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知財高等裁判所 平成25年(行ケ)10025号 判決 2013年6月20日

原告

株式会社ナビ

同訴訟代理人弁護士

中村眞一

粟谷しのぶ

山崎岳人

被告

株式会社ウインライト

同訴訟代理人弁護士

原秋彦

中川直政

同 弁理士

原島典孝

板垣忠文

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

特許庁が取消2011-300681号事件について平成24年12月18日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

本件は,原告が,後記1の原告の本件商標に係る登録商標に対する不使用を理由とする当該登録の取消しを求める被告の後記2の本件審判請求について,特許庁が同請求を認めた別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

1  本件商標

原告は,平成15年10月31日,「JanNavi」の欧文字と「ジャンナビ」の片仮名文字を二段に横書きしてなる商標(以下「本件商標」という。)について,第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,硬貨作動式機械用の始動装置,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」,第28類「マージャン用具,硬貨投入式麻雀卓」及び第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,麻雀用具の貸与,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」を指定商品又は指定役務として,登録出願をし,平成16年9月17日,設定登録を受けた(登録第4802600号商標。甲69,70)

2  特許庁における手続の経緯

(1)  被告は,平成23年7月19日,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標を指定役務中第41類「麻雀用具の貸与」(以下「本件指定役務」という。)について使用した事実がないと主張して,取消審判を請求し,当該請求は同年8月2日に登録された。

(2)  特許庁は,これを取消2011-300681号事件として審理し,平成24年12月18日,「本件商標の指定役務中,本件指定役務については,その登録は取り消す。」旨の本件審決をし,同月28日にその謄本が原告に送達された。

3  本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,要するに,原告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件指定役務について,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められないから,本件商標の登録は,商標法50条の規定により,本件指定役務について取り消すべきである,というものである。

4  取消事由

本件商標の不使用に係る判断の誤り

第3当事者の主張

〔原告の主張〕

1  本件商標を付した麻雀台の存在について

(1) 本件審決は,本件商標を付した麻雀台が要証期間(平成20年8月2日から平成23年8月1日まで。以下「本件要証期間」という。)に存在した事実を裏付けるものである原告のホームページ(甲4)について,平成23年4月11日に開設されたものと認めることはできないと判断した。

しかし,原告は,平成23年4月8日にホームページのためにドメインを取得し,同月11日には,あらかじめ制作していたWebデータを用いて,ホームページを開設しており,その事実は, A の陳述書(甲38,43)によって裏付けられている。

なお,本件審決は, A が原告と密接な関係にある人物であることをもって, A の陳述書には信用性が認められないと判断した。

しかし, A は,平成23年4月9日から同年5月31日までの間,原告の代表取締役であり,同年4月当時,ホームページを制作,開設した当事者でもある。その当時, A と原告が密接な関係にあったことは当然であり,かかる事実をもって,同人の陳述の信用性が否定されるということにはならない。

また,本件審決は,株式会社ジョイスの麻雀台「パイリーダー」と原告の麻雀台「ジャンナビ」との関係を説明する A の陳述書(甲43)について,「ジャンナビJN02 手打ち台」なる製品名で平成23年4月から自社のホームページに手打ち式の麻雀台を掲載していたとの記載がある一方で,同じような麻雀台「L」を1年後(平成24年4月)に完成させたとの記載もあるなど,不自然な記載が散見されるとか,平成23年6月20日に譲り受けたとする「K」の麻雀台の下部には,その説明と相違して,「平成24年6月20日」との記載が見られるなどとして,上記陳述書をもって,本件要証期間に本件商標を付した麻雀台が存在したと認めることはできないと判断した。

しかし,上記陳述書中の麻雀台「L」の完成に係る「平成24年4月」との記載は,「平成23年4月」の,麻雀台「K」の譲り受けに係る「平成24年6月20日」との記載は,「平成23年6月20日」の誤記であるから,上記陳述書の内容は,時系列において不自然なものではない。

