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知財高等裁判所 平成24年(行ケ)10360号 判決 2013年4月18日

原告

インテル・コーポレーション

訴訟代理人弁理士

中村知公

前田大輔

伊藤孝太郎

被告

株式会社インテルグロー

訴訟代理人弁理士

張川隆司

米田恵太

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1原告の求めた判決

特許庁が無効2011-890072号事件について,平成24年7月20日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

本件は,商標登録無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,商標法4条1項8号,11号,15号,19号,7号の該当性である。(以下,「7号」,「8号」,「11号」,「15号」,「19号」というときは商標法4条1項における号を指す。)

1  特許庁における手続の経緯

(1)  被告は,本件商標権者である(甲1の1,2)。

【本件商標】

・インテルグロー (標準文字)

・登録第4980761号

・指定商品及び指定役務 第19類及び第37類に属する商品及び役務

・出願日 平成18年1月19日

・登録日 平成18年8月18日

(2)  原告は,平成23年8月18日,本件商標の登録無効審判(無効2011-890072号)を請求した。

特許庁は,平成24年7月20日,「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし,その謄本は同月27日,原告に送達された。

(3)  原告は,商標登録無効事由として,本件商標登録が商標法4条1項8号,11号,15号,19号及び7号に該当することを主張した。

(4)  原告が11号該当について審判で主張した引用商標は,次のとおりである(一括して「引用商標」という。)。

① 登録第4362619号商標(甲2)

商標の構成:INTEL (標準文字)

登録出願日:平成9年10月23日

設定登録日:平成12年2月18日

更新登録日:平成21年10月20日

指定商品:第14類,第16類,第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

② 登録第4456379号商標(甲3)

商標の構成:file_2.jpg

登録出願日:平成11年1月7日

設定登録日:平成13年3月2日

更新登録日:平成23年3月1日

指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

③ 登録第4634154号商標(甲6)

商標の構成:INTEL (標準文字)

登録出願日:平成12年3月30日

設定登録日:平成15年1月10日

指定商品及び指定役務:第9類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務

④ 登録第4997875号商標(甲7)

商標の構成:別紙に示すとおりの構成

登録出願日:平成17年12月28日

設定登録日:平成18年10月20日

指定商品:第14類,第18類,第21類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

⑤ 登録第5054296号商標(甲8)

商標の構成:別紙に示すとおりの構成

登録出願日:平成17年12月28日

設定登録日:平成19年6月15日

指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

⑥ 登録第5076985号商標(甲9)

商標の構成:別紙に示すとおりの構成

登録出願日:平成17年12月28日

設定登録日:平成19年9月14日

指定商品及び指定役務:第16類,第38類,第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務

⑦ 登録第4614499号商標(甲11)

商標の構成:INTEL (標準文字)

登録出願日:平成10年7月27日

設定登録日:平成14年10月18日

指定役務:第37類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

⑧ 登録第4733468号商標(甲12)

商標の構成:インテル (標準文字)

登録出願日:平成13年3月12日

設定登録日:平成15年12月12日

指定商品及び指定役務:第9類,第37類,第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務

2  審決の理由の要点

(1)  8号について

ア 本号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護すること,すなわち,人(法人等の団体を含む)は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁),問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず,当該他人を想起,連想できないのであれば,他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると,他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要するものと解すべきである(知財高裁平成21年10月20日,同年(行ケ)第10074号判決参照)。

イ 略称「インテル」について

(ア) 原告の名称が「インテルコーポレーション」と表示されることから,これより法人であることを表示する「コーポレーション」を除いた「インテル」が同人の略称に該当するものであることは明らかである。

(イ) 原告の提出した証拠(甲13~54)及び主張によれば,以下の事実が認められる。

原告は,集積回路の開発,製造及び販売の事業を行う企業として,昭和43年に米国で設立された会社であり,昭和46年に世界初のマイクロプロセッサー(MPU)を発売し,その後もMPUの開発を続け,次々に製造販売した。その間,売上高も半導体製造分野において1位となり,MPUのシェア80%を占めるなど,世界的規模で事業展開している。そして,我が国においても,日本法人を設立して営業活動を展開している。

その際,「INTEL」,「intel inside」の商標を継続して商品に使用したのに加え,「インテル・インサイド・プログラム」という商標の使用許諾制度を導入して上記商標の使用を許諾し,原告のマイクロプロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ等の商品の広告宣伝活動を支援した。上記商標は,我が国内においても,ライセンシーのコンピュータ関連の商品とその広告宣伝において継続して使用された。

そして,カタログやプレスリリースにおいて,「インテル」の表示をもって自称し,また,原告に関しての紹介記事において,同人を「INTEL」と表記するもののほか,頻繁に「インテル」と表記されていることが認められる。

(ウ) しかして,原告に係る商品に商標「INTEL」や別掲2(判決別紙と同一)に示す商標が使用され,「インテル」の称呼をもって,当該商標がその需要者の間で広く認識されるものとなったこと,また,「インテル」の略称(表示)をもって,原告の業績等が紹介されていることなどに照らせば,原告の略称である「INTEL」や「インテル」(以下「引用使用商標」という。)は,本件商標の登録出願時には,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)の取引者・需要者を始めとして,相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたと推認することができるものである。

ウ 本件商標について

本件商標は,「インテルグロー」の文字からなるものであるところ,その構成各文字が,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で表されていることに照らせば,外観上一体として把握されるとみるのが自然である上,なじみのない語であり,一見して一連の造語として理解されるというのが相当である。

したがって,本件商標は,たとえその構成文字中に「インテル」の文字を有するとしても,一体不可分のものとして認識されるものであるから,該「インテル」の文字は,本件商標全体の文字列の中に埋没して当該文字部分のみが客観的に把握されるものではないから,原告を想起させるものではないと認めるのが相当であり,本号の「他人(原告)の略称を含む商標」には当たらないというべきである。

エ 原告は,「インテル」に付随する語尾の3文字「グロー」が,英語においては「育つ」,「成長する」,「発達する」の意の語を形成する場合に用いられる単語であって,我が国における英語の普及度に徴すると,「インテル社とともに育つ」,「インテル社の成長」,「インテル社の発展」等の語意を直感するにとどまる者が多いことは明らかである旨主張する。

しかしながら,本件商標は,上記のとおり,一連一体的に構成されたものであって,これを「インテル」と「グロー」とに分離して観察しなければならない格別の理由は見いだせない上,仮に「インテル」と「グロー」とに分離したとして,「グロー」が直ちに何らかの観念をもって理解されるほどに,我が国において知られ親しまれた文字(語)であるとは認められず,また,当該「グロー」が「インテル」部分に付随する性質を有する文字であるとみるべき証左は見いだせない。

しかして,我が国の英語の普及程度を勘案しても,原告のいうように「グロー」をして英語「grow」の表音とし,「育つ」,「成長する」,「発達する」の意を認識した上で,「インテルグロー」が「インテル社とともに育つ」,「インテル社の成長」,「インテル社の発展」等の意を直感するものとして把握されるとは,到底認め難いといわざるを得ない。

したがって,原告の主張は採用できない。

オ 小括

以上のとおり,本件商標は,他人の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められないから,たとえ,原告の承諾がないとしても,8号に違反して登録されたものということはできない。

(2)  11号について

本件商標は,上述のとおり,一連の造語として看取されるものというべきであり,これより「インテル」部分に限定して,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるとすべき特段の理由は見いだせない。また,本件商標の構成文字から生じる「インテルグロー」の称呼も格別冗長でなく一気に称呼し得るものであるから,「インテル」の称呼を生じるものとは認められず,「インテルグロー」の一連の称呼のみを生じるものというべきである。

他方,引用商標は,上記1(4)に示すとおりの構成からなるものであり,いずれも,その構成文字の「INTEL」,「intel」あるいは「インテル」に相応して「インテル」の称呼を生じるものである。

しかして,本件商標の称呼「インテルグロー」と引用商標の称呼「インテル」を対比しても,構成音数が全く相違する上,後半部で「グロー」の音の有無の明らかな相違により,全体の音感が異なり,彼此相紛れるおそれはないものである。

また,本件商標と引用商標の外観構成は明確に相違するものであり,両者から受ける印象は異なるものであるから,外観上,本件商標と引用商標が相紛れるおそれはないものである。

