知財高等裁判所 平成24年(行ケ)10251号 判決 2013年6月20日
原告
三星ディスプレイ株式會社
訴訟代理人弁理士
渡邊隆
阿部達彦
沖田壮男
赤井吉郎
被告
特許庁長官
指定代理人
伊藤昌哉
森林克郎
樋口信宏
堀内仁子
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が不服2010-27554号事件について平成24年2月28日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,特許出願拒絶審決の取消訴訟である。争点は,進歩性の有無である。
1 特許庁における手続の経緯
三星エスディアイ株式會社は,2006年(平成18年)11月24日,発明の名称を「有機電界発光表示装置」とする発明につき,パリ条約による優先日を同年9月21日,優先国を大韓民国として,特許出願(特願2006-317644号。公開公報は特開2008-77032号〔甲7〕)をした。その後,三星モバイルディスプレイ株式會社が特許を受ける権利を承継した(平成20年12月8日出願人名義変更届出。甲12)が,平成22年8月3日付けで拒絶査定を受けた。同社は,同年12月6日,これに対する不服の審判(不服2010-27554号)を請求するとともに,同日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする補正をした(甲8)。特許庁は,平成24年2月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年3月13日,同社に送達された。同年7月2日,原告は,同社の特許を受ける権利を承継した(平成24年10月3日出願人名義変更届出。甲13)。
2 本願発明の要旨
平成22年12月6日付けの補正(甲8)による特許請求の範囲の請求項1に係る本願発明は,以下のとおりである。
【請求項1】
「有機電界発光素子が形成される第1基板と,
前記第1基板上部に配置される第2基板と,
前記第1基板と第2基板を合着させるための封止材を含む表示パネルと,
下部面及び前記下部面の端から延長される複数の側壁を有し,前記下部面と前記側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義されるベゼルと,
前記表示パネルと前記ベゼルとの間に配置される補強トラスを含み,
前記ベゼルの側壁は,二重構造として形成され,
前記補強トラスは,ステンレススチール,マグネシウム,マグネシウム合金,アルミニウム,ポリエチレン,プロトアクチニウム,ポリメチルメタクリレート,ABS樹脂,LCP,ポリカーボネート及びポリウレタンのうちいずれか一つに形成されることを特徴とすることを特徴とする有機電界発光表示装置。」
3 審決の理由の要点
本願発明は,引用例1(特開2005-141194号公報,甲1)及び引用例2(特開2002-215051号公報,甲2)に記載された発明に基づいて,本件優先日当時,当業者が容易に発明をすることができたもので,進歩性を欠く。
(1) 引用例1には,実質的には,次の発明(引用発明)が記載されていることが認められる。
「有機EL素子(120)が配列された基板(110)と,
有機EL素子(120)を覆う封止基板からなる封止部材(130)と,
基板(110)と封止部材(130)とを接着する封止材(141)とを含む有機ELパネル(150)と,
前面側に有機ELパネル(150)の表示面を露出可能な開口部を具備した概略箱形の筺体(710)と,
平面視略井桁状を成して互いに交差してベースプレート(361)上に配設された複数の梁部材(371,372)を備え,複数の梁部材(371,372)が互いに交差して配置されるため,ベースプレート(361)の面方向で優れた変形耐性を奏し優れた表示パネルの支持構造を実現できる放熱部材(370)を有する補強構造体(360)とを含み,
補強構造体(360)は有機ELパネル(150)の背面側に接着され,補強構造体(360)の放熱部材(370)の背面側は開口しているが,実際に電子機器等の表示部に搭載されると,放熱部材(370)は筐体(710)と当接した状態となり筐体(710)により塞がれてしまうものであって,補強構造体(360)のベースプレート(361)と放熱部材(370)とはアルミニウムが好適な構成材料である有機EL表示装置。」
(2) 本願発明と引用発明との一致点と相違点は次のとおりである。
【一致点】
有機電界発光素子が形成される第1基板と,
前記第1基板上部に配置される第2基板と,
前記第1基板と第2基板を合着させるための封止材を含む表示パネルと,
下部面及び前記下部面の端から延長される複数の側壁を有し,前記下部面と前記側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義されるベゼルと,
前記表示パネルと前記ベゼルとの間に配置される補強部材を含み,
前記補強部材は,ステンレススチール,マグネシウム,マグネシウム合金,アルミニウム,ポリエチレン,プロトアクチニウム,ポリメチルメタクリレート,ABS樹脂,LCP,ポリカーボネート及びポリウレタンのうちいずれか一つに形成される有機電界発光表示装置。
【相違点1】