(2) 本件審決は,本件商標を付した麻雀台が存在したことの証拠となるべき写真がないと指摘した。

しかし,有限会社LSコミュニケーションズ(以下「LSコミュニケーションズ」という。)のアミューズメント事業部長である B の陳述書(甲42)には,概略,「平成23年6月3日には,原告との間で,ソフトウェア製品の販売に関する契約に合意し,旧車二輪専門店BANBAN(以下「BANBAN」という。)に対し,ソフトウェアを販売しました。BANBANのホームページには,平成24年6月から麻雀ゲームジャンナビが掲載されています。さらに,同月6日には,原告との間で販売代理店契約を結び,全自動の麻雀台「ジャンナビ」を麻雀店ファーストワン(以下「ファーストワン」という。)に販売した。」旨の記載があるところ,BANBANのホームページに麻雀ゲームジャンナビが掲載されたのは,「平成23年6月」の誤記である。したがって,LSコミュニケーションズがBANBANにソフトを販売し,BANBANがこれをホームページに掲載をしたのは平成23年6月であり,同社がファーストワンに全自動式麻雀台を販売したのも同月6日であって,これらの販売は,本件要証期間に行われたものである。そして,上記陳述書に添付された写真は,本件商標を付した麻雀台の存在を裏付けるものである。

(3) 以上のとおり,本件要証期間に本件商標を付した麻雀台は存在していたものである。

2  秋葉麻雀同好会との取引について

(1) 本件審決は,原告が平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会に本件商標を付した麻雀台を貸与したことを裏付ける証拠である物品受領書(甲7の 1 枚目上段)について,同物品受領書には受領者の住所の記載がないとして,これのみをもって同物品受領書に記載された取引が行われたことを認めることはできないと判断した。

しかし,上記物品受領書に受領者の住所の記載がないのは,受領者の負担を軽減するため,受領者からはサインのみをもらったためであり,住所の記載がないという事実だけをもって,同物品受領書の信用性を否定することはできない。そして,同物品受領書の品名欄には,「ジャンナビ手打ち台 JN02」と,金額欄には「10500」と,備考欄には「レンタル代として」とそれぞれ記載されており,これらの記載は,平成23年4月28日に原告が秋葉麻雀同好会に手打ち式麻雀台を貸与したことを裏付けるものである。

(2) 本件審決は,「麻雀台「ジャンナビ」は,平成23年4月28日,秋葉麻雀同好会の C に貸し付けました。」と記載された A の陳述書(甲38)について,その陳述を裏付ける具体的な証拠がないと判断した。

しかし,上記陳述書の陳述内容を裏付けるものとして,上記物品受領書や領収証(控)(甲54)等が存在する。また, A の上記陳述書は,当該陳述書の信用性が否定されない限り,それ自体として直接証拠になるべきものである。

(3) 以上によれば,原告が,平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会に本件商標を付した麻雀台を貸与したことが認められるべきである。

3  D との取引について

(1) 本件審決は,原告が平成23年6月20日に D に本件商標を付した麻雀台を貸与したことを裏付ける証拠である物品受領書(甲7の 1 枚目下段)について,同物品受領書には受領者の住所の記載がないとして,これのみをもって同物品受領書に記載された取引が行われたことを認めることはできないと判断した。

しかし,前記2(1)と同様に,上記物品受領書に受領者の住所の記載がないのは,受領者の負担を軽減するため,受領者からはサインのみをもらったためであり,住所の記載がないという事実だけをもって,当該物品受領書の信用性を否定することはできない。そして,同物品受領書の品名欄には,「ジャンナビ麻雀台 JN01(全自動卓)」と,金額欄には「21000」と,備考欄には「レンタル代として」とそれぞれ記載されており,これらの記載は,平成23年6月20日に原告が D に麻雀台を貸与したことを裏付けるものである。

(2) 本件審決は,「私は,平成23年6月20日に確かに原告より,「ジャンナビ」という商標の付いた全自動式の麻雀台1台を21000円で借りました。」と記載された D の陳述書(甲20)について,同陳述書には原告と D との間の貸与に関する経緯が陳述されていないとして,その陳述は真実ではないと認定した。

しかし,虚偽陳述を推認させる事実が存在しないにもかかわらず,ある事実経過についての陳述がないという理由のみで陳述の信用性を否定することは認められるべきではない。

また,本件審決は, D の陳述書(甲20)における同人の署名と,物品受領書(甲7の1枚目下段)における同人の署名では,筆跡が異なると指摘する。

しかし,上記物品受領書の署名は,走り書きでサインされたものであり,陳述書(甲20)における署名と筆跡が若干異なることは,同一人物による署名であっても当然にあり得ることである。