さらに,本件商標は,特定の観念を生じさせない造語として看取されるものであるから,引用商標と観念について比較することができず,観念上相紛れる余地はないものである。

してみれば,本件商標は,外観,称呼及び観念のいずれからみても,引用商標に類似する商標であると判断することはできないものである。

なお,原告は,指定商品・指定役務について,需要者の間に「広く認識された他人の登録商標と他の文字と結合した商標」は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め,その他人の登録商標と類似するものと判断することが妥当であると主張する。

しかし,本件商標の指定商品・指定役務の分野において,引用商標が使用され,その需要者間に広く認識された商標となっているとの実情を首肯するに足りる証拠はない。そうすると,原告の上記主張によっては,本件商標と引用商標とが非類似であるとする上記判断は左右され得ないというべきである。

したがって,本件商標は,指定商品・指定役務について論及するまでもなく,引用商標をもって,11号に違反して登録されたものということはできない。

(3)  15号について

ア 証拠(甲53ほか)によれば,上記(1)イに記載したように,引用使用商標は,原告が同人の業務に係る商品(集積回路等)に継続して使用した結果,本件商標の登録出願時には,原告の商品を表示する商標として,上記商品の需要者の間では広く認識されるに至っていたと認められるものである。

しかし,本件商標の構成中に「インテル」の文字部分を有するものの,本件商標と引用商標とが類似する商標と認められないこと,「インテル」の文字部分を有することをもって,本件商標が原告と関連づけてみられるともいい難いことは,上記のとおりである。因みに,「インテル」の文字は,「INTEL」の表音に当たるものであるが,「活字組版で,行間を適当な広さにするため挿入する木製または金属製の薄い板」を意味する語でもある(「広辞苑」参照)こと を勘案すれば,唯一,原告に由来する標章とまでいうことはできないというのが相当である。

さらに,引用使用商標が使用される商品と本件商標の指定商品である「建築用又は構築用の専用材料」等とは,品質・用途・流通経路等が全く異なり,関連性がないか,極めて薄いものである。また,本件商標の指定役務も「建設工事」等であり,引用商標の商品との関連性の程度は極めて低いものである。それゆえ,それぞれの需要者も共通であるとはいえない。

しかして,商標間の類似性の程度,引用使用商標の周知性の程度,使用される商品間又は商品と役務間の関連性の程度,需要者の共通性等を総合勘案してみれば,本件商標をその指定商品・指定役務に使用した場合,これに接する需要者が引用商標や原告を想起し連想して,当該商品や役務を原告あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品や役務の如く誤信するとは認め難く,商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえないと判断するのが相当である。

したがって,本件商標は,15号に違反して登録されたものということはできない。

イ なお,原告は,商標「INTEL」についての防護標章登録を挙げて,「これと実質的に同一の『インテル』を標章に含む本件商標が指定商品・指定役務に使用されると,出所の混同を生じるおそれがある」旨主張している。

しかしながら,本件商標の指定商品について商標「INTEL」が防護標章登録されているとしても,本件商標が当該防護標章登録の基本の登録商標と同一あるいはこれと類似するものでないことは,前記(2)のとおりである。

してみれば,本件商標と上記基本の登録商標とは「インテル」の称呼を共通にするものではなく,別異の商標とみるのが相当であるから,挙示の防護標章登録をもって直ちに,本件商標の指定商品・指定役務についての使用により,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるとすることはできないというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。

(4)  19号について

引用商標が外国及び我が国において需要者の間に広く認識されている商標に当たるものであるとしても,本件商標が引用商標と同一又は類似するものではないこと前記のとおりであるから,本号の他の要件について論及するまでもなく,本件商標は,19号に違反して登録されたものとはいえない。

(5)  7号について

本件商標は,その構成自体において公序良俗を害するおそれがないものであることは明らかである。そして,当事者の主張及び証拠によってみても,その出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあった等の事情をうかがわせる具体的な理由及び証拠は見いだせず,ほかに,本件商標を指定商品・指定役務に使用することが公の秩序を乱すこととなる等の事情も認められないものである。

したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標には該当せず,7号に違反して登録されたものとはいえない。

(6)  まとめ

以上のとおり,本件商標は,7号,8号,11号,15号及び19号に違反して登録されたもの ではないから,商標法46条1項1号の規定により,その登録を無効とすることはできな

第3原告主張の審決取消事由

1  取消事由1(8号の適用の誤り)

(1)  本件商標は「インテルグロー」からなる商標であるところ,その一部を構成する文字「インテル」は,本件商標が出願された平成18年(2006年)1月19日及び登録査定がされた同年8月18日の各時点において,パソコン関連の商品及び役務を取り扱う業界においてはもとより,パソコンを職場や家庭等において使用する我が国の一般消費者の間においても,原告インテル・コーポレーションの略称を表示するものとして広く認識されている商標「インテル」と共通する(甲1の1,2,甲4,5,10,13~54,56,57)。

審決は,原告の略称である「インテル」の周知・著名性を認定するものの,本件商標が原告の略称である「インテル」を含むか否かの判断において,「インテル」の周知・著名性を一切考慮せず,本件商標が単に「一連の造語」であること,即ち,本件商標の外観にのみ依拠し,本件商標は原告の略称である「インテル」を含まないと認定した。

しかし,表示「インテル」や「INTEL」が,本件商標の登録出願時においては,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)の取引者・需要者を始めとして,相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたと推認することができる原告の著名な略称であることは,審決がその事実を正面から認定するところである。

加えて,「インテル」は,原告が所有する登録商標「INTEL」の片仮名表記若しくは登録商標として,自ら製造販売を行っている集積回路及び半導体の商品について周知著名であるだけではない。原告の著名な略称である「インテル」は,そのローマ字表記からなる商標「INTEL」(引用商標②)について,次の区分における指定商品及び役務に関し防護標章登録を受けており(甲4,5),かかる登録を受けた防護標章登録の指定商品及び役務のうち,次の商品及び役務が本件商標「インテルグロー」の指定商品及び役務と共通する(以下,共通する商品役務を「共通商品役務」という。)。

第19類における共通商品役務:

建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス,建具(金属製のものを除く。),鉱物性基礎材料,タール類及びピッチ類,可搬式家庭用温室(金属製のものを除く。),セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。),吹付け塗装用ブース(金属製のものを除く。),区画表示帯,土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,道路標識及び航路標識(金属製又は発光式のものを除く。),貯蔵槽類(金属製又はプラスチック製のものを除く。),ビット及びボラード(金属製のものを除く。),石製彫刻,コンクリート彫刻,大理石製彫刻,石製郵便受け,灯ろう

第37類における共通商品役務:

建築一式工事,しゅんせつ工事,土木一式工事,舗装工事,石工事,ガラス工事,鋼構造物工事,左官工事,大工工事,タイル・れんが又はブロックの工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転

かかる共通商品役務に関し,原告の略称である「インテル」のローマ字表記の標章「INTEL」が防護標章登録されている事実は,原告以外の第三者が標章「INTEL」を共通商品役務に使用した場合は,原告の業務にかかる商品若しくは役務であるとの混同が生じる程度に著名な商標であることが認定されていることを示すものである。このことは,「インテル」は「INTEL」と同一の称呼であることから,原告以外の第三者が標章「インテル」を共通商品役務に使用した場合は,原告の業務にかかる商品若しくは役務であるとの混同が生じる程度に著名な商標であることが推認される。

よって,表示「インテル」は原告の著名な略称である「インテル」として周知であるところ,かかる表示「インテル」を「インテルグロー」の態様にて使用した場合は,「インテル」が原告を指し示すものとして一般に受け入れられていることは,「インテル」と同一の称呼を生ずる商標「INTEL」が,共通商品役務に関し防護標章登録されている事実からも明らかである。

更に,「インテル」と同一の称呼を生ずる「INTEL」の表示は,引用商標②において,次の商品役務区分について,防護標章登録を受けている。

・登録4456379号防護1号(甲4)

第1類:化学品等,第2類:塗料,染料等,第3類:化粧品等,第4類:工業用油等,第5類:薬剤等,第6類:鉄及び鋼等,第7類:金属加工機械器具,第8類:手動工具等,第10類:医療用機械器具等,第11類:電球類及び照明用器具等,第12類:船舶並びにその部品及び附属品等,第13類:鉄砲等,第15類:楽器等,第17類:ゴム等,第19類:建築用又は構築用の非金属鉱物等,第20類:家具等,第22類:原料繊維等,第23類:糸等,第26類:編みレース生地等,第27類:敷物等,第29類:食肉等,第30類:コーヒー及びココア等,第31類:あわ等,第32類:ビール等,第33類:日本酒等,第34類:たばこ等,第35類:広告等,第37類:建築一式工事等,第39類:鉄道による輸送等,第40類:布地等,第41類:技芸・スポーツ又は知識の教授等