「補強部材」に関して,本願発明は「補強トラス」としているのに対して,引用発明は「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材(371,372)」としている点。
【相違点2】
「ベゼルの側壁」に関して,本願発明は「ベゼルの側壁は,二重構造として形成」されるとしているのに対して,引用発明はそのような限定を有さない点。
(3) 相違点に関する判断は以下のとおりである。
① 相違点1について
本願明細書の発明の詳細な説明(段落【0006】,【0009】,【0019】,【0020】)によれば,本願発明の「補強トラス」とは,「表示パネル」と「ベゼル」との間に配置される構造体であって,「表示パネル」を外部から加えられる衝撃から保護するものであり,その構造の一形態として,複数個の横トラスと縦トラスが互いに直交して格子形に形成される構造であることが把握され,「表示パネル」と「ベゼル」との間に,特別な配置態様を採用することなく,単に「配置」されることのみにより機能するものといえる。そうすると,引用発明の「補強部材」である「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」は,少なくとも背面側で「筐体(710)と当接した状態とな」るものであるから,本願発明の「補強トラス」と同様に「表示パネル」と「ベゼル」との間に配置される構造体であり,かつ,本願発明の「補強トラス」と同様の構造を有するものである。さらに,引用発明の「複数の梁部材(371,372)」は,本願発明の「補強トラス」と同様の配置及び構造を有するものであるので,技術常識からして,本願発明の「補強トラス」と同様に,「有機ELパネル(150)」を外部から加えられる衝撃から保護する効果を奏することは明らかであるといえる。
したがって,相違点1については,実質的な相違点ではなく,当業者であれば引用発明に基づいて容易に想到し得る構成である。
② 相違点2について
引用例2には,ベゼルの側壁を内側に折り曲げられた形状に構成することでベゼルの構造を強化する技術が記載されている。そして,表示パネルを保護する筐体・ベゼルを強固なものとすれば,表示パネルの保護を図ることができるのは明らかであるから,引用発明の「筐体」に引用例2に記載された技術を採用して,「筐体」の側面の板材を強化することは当業者であれば容易に想到することである。よって,引用発明に引用例2に記載された技術を採用することで,相違点2に係る構成を得ることは,当業者であれば容易になし得ることである。
③ 作用効果
本願発明が奏する作用効果は,引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。
第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(本願発明と引用発明の対比判断の誤り)
(1) 本願発明と引用発明の機能,効果について
引用例1の段落【0030】には,「上記構成を備えた本実施形態の有機EL表示装置100では,有機ELパネル150を支持する補強構造体160が,平面井桁状に組まれた第1の梁部材171…と第2の梁部材172…とからなる放熱部材170を備えているので,図示x方向,及びy方向のいずれにも変形し難く,優れたパネル支持構造を実現できる。これにより,有機ELパネル150の画面サイズを50インチ程度まで大型化したとしても,有機ELパネル150に湾曲や変形を生じることが無く,優れた耐久性と信頼性とを備えた有機EL表示装置を提供することができる。また,本実施形態では,井桁状に組まれた梁部材171…,172…により構成された放熱部材170を備えているので,有機ELパネル150にて生じた熱を効果的に放散させることができ,パネルの過熱による有機EL素子120…や駆動制御回路(図示略)等の動作不良を効果的に防止することができる。」と記載されており,引用発明における「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材(371,372)」が果たす補強機能とは,有機ELパネルの大型化や過熱による有機ELパネルの湾曲や変形を防止するものにすぎない。
また,段落【0032】の記載からも,引用例1の補強構造体が,外部からの衝撃を全く想定していないことは明らかである。一方,本願発明における「補強トラス」とは,本願明細書(甲7)の段落【0006】に記載のとおり,「表示パネル」と「べゼル」との間に備えられる部材であって,表示パネルに加えられる衝撃を著しく減少させるためのものである。
また,引用例1の段落【0002】によれば,引用発明の対象は屋内に設置された状態で使用に供される,いわゆる「据置型」のテレビ受像器あるいは映像モニタ等である一方,本願発明における有機電界発光表示装置とは,本願明細書(甲7)の段落【0002】に記載のとおり,移動コンピューター,ポータブル電話機等の「可搬型」の機器に用いる表示装置を対象とするものである。そうすると,引用例1において補強構造体が有しうる変形耐性とは,あくまで,「据置型」機器(据置型テレビ受像機等)の大型化により生じるパネル自体の湾曲や変形を防止する程度のものであり,本願発明が対象とするような「可搬型」機器にて想定されるような外部からの衝撃に耐えうるものではない。