(3) 本件審決は,原告が D 宛てに作成した領収書(控)(甲55)と物品受領書(甲7の1枚目下段)では,伝票番号の相違があること,上記領収書(控)はパソコンで作成されているのに,上記物品受領書は手書きで作成されていること,上記領収書(控)は,口頭審理における審尋において,原告が,他に上記物品受領書に関する書類はない旨主張した後に提出されたものであることなどからすると,上記領収書(控)の作成過程や上記物品受領書の信憑性については,疑問を抱かざるを得ないと判断した。

しかし,金銭に係る領収書と物品受領書はそれぞれ異なる書類であり,それぞれによって伝票番号の相違があることは当然にあり得ることである。

(4) 以上によれば,原告が,平成23年6月20日に D に本件商標を付した麻雀台を貸与したことが認められるべきである。

4  LSコミュニケーションズとの取引について

(1) 本件審決は,原告が平成23年6月20日及び同年7月20日にLSコミュニケーションズに本件商標を付した麻雀台を貸与したことを裏付ける証拠である両者間の販売代理店契約書(甲32)について,同契約書に添付された取扱販売物目録の表示が,販売物の表示ではなく,本件商標の指定役務と同一の表示であることをもって,同契約書の作成経緯については疑義を抱かざるを得ないと判断した。

しかし,LSコミュニケーションズが原告の代理店として行う業務の内容は,商品の販売のみならず,役務の提供も含まれるのであり,その内容を明確にするために,あえて指定役務の表現を契約書に用いることはあり得ることであり,かかる記載が,販売代理店契約書自体の信用性を否定するような不合理なものということはできない。

(2) 本件審決は,原告とLSコミュニケーションズとの間の取引に係る領収書(控)・入金伝票(甲44,46)に関し,原告のLSコミュニケーションズに対するレンタル料は月額5万円とされ,原告のホームページで提示しているレンタル料(2万円)の2.5倍もの高額であるとして,このような取引があったこと自体に疑義があると判断した。

しかし,原告は,当初,LSコミュニケーションズに対し,麻雀台を売却することを予定していたが,LSコミュニケーションズから,事業が軌道に乗るまでは,レンタルとして月々のレンタル料を支払い,最終的に売却代金の精算をするという形にしてほしいとの要請があった。そこで,原告は,最終的には売却として精算することを前提に,月額5万円というレンタル料で特別にLSコミュニケーションズに貸与したのである。

(3) 以上によれば,原告が,平成23年6月20日及び同年7月20日にLSコミュニケーションズに本件商標を付した麻雀台を貸与したことが認められるべきである。

5  よって,本件商標の不使用に係る本件審決の判断は誤りである。

〔被告の主張〕

1  本件商標を付した麻雀台の存在について

(1) 原告のいう麻雀台に本件商標が付されていたことは,客観的な証拠により立証されておらず,また,その販売を行った主体が原告であるという証拠もない。

(2) 原告は,平成23年4月11日に開設された原告のホームページに麻雀台が掲載されていた旨主張する。

しかし,原告のホームページの公開時期を立証する客観的な証拠はない。ドメインを取得しても,コンテンツを掲載していないウェブサイトはいくらでもあり,ドメイン取得の事実を示すのみでは,ホームページの運用開始日が証明されるものではない。

かえって,ホームページの「沿革」欄には,平成16年9月に「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」と記載されているが,同年7月1日から平成18年5月24日まで,原告は,休眠会社の状態にあったこと, A は,被告に対する平成19年4月10日付け通知書において,原告がネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供を行っていないことを認めていること,ドメインの取得時期は, A が原告の代表取締役に就任した時期とほぼ一致していることなどからすると,原告のホームページは,本件審判請求がされた後に,本件商標の使用の体裁を取り繕うために制作されたものであることが強く推認される。

(3) 原告は, B の陳述書(甲42)に記載されている麻雀台の販売日の記載は誤記であり,正しい記載に基づけば,LSコミュニケーションズはファーストワンに対し,「平成23年6月6日」に麻雀台を販売したものである旨主張する。

しかし,原告がLSコミュニケーションズに麻雀台を販売したことを裏付ける客観的な証拠はなく,そのような事実があった旨述べる B の陳述書の内容には,信憑性がないといわざるを得ない。

2  秋葉麻雀同好会との取引について

原告は,平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会なる団体に対し,麻雀台を貸与した旨主張する。