・登録4456379号防護2号(甲5)

第9類:耳栓,第14類:貴金属等,第16類:事務用又は家庭用ののり及び接着剤等,第18類:かばん金具等,第21類:デンタルフロス等,第24類:織物等,第25類:洋服類,第28類:スキーワックス等,第35類:人材派遣による一般事務の代理又は代行等,第36類:預金の受入れ,第38類:電気通信(放送を除く。)等,第42類:気象情報の提供等,第43類:宿泊施設の提供等,第44類:美容等,第45類:ファッション情報の提供等

この事実からも,原告の著名な略称である「INTEL」若しくは同一称呼を有する「インテル」は,原告の業務にかかる半導体及び集積回路のみならず,ほぼすべての商品並びに役務区分において,需要者・取引者に広く認識されている表示である。従って,「インテル」若しくは「INTEL」の表示が,一般世人に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられていることは明らかである。本件商標の構成からは,一般世人は原告の著名な略称である「インテル」を容易に想起看取する蓋然性がきわめて大きいものであり,「インテルグロー」は「インテル」という他人の著名な略称を含む商標というべきである。本件商標が登録出願された2006年1月19日当時,すでに「インテル」若しくはそのローマ字表記である「INTEL」の商標は,一般世人の間において,原告が製造販売する商品の商標としてだけでなく,原告の略称としても広く認識され,これに接する者は直ちに原告を想起するまでに周知著名となっていたことが認められ,この認定を左右するに足る証拠はない。

また,本件商標に接した需要者・取引者は,「インテル」が原告の略称として著名であり,かつ語頭に位置することから,まずは前半の「インテル」を認識し,原告の略称であることを理解し,その後,「グロー」を理解することが通常の需要者・取引者の行動である。逆に,需要者・取引者が「インテ」を原告の著名な略称として把握したり,「インテルグ」を原告の著名な略称として理解したりすることは,「インテル」が原告の著名な略称であることから想定できない。

(2)  本件商標は,審決が認定するとおり,これを構成する各文字が同一の書体,大きさで,一連に表示されており,各文字の書体に格別の特異性はないものであるところ,七文字のうち,語頭からの四文字は,先に審決が認定した原告の著名な略称である顕著な造語表示「インテル」と一致している。特に表示「インテル」が本件商標の語頭四文字を占める位置にあるため,かかる「インテル」の表示は需要者及び取引者に強い支配的な印象を与え,原告を指し示す表示であることを,看者に対し容易に理解せしめるものである。

かかる「インテル」という共通表示が,需要者・取引者に強い支配的な印象を与える本件商標の語頭に存在することに加え,本件商標を構成する「グロー」の文字は,英単語“grow”の片仮名表記であり,同単語は,義務教育課程における中学2年時の必修科目である英語の授業において習得する単語である(甲55,61)。よって,我が国における義務教育レベルの英語知識の普及度に徴すれば,「グロー」は“grow”に通じる語意を直感する者の多いことは明らかである。

そうすると,本件商標は,一般世人がこれに接した場合,本件商標の構成は「インテル」と「グロー」を組み合わせてなるものと認識され,原告の著名な略称である「インテル」を容易に想起看取し,「インテルグロー」は原告の著名な略称「インテル」を含むものと理解する蓋然性がきわめて大きい。

更に,審決は本件商標を「造語」と認定している。この点,本件商標が造語であることは,寧ろ,一般世人が本件商標は原告の著名な略称「インテル」を含むものであると認識することを肯定する要因である。

即ち,本件商標は造語であるから,表示全体としては固有の意味を持つ既存の英単語として理解できないため,本件商標に接する者は,既存の英単語の意味以外の観念を詮索することが通常であり,その結果,原告の著名な略称「インテル」と英単語「グロー」の文字を組み合わせてなる商標であることを認識する。審決が認定する通り,「インテル」及び「INTEL」は原告の略称として周知著名なものであるから,かかる本件商標の成り立ちからすれば,本件商標が同書・同体の文字からなるものであっても,需要者が,本件商標は原告の著名な略称「インテル」と「グロー」を組み合わせた表示であると認識することは必然である。本件商標は特定の意味をもつ既成の言葉ではないから,その観念を一体的にとらえることはなく,寧ろ,本件商標を構成する個々の表示を注意深く観察し,それが含む「インテル」が原告の著名な略称であることと,英単語「グロー」が持つ「成長,発展」等の意味合いを認識でき,同英単語が一般的に知られた英単語であることと相俟って,需要者は,「本件商標は「インテル」を含み,それに「グロー」を組み合わせた表示」と理解するものである。

よって,日本における一般世人の認識からすれば,本件商標は,原告の著名な略称である「インテル」を含むものであるとの判断が妥当である。

(3)  審決は,「他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要するものと解すべきである」と判断する。

本件商標については,「インテル」の表示は単に物理的に含まれた状態であるのではなく,当該表示が原告の著名な略称であることに鑑みれば,本件商標の構成中「インテル」が,かかる原告の著名な略称を指し示すことは明らかであるから,表示「インテル」は,審決が言うところの「その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要するもの」に相当すると解することができる。

ある商標が他人の著名な略称を含むか否かの判断は,問題となる商標の外観上一連一体的なものであるかの判断を行うのではなく,何人かがその商標が含む一の表示が,他人の著名な略称として認識できるかを基準に判断すべきである。即ち,看者の認識の可能性を前提として,他人の名称等を構成する文字列がそのまま存在するときは他人の著名な略称を「含む」と解することが妥当である。

原告の略称である「インテル」の著名性を考慮すれば,本件商標の構成から「インテル」が認識されることは火を見るより明らかである。したがって,本件商標に「インテル」が含まれるか否かの認定において,原告の略称の著名性を一切考慮せず,本件商標の構成が,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で表されている外観上の理由のみに基づき,本件商標は外観上一体として把握され「インテル」を含まないと判断することは,「インテル」は原告の著名な略称である表示であるとする審決が認定した事実を看過するものであり,本件商標に接する一般世人がとりうる認識を考慮しないものである。

また,周知・著名な原告の略称「インテル」は,一般世人においてもはや馴染みの無い語ではなく,「インテルグロー」の構成において「インテル」部分が埋没することはあり得ない。寧ろ,「グロー」の表記は被告若しくは第三者を指し示す表示として認識されている事実はない。

そして,原告が被告に「インテル」の著名な略称の商標登録出願,及び,「インテル」を含む本件商標の登録出願について承諾を与えた事実はない。

よって,本件商標より,需要者・取引者が原告の著名な略称「インテル」を想起することは明らかであり,そのような著名な略称を保護するために商標法4条1項8号を適用することは,人の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益の保護のために規定される同号の趣旨にも合致するものである。

以上より,本件商標は,他人(原告)の著名な略称「インテル」を含む商標であり,商標法4条1項8号規定の商標に該当する。

2  取消事由2(11号の適用の誤り)

(1)  本件商標は,その構成態様から「インテルグロー」の称呼が生じる商標である。また,本件商標は原告の著名な略称である「インテル」を含むから,需要者・取引者が本件商標の「インテル」の構成部分を分離して観察することは,取引上不自然ではない。

「インテル」の表示は,原告の業務にかかる商品である半導体や集積回路の商標として著名な表示である「インテル」に一致する表示である。そして,本件商標が登録する指定商品:建築及び構築用専用材料(19類),及び,指定役務:建設工事(37類)においても,第三者がこれらの商品若しくは役務に使用した場合は,原告の業務にかかる商品若しくは役務として需要者・取引者が出所を混同するほど著名な商標であることは,原告が「インテル」と同一の称呼を生じる標章「INTEL」について,防護標章登録を受けていることからも明らかである。

したがって,需要者・取引者は,本件商標に接した場合は,「インテルグロー」の他に「インテル」の称呼を分離して観察することができる商標である。

この点,審決は「本件商標は上述のとおり,一連の造語として看取されるというべきであり,これより『インテル』部分に限定して,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるとすべき特段の理由は見いだせない。」と断定するが,審決において引用商標の周知著名性を認定しつつ,本件商標の類否判断においてはかかる周知著名性を一切検討することなく,「『インテル』部分に限定して出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるとすべき特段の理由は見いだせない」と判断した。