以上から,本願発明の「補強トラス」と引用発明における放熱部材である「複数の梁部材」とは,奏する効果,機能が全く異なる。
(2) 本願発明の「補強トラス」と引用発明の「複数の梁部材」との対応関係についての誤り
本願発明において「補強トラス」とは,その構造の一形態として,複数個の横トラスと縦トラスが互いに直交して格子状(骨組み状)に形成されるものであり,この補強トラスの格子状を為す面が,表示パネルの載置面としての役割を果たすとともに,表示パネルに衝撃が加わった際に,ある程度の変形を許容しつつ衝撃エネルギーを吸収する役割を果たしている。これに対し,引用発明における「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」は,「支持基板(361)」という板状の部材と一体的に「複数の梁部材(371,372)」が形成された構成とされている。すなわち,有機ELパネルと接しているのは,「梁部材(371,372)」ではなく板状の「支持基板(361)」である。したがって,「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」からなる補強部材は,本願発明における「補強トラス」とは,似て非なるものである。
よって,審決が,「引用発明の『平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材』と本願発明における『表示パネルとベゼルとの間に配置される補強トラス』とを「『表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材』である点で共通する。」と判断したことは誤りである。
(3) 「補強トラス」の配置態様に対する判断の誤り
本願発明は,本願明細書(甲7)の段落【0006】に記載のとおり,表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させるためのものであって,同段落に記載の課題及び【図2】から理解されるように,本願発明における「補強トラス」は,「ベゼルの下部面」及び「表示パネル」と接触するように配置されるべきものである。すなわち,本願発明における「補強トラス」は,「表示パネル」と「ベゼル」との間に,所定の配置態様を採用して配置されたものである。
したがって,「本願発明における『補強トラス』は,『表示パネル』と『ベゼル』との間に,特別な配置態様を採用することなく単に『配置』されることのみにより機能するものといえる。」と認定した審決の判断は,誤りである。
2 取消事由2(本願発明と引用発明との相違点の容易想到性判断の誤り)
引用例1(甲1)の段落【0050】には,「図4では,放熱部材370の背面側は開口しているが,実際に電子機器等の表示部に搭載されると,放熱部材370は筐体と近接又は当接した状態となり筐体により塞がれてしまうため,梁部材により区画された領域375…内での気流はほぼ停止することになる。」と記載されており,引用例1において,「複数の梁部材(371,372)」(放熱部材370)の「背面側」が「筐体(710)」と当接した状態は,本来有機ELパネルの発生熱を放散させるためには好ましくない状態として記載されている。したがって,引用発明においては,「複数の梁部材(371,372)」(放熱部材370)の「背面側」が「筐体(710)」と当接する構成を積極的に採用しようとするものではなく,また,有機ELパネルを外部から加えられる衝撃から保護するという思想は全く存在しない。
一方,本願発明の「補強トラス」は,本願明細書(甲7)の段落【0006】及び【図2】から理解されるように,「ベゼルの下部面」(及び「表示パネル」)と接触するように配置されて,表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させるためのものである。
したがって,引用発明の「複数の梁部材」は,本願発明における表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させるための「補強トラス」に相当するものではない。
また,引用発明における「補強部材」は,放熱機能を有するヒートシンクとして機能するものであるため,「有機ELパネル」と「補強部材」との間で接触面積を多く確保する必要がある。したがって,「有機ELパネル」との接触面積を担保するための板状の「支持基板(361)」は,引用発明において不可欠な部材であり,引用発明の記載に接した当業者に,「補強部材」から「支持基板(361)」を除外しようとする動機付けは何ら生じない。
よって,「相違点1については,実質的な相違点ではなく,当業者であれば引用発明に基づいて容易に想到し得る構成である。」と認定した審決の判断は,誤りである。
第3原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(本願発明と引用発明の対比判断の誤り)
(1) 本願発明と引用発明の機能,効果について
