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知財高等裁判所 平成24年(行ケ)10265号 判決 2013年3月19日

原          告

株式会社東芝

訴訟代理人弁理士

手塚史展

野木新治

村井賢郎

石川隆史

被          告

特許庁長官

指定代理人

松川直樹

服部秀男

田部元史

田村正明

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1原告が求めた判決

特許庁が不服2011-15413号事件について平成24年6月12日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

本件は,拒絶審決の取消訴訟である。争点は,補正後の発明の進歩性の有無及び補正前の発明の新規性の有無等である。

1  特許庁における手続の経緯

原告は,平成22年6月1日,平成17年8月29日にした特許出願(特願2005-247838号)の一部を分割して,名称を「半導体装置」とする発明につき特許出願をしたところ(特願2010-126112号),平成23年4月14日に拒絶査定を受けたので,同年7月15日,不服審判請求をするとともに,特許請求の範囲の記載及び明細書の発明の詳細な説明の記載の各一部を改める手続補正をした(本件補正)。特許庁は,平成24年6月12日,上記補正を却下する決定とともに,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同月22日に原告に送達された。

2  本願発明の要旨

本願発明は,発光ダイオード等の窒化ガリウムを含有する半導体装置に関する発明で,うち本件補正後の請求項1の特許請求の範囲は以下のとおりである(下線を付した部分が補正した部分である)。

【請求項1(補正発明)】

「活性層と,

p型のGaN系化合物半導体からなる第1半導体層と,

前記活性層と前記第1半導体層との間に配置されるInを含有するp型のIn1-x-yGaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層と,

前記活性層と前記In1-x-yGaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層との間,および前記In1-x-yGaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層と前記第1半導体層との間のいずれか一方に配置されるp型のGaN系化合物半導体からなる第2半導体層と,

前記第1半導体層と前記活性層との間に配置され,前記In1-x-yGaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層,前記第1半導体層,および第2半導体層よりも小さいバンドギャップを有し,かつ前記In1-x-yGaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層,前記第1半導体層,および第2半導体層よりも格子定数が大きい,1~15nmの膜厚で,かつ1×1017cm-3~1×1019cm-3のMgを含有するIny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層と,を備え,

前記Iny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層におけるInの組成比は,前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層,第1半導体層,および第2半導体層,におけるInの組成比よりも高いことを特徴とする半導体装置。」

また,本件補正前の請求項1の特許請求の範囲は以下のとおりである。

【請求項1(補正前発明)】

「活性層と,

p型のGaN系化合物半導体からなる第1半導体層と,

前記活性層と前記第1半導体層との間に配置されるp型のIn1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層と,

前記活性層と前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層との間,および前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層と前記第1半導体層との間のいずれか一方に配置されるp型のGaN系化合物半導体からなる第2半導体層と,

前記第1半導体層と前記活性層との間に配置され,前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層,前記第1半導体層,および第2半導体層よりも小さいバンドギャップを有し,かつ前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層,前記第1半導体層,および第2半導体層よりも格子定数が大きい,1~15nmの膜厚のIny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層と,を備え,

前記Iny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層におけるInの組成比は,前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層,第1半導体層,および第2半導体層,におけるInの組成比よりも高いことを特徴とする半導体装置。」

3  審決の理由の要点

(1)  補正発明は,下記引用刊行物に記載の引用発明に基づいて,基礎となる特許出願の出願当時(基礎出願当時),当業者が容易に引用発明と補正発明の相違点に係る構成に容易に想到できたから,進歩性を欠く。

【引用刊行物】特開2004-63537号公報(甲1)

【引用発明】

「InxGa1-xN/InyGa1-yN多重量子井戸構造の活性層7,p側光導波層としてのアンドープInGaN光導波層8,p側クラッド層としてのアンドープAlGaNクラッド層9,厚さが5nmのアンドープInGaN層10,In含有p型AlGaN電子ブロック層11,p側クラッド層としてのp型AlGaN/GaN超格子クラッド層12およびp型GaNコンタクト層13が順次積層されている半導体装置。」

【補正発明と引用発明の一致点】

活性層と,

p型のGaN系化合物半導体からなる第1半導体層と,

前記活性層と前記第1半導体層との間に配置されるInを含有するp型のIn1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層と,

前記活性層と前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層との間,および前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層と前記第1半導体層との間のいずれか一方に配置されるp型のGaN系化合物半導体からなる第2半導体層と,