しかし,引用商標「インテル」及び「INTEL」の部分は,わが国における著名な半導体・集積回路等の製造販売業者である原告の取扱商品ないし商号の略称を表示するものであることは審決の適法に確定するところである。また,「インテル」は特定の観念を有さない造語である。

そうすると,「インテル」の文字と「グロー」の文字の結合から成る本件商標が,指定商品である建築用及び構築用専用材料等及び建設工事等に使用された場合には,「インテル」の部分が取引者,需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから,それとの対比において,需要者・取引者は,我が国の通常の英語の知識に照らせば容易に理解できる英単語“grow”の称呼が生ずる一般的,普遍的な文字である「グロー」の部分のみからは,具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情が認められない限り,出所の識別標識としての称呼,観念は生じない。寧ろ「インテルグロー」全体として,若しくは「インテル」の部分としてのみ称呼,観念が生じるというべきである。

よって,本件商標は,「インテルグロー」及び「インテル」の称呼を生じるところ,本件商標の称呼「インテル」は,引用商標「インテル」及び「INTEL」の称呼と同一若しくは類似する商標である。その結果,本件商標は,引用商標と称呼「インテル」において類似する商標であるから,商標法4条1項11号に該当する商標である。

(2)  本件商標は,原告の著名な略称である「インテル」を含むとともに,「グロー」なる表示を含むところ,「グロー」は義務教育の中学2年時に習得する単語であるから(甲55,61),需要者・取引者は,「グロー」から「成長」「発展」などの観念を容易に理解する。したがって,本件商標は「インテル社が成長する」「インテルの製品が発展する」などの観念を持つ商標である。

よって,観念においても,本件商標の観念と「インテル」の観念は一方が他方を連想する関係にある。

よって,本件商標は,「インテル社が成長する」「インテルの製品が発展する」の観念を生じるところ,本件商標と引用商標「インテル」の観念は類似する関係にある。

(3)  本件商標は客観的に「インテル」の表示を含むものであるが,「インテル」の表示は引用商標の称呼と同一若しくは類似する表示である。この「インテル」の表示は,審決が認定するとおり,原告に係る商品に使用され「インテル」の称呼をもって,当該商標がその需要者の間で広く認識されるものとなり,本件商標の登録出願時には,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)の取引者・需要者を始めとして,相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたと推認することができる。

更に,「インテル」の称呼を生じるローマ字表記の商標「INTEL」が,本件商標の指定商品(建築用又は構築用の専用材料等)及び指定役務(建設工事等)に関し防護標章登録を得ていることからも,かかる指定商品や指定役務の需要者・取引者においても,「INTEL」若しくは「インテル」の表示は広く認識されていることは明らかである。

したがって,商標「インテルグロー」の構成部分の一部である「インテル」が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として「強く支配的な印象」を与えるものと認められる。

一方,本件商標を構成する「グロー」は単独で使用されている事実もなく,強く支配的な印象を与えるものではない。

もっとも,審決は,引用商標の称呼である「インテル」は「活字組版で,行間を適当な広さにするために挿入する木製または金属性の薄い板」を意味すると述べる(16頁)。しかし,仮にかかる意味における「インテル」の用法があったとしても,本件商標の需要者・取引者が当然知っている用法と結論づけることはできない。ましてや,現在の印刷技術において,活字組版を用い印刷を行う技術は極めて稀である。また,本件商標の指定商品及び指定役務の需要者・取引者が,「インテル」の意味を審決が指摘するごとく「活字組版で行間を適当な広さにするために挿入する木製または金属性の薄い板」であると認識することは,「活字組版で行間を適当な広さにするために挿入する木製または金属性の薄い板」が建築用又は構築用の専用材料及び建設工事とは関連性がないことに鑑みれば,全く想定できない。

よって,本件商標の需要者・取引者は,「インテルグロー」の表示のうち「インテル」を唯一引用商標若しくは同一の称呼を有する表示であると独立して理解するものである。

以上のとおり,本件商標のうち,「インテル」は引用商標であり,原告の業務にかかる商品を表示するものとして周知著名な表示であること,「インテル」は引用商標若しくは原告の業務にかかる商品以外の商標としては認識されないこと,「インテルグロー」は全体として特定の観念をもつ既成語ではないこと,また,活字印刷がほぼ消滅した現代の印刷技術において「インテル」を活字印刷に使用する部材として需要者・取引者は理解できないことから,「インテルグロー」の「インテル」の部分は,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。

(4)  本件商標は「インテルグロー」の称呼とともに「インテル」の称呼を生ずる。一方,引用商標は,その構成態様から「インテル」の称呼が生じる。

よって,本件商標の称呼「インテルグロー」と引用商標の称呼「インテル」は類似しないものの,本件商標から生ずる他の称呼「インテル」と引用商標の称呼「インテル」は同一である。したがって,本件商標と引用商標は標章が類似する関係にある。

本件商標の指定商品及び指定役務のうち,以下の商品及び役務と引用商標の指定商品及び指定役務とは,同一又は類似である。

ア 本件商標の指定商品:第19類の指定商品について

・建築用又は構築用の非金属鉱物(引用商標①:第14類「宝玉の原石」,引用商標④:第14類「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」)

・建築用ガラス(引用商標②,③,⑤:第9類「加工ガラス(建築用のものを除く。)」,引用商標④:第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。)」)

・道路標識(金属製又は発光式若しくは機械式のものを除く。)(引用商標②,③,⑤:第9類「乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識」)

・ビット及びボラード(金属製のものを除く。)(引用商標②,③,⑤:第9類「消防艇」)

・建具(金属製のものを除く。)(引用商標⑥:第16類「ブックエンド」)

イ 本件商標の指定役務:第37類の指定役務について

・建設工事(引用商標⑦:第37類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM並びにマウスその他の位置入力装置・キーボード・プリンターその他の周辺機器を含む。)・集積回路・マイクロプロセッサ・マイクロコンピュータ・電子計算機通信ネットワーク接続用カード・未記録の電子計算機用電子回路・未記録の電子計算機用磁気ディスク・未記録の電子計算機用磁気テープ・未記録の電子計算機用光ディスク・未記録の電子計算機用光磁気ディスクその他の電子応用機械器具及びその部品の設置工事,モデム・テレビ会議通信機械器具・電話会議通信機械器具・ビデオカメラ・ヘッドフォンその他の電気通信機械器具の設置工事,測定機械器具の設置工事,電気磁気測定器の設置工事,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設置工事,電気通信工事,電気工事」,引用商標⑧:第37類「電子計算機・その他の電子応用機械器具とその部品の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,モデム・コンピュータによる音声・映像を用いた会議通信機械器具・テレビ会議通信機械器具・電話会議通信機械器具・ビデオカメラ・ヘッドフォン・その他の電気通信機械器具の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,測定機械器具の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,電気磁気測定器の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,電気通信工事及びこれに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,電気工事及びこれに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング」)

・建築工事に関する助言(引用商標⑦:第37類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・光ディスク・光磁気ディスク・CD-ROM並びにマウスその他の位置入力装置・キーボード・プリンターその他の周辺機器を含む。)・集積回路・マイクロプロセッサ・マイクロコンピュータ・電子計算機通信ネットワーク接続用カード・未記録の電子計算機用電子回路・未記録の電子計算機用磁気ディスク・未記録の電子計算機用磁気テープ・未記録の電子計算機用光ディスク・未記録の電子計算機用光磁気ディスクその他の電子応用機械器具及びその部品の設置工事関する技術支援及びコンサルティング,モデム・テレビ会議通信機械器具・電話会議通信機械器具・ビデオカメラ・ヘッドフォンその他の電気通信機械器具の設置工事に関する技術支援及びコンサルティング,測定機械器具の設置工事に関する技術支援及びコンサルティング,電気磁気測定器の設置工事に関する技術支援及びコンサルティング,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設置工事に関する技術支援及びコンサルティング,電気通信工事に関する技術支援及びコンサルティング,電気工事に関する技術支援及びコンサルティング」,引用商標⑧:第37類「電子計算機・その他の電子応用機械器具とその部品の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,モデム・コンピュータによる音声・映像を用いた会議通信機械器具・テレビ会議通信機械器具・電話会議通信機械器具・ビデオカメラ・ヘッドフォン・その他の電気通信機械器具の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,測定機械器具の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,電気磁気測定器の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設置工事及びこれらに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,電気通信工事及びこれに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング,電気工事及びこれに関する技術情報の提供・技術的助言・コンサルティング」)