しかし,原告がそのような貸与があったことの裏付けとして提出した証拠は,次のとおり,いずれも信憑性のないものである。

(1) 電子メール(甲60~66)について

原告は,秋葉麻雀同好会等の取引先との間の電子メールの写しと称する書面(甲60~66)を提出しているが,これらの書面は,原告において,いつでも単独で作成できるものであり,証拠としての価値を見いだすことはできない。

しかも,甲66の中段辺りのメールヘッダでは,金曜日(Friday)が「Fliday」と間違って綴られているが,メールヘッダは,本来,コンピュータによって自動的に付される記載であるから,スペルミスなど起こり得ないはずであり,この書面がメールヘッダ部分を含めて原告によって捏造されたものであるのは明らかである。そのほか,時刻表示において24時間表示と午前・午後表示が混在していたり,月を示す英語の先頭文字が小文字で表記されるなど,コンピュータによって自動的に生成されるメールヘッダの記載としては,あり得ない記載がある。

したがって,上記電子メールは,いずれも信用することができないものである。

(2) 物品受領書(甲7の1枚目上段)及び領収証(控)(甲54,67)について

前記(1)のとおり,麻雀台の貸付の裏付けとして提出された,秋葉麻雀同好会と原告との間でやり取りされたというメールは,変造されたものであり,当該貸付行為自体が存在しないことを強く推認させるものであるから,そのようなメールの内容に沿う物品受領書(甲7の1枚目上段)や領収証(控)(甲54,67)もまた,およそ信用することはできないものである。

3   D との取引について

原告は,平成23年6月20日に D なる人物に対し麻雀台を貸与した旨主張する。しかし,原告がそのような貸与があったことの裏付けとして提出した証拠は,次のとおり,いずれも信憑性のないものである。

(1) 電子メール(甲61)について

前記2(1)のとおり,原告が麻雀台の貸与を立証するものと称して提出する電子メールには,明らかに変造されたものが多数含まれており,全体として信用することができないものである。したがって,原告と D との間でやり取りされたという電子メール(甲61)もまた,信用することはできない。

(2) 物品受領書(甲7の1枚目下段), D の陳述書(甲20)及び領収書(控)(甲55)について

前記のとおり,麻雀台の貸与の裏付けとして提出された, D と原告との間でやり取りされたというメールは,信用することができず,当該貸付行為自体が存在しないことを強く推認させるものであるから,そのようなメールの内容に沿う物品受領書(甲7の1枚目下段), D の陳述書(甲20)及び領収書(控)(甲55)もまた,およそ信用することができない。

4  LSコミュニケーションズとの取引について

原告は,平成23年6月20日及び同年7月20日にLSコミュニケーションズに対し,麻雀台を貸与した旨主張する。

しかし,原告がそのような貸与があったことの裏付けとして提出した証拠は,次のとおり,いずれも信憑性のないものである。

(1) 電子メール(甲62~66)について

前記2(1)のとおり,原告が麻雀台の貸与を立証するものと称して提出する電子メールは,変造された内容を包含しており,全体として信用することができないものである。

(2) 領収書(控)・入金伝票(甲44,46),受領書(甲45,47)について

LSコミュニケーションズに対する麻雀台の貸付を裏付けるものとして原告が提出した電子メールは,およそ信用することができず,当該貸与行為自体が存在しないことを強く推認させるものであるから,そのようなメールの内容に沿う上記領収書(控)・入金伝票(甲44,46),受領書(甲45,47)もまた,およそ信用することはできない。

また,これらの書面によれば,貸与されたジャンナビ JN01 の1か月当たりの賃料は5万円であるところ,原告は,自身のホームページでは,当該麻雀台のレンタル料を1か月当たり2万円と表示しているから,原告は,販売代理店契約を締結している取引先(LSコミュニケーションズ)との間ではホームページに記載している料金の2.5倍の金額でレンタルするという異常な取引をしていることになる。

これに対し,原告は,LSコミュニケーションズから,事業が軌道に乗るまでは,麻雀台のレンタルということにして月々のレンタル料を支払い,最終的に売却代金を精算する形にしてほしいとの要請があったと主張する。