前記第1半導体層と前記活性層との間に配置され,前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層,前記第1半導体層,および第2半導体層よりも小さいバンドギャップを有し,かつ前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1≦1)層,前記第1半導体層,および第2半導体層よりも格子定数が大きい,1~15nmの膜厚のIny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層と,を備え,

前記Iny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層におけるInの組成比は,前記In1-x-y1GaxAly1N(0≦x<1,0<y1<1)層,第1半導体層,および第2半導体層,におけるInの組成比よりも高い半導体装置である点

【補正発明と引用発明の相違点】

補正発明は,前記「Iny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層」が「1×1017cm-3~1×1019cm-3のMgを含有する」のに対し,引用発明は,「アンドープInGaN層」である点。

【補正発明と引用発明の相違点に係る構成の容易想到性判断(8,9頁)】

「引用刊行物の【0053】には,引用発明の『アンドープInGaN光導波層8』,『アンドープAlGaNクラッド層9』及び『アンドープInGaN層10』は,p型層中のMgが活性層7に拡散するのを抑制する旨記載されており,これによれば,p型層に最も近いアンドープInGaN層10にはp型層からMgが拡散し,InGaN層10は,この拡散したMgを含有する状態になるものと認められ,さらに,このように拡散したMgを含有する状態においても,前記InGaN層10は,p型層中のMgが活性層7に拡散するのを抑制する効果を有しているものと認められる。

してみると,InGaN層10は,含有するMgの量がp型層が含有するMgの量より少なければ,p型層中のMgが活性層7に拡散するのを抑制する効果を有するものと認められるところであり,ここで,引用発明のInGaN層10に隣接するp型層である『In含有p型AlGaN電子ブロック層11』にドープされるMgの濃度,すなわちMgの含有量が,引用刊行物の【0028】に記載されるように『例えば1×1019/cm3~1×1021/cm3,典型的には5×1019/cm3~1×1020/cm3』であることからすれば,引用発明の『InGaN層10』について,隣接する『In含有p型AlGaN電子ブロック層11』のMgの含有量より少ない量である『1×1017cm-3~1×1019cm-3』のMgを含有するものとして差し支えないことは当業者に明らかであり,上記相違点に係る補正発明の発明特定事項とすることに困難性は認められない。

また,補正発明が上記相違点に係る発明特定事項としている点について,本願明細書には,【0027】に『不純物拡散防止層8は,Mgが1×1017cm-3程度以上1×1019cm-3程度以下ドープされていても良い。』と記載されているにすぎず,上記相違点に係る発明特定事項としたことに格別の意義を認めることはできない。

してみれば,補正発明は,引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものというべきである。」

「以上のとおりであるから,補正発明は,引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。」

(2)  補正前発明は,以下のとおり,前記引用発明と実質的に同一であるから,新規性を欠く。

【補正前発明と引用発明の実質的同一性判断(10頁)】

「補正前発明は,実質的に補正発明から,『Iny2Ga1-y2N(0<y2≦1)層』に関する『1×1017cm-3~1×1019cm-3のMgを含有する』との発明特定事項を省いたものと認められるところ,前記第2[理由]4(判決注:補正発明と引用発明の一致点・相違点の認定)での検討に照らすと,引用発明との間に相違するところは認められない。」

「したがって,補正前発明は,引用刊行物に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に規定する発明に該当し,特許を受けることができない。」

第3原告主張の審決取消事由

1  取消事由1(補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り並びに相違点に係る構成の容易想到性判断の誤り)

(1)  引用発明の半導体発光素子では,活性層7とp型電子ブロック層11との間に,①p側光導波層としてのアンドープInGaN光導波層8,②p側クラッド層としてのアンドープAlGaNクラッド層9,③アンドープInGaN層10(厚さ5nm)の3層から成るアンドープ層を設け,アンドープ層全体の厚さ(膜厚)を135nmと大きくするとともに,活性層7とp型電子ブロック層11の間隔を空け,p型電子ブロック層11から拡散してくるMgが向かい側の活性層7にまで到達する現象が少なくなるようにされている(Mgの拡散の抑制,甲1の段落【0053】)。かかる構造のアンドープ層を設けた目的にかんがみれば,引用発明のアンドープ層は3層で一体を成すものとして取り扱わなければならない。

しかるに,審決は,引用発明の3層構造のアンドープ層からことさらにアンドープInGaN層10のみを抜き出して,補正発明との一致点,相違点を認定しており,かかる認定には誤りがある。

なお,補正発明の不純物拡散防止層8は,不純物拡散防止効果からしても,同層と活性層5との間に他の層を設けることを必須としていない(本願明細書の段落【0015】参照)。