引用例1の段落【0030】には,「上記構成を備えた本実施形態の有機EL表示装置100では,有機ELパネル150を支持する補強構造体160が,平面井桁状に組まれた第1の梁部材171…と第2の梁部材172…とからなる放熱部材170を備えているので,図示x方向,及びy方向のいずれにも変形し難く,優れたパネル支持構造を実現できる。これにより,有機ELパネル150の画面サイズを50インチ程度まで大型化したとしても,有機ELパネル150に湾曲や変形を生じることが無く,優れた耐久性と信頼性とを備えた有機EL表示装置を提供することができる。また,本実施形態では,井桁状に組まれた梁部材171… ,172…により構成された放熱部材170を備えているので,有機ELパネル150にて生じた熱を効果的に放散させることができ,パネルの過熱による有機EL素子120…や駆動制御回路(図示略)等の動作不良を効果的に防止することができる。」と記載されており,引用発明における「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材(371,372)」が果たす補強機能とは,有機ELパネルの大型化や過熱による有機ELパネルの湾曲や変形を防止するものにすぎない。また,段落【0032】の記載からも,引用例1の補強構造体が,外部からの衝撃を全く想定していないことは明らかである。一方,本願発明における「補強トラス」とは,本願明細書(甲7)の段落【0006】に記載のとおり,「表示パネル」と「べゼル」との間に備えられる部材であって,表示パネルに加えられる衝撃を著しく減少させるためのものである。
また,引用例1の段落【0002】によれば,引用発明の対象は屋内に設置された状態で使用に供される,いわゆる「据置型」のテレビ受像器あるいは映像モニタ等である一方,本願発明における有機電界発光表示装置とは,本願明細書(甲7)の段落【0002】に記載のとおり,移動コンピューター,ポータブル電話機等の「可搬型」の機器に用いる表示装置を対象とするものである。そうすると,引用例1において補強構造体が有しうる変形耐性とは,あくまで,「据置型」機器(据置型テレビ受像機等)の大型化により生じるパネル自体の湾曲や変形を防止する程度のものであり,本願発明が対象とするような「可搬型」機器にて想定されるような外部からの衝撃に耐えうるものではない。
以上から,本願発明の「補強トラス」と引用発明における放熱部材である「複数の梁部材」とは,奏する効果,機能が全く異なる。
(2) 本願発明の「補強トラス」と引用発明の「複数の梁部材」との対応関係についての誤り
本願発明において「補強トラス」とは,その構造の一形態として,複数個の横トラスと縦トラスが互いに直交して格子状(骨組み状)に形成されるものであり,この補強トラスの格子状を為す面が,表示パネルの載置面としての役割を果たすとともに,表示パネルに衝撃が加わった際に,ある程度の変形を許容しつつ衝撃エネルギーを吸収する役割を果たしている。これに対し,引用発明における「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」は,「支持基板(361)」という板状の部材と一体的に「複数の梁部材(371,372)」が形成された構成とされている。すなわち,有機ELパネルと接しているのは,「梁部材(371,372)」ではなく板状の「支持基板(361)」である。したがって,「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」からなる補強部材は,本願発明における「補強トラス」とは,似て非なるものである。
よって,審決が,「引用発明の『平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材』と本願発明における『表示パネルとベゼルとの間に配置される補強トラス』とを「『表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材』である点で共通する。」と判断したことは誤りである。
(3) 「補強トラス」の配置態様に対する判断の誤り
本願発明は,本願明細書(甲7)の段落【0006】に記載のとおり,表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させるためのものであって,同段落に記載の課題及び【図2】から理解されるように,本願発明における「補強トラス」は,「ベゼルの下部面」及び「表示パネル」と接触するように配置されるべきものである。すなわち,本願発明における「補強トラス」は,「表示パネル」と「ベゼル」との間に,所定の配置態様を採用して配置されたものである。
したがって,「本願発明における『補強トラス』は,『表示パネル』と『ベゼル』との間に,特別な配置態様を採用することなく単に『配置』されることのみにより機能するものといえる。」と認定した審決の判断は,誤りである。
2 取消事由2(本願発明と引用発明との相違点の容易想到性判断の誤り)
引用例1(甲1)の段落【0050】には,「図4では,放熱部材370の背面側は開口しているが,実際に電子機器等の表示部に搭載されると,放熱部材370は筐体と近接又は当接した状態となり筐体により塞がれてしまうため,梁部材により区画された領域375…内での気流はほぼ停止することになる。」と記載されており,引用例1において,「複数の梁部材(371,372)」(放熱部材370)の「背面側」が「筐体(710)」と当接した状態は,本来有機ELパネルの発生熱を放散させるためには好ましくない状態として記載されている。したがって,引用発明においては,「複数の梁部材(371,372)」(放熱部材370)の「背面側」が「筐体(710)」と当接する構成を積極的に採用しようとするものではなく,また,有機ELパネルを外部から加えられる衝撃から保護するという思想は全く存在しない。