本件商標は,先願である引用商標と称呼及び観念が同一若しくは類似であるから,引用商標に類似する。また,本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務とは,同一又は類似である。よって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当し,登録を無効とする理由がある。よって,審決は取り消されるべきである。

3  取消事由3(15号の適用の誤り)

(1)  審決は,引用商標の周知著名性を認めながら,本件商標は商標法4条1項15号に該当しないと判断した。

しかし,本件商標は「インテルグロー」の称呼を生じるものの,本件商標の需要者・取引者にとり,「インテルグロー」が含む「インテル」の表示は,同一の表音を有する「INTEL」の標章が本件商標の指定商品:建築用及び構築専用材料等及び役務:建築工事等の分野に防護標章登録として登録されていることから,これらの分野において広く認識されている。したがって,本件商標からは,「インテルグロー」の他に「インテル」の称呼も生ずる。よって,本件商標と引用商標は類似する。このことは,商標と標章の類否は,対比される標章が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された標章がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであるからである。

とすると,本件商標をその外観構成のみに依拠し,本件商標が含む「インテル」の表示が取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を一切考慮せず類否判断を行うことは妥当ではない。「インテル」は原告の商標として周知著名であるから,「インテルグロー」に接した需要者,取引者は,「インテルグロー」から「インテル」の印象,記憶,連想に基づき,商標の類否を判断するものである。即ち,需要者・取引者は,インテルの文字部分を有することをもって,本件商標を原告と関連づけて認識する。

また,本件商標において,「インテル」の表示は「グロー」に比較し支配的な印象を需要者・取引者に与える文字部分である。よって,本件商標はその構成から,「インテルグロー」若しくは「インテル」の称呼が生ずるものである。

(2)  仮に,審決がいうように「インテル」は「活字組版で,行間を適当な広さにするため挿入する木製または金属製の薄い板」を意味する語であるとしても,本件商標の需要者若しくは取引者が認識している,若しくは記憶している通用性のある意味ではなく,かかる意味は活字印刷を業として営む事業者のみが知っているものである。

かかる需要者・取引者にとり通常認識されていない語意をもって「唯一,原告に由来する標章とまでいうことができない」と断定することは,需要者・取引者が通常認識することが極めて困難な意味を引用するものである。また,原告の業務とは関連性のない活字印刷技術という特殊な産業分野における意味を指摘し「唯一,原告に由来する標章とまでいうことができない」と断定することは,極めて機械的な判断であり失当である。商標は,需要者・取引者に対する自他商品・役務の識別標識であるから,需要者・取引者が,ある商標からどのような意味を認識するかが重要である。特定分野に関する辞書や用語辞典を調べて,始めて理解できるような語句若しくは語意の存在を理由に,引用商標の採択の独自性を否定すること,即ち,「唯一,原告に由来する標章とまでいうことができない」と断定することは,理由がない。

(3)  商標法4条1項15号は「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の登録を認めないことを目的とするとともに,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止することを目的とする。

一方,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)の発生の有無の検討に際しては,周知表示又は著名表示(本件では「インテル」の表示)が使用される商品や役務(本件では半導体・集積回路等)と,登録を防止されるべき商標(本件では「インテルグロー」)が登録される商品や役務について,品質・用途・流通経路等が全く異なるかどうか,関連性がないかどうか,需要者が共通するかを考慮すべきではあるが,絶対的なものではない。因みに,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)は,周知表示又は著名表示の使用商品若しくは指定役務と競合する商品若しくは役務について発生もしくは行われる場合とともに,周知表示又は著名表示の使用商品若しくは役務と競合しない商品若しくは役務についても発生し,行われることが一般的である。

したがって,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止するのであれば,商品や役務の競合関係若しくは関連性などを常に必要とする解釈は,フリーライド及びダイリューションを防止するという規定の趣旨を減殺するものであるから妥当ではない。

この点,審決は,引用使用商標が使用される商品と本件商標の指定商品である「建築用又は構築用の専用材料」等とは,品質・用途・流通経路等が全くことなり,関連性がないか,極めて薄いものである。また,本件商標の指定役務も「建築工事」等であり,引用商標の商品との関連性の程度は極めて低いものである。それゆえ,それぞれの需要者も共通であるとはいえないとし,商品と役務の関連性がない理由を商標法4条1項15号の適用しない理由とするが,同号の趣旨から妥当でない。

そして,商標法4条1項15号が定める「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである。

本件につき検討すると,本件商標は,片仮名文字をもって一連に横書きした「インテルグロー」からなる商標であるから「インテルグロー」なる称呼が発生する。また,同商標は原告の著名な商標「インテル」を含み,かつ,「インテル」のローマ文字表記である「INTEL」が,本件商標の指定商品及び役務について,原告の基幹商品である半導体及び集積回路に関し防護標章登録を受けていることから,「インテル」の表示を本件商標の指定商品及び役務について使用した場合,混同を生ずることが推測されるため,本件商標に接した需要者・取引者は,本件商標から「インテル」の称呼を認識する。よって,本件商標は「インテルグロー」及び「インテル」の称呼を生ずる。

一方,原告の引用商標は,その構成態様から「インテル」の称呼が生ずる。したがって,本件商標と引用商標は,称呼が類似する商標である。

原告の引用各商標は,原告が英単語“integrated”の“int”と“electronics”の“el”を組み合わせ創作した独創性の極めて高い商標である(甲13)。更には,引用商標は,審決が認定するとおり,本件商標の出願時及び登録時において,半導体及び集積回路に関し我が国で周知著名な商標である。

また,その周知著名性は,本件商標の指定商品及び役務の分野においても,「インテル」と同一称呼の標章「INTEL」が混同を生ずるほど広く認識されている標章として,防護標章登録されている事実からも,周知著名な商標であることは明らかである。

原告の業務に係る商品は,半導体及び集積回路であり,これらの商品は,コンピューターのみならず,コンピューターの周辺機器,その他家電製品や産業機械,医療器具等,幅広い商品に組み込まれて使用されている。そして,引用商標が最も使用されているコンピューターは,昨今においては,全ての業種において横断的に使用されている商品であって,個人であるとか,企業の規模に拘わらず,多かれ少なかれ原告が提供する商品が利用されており,その意味で,原告が提供する商品は,本件商標の指定商品及び指定役務である建築用又は構築用の専用材料や建築工事の提供業務に関連性を有するというべきである。

引用商標は,半導体及び集積回路の商標として周知著名であるが,引用商標は,原告の半導体や集積回路を使用し製造したコンピューターや周辺機器などの電子機器の外観に直接表示され使用されている。

一方,本件商標の指定商品である「建築用又は構築用の専用材料」や指定役務である「建設工事」の分野において,かかる商品や役務の提供業務に携わる上において,コンピューターが介在することは火を見るより明らかである。よって,原告の周知著名な商標を使用した商品であるコンピューター及び周辺機器の取引者及び需要者は,「建築用又は構築用の専用材料」や指定役務である「建設工事」の需要者及び取引者と共通する。

また,コンピューターが広く普及した昨今の状況に鑑みれば,原告が提供する商品を使用したコンピューターやその周辺機器の取引者及び需要者は,広く一般世人である。一方,本件商標の指定商品・指定役務の取引者及び需要者は,被告の業務は住宅設備機器・建材商品の販売・施工であることから(甲60号証),住宅施設を有する者,即ち,一般世人並びに住宅の建築・リフォームなどに関わる建設業者及び電気業者などである。したがって,この面でも,原告及び被告が提供する商品及び役務には共通性がある。

原告は,「INTEL」及び「インテル」が周知・著名性を獲得するに至るまで,これらの商標を全世界において長年継続的に使用した。

また,原告は「INTEL」の商標をインテル使用許諾プログラムにより,日本におけるパーソナルコンピューターの製造メーカーに対し引用商標の使用を許諾し,これらのメーカーの製造するコンピューターにおいても「INTEL」及び「インテル」を表示した半導体や集積回路が組み込まれ,かつ,「INTEL」及び「インテル」の表示がコンピューター等の商品の外観に使用されている。