(2)ア  前記(1)のとおり,審決は,引用発明の3層構造のアンドープ層からことさらにアンドープInGaN層10のみを抜き出して,補正発明との一致点,相違点を不当に認定しているところ,仮にこの認定が誤りでなかったとしても,かかる3層構造の引用発明のアンドープ層の構成から補正発明の所定のMg含有率(濃度)を有するIny2Ga1-y2N層の構成に改める動機付けがない。すなわち,引用発明の半導体発光素子において異なる組成を有する3層構造のアンドープ層を厚く積層しているのは,活性層7とp型電子ブロック層11の間の距離(間隔)を大きく離すとともに,バンドギャップないし格子定数が相異なる層を組み合わせるか,原子組成比が異なる超格子構造を生じさせることによって,Mg拡散抑制効果を奏しようとするものであるが,補正発明の半導体装置のIny2Ga1-y2N層ではかかるメカニズムでMg拡散抑制効果を奏することが予定されておらず,両発明は技術的思想が異なる。

引用刊行物の段落【0014】の記載に照らせば,引用発明の半導体発光素子においては,アンドープ層のうちp型不純物がドープされたp側クラッド層である「p型の第2の層」に含有されるMgの拡散を抑制するために,アンドープ層のうち光導波層と,アンドープ又はn型のp側クラッド層である「第1の層」の厚さの和が20nm以上である必要があり,あるいは50nm以上,さらには100nm以上であることが適当であるとされている。これに対し,補正発明のアンドープInGaN層10は,わずか1層で,厚さが5nmしかない。そうすると,引用発明の半導体発光素子において3層構造のアンドープ層を設ける目的にもかんがみれば,引用発明の3層構造のアンドープ層の構成から,補正発明のアンドープInGaN層10でMg拡散抑制効果を奏しようとする構成に改めることは,当業者にとって極めて不自然であり,容易でない。

イ  補正発明の発明者らは,①第1半導体層と活性層との間に配置され,②In1-x-y1GaxAly1N層や第1,第2半導体層よりもバンドギャップが小さい一方,格子定数が大きく,③膜厚が1ないし15nmで,④Mgを1×1017cm-3ないし1×1019cm-3含有し,⑤In1-x-y1GaxAly1N層や第1,第2半導体層よりもInの組成比が大きいという特徴を有する「アンドープIny2Ga1-y2N層」がMgを取り込んで蓄積し,p型層から活性層へのMgの拡散を防止することを初めて見い出し,補正発明をなすに至ったものであるが,これはInGaNの格子定数(正確にはc軸方向の格子定数)がGaNやGaAlNの格子定数よりも大きく,MgがInGaN膜中に取り込まれやすいことを理由とするものと考えられる。したがって,補正発明は,Iny2Ga1-y2N層のMg取込み,蓄積機能によって,活性層へのMg拡散の防止効果を奏するとともに,Mgを含有しながら膜厚を小さくする(薄膜化)ことによって,キャリア密度を高く,素子の動作電圧を小さくする作用効果を奏する。他方,前記アのとおり,補正発明と引用発明とではMg拡散抑制作用のメカニズムが異なり,当業者において引用発明とメカニズムも作用効果も異なる補正発明の構成に想到することは容易でない。

ウ  引用発明のアンドープInGaN層10は,そもそも不純物がドーピングされていないものであるが(アンドープ),p型電子ブロック層11からMgが拡散してくるために,層内のMgの存在を推測できるだけであり,引用刊行物では,補正発明のアンドープIny2Ga1-y2N層のように,もともとMgをドープした層がMgの拡散を抑制する作用を奏することは開示されていない。このとおり,引用発明では,アンドープInGaN層10にMgを積極的に導入することは予定されておらず,技術的思想の方向性が反対である。

また,引用発明のアンドープInGaN層10に隣接するIn含有AlGaN電子ブロック層11のMg含有濃度(含有量)が例えば1×1019cm-3ないし1×1021cm-3(典型的には5×1019cm-3~1×1020cm-3)だと,アンドープInGaN層10のMg含有濃度が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3となるのかが,引用刊行物の記載からは不明であるし,アンドープInGaN層10と活性層7の間にあるアンドープAlGaNクラッド層9やアンドープInGaN光導波層8にまでMgがさらに拡散して,アンドープInGaN層10のMgの含有濃度がさらに小さくなる可能性がある。そうすると,引用刊行物からは,アンドープInGaN層10がどの程度のMg含有濃度を有するのか,当業者にとって不明であるといわなければならないし,審決が説示するように隣接する層のMg含有濃度から当該層のMg含有濃度を推定することが当業者にとって普遍的な原理であるとも,技術常識,基礎的事項の類であるともいえない。しかるに,審決は,引用発明のIn含有AlGaN電子ブロック層11にドープされるMgの濃度が例えば1×1019cm-3ないし1×1021cm-3であることから,アンドープInGaN層10のMgの濃度が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3程度であるとして差し支えないとするが,かかる判断は誤りである。