一方,本願発明の「補強トラス」は,本願明細書(甲7)の段落【0006】及び【図2】から理解されるように,「ベゼルの下部面」(及び「表示パネル」)と接触するように配置されて,表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させるためのものである。
したがって,引用発明の「複数の梁部材」は,本願発明における表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させるための「補強トラス」に相当するものではない。
また,引用発明における「補強部材」は,放熱機能を有するヒートシンクとして機能するものであるため,「有機ELパネル」と「補強部材」との間で接触面積を多く確保する必要がある。したがって,「有機ELパネル」との接触面積を担保するための板状の「支持基板(361)」は,引用発明において不可欠な部材であり,引用発明の記載に接した当業者に,「補強部材」から「支持基板(361)」を除外しようとする動機付けは何ら生じない。
よって,「相違点1については,実質的な相違点ではなく,当業者であれば引用発明に基づいて容易に想到し得る構成である。」と認定した審決の判断は,誤りである。
第4被告の反論
1 取消事由1に対し
(1) 本願発明と引用発明の機能,効果について
引用例1には,①優れた変形耐性を具備し,また,優れた放熱特性を具備する複数の梁部材は開示されているが(段落【0006】,【0030】),②優れた放熱特性を具備し,その結果,パネルの過熱による有機ELパネルの湾由や変形を防止するものにすぎない複数の梁部材は開示されていない。
そもそも,引用例1に記載された複数の梁部材のような構造物が,パネルの過熱による有機ELパネルの湾由や変形を防止するものにすぎず,外部からの衝撃に対する変形耐性を具備しないものであることなどあり得ない。引用例1に開示された形状の複数の梁部材であって,アルミニウムからなる構造物が,外部からの衝撃に対する変形耐性によって有機ELパネルに対する外力を緩和し,有機ELパネルの変形及び破損を防止する効果を奏することは,その機械的な構造及び材質から見て明らかである。
(2) 本願発明の「補強トラス」と引用発明の「複数の梁部材」との対応関係について
本願発明の明細書の段落【0004】ないし【0009】,【0012】によれば,本願発明の「補強トラス」は,①表示パネルの剛性が弱くなり変形及び破損確率が高まっている問題を解決するために,②表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に配置され,③表示パネルを外部の衝撃から保護し,④表示パネルに加えられる衝撃が著しく減少し,⑤表示パネルの変形及び破損を防止する効果を奏し,また,⑥特許請求の範囲の構成を具備するものである。一方,引用発明は,引用例1の段落【0002】の第2文に記載された問題を解決し,また,段落【0003】に記載された問題をも解決することを課題とするものであるから,有機ELパネルの剛性が弱くなり変形及び破損確率が高まっている問題を解決するためのものである。
また,引用発明の「補強構造体(360)は有機ELパネル(150)の背面側に接着され,補強構造体(360)の放熱部材(370)の背面側は開口しているが,実際に電子機器等の表示部に搭載されると,放熱部材(370)は筐体(710)と当接した状態とな」る(争いがない)から,引用発明の複数の梁部材(放熱部材)は,表示パネルと表示パネルを収容するベゼルとの間に配置される。
さらに,引用例1には「外部の衝撃」という文言それ自体は見当たらないけれども,引用発明の複数の梁部材は,ベースプレートの面方向で優れた変形耐性を奏し優れた表示パネルの支持構造を実現するものであるから,表示パネルに加えられる衝撃に対して,表示パネルの変形を防止する効果を奏する。また,表示パネルの変形が防止されれば表示パネルに発生する応力が緩和されるから破損も防止でき,表示パネルに加えられる衝撃が減少されるから,表示パネルを外部の衝撃から保護する。そうしてみると,本願発明の補強トラスと引用発明の複数の梁部材とは,「表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材」である点で共通するのみならず,奏する効果においても何ら相違しない。
原告は,引用発明の複数の梁部材が支持基板と一体とされ,表示パネルの載置面となっていないことについて言及している。しかしながら,本願発明の複数の梁部材が表示パネルの載置面となっていることは,特許請求の範囲に記載されておらず,発明の詳細な説明にも記載がない。引用発明の複数の梁部材と表示パネル(有機ELパネル)との間には,支持基板(ベースプレート)が配置されているが,そうであるとしても,引用発明の複数の梁部材が,表示パネルとベゼルとの間に配置されるものであることに変わりはない。また,引用発明の複数の梁部材は支持基板と一体化されているが,支持基板と一体化されているからといって補強部材であることに変わりはない。