原告が,このように「INTEL」及び「インテル」を周知・著名に至らせるために相当の努力を払ってきたこと,被告は引用商標が既に広く知られるに至っていた後に,殊更に原告の著名な略称である「インテル」と称呼及び外観を同じくする「インテル」の文字を含む商標の出願に及んだこと,更には,本件商標の構成中,特に需要者・取引者の注意を惹きやすい商標の語頭に「インテル」を配置していること,本件商標が同書・同体の文字をもって構成されていても,本件商標が含む「グロー」は,中学二年時に習得する英単語“grow”を表す表示であり,当該文字は既存の英単語であると容易に認識されるため,本件商標は「インテル」と「グロー」の文字を組み合わせたものと理解されることの事情が考慮されなければならない。

(4)  本件商標が明らかに含んでいる「インテル」の表示と同一の称呼を有する防護標章登録「INTEL」が有効に存在することは,本件商標の指定商品及び指定役務の需要者・取引者において,「INTEL」もしくはそのカタカナ表記である「インテル」が,引用商標を示す商標として認識されているとの評価を特許庁が認定した事実に他ならない。

そこで「INTEL」及び「インテル」は,原告の業務にかかる半導体及び集積回路の分野のみならず,本件商標の指定商品及び役務の分野でも広く認識されていることを前提に検討する。

複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない。

一方,これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,引用商標と構成を同じくする「インテル」なる文字部分が含まれているが,本件商標は「インテルグロー」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,本件商標の外観構成のみに注目すれば,「インテル」の文字部分だけが独立して見る者の注意を惹くように構成されているということはできない。

しかし,原告商標は,本件商標の出願日である2006年8月18日当時は原告の略称として,かつ,原告の製造販売にかかる商品の周知著名商標としてよく知られており,本件商標の指定商品である「建築用又は構築用の専用材料」等,及び指定役務である「建設工事」等の需要者・取引者においても,標章「INTEL」の防護標章登録の存在から,「インテル」の商標は広く認識されていたことが明らかである。

よって,本件商標の構成中「インテル」は,その指定商品及び指定役務の取引者や需要者に対し,原告の提供に係る商品を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。そうすると,本件商標の「インテル」の部分は,原告の著名な略称及び原告の製造販売する商品の日本全国において広く認識された商標であるため,独自の自他商品を識別する機能がないということはできない。

即ち,本件商標においては,その構成中の「インテル」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことができるから,本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体と,本件商標の構成中の「インテル」の文字部分だけを原告商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許される。

かかる分析によれば,本件商標は,「インテルグロー」のみならず「インテル」の称呼も生じ,その称呼のうち「インテル」は引用商標の称呼と同一であるから,本件商標と引用商標は類似する商標である。

したがって,本件商標は引用商標「インテル」と混同を生ずるおそれのある商標である。

よって,審決の「本件商標と上記基本の登録商標とは「インテル」の称呼を共通にするものではなく,別異の商標とみるのが相当であるから,挙示の防護標章登録をもって直ちに,本件商標の指定商品・指定役務についての使用により,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるとすることはできないというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない」との判断は,商標法4条1項15号の適用を誤った違法なものである。

4  取消事由4(19号の適用の誤り)

(1)  前述の通り,本件商標は「インテルグロー」及び「インテル」の称呼を生じ,一方,引用商標は「インテル」の称呼を生じる。よって,本件商標と引用商標は称呼において類似し,また,観念においても本件商標から独立して認識できる「インテル」の観念を有する。よって,本件商標と引用商標は類似する商標である。

(2)  原告の所有する登録1373591号(甲52)及び登録4456379号(甲3)は,本件商標の出願時である2006年1月19日の時点において,原告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であることは明らかである。このことは,特許庁において,登録商標第4456379号防護1号が,2002年9月6日に登録され現在も有効に存続している事実から,少なくとも日本においては,需要者の間に広く認識されている商標であることは自明の事実である。

つぎに,「不正の目的」について検討する。

原告の商標「インテル」若しくは「INTEL」が,本件商標の出願時及び登録時において需要者の間に広く知られていることは,上記の通り明らかである。

原告の商標「インテル」若しくは「INTEL」は,本来的に特定の観念を持たない造語である。即ち,原告が独自に創作した標章であるから,本件商標の出願人が「インテル」を標章の一部に採択する必然的な理由はない。

原告の所有にかかる商標は,インターブランド社によるブランド価値評価において,2005年の「ベストグローバルブランド」において第5位であり,その経済価値は,35,588百万米ドル(約2兆8470億円)に相当するものと評価されている(甲56)。また,2006年の「ベストグローバルブランド」においても第5位であり,その経済価値は,32,319百万米ドル(約2兆5855億円)に相当するものと評価されている(甲57)。よって,本件商標の名義人がその商標を使用した場合は,周知商標「INTEL」及び「インテル」に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗りし,その信用・名声及び顧客吸引力を利用することが可能である。

特に,本件商標の構成中「インテル」は,①一以上の外国において,周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであり,また,②その周知な商標である「インテル」が造語よりなるものであることからすれば,原告の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認することが妥当である(特許庁商標審査基準,第三,十七,第4条第1項第19号)。

また,被告は審決において,「(本件商標は)「INTELLIGENCE:インテリジェンス(情報)」と「GROW:グロー(成長)」との組み合せに由来した一連の語として認識され,「インテル」を想起・連想することはない,と主張する。しかしながら,かかる理由は,全くもって非論理である。被告が主張するように,本件商標は「INTELLIGENCE:インテリジェンス(情報)」と「GROW:グロー(成長)」との組み合せであるならば,「インテルグロー」ではなく「インテリグロー」が正しい標記である。にもかかわらず,敢えて「インテルグロー」と表示する理由はない。需要者・取引者は「インテルグロー」の表示を「INTELLIGENCE:インテリジェンス(情報)」と「GROW:グロー(成長)」との組み合せを認識する,との被告の主張は,独善的なものに過ぎない。むしろ,「インテリグロー」と表記すべきところを敢えて「インテルグロー」と表示したのであれば,引用商標の周知著名性にただ乗りを目的とする不正な目的に基づくものと言わざるをえない。

よって,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するから,同条に該当しないとした審決の判断は違法である。

5  取消事由5(7号の適用の誤り)

本件商標の出願時及び査定登録時には,原告の商標「インテル」及び「INTEL」が我が国において周知・著名な商標として認識されるに至っていたことは明らかであり,かつ,当該周知・著名性と原告の提供に係る商品が昨今においては広く一般において使用されている状況より,本件商標の出願当時の出願人は,原告の商標「インテル」及び「INTEL」が需要者・取引者において広く認識されていたことを熟知していたというべきである。

また,本件商標の構成に含まれる「インテル」は,引用商標と同一若しくは類似であるとともに,特定の観念を持たない造語である。よって,本件商標の出願当時の出願人は,日本及び外国において広く認識されている引用商標の存在を知って本件商標を出願したものと優に推認できるものである。

よって,本件商標の名義人は,海外において広く認識されている引用商標を知り,同商標を一部に取り込んだ商標を出願して登録を受けたものと考えることが自然である。

ところで,商標法の目的が,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護すること」(商標法1条)にあることに照らして,同法による商標の保護が,産業の健全な発達及び需要者の利益を損なうようなものであってはならず,同法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗」も,このような観点から解すべきであって,商標の使用が,社会の一般的倫理的観念に反するような場合や,それが,直接に,又は商取引の秩序を乱すことにより,社会公共の利益を害する場合においても,当該商標は同号に該当するものとして,登録を受けられないものと解することが妥当である。

また,海外において使用されている商標について,日本では商標登録されていないことを奇貨として,その商標の使用者に告げることなく,当該商標を又はこれに類似する商標を出願し,登録を得ることは,国際商道徳に反するものであって,公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく,国際信義に反し公の秩序を害するものであることは明らかであり,そのような商標については商標法4条1項7号に該当するものとして,登録を受けられないものと解することが妥当である。

これらを本件についてみるに,本件商標の登録を認めることは,高い著名性を有する引用商標「インテル」及び「INTEL」の世界的な名声,顧客吸引力へのただ乗り(フリーライド)を是認するものであり,また,原告と無関係の被告が,上記の通り「インテル」部分のみが識別標識として認識される本件商標を使用することは,原告の著名商標の出所表示力及び顧客吸引力の稀釈化(ダイリューション)を招来するものである。したがって,本件商標の登録は,商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものであり,公正な競業秩序を乱し,ひいては国際信義に反するものであって,公の秩序を害するおそれがあり,商標法4条1項7号に該当し無効とされるべきものである。