なお,引用発明の半導体発光素子は,p側クラッド層全体をp型層とすることを予定していないし,(p側クラッド層に含まれる)アンドープInGaN層10をp型にするとMgの拡散防止作用等が損なわれてしまう。

エ  前記イのとおり,補正発明は,InGaNがGaNやGaAlNよりもMgの取込み・蓄積の程度が非常に高いことに着目してされたもので(本願明細書の段落【0018】,【0019】),Mgを1×1017cm-3ないし1×1019cm-3含んでいてもかかる作用を奏するから(段落【0027】),補正発明のIny2Ga1-y2N層のMg含有濃度の数値範囲は格別なものである。

オ  上記アないしエのとおり,基礎出願当時,当業者において補正発明と引用発明の相違点に係る構成に想到することは容易でないのであって,これに反する審決の判断には誤りがある。

(3)  本願明細書には直接的な記載はないが,技術常識に照らせば,当業者は,補正発明のIny2Ga1-y2N層が,Mgを含有しつつもなおp型(電子ブロック)層からMgを取り込み,蓄積してMgの活性層への拡散を抑制するとともに,Mgを含有しながら薄膜化されていることにより,キャリア密度を高く,素子の動作電圧を小さくするという作用効果を両立させていることを認識することができる(本願明細書の段落【0016】~【0019】,【0027】,図2参照)。従前は,Mgの拡散による活性層への悪影響を懸念して,MgをドープせずにInGaN層等を積層していたのに対し,補正発明の発明者らは,Inの組成比を大きくすれば,InGaN層は,1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下のMgを含有していたとしても,Mgをさらに取り込み,蓄積するという新たな知見を得て,補正発明に至ったのであって,補正発明では,引用発明はもちろん従来技術では行われていなかったMgのドーピングを行って,活性層へのMgの拡散抑制,キャリア密度の増大,動作電圧の低減を両立させた。

また,補正発明は,①GaN系化合物にInを含有させたことによるMgの活性化エネルギーの減少及びキャリア密度の増大,②Iny2Ga1-y2N層による不純物の吸収・保持,③Iny2Ga1-2yN層の厚さ(膜厚)を1ないし15nmに止め,In含有層を分散配置したことによる結晶性の劣化防止(結晶の欠陥の発生の防止),④上記①ないし③を両立させたことによる,活性層への不純物の拡散防止,結晶性の劣化防止,十分なキャリア密度の実現という作用効果を両立させており,これは補正発明の格別顕著な作用効果である。

しかるに,審決は補正発明のかかる作用効果を看過して進歩性を否定しており,審決の進歩性判断は誤りである。

2  取消事由2(手続違背)

引用発明のアンドープInGaN層10が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3のMgを含有するとして差し支えない旨の審決の認定は,補正発明の進歩性を判断するに当たり重要な事実に係るものであるし,当該技術分野における普遍的な原理や当業者の技術常識,周知の基礎的事項に当たるものではない。

そうすると,特許法159条2項にいう拒絶「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるものであって,特許法が要請する手続保障の見地からも,審判長は上記重要事実に関して拒絶理由通知を行い,出願人たる原告に意見を述べる機会を付与しなければならない。

しかるに,拒絶理由通知でも拒絶査定でもかかる重要事実は触れられておらず,原告に対して上記重要事実は示されていないから,審決には手続違背の瑕疵があり,この瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

したがって,審決には特許法159条2項が準用する同法50条違反の手続違背があり,違法である。

3  取消事由3(補正却下の判断の誤り)

前記1のとおり,補正発明には進歩性があり,独立特許要件を満たすから,本件補正を却下した決定の判断は誤りである。

4  取消事由4(補正前発明の新規性判断の誤り)