したがって,本願発明の補強トラスからなる補強部材と引用発明の複数の梁部材からなる補強部材が似て非なるものであるとする原告の主張には理由がない。
(3) 補強トラス」の配置態様について
審決は,①本願発明の補強トラスが,ベゼルの下面部及び表示パネルと接触するように配置される態様が本願発明の要旨に含まれないことを述べたものではなく,②本願発明の補強トラスが,表示パネルとベゼルとの間に特別な配置態様を採用することなく単に配置されるような態様も本願発明の要旨に含まれることを述べたにすぎないものである。また,仮に,本願発明が「表示パネルとベゼルとの間にて,これら表示パネルとベゼルの下部面に互いに接触するように配置される補強トラス」の構成を具備するとしても,係る構成は実質的な相違点とはなり得ず,進歩性は認められない。すなわち,引用例1には,①複数の梁部材の背面側が筐体の下部面と当接した構成が開示され(段落【0050】),また,②支持基板が表示パネルの封止基板を兼ねても良いこと(段落【0046】)や,③支持基板と放熱部材を別体で用意し接合しても良いこと(段落【0032】)が開示されているから,結局,④引用例1には,有機ELパネルと筐体との間にて,これら有機ELパネルと筐体の下部面に互いに接触するように配置される複数の梁部材の構成も記載されているに等しいから,実質的な相違点となり得ない。
2 取消事由2に対し
そもそも,補強トラスとベゼルの配置について,原告主張が当たらないことは前記のとおりであるから,これを前提とする原告の主張には理由がない。
また,前記のとおり,本願発明の補強トラスと引用発明の複数の梁部材が,「表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材」である点で共通するのみならず,奏する効果においても何ら相違しない。
さらに,引用例1の段落【0050】の記載からみて,複数の梁部材の背面が筺体と当接する構成は好ましくない構成ではなく所与の構成である。
仮に,本願発明の補強トラスが,表示パネルとベゼルとの間にて,ベゼルの下部面に接触するように配置される構成を具備しているとしても,引用発明の複数の梁部材は,有機ELパネルと筐体との間にて,筐体の下部面に接触するように配置されているから,引用発明の複数の梁部材は,本願発明の補強トラスと同様の配置及び構造を有する。したがって,引用発明の複数の梁部材は,本願発明の補強トラスと同様に,外部から加えられる衝撃から有機ELパネルを保護するものであるから,相違点1が実質的な相違点ではないとした審決の判断に,誤りはない。
3 取消事由3に対し
本願発明の補強トラスと引用発明の複数の梁部材とは,「表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材」である点で共通するのみならず,奏する効果においても何ら相違しないことは,前記のとおりであるから,審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断
1 本願発明について
本願明細書(甲7)によれば,本願発明につき以下のことを認めることができる。
本願発明は,表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に補強トラスを配置して表示パネルの衝撃を緩和させる有機電界発光表示装置に関するものである(段落【0001】)。このような有機電界発光表示装置は,有機膜層を発光層として使用する磁気発光型素子により構成されるため,液晶ディスプレーと異なり発光のための別途のバックライト(Backlight)が不要なので,有機電界発光表示装置自体の厚さが薄くて,重さが軽いという長所があるが(段落【0002】),その表示パネルは,一般的にガラス基板を使用するので,外力による衝撃が加えられる場合,変形または破損されるおそれがある。表示パネル一面に表示パネルを保護するベゼルを装着して表示パネルの変形及び破損を防止しようとするも,ベゼルは,外部から伝達される外力から表示パネルを完全に保護できないという問題点があった(段落【0004】,【0005】)。本願発明は,上記問題点を解決するため,表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に補強トラスを備えることによって,表示パネルを外部の衝撃から保護し,表示パネルに加えられる衝撃が著しく減少され,表示パネルの変形及び破損を防止するという効果を奏するものである(段落【0006】~【0009】)。
2 取消事由1(本願発明と引用発明の対比判断の誤り)について
(1) 本願発明の構成について
審決が「本願発明の『補強トラス』とは,『表示パネル』と『ベゼル』との間に配置される構造体であって,『表示パネル』を外部から加えられる衝撃から保護するものであり,その構造の一形態として,複数個の横トラスと縦トラスが互いに直交して格子形に形成される構造であることが把握され」ると認定したのに対し,原告は,本願発明の「補強トラス」の格子状を為す面が,表示パネルの載置面としての役割を果たすとともに,表示パネルに衝撃が加わった際に,ある程度の変形を許容しつつ衝撃エネルギーを吸収する役割を果たしているため,「ベゼルの下部面」及び「表示パネル」と接触するように配置されるべきものであると主張する。