第4被告の反論

1  取消事由1(8号の適用の誤り)に対して

本件商標は,物理的に原告の略称「インテル」を包含するものの,本件商標は,同一の書体,大きさ,等間隔の標準文字が一連一体に表示され,全体で7文字と冗長でない構成の造語であることからも,全体として識別力を発揮して一連一体に「インテルグロー」の称呼のみを生じるため,本件商標中に原告の略称「インテル」を単に物理的に包含しているに過ぎず,その「インテル」部分は「インテルグロー」の文字列に埋没し,「インテル」が原告の略称として客観的に把握されず,本件商標からは原告の略称「インテル」が想起・連想されることはなく,原告の人格的利益を侵害するおそれはない。

すなわち,「インテル」が原告を示すものとして日本国内において周知・著名であることを前提としても,一連一体の造語である本件商標からは原告の略称「インテル」が想起・連想されず,原告の人格的利益を侵害するおそれはない。

このことは,原告の略称「インテル」のもととなる「intel」の文字を含む単語が,「intelligent」や「intellectual」等の言葉として我が国でも親しまれ,「intel」又は「インテル」を語頭に含む商標が原告と関係なく多数採択され,登録されている事実からも窺い知ることができ(乙1~15),本件商標が原告の人格的利益を侵害するおそれはない。

また,原告は,原告所有の防護標章登録の事実を挙げ,「INTEL」から生じる称呼「インテル」を使用すると混同を生ずるおそれがあるとしているが,本件商標は一連にかつ一気に称呼するものであって,本件商標と「INTEL」から生じる称呼「インテル」とを混同することはない。

したがって,本件商標中の「インテル」部分が原告の著名な略称である点を考慮しても,本件商標は原告の著名な略称を含む商標ではない。

また,本件商標は,同形・同大・同間隔の文字列で一連に表わされており,このような構成において殊更に分離・分解して,後半部の「グロー」を省略して,前半部の「インテル」の文字部分のみに着目して商取引に当たることはなく,本件商標はその構成全体を一体不可分と認識され,全体としてよどみなく一連に「インテルグロー」と称呼され,その称呼のみを生じるとみるのが相当である。

また,本件商標は,「INTELLIGENCE:インテリジェンス(情報)」の“INTEL”と,「GROW:グロー(成長)」との組み合わせに由来した一連の造語(乙16)であるのに対し,原告の略称「インテル」を示すもととなる原告の商標「intel」は,「integrated:インテグレイティッド(集積された)」の“int”と,「electronics:エレクトロニクス(電子機器)」の“el”との組み合わせに由来した一連の造語(甲13)であり,かかる事実を十分に認識することが可能である需要者・取引者が,本件商標から,原告の略称「インテル」を想起看取することは考えにくい。

以上より,本件商標は,他人(原告)の著名な略称「インテル」を含む商標といえないから,商標法4条1項8号に該当せず,審決の理由に誤りはない。

2  取消事由2(11号の適用の誤り)に対して

本件商標は,標準文字の同形・同大・同間隔の文字列で構成されているため,本件商標に物理的に含まれる「インテル」部分が原告の著名な略称であっても,本件商標は外観上一体として把握されるとみるのが自然であり,これを「インテル」と「グロー」とに分離して観察することは取引上不自然であり,本件商標は「インテルグロー」とのみ称呼される。そのため,類否判断手法に誤りはない。

このような一連一体で分離不可能な本件商標と原告が所有する登録商標「インテル」とは,称呼上,外観上,非類似である。また,両商標は特定の観念を生じないから,観念上比較することができない。

そうすると,本件商標からは「インテルグロー」全体の称呼は生じるが,「インテル」のみの称呼は生じないというべきであるから,本件商標と原告が所有する登録商標とは,外観,称呼及び観念いずれの点においても相紛れるおそれのない,互いに類似しない商標である。

そもそも,「インテル」との略称は,原告の略称以外にも,イタリアのサッカーチーム「Internazionale Milano(インターナショナル・ミラノ)の「Internazionale」からとった「インテル」も有名であり,「インテル」の語が一義的に原告を示唆するわけではなく,商標の文字列の中に「インテル」の文字を含む商標が原告に結びつくかのような主張は妥当なものとはいえない。

3  取消事由3(15号の適用の誤り)に対して

前述のとおり,本件商標と原告の登録商標は,非類似であり,混同のおそれはなく,甲13~51によれば,原告の登録商標は,本件指定役務とは何ら関連性のない商品である半導体・コンピュータ関連においての出所表示として使用されていることは明らかである。

本件商標を使用する「合成建築専用材料」「建設工事」を含む本件商標の指定商品及び役務と引用商標に係る分野の商品とは,その需要者,用途等において関連性は薄く,本件商標が,原告会社に関係したものと消費者が混同することはあり得ない。

また,乙23に示すように,インターネットによる「インテルグロー」の検索の結果において,検索されるのは,本件商標所有者の被告に関連するサイトであり,原告略称と混同することはない。

さらに,本件商標のうち「グロー」の文字及び該文字の有無が外観及び称呼全体に与える影響は大きく,「インテルグロー」と「インテル」とは全体の語調・語感が異なり,需要者・取引者は両者を十分に区別することができ,他に両者間に誤認混同を生じる事由を認めることはできない。

以上より,本件商標は,原告が所有する登録商標「インテル」と混同を生ずるおそれはないから,商標法4条1項15号に該当せず,審決の理由に誤りはない。

4  取消事由4(19号の適用の誤り)に対して

前述のとおり,本件商標から引用商標「インテル」を独立して認識できず,本件商標と引用商標は非類似である。また,本件商標はその語頭が英単語の「intelligence」に直接由来する,「インテル」を標章の一部に採択するに至った一連一体の造語であって(乙16),原告の略称や引用商標「インテル」よりなるものではなく,インテルの名に乗じて不正使用している事実はない。

以上より,本件商標は,商標法4条1項19号に該当せず,審決の理由に誤りはない。

5  取消事由5(7号の適用の誤り)に対して

本件においては「インテル」ではなく,「インテルグロー」が登録商標となっているのであり,その構成自体が矯激,卑猥及び差別的な印象を与えるような文字からなるものでなく,これをその指定商品・役務について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものでもないし,国際信義上何ら問題なく,乙20に示すとおり,本件商標と「インテル」は別のものとして扱われており,出所表示力及び顧客吸引力の稀釈化を招くものではない。

よって,本件商標は,商標法4条1項7号に該当せず,審決の理由に誤りはない。

第5当裁判所の判断

1  取消事由1(8号の適用の誤り)について

原告の略称である「インテル」が,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)の取引者・需要者を始めとして、相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたことは,審決認定のとおりである(甲13~18,20~51)。

これに対し,本件商標は,「インテルグロー」の片仮名を標準文字で同書,同大,等間隔に書され外観視覚上極めてまとまりよく一体に表され,これより生ずると認められる「インテルグロー」の称呼も冗長でなく無理なく一気一連に称呼し得るものであるから,一体不可分の造語として理解されるとみるのが相当である。

したがって,本件商標は,その構成文字中に「インテル」の文字を有するけれども,一体不可分のものとして認識されるものであるから,「インテル」の文字は,本件商標全体の中に埋没していて,それのみが独立して把握されるものではない。したがって,本件商標は,原告を想起させるものではなく,8号の「他人の略称を含む商標」には当たらないとした審決の判断に誤りはない。

原告は,表示「インテル」又は「INTEL」が原告の略称として著名であるから,一般世人は本件商標から原告の著名な略称である「インテル」又は「INTEL」を容易に想起すると主張するけれども,集積回路又は半導体以外の商品分野において,表示「インテル」又は「INTEL」が原告の略称として著名であるとは認められない。防護標章登録の事実から,当該標章が著名であることを推認することもできない。

原告はまた,本件商標における「グロー」が「成長する」を意味する英単語として一般人になじみの深い語であることをもって,「インテル」の部分を「グロー」と分離して認識するというが,「成長する」に対応する英単語“grow”の発音が「グロウ」であることは一般人にとって常識であって(甲55),後記のとおり,被告が「グロー」に「成長」の意味を込めたとしても,「インテルグロー」から「インテル」が「グロウ」すると認識するものとは,一般的には推測しにくい。いずれにしても,「インテルグロー」が一気一連に称呼されるものであることは上記認定のとおりである。