前記1のとおりの補正前発明と引用発明の相違にかんがみれば,補正前発明と引用発明とは実質的に同一でない。

したがって,両発明が実質的に同一であるとして補正前発明の新規性を否定した審決の判断は誤りである。

第4取消事由に対する被告の反論

1  取消事由1に対し

(1)  引用発明のアンドープInxGa1-xN/InyGa1-yN多重量子井戸構造の活性層7は補正発明の活性層5に,引用発明のIn含有p型AlGaN電子ブロック層11は補正発明のIn含有p型In1-x-y1GaxAly1N層にそれぞれ相当するところ,引用発明のアンドープInGaN光導波層8,アンドープAlGaNクラッド層9が,アンドープInxGa1-xN/InyGa1-yN多重量子井戸構造の活性層7とIn含有p型AlGaN電子ブロック層11の間にあることは明らかである。本願明細書では,不純物拡散防止層8を活性層5に接して設けることは好ましくないとされ(段落【0012】,【0015】,【0019】,【0020】,【0043】),例えば,実施例(図1)では,p型第1ガイド層6やGaxAl1-xN層7(オーバーフロー防止層)を活性層5とInyGa1-yN層8(不純物拡散防止層)との間に設けているが,補正発明は,活性層5とIny2Ga1-y2N層8(不純物拡散防止層)の間に他の層が介在することを排除するものではない。

そうすると,引用発明のアンドープ層が3層構造を成しているとしても,うちアンドープInGaN層10が補正発明のIny2Ga1-y2N層に相当するとし,両発明の一致点・相違点を認定した審決の認定・判断に誤りはない。

(2)ア  引用発明のアンドープInGaN層10はp側クラッド層の一部を成すところ(甲1の段落【0025】),段落【0012】には,p側クラッド層全体をp型としても,アンドープ又はn型の層とp型の層でp側クラッド層を構成しても,さらにこのp型層をバンドギャップの大きさに違いがある2つのp型層で構成するようにしてもよい旨が記載されている。ここで,引用発明の半導体発光素子においてアンドープInGaN層10を設けるのは,活性層とAlGaN層の間の歪みを緩和するためであるから(段落【0056】),p側クラッド層の一部を成すアンドープInGaN層10をp型にしてもかかる目的に反せず,差し支えない。

そして,p側クラッド層全体をp型にする場合には,p側クラッド層の一部であるアンドープInGaN層10にもMgをドープすることになり,かかる場合においても,アンドープInGaN層10は,アンドープInGaN光導波層8及びアンドープAlGaNクラッド層9とともに,活性層へのMgの拡散を抑制して,活性層の劣化を防止する機能を果たす。

ところで,引用発明のアンドープInGaN層10にドープするMgの濃度(含有量)を,p側クラッド層の他の部分(第2の層)にドープするMgの濃度よりも高くすると,Mg拡散抑制作用の妨げとなることは明らかであるから(甲18,19),前者の濃度を後者の濃度よりも小さくすることは,当業者であれば当然考慮し得るものである。

そうすると,「InGaN層10は,含有するMgの量がp型層が含有するMgの量より少なければ,p型層中のMgが活性層7に拡散するのを抑制する効果を有するものと認められる」とした審決の判断に誤りはない。

そして,本願明細書には,p型不純物であるMgをInyGa1-yN層8(不純物拡散防止層8)の内部に蓄積することと,同層にMgが1×1017cm-3程度以上1×1019cm-3程度以下ドープされていてもよいことがどのように関係するのか記載がなく,後者の技術的事項(発明特定事項)による効果は記載されていない。すなわち,InyGa1-yN層のMg取込み,蓄積機能によって,活性層へのMg拡散の防止効果を奏するとともに,薄膜化によってキャリア密度を高く,素子の動作電圧を小さくするという原告主張の作用効果は,本願明細書の記載に基づかないものにすぎない。

引用発明のInGaN層10と活性層7の間には,アンドープInGaN光導波層8,アンドープAlGaNクラッド層9があり,InGaN層10は活性層7から最も離れた位置にあるし,アンドープInGaN光導波層8及びアンドープAlGaNクラッド層9も,活性層7へのMg拡散抑制作用に寄与しているから,InGaN層10に隣接するIn含有p型AlGaN電子ブロック層にドープされるMgの濃度が例えば1×1019cm-3ないし1×1021cm-3であることにかんがみて,より低濃度である1×1017cm-3ないし1×1019cm-3として差し支えない。

そうすると,「引用発明のInGaN層10に隣接するp型層である『In含有p型AlGaN電子ブロック層11』にドープされるMgの濃度,すなわちMgの含有量が,引用刊行物の【0028】に記載されるように『例えば1×1019/cm3~1×1021/cm3,典型的には5×1019/cm3~1×1020/cm3』であることからすれば,引用発明の『InGaN層10』について,隣接する『In含有p型AlGaN電子ブロック層11』のMgの含有量より少ない量である『1×1017cm-3~1×1019cm-3』のMgを含有するものとして差し支えないことは当業者に明らかであり,上記相違点に係る補正発明の発明特定事項とすることに困難性は認められない」との審決の認定・判断に誤りはなく,補正発明との相違点に係る構成に想到する動機付けに欠けるものではない。