本願発明に係る請求項1には,補強トラスについて「前記表示パネルと前記ベゼルとの間に配置される補強トラス」とのみ特定されており,それ以上に「補強トラス」の位置関係について特定しておらず,補強トラスの格子状をなす面が表示パネルの載置面となる旨の記載はない。発明の詳細な説明,図面を見てもその旨の記載はない。そして,本願明細書(甲7)に「本件発明は,従来の問題点を解決するためになされたものであって,その目的は,表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に補強トラスを備え,表示パネルに加えられる衝撃を著しく減少させることができる有機電界発光表示装置を提供することである。」(段落【0006】),「本発明によれば,表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に補強トラスを配置して表示パネルを外部の衝撃から保護する。さらに,表示パネルに加えられる衝撃が著しく減少され,表示パネルの変形及び破損を防止するという効果がある。」(段落【0009】)と記載されていることからすると,「補強トラス」は,表示パネルとベゼルとの間に配置することによって,表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させ,表示パネルの変形及び破損を防止するという機能を有するものであると認められるところ,この機能は,「補強トラス」の格子状を為す面が表示パネルの載置面となるかどうかに関わるものではない。そうすると,本願明細書(甲7)の段落【0019】及び【図2】に,本願発明の「補強トラス」の構造の一態様として,複数個の横トラスと縦トラスが互いに直交して格子状(骨組み状)に形成され,表示パネルとベゼルとの間に「補強トラス」が接するような実施例が記載されているとしても,このことは,単に,本願発明の「補強トラス」がこの構造を包含することを示すにすぎず,「ベゼルの下部面」及び「表示パネル」と接触し,表示パネルの載置面となるとの構成をとることを必然とするものとして特定されているものとはいえない。
したがって,「補強トラス」がベゼルの下部面と表示パネルとの間に接触するように配置されるとは特定せず,単にベゼルと表示パネルとの間に配置されることを前提とした審決の認定に誤りはない。
(2) 引用発明について
ア 引用例1(甲1)によれば,引用発明につき次のことを認めることができる。
引用発明は,補強構造体,表示装置,及び電子機器に関するものである(段落【0001】)。バックライトが不要で非常に薄いフラットパネルディスプレイである有機ELディスプレイの用途として,テレビあるいは映像モニタが想定されるが,画面サイズの大型化する一方,有機ELディスプレイのパネル厚さは約2mm程度であり,例えば50インチの有機ELディスプレイを製造した場合には,パネル単体では平面を保つことができず,何ら対策を講じないとすれば,パネルの湾曲や変形,場合によっては破損を生じる可能性もある(段落【0002】)。また,有機EL素子は,電流によって発光する素子であり,配線等で生じるジュール熱によってディスプレイの温度が上昇する(段落【0003】)。そこで,かかる欠点を解決すべく,「表示パネルと,該表示パネルの背面側に設けられた補強構造体とを備えた表示装置であって,前記補強構造体は,前記表示パネル背面との接着部を成す支持基板と,該支持基板上に設けられた放熱部材とを備えていることを特徴とする表示装置」としたことにより,薄型の基板(例えば2mm厚程度のガラス基板)を用いて構成されている表示パネルを良好に支持することができ,映像ディスプレイ等の大画面のものでも良好に垂直支持できるとともに,前記放熱部材により,表示パネルの発生熱を放散させることができるため,発熱量の多い大画面の表示装置に用いた場合にも,過熱による信頼性の低下を効果的に防止することができることとなる。また,放熱部材は,互いに交差して支持基板上に配設された複数の梁部材を備えることが好ましく,平面視略井桁状を成して前記支持基板上に配設されている構成とすることができ,この構成によれば,複数の梁部材が互いに交差して配置されるため,支持基板の面方向で優れた変形耐性を奏し,さらに優れた表示パネルの支持構造を実現できるとの効果を有するものである(段落【0004】~【0007】)。
イ また,引用例1の実施例1では,「上記構成を備えた本実施形態の有機EL表示装置100では,有機ELパネル150を支持する補強構造体160が,平面井桁状に組まれた第1の梁部材171…と第2の梁部材172…とからなる放熱部材170を備えているので,図示x方向,及びy方向のいずれにも変形し難く,優れたパネル支持構造を実現できる。これにより,有機ELパネル150の画面サイズを50インチ程度まで大型化したとしても,有機ELパネル150に湾曲や変形を生じることが無く,優れた耐久性と信頼性とを備えた有機EL表示装置を提供することができる。また,本実施形態では,井桁状に組まれた梁部材171…,172…により構成された放熱部材170を備えているので,有機ELパネル150にて生じた熱を効果的に放散させることができ,パネルの過熱による有機EL素子120…や駆動制御回路(図示略)等の動作不良を効果的に防止することができる。」(段落【0030】)と記載されている。これらの記載からすると,「複数の梁部材」は,有機ELパネルにて生じた熱に対する放熱特性が優れているという機能を有することが開示されているが,これと同時に,有機ELパネルの大型化に対する優れた変形耐性を有することが開示されているといえる。