本件商標が8号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由1には理由がない。

2  取消事由2(11号の適用の誤り)について

(1)  本件商標は,「インテルグロー」の片仮名を標準文字で同書,同大,等間隔に書され外観視覚上極めてまとまりよく一体に表されているものである。

また,本件商標は,これより生ずると認められる「インテルグロー」の称呼も冗長でなく無理なく一気一連に称呼し得るものである。なお,乙16には,本件商標と同一の構成をもつ被告の名称について「より快適な住空間づくりと情報(INTELLIGENCE:インテリジェンス)の提供により,お客様の満足を喜びと感じ,企業として成長(GROW:グロー)していこう」との「真心をこめた」旨の記載があるものの,本件商標の構成態様だけからは,そのような意義を見て取ることはできない(上記1の説示参照)。

そうすると,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分の造語として認識し把握されるとみるのが自然であり,その構成文字全体に相応し一連して「インテルグロー」の称呼を生じさせ,特段の観念を生じない。

原告は,本件商標は原告の著名な略称である「インテル」を含むから,需要者・取引者が本件商標の「インテル」の構成部分を分離して観察することは,取引上不自然ではなく,本件商標の構成部分の一部である「インテル」が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,本件商標からは「インテル」の称呼を生じ,「インテル社が成長する」「インテルの製品が発展する」の観念を生じると主張する。

しかし,本件商標中の「グロー」については取消事由1について判断した説示のとおりであり,本件商標は標準文字の片仮名文字をもってまとまりよく一体に表されているもので,上記のように一体不可分の語としてみるべきであるから,「インテル」が原告の著名な略称であることを理由として,一般需要者及び取引者が,本件商標を「インテル」と「グロー」に分離観察するものと認めることはできない。

(2)  他方,引用商標は,単独の「INTEL」又は「インテル」の文字よりなるものか,特徴のある字体で「INTEL」の欧文字を顕著に表わし,その周りを切れ目のある傾いた楕円で囲んでなる構成のものであるから,引用商標からは,その構成各文字に相応して「インテル」の称呼を生じ,特段の観念を生じない。

(3)  本件商標と引用商標との対比

本件商標より一体不可分に生ずる「インテルグロー」の称呼と引用商標より生ずる「インテル」の称呼とは,「インテル」の部分において共通するものの,構成音数若しくは音構成において相当の差異を有するものであるから,明確に聴別することができ,本件商標と引用商標とは,称呼上,明らかに区別し得るものである。

また,本件商標と引用商標とは,外観上,判然と区別し得るものであり,また,いずれも特段の観念を生じないことは上記(1),(2)のとおりであって,観念において共通するところがない。

そうすると,本件商標と引用商標とは,類似するものということはできない。

指定商品,役務の類否について判断するまでもなく,本件商標は11号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由2には理由がない。

3  取消事由3(15号の適用の誤り)について

(1)  本件商標と引用商標とが非類似であることは上記1で判示したとおりであるが,引用商標に係る商品の取引実態についてみる。

甲2~54,56,57によれば,原告は,半導体・集積回路等の世界最大の製造販売業者であって,その略称でもある商標「インテル」や「INTEL」が,半導体・集積回路等の取引者・需要者の間では著名であり,他方,原告の業務に係る商品を組み込んだパソコン,サーバや,それらの広告に「intel inside」ロゴを表示するマーケティング手法によって,一般消費者へも認知度を高めており,本件商標の登録出願時において既に,上記商標が半導体・集積回路等の分野での原告商標であるものとして相当に広い範囲にわたり知られるに至っていたことを認めることができる。

しかし,原告の業務に係る商品(半導体・集積回路等)は,電子機器の部品であり,ブランド構築の難易度が高い業界に属し,「intel inside」プログラム等のマーケティング的努力によって,商標「インテル」,「INTEL」が,半導体・集積回路等や,パソコン,サーバの取引分野において,これら商標のブランド力を浸透させるのに成功したことは優に認めることができるものの(甲49など),これらの取引分野を超えて,著名となっていることまで認めるに足りる証拠はない。原告が住宅設備機器・建材商品の販売・施工を行っているとは認められず,原告主張の防護標章登録の事実からは,これら商標が防護標章登録の商品,役務の分野において著名となっていることを推認することはできない。

(2) 本件商標の指定商品又は役務は,原告の上記商標「インテル」,「INTEL」が使用して取引される商品又は役務と異なり,商標「インテル」,「INTEL」が,半導体・集積回路等や,パソコン,サーバ以外の取引分野においても著名であるとは認められない。そして,本件商標は前記のとおり「インテルグロー」と一連に称呼されるものであり,イタリアのサッカーチーム「Internazionale Milano(インターナショナル・ミラノ)が我が国において「インテル」の略称で有名であることは当裁判所にも顕著であり,我が国における一般消費者がパソコン,サーバ以外の取引分野において「インテル」の音を聞いたときに,原告の商標「インテル」,「INTEL」を想起すると限らないものと認められる。

これらを合わせ考慮すると,本件商標が指定商品又は役務に使用されることによって,原告又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあるとは認められない。

(3)  本件商標の取引実態についてみても,被告は「株式会社インテルグロー」の商号を有し,本件商標を使用して,住宅設備機器・建材商品の販売・施工を行う,1956年設立の株式会社であり,従業員は準社員を含め136名,主たる業務は,住宅設備機器(便器・水栓金具等)・配管資材・各種タイル・石材の販売,タイル工事の施工・付帯サービス,住設工事(システムバス・システムキッチン等)の施工管理・付帯サービスである。被告は,建築工事業・大工工事業・管工事業・タイル,れんが,ブロック工事業,内装仕上工事業の国土交通大臣許可を有し,一級建築士2名,二級建築士2名,一級建築施工管理技士1名,二級建築施工管理技士3名,二級管工事施工管理技士15名,インテリアコーディネーター3名,キッチンスペシャリスト7名,建設業経理士1級2名,建設業経理士2級1名,福祉住環境コーディネーター2級18名,浄化槽設備士4名の有資格者を擁している。その取扱工事は,湿式タイル工事,乾式タイル工事,ユニットバスルーム工事,システムトイレ工事,空調機器・換気扇工事,浄化槽・水処理施設工事,システムキッチン工事,ディスポーザ取付工事,フローリング工事,パイル工事,軒天工事,内装仕上工事,外部仕上工事,屋根工事,金属製建具工事,外構工事,ガーデニング工事,太陽光発電システム,カーテン工事,取扱商品は,外装用建材,住宅内部造作材,床材内部造作材,壁材,床暖房,暖炉,屋根材,外構材,衛生陶器・水洗金具,システムトイレ,洗面化粧台,ユニットバスルーム,サウナ,システムキッチン,ガス・石油給湯器,電気温水器,空調機器・換気扇,高架水槽,給水加圧装置,浄化槽・水処理施設,配管パック,水道集中検針装置,業務用生ごみ処理装置,電設資材,上下水道配管資材,建設設備配管資材,プラント配管資材,内外装タイル,石材,天然大理石・人造石,エクステリア,インターロッキング,ガラスブロック,各種れんが,電動工具,タイル施工材料・接着剤・工具,珪藻土仕上材,内外装仕上材,セメントである(甲1の1,2,甲60)。

他方,被告が,半導体・集積回路等の製造販売を行っているとは認められない。

(4)  したがって,本件商標は,15号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由3には理由がない。

4  取消事由4(19号の適用の誤り)について

本件商標が引用商標と類似しないこと,原告の商標「インテル」,「INTEL」が,半導体・集積回路等や,パソコン,サーバ以外の取引分野においても著名であるとは認められないこと,本件商標が指定商品又は役務に使用されることによって,原告又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあるとは認められないことは,上記のとおりである。したがって,本件商標の使用により,商標「インテル」若しくは「INTEL」に化体した信用,名声,顧客吸引力等を毀損させるおそれがあるとは認められず,本件商標が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって登録されたものということはできない。

したがって,本件商標は,19号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由4には理由がない。

5  取消事由5(7号の適用の誤り)について

本件商標は,その構成文字中に「インテル」の文字を有するけれども,「インテルグロー」と一体不可分のものとして認識されるものであるから,「インテル」の文字は,本件商標全体の中に埋没して,それのみが独立して把握されるものではなく,本件商標は,原告の商標「インテル」又は「INTEL」を想起させるものではない。他に,本件商標を指定商品・指定役務に使用することが公の秩序を乱すこととなる等の事情は認められない。

したがって,本件商標は,7号に違反して登録されたものということはできないとの審決の判断に誤りはなく,取消事由5には理由がない。

第6結論

以上によれば,原告主張の取消事由にはいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 池下朗 )

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