なお,審決は,アンドープInGaN層1層のみで活性層へのMgの拡散抑制作用を果たすとの技術的事項を導いているわけではないし,また,引用発明のアンドープInGaN層10が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3のMgを含有すると認定したわけでもない。

イ  本願明細書には,InGaNによるMg取込みの程度がGaNやGaAlNによるそれに比して非常に高いことは記載されていないし,アンドープInGaN層10が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3のMgを含有することと原告主張の作用効果との関係も記載されていない。原告が主張するメカニズムの相違は本願明細書の記載に基づかないもので失当である。

ウ  よって,審決がした補正発明と引用発明の相違点に係る構成の容易想到性判断に誤りはない。

(3)  前記(2)のとおり,原告が主張する補正発明の作用効果は本願明細書の記載に基づかないものであって,審決にかかる作用効果の看過は存しない。

2  取消事由2に対し

平成18年改正法による改正前の特許法では,補正の却下の理由を通知して意見書の提出の機会を付与する必要はない。審判長において,引用発明のInGaN層が隣接するInGaN電子ブロック層のMg含有濃度よりも小さい濃度である1×1017cm-3~1×1019cm-3のMgを含有するものとして差し支えない旨の補正却下の決定の理由を通知する必要はない。

3  取消事由3に対し

前記1のとおり,補正発明は進歩性を欠くから,独立特許要件を満たさないとして本件補正を却下した審決の判断に誤りはない。

4  取消事由4に対し

前記1と同様に,補正前発明は引用発明と実質的に同一であり,補正前発明の新規性を否定した審決の判断に誤りはない。

第5当裁判所の判断

1  取消事由1(補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り並びに相違点に係る構成の容易想到性判断の誤り)について

(1)  審決は,引用刊行物の半導体発光素子において,InxGa1-xN/InyGa1-yN多重量子井戸構造の活性層7と,In含有p型AlGaN電子ブロック層11との間に,①p側光導波層としてのアンドープInGaN光導波層8,②p側クラッド層としてのアンドープAlGaNクラッド層9,③厚さが5nmのアンドープInGaN層10が設けられていることを認定した上で,アンドープInGaN層10(上記③)が補正発明にいうMg含有Iny2Ga1-y2N層(0<y2≦1)に相当する旨を認定した(審決5~7頁)。

このとおり,審決は,In含有p型AlGaN電子ブロック層11等のp型層と活性層との間に配置され,上記①ないし③の3層構造を成す部分のうち,最もp型層寄りに位置するアンドープInGaN層10に着目して,補正発明との対比を行ったものであるが,補正発明の特許請求の範囲では,Iny2Ga1-y2N層につき,バンドギャップ,格子定数やIn(インジウム)の組成比の大小関係,y2の数値範囲が特定されているほか,「前記第1半導体層と前記活性層との間に配置され,」との特定がされているにすぎず,このほかに上記Iny2Ga1-y2N層の構造を特定する記載は存しない。そうすると,補正発明においては,活性層と上記Iny2Ga1-y2N層との間に他の層が介在する構成が排除されていないというべきであり,この結論は本願明細書(甲2~5)の発明の詳細な説明の記載や添付図面を参酌しても異なるものではない。

そうすると,引用発明のアンドープInGaN層10に着目して補正発明との対比(一致点・相違点の認定)をした審決の認定に誤りはない。

原告は,引用発明のアンドープ層は3層で一体のものとして取り扱わなければならないと主張するが,上記のとおりの補正発明の特許請求の範囲の記載に照らせば,かかる原告の主張は採用できない。

(2)  補正発明も引用発明も,半導体発光素子という共通の技術分野に属するところ,審決が説示するとおり,引用発明のアンドープInGaN層10は,アンドープInGaN光導波層8,アンドープAlGaNクラッド層9と同様に,p型層にドーピングされたp型不純物であるMg(マグネシウム)が同層から活性層7に向かって拡散するのを,当該アンドープ層中に押しとどめて活性層7に拡散しないようにする機能(効果)を有するものである。他方,補正発明のIny2Ga1-y2N層も,Mgがp型層から活性層に向かって拡散するのを抑制する機能を有し,果たすべき機能が共通する。