しかし,当該取引の根拠であると原告が主張する甲32の契約は,「販売代理店契約」であって,同契約が予定しているのは,LSコミュニケーションズが原告から購入,調達した製品を第三者に対して再販売する独占的権利を付与されるという取引である。そうだとすると,LSコミュニケーションズから原告に対し,販売ではなく,上記のような要望があったという主張の趣旨は不明であるとしかいいようがなく,また,かかる要望は,甲32の契約における取引の目的である販売代理店なる地位の付与からは大きくかけ離れているものであって,上記弁解が真実であるとはおよそ考え難い。

(3) 販売代理店契約書(甲32)について

甲32は,LSコミュニケーションズが「本件販売物を販売」することを内容とするものであるところ(第2条),「本件販売物」の内容を列挙した別紙「取り扱い販売物目録」中の3ないし12は,本件商標の第41類の指定役務全般を引き写したものにすぎず,意味不明の記載である。

5  よって,本件商標の不使用に係る本件審決の判断に誤りはない。

第4当裁判所の判断

1  本件商標を付した麻雀台の存在について

(1) 原告は,本件商標を付した麻雀台が本件要証期間に存在した事実を裏付けるものである原告のホームページは平成23年4月11日に開設されており,その事実は, A の陳述書(甲38,43)によって裏付けられていると主張する。

確かに,甲38の A の陳述書には,原告のホームページが平成23年4月11日に開設された旨記載されているものの,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はないから,この陳述をもって,同日,原告のホームページが開設されたと認めることはできないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

なお,甲43の A の陳述書には,原告が,平成23年6月20日に株式会社ジョイスから譲渡された「パイリーダー」という麻雀台の名称を「ジャンナビ」に改め,これを麻雀台に表記した旨記載されているものの,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はないから,この陳述をもって,本件要証期間に本件商標を付した麻雀台が存在していたものと認めることはできない。

(2)  原告は, B の陳述書(甲42)における麻雀台の販売日の記載は誤記であり,正しい記載に基づけば,原告との間で麻雀台の販売代理店を締結していたLSコミュニケーションズがファーストワンに麻雀台を販売したのは,「平成23年6月6日」であるとか,同陳述書に添付された写真は,本件商標を付した麻雀台の存在を裏付けるものであるなどと主張する。

確かに, B の陳述書には,LSコミュニケーションズが麻雀台「ジャンナビ」をファーストワンに販売した旨記載され,また,そこで引用されている写真2の2には,麻雀台様の台の側面に「JANNAVI」様の文字が刻印されたプレートが貼付されていることが認められる。

しかしながら,原告も自認しているように, B の陳述書には,LSコミュニケーションズがファーストワンに麻雀台を販売したのは平成24年6月である旨記載されている以上(甲42),同陳述書の記載から,LSコミュニケーションズがファーストワンに対し,平成23年6月に麻雀台を販売したとの主張事実を認めることはできないし,仮に, B の陳述書には原告の主張するような誤記があったとしても,同人の陳述を裏付ける客観的証拠は何ら示されていないから,同人の陳述のみをもって上記主張事実を認めることもできない。

なお, B の陳述書に添付された上記写真の撮影日,撮影者,撮影場所は,いずれも明らかにされておらず,そのような写真によって,本件要証期間に本件商標が付された麻雀台が存在していたものと認めることはできない。

(3)  また,甲20の D の陳述書には,「平成23年6月20日に原告から「ジャンナビ」という商標の付いた麻雀台1台を2万1000円で借りた」旨の記載がある。

しかし,「ジャンナビ」という商標の付いた麻雀台が存在していたという D の上記陳述を裏付ける客観的証拠は何ら示されていないから,同人の陳述のみをもって,本件要証期間において,本件商標が付された麻雀台が存在していたものと認めることはできない。

(4)  以上のほかに,原告は,秋葉麻雀同好会, D 及びLSコミュニケーションズとの間でそれぞれ麻雀台の貸与があったことを立証する証拠として,物品受領書(甲7の1枚目上段及び下段),領収証(控)(甲54,67),領収書(控)(甲55),領収書(控)・入金伝票(甲44,46),受領書(甲45,47),電子メール(甲60~66)等を提出している。

しかしながら,上記各書証も,本件要証期間に本件商標が付いた麻雀台が存在していたことを示すものではなく,他にこれを認めるに足りる客観的な証拠はない。

2  以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件要証期間に日本国内において,商標権者である原告,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標を本件指定役務について使用した事実があるとは認められない。

3  結論

以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。

(裁判長裁判官 土肥章大 裁判官 大鷹一郎 裁判官 齋藤巌)

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