(3) 対比
本願発明の「補強トラス」は,前記(1)のとおり,「前記表示パネルと前記ベゼルとの間に配置され」るとのみ特定され,材料及び前記(1)に述べた限りでの配置は特定されているものの,具体的な構造についての限定はない。
本願明細書及び図面(甲7)をみても「補強トラス120は,表示パネル160を収納するベゼル110の耐久力を向上させることで,補強トラス120は,複数個の横トラス122と縦トラス123が互いに直交して格子形に形成される。」(段落【0019】)との記載及び【図2】の記載からすると,「補強トラス」が互いに直交する横トラスと縦トラスとを含む構造からなるものを排除していないことが明らかである。
他方,引用発明の「複数の梁部材」は,「平面視略井桁状を成して互いに交差してベースプレート(361)上に配設され」,「互いに交差して配置される」ものであるから,横方向の梁部材と縦方向の梁部材が互いに直交する構造である。そして,引用発明の「複数の梁部材」を備える「補強構造体(360)は有機ELパネル(150)の背面側に接着され,補強構造体(360)の放熱部材(370)の背面側は開口しているが,実際に電子機器等の表示部に搭載されると,放熱部材(370)は筐体(710)と当接した状態となり筐体(710)により塞がれてしまうもの」であるから,「複数の梁部材」は,有機ELパネルと筺体の間に配置されるものと認められる。
以上から,本願発明の「補強トラス」は,互いに直交する横トラスと縦トラスとを含む構造からなるものを包含しているのに対して,引用発明の「複数の梁部材」は,横方向の梁部材と縦方向の梁部材が互いに直交する構造であるから,両者は同じ構造といえる。また,本願発明の「補強トラス」は,表示パネルとベゼルとの間に配置されるものであるのに対して,引用発明の「複数の梁部材」は,有機ELパネルと筺体の間に配置されるものであるから,両者は同じ配置関係となる。
そうすると,引用発明の「複数の梁部材」と本願発明の「補強トラス」とは,同じ構造,配置関係にあり,補強部材の材質も審決が認定したように一致しているから,引用発明の「複数の梁部材」は,本願発明の「補強トラス」と同様に,表示パネルに加えられる外部からの衝撃を著しく減少させ,表示パネルの変形及び破損を防止するという機能を必然的に有しているものと認められ,両者は同じ機能を有するものと認められる。そして,これらの構造等により実現される表面パネルに対する衝撃保護機能は,可搬型ディスプレイであろうと据置型ディスプレイであろうと同様に得られるものである。
したがって,審決が,引用発明の「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」と本願発明における「補強トラス」とを「『表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材』である点で共通する。」と判断した点に誤りがあるとはいえない。
3 取消事由2(本願発明と引用発明との相違点についての容易想到性についての判断の誤り)について
取消事由について判断したところからすると,相違点1は実質的な相違点ではないから,相違点1についての容易想到性の有無については判断するまでもない。なお,原告は,引用発明は,放熱機能に照らせば「複数の梁部材」背面側が筐体と当接する構成を積極的に採用しようとするものではなく,また,有機ELパネルと補強部材との間で接触面積を多く確保して放熱機能を確保する必要があることから,「補強部材」から「支持基板」を除外しようとする動機付けはない旨及び引用発明には外部から加えられる衝撃から保護するという思想は全く存在しないから容易想到性はない旨主張する。
しかし,上記主張は,本願発明における「補強トラス」が「ベゼルの下部面」及び「表示パネル」と接触するように配置されるべきものであることを前提とするものであるが,前記1(1)のとおり,そもそも,「補強トラス」がベゼルの下部面と表示パネルとの間に接触するように配置されることが特定されているとはいえず,原告の主張は,その前提を欠いている。
4 取消事由3(本願発明の作用効果を過小評価したことの誤り)について
前記のとおり,引用発明の「複数の梁部材」は,外部から加えられる衝撃から有機ELパネルを保護するという効果を奏するから,外部から伝達される外力により,表示パネルに加えられる衝撃を著しく減少させ,表示パネルの変形及び破損を防止することが可能であるという「補強トラス」と同様の効果を当然に奏するものと認められる。
したがって,本願発明の作用効果は,当業者が引用発明1に基づいて予測できる範囲を超えないとした審決の進歩性判断に誤りがあるとはいえない。
第6結論
以上によれば,原告主張の取消事由はすべて理由がない。
よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 中村恭 裁判官 中武由紀)