ところで,補正発明のIny2Ga1-y2N層についてはバンドギャップや格子定数に関する特定がされているほか,厚さ(膜厚)が1ないし15nmであり,Mgの含有濃度が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3であるところ,引用発明の半導体発光素子のアンドープInGaN層10の厚さも例えば5nmであり(甲1の段落【0027】),同層のp型層側に隣接するIn含有p型AlGaN電子ブロック層11のMg含有濃度は例えば1×1019cm-3ないし1×1021cm-3,典型的には5×1019cm-3ないし1×1020cm-3である(甲1の段落【0028】)。ここで,上記のとおり,p型層にドーピングされたMgはp型層から活性層に向かって拡散するから,p型層,アンドープ層,活性層の順にMgの含有濃度が小さくなっていくこと,引用発明の半導体発光素子においても,アンドープInGaN層10のMg含有濃度が例えば1×1019cm-3ないし1×1021cm-3よりも小さいことが当業者にとって明らかである(甲1の段落【0014】の記載に着目しても,引用発明のアンドープInGaN層10が一定程度のMgを含有することが予定されているものといい得る。)。そうすると,審決が認定するとおり(8頁),引用発明の半導体発光素子においても,アンドープInGaN層10のMg含有濃度が,隣接するIn含有p型AlGaN電子ブロック層11のそれの100分の1程度となる,例えば1×1017cm-3ないし1×1019cm-3となることがあるとしても差し支えなく,少なくともアンドープInGaN層10のMg含有濃度が上記のとおりとなる構成は排除されない。

そして,補正発明のIny2Ga1-y2N層のMg含有濃度を1×1017cm-3ないし1×1019cm-3と特定することについては,本願明細書(甲2)の発明の詳細な説明に「不純物拡散防止層は,Mgが1×1017cm-3程度以上1×1019cm-3程度以下ドープされていても良い。」(段落【0027】)との記載があるのみで,本願明細書中の他の部分には上記特定事項に係る作用効果に関する記載はない。上記段落の記載の体裁に照らせば,1×1017cm-3ないし1×1019cm-3というMg含有濃度の数値範囲は,原告が適宜選択したものにすぎず,臨界的意義を有しないものと認定できるところ,本願明細書のすべての記載を参酌しても,あるいは原告が提出するすべての証拠にかんがみても,この認定は覆るものではない。

したがって,補正発明と引用発明の相違点に係る構成,すなわちMgをドープしないInGaN層において,Mg含有濃度を1×1017cm-3ないし1×1019cm-3とする発明特定事項とすることに格別の技術的意義(臨界的意義)はないというべきである。言い換えれば,p型層からMgが拡散してきた結果,Mgを含有することとなったInGaN不純物拡散防止層においても,所期のMg拡散防止機能を果たすものとして当業者が適宜調整できる範疇を出るものではない。そうすると,前記のとおりの技術分野や機能の共通性にも照らせば,当業者において上記相違点に係る構成を採用する上で困難性は存せず,この旨をいう審決の容易想到性判断に誤りはない。

(3)  原告は,引用発明の3層構造のアンドープ層の構成から補正発明のIny2Ga1-y2N層の構成に改める動機付けがないとか,アンドープ層の厚さが異なるなどと主張する。しかしながら,前記(1)のとおり,補正発明の半導体発光素子は,アンドープ層が1層のみの構成に限定されるものではなく,複数の層から成るアンドープ層の構成が包含され得る。また,引用発明の半導体発光素子のアンドープInGaN層10の厚さが補正発明の数値範囲に含まれることは前記(2)のとおりである。そうすると,原告の上記主張は前提を欠き,理由がないし,引用発明のアンドープInGaN層10の構成を補正発明のIny2Ga1-y2N層の構成に改める動機付けに欠けるものではない。

