉計又は光学周波数ドメイン反射率計を採用していることに伴うものであって,相違点2で判断されるべき事項である。これに対し,相違点3は,組織の構造を「自動的に識別するため」にデータを加工する点が容易想到かどうかを検討するものであって,本願発明の画像システムが測定スペクトラムのフーリエ変換等を含む処理を行っていることは,審決の相違点3の判断を左右するものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
第6結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 池下朗 裁判官 古谷健二郎)