また,原告は,補正発明のIny2Ga1-y2N層と引用発明のアンドープInGaN層10とではMg拡散抑制作用のメカニズムが異なるとか,引用発明ではMgを積極的に導入することは予定されていないなどと主張する。しかしながら,本願明細書には,不純物拡散防止層のInGaNの格子定数(正確にはc軸方向の格子定数)がGaNやGaAlNの格子定数よりも大きく,MgがInGaN膜中に取り込まれやすい旨の記載があるほか(段落【0018】),In(インジウム)の組成比やMgの濃度とバンドギャップ(エネルギー)の大小,不純物拡散防止効果の関係等について言及されているにとどまり(段落【0013】~【0017】,【0019】),意図的ないし予めMgをドーピングしたIny2Ga1-y2N層(不純物拡散防止層)がさらにMgを取り込み,層内に蓄積して,活性層へMgが拡散しないようにする機能(作用)のメカニズムが記載されているわけではない(原告が提出する証拠によっても,従前の半導体発光素子における不純物拡散防止層のMg拡散抑制機能と異なるメカニズムが明らかになるか疑問である。)。前記のとおり,本願明細書の段落【0027】には,1×1017cm-3程度以上1×1019cm-3程度以下のMgの含有を許容し得る旨が記載されているのみで,本願明細書には,上記含有濃度のMgを意図的ないし予め含有(あるいはドーピング)させると,従前の不純物拡散防止層に比して活性層へのMg拡散抑制効果(機能)がより大きくなる旨の記載は存しない。Iny2Ga1-y2N層のMg取込み,蓄積機能によって,活性層へのMg拡散の防止効果を奏するとともに,Mgを含有しながら膜厚を小さくする(薄膜化)ことによって,キャリア密度を高く,素子の動作電圧を小さくするという,原告主張に係る補正発明の作用効果も,本願明細書に記載がないものにすぎない上,当業者が本願明細書の記載から容易に理解できる作用効果であるとも必ずしもいえない。そうすると,原告の上記主張は採用することができない。

(4)  本願明細書の段落【0010】によれば,補正発明の作用効果は,不純物拡散防止層を設けたことによる活性層への不純物の拡散防止,デバイスの特性向上にあるところ,段落【0005】,【0006】では半導体発光素子の寿命の向上,信頼性確保が言及されているに止まるから,上記にいうデバイスの特性向上もかかる趣旨のものであると解される。

他方,前記のとおり,Iny2Ga1-y2N層のMg取込み,蓄積機能によって,活性層へのMg拡散の防止効果を奏するとともに,Mgを含有しながら膜厚を小さくする(薄膜化)ことによって,キャリア密度を高く,素子の動作電圧を小さくするという,原告主張に係る補正発明の作用効果は,本願明細書に記載がない。

本願明細書に記載のある上記趣旨の作用効果であれば,当業者が引用発明に基づいて予測できる範囲を超えず,格別顕著なものとはいえないから,補正発明によって奏される作用効果を考慮に入れても,審決がした補正発明の進歩性判断に誤りがあるとはいえない。

(5)  結局,補正発明の進歩性を否定した審決の判断に誤りはなく,原告が主張する取消事由1は理由がない。

2  取消事由2(手続違背)について

引用発明のアンドープInGaN層10が1×1017cm-3ないし1×1019cm-3のMgを含有するとして差し支えない旨の審決の認定は,その構成が補正事項に係るものであっても,引用発明に基づく補正発明の進歩性の有無の判断の前提となる一事実にすぎず,その一事実のみを新たに拒絶理由として通知することを要するものではない。本件補正の却下に際し,新たな拒絶理由通知は法律上必要とされていないところ,Iny2Ga1-y2N層のMgの含有濃度を本件補正によって発明特定事項の一つとする以上,原告において,必要に応じ,補正発明の進歩性ないし新規性を有するに至ったことを意見書において明らかにするために,引用発明のアンドープInGaN層10のMgの含有濃度との関係を,出願人の立場で自ら主張することの必要性を見極めなければならないものである。

したがって,審決に手続違背の違法があるとすることはできず,原告が主張する取消事由2は理由がない。

3  取消事由3(補正却下の判断の誤り)について

前記1のとおり,補正発明は進歩性を欠くから,独立特許要件の非充足を理由に本件補正を却下した決定の判断に誤りはない。

したがって,原告が主張する取消事由3は理由がない。

4  取消事由4(補正前発明の新規性判断の誤り)について

前記第2の2のとおり,本件補正は,y1の数値範囲を一部改めるほか,Iny2Ga1-y2N層のMg含有濃度を特定する趣旨のものである。

原告は,補正発明と引用発明が,引用発明の半導体発光素子にいうアンドープInGaN層,補正発明にいうIny2Ga1-y2N層のMg含有濃度の特定の有無において相違すること自体は争っていないし,前記1のとおり,審決がした補正発明と引用発明の一致点・相違点の認定に誤りはない。

そうすると,本件補正前の請求項1の発明(補正前発明)は引用発明と実質的に同一であるといってよいから,この旨をいう審決の補正前発明の新規性判断に誤りはない。したがって,原告が主張する取消事由4は理由がない。

第6結論

以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 真辺朋子 裁判官 田邉実)

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