知財高等裁判所 平成25年(行ケ)10143号 判決 2014年3月27日
原告
日本電動式遊技機特許株式会社
訴訟代理人弁理士
平木祐輔
同
関谷三男
同
渡辺敏章
同
頭師教文
被告
株式会社三共
訴訟代理人弁理士
深見久郎
同
森田俊雄
同
中田雅彦
同
白井宏紀
同
岩井將晃
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2012-800088号事件について平成25年4月12日にした審決を取り消す。
第2前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯等
被告は,発明の名称を「スロットマシン」とする特許第4368868号(平成18年4月13日出願,平成21年9月4日設定登録。請求項の数は5。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
原告は,特許庁に対して,平成24年5月25日,本件特許を無効にすることを求めて審判の請求(無効2012-800088号事件)をした。これに対して,被告は,同年8月10日,訂正請求(訂正事項の数は11。以下「本件訂正」という。)をした。特許庁は,平成25年4月12日,本件訂正を認める,本件審判請求は成り立たない旨の審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同月23日,原告に送達された。
2 審決の概要
(1) 審決の理由は,別紙審決書写に記載のとおりで,審決はおおよそ次のとおり判断した。
すなわち,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当し,また,特許請求の範囲又は明瞭でない記載の釈明については特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,適法な訂正である。
本件訂正によって訂正された後の本件特許の請求項1に記載の発明(以下,本件訂正による訂正前の本件特許の請求項1ないし5に記載の発明を「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」といい,併せて「本件特許発明」という。また,本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1ないし5に記載の発明を「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」といい,併せて「本件訂正発明」という。)と甲1(特許第3750947号公報)に記載の発明(以下「甲1発明」という。)との間には,他の相違点とともに後記(6)のとおりの相違点10が存するところ,相違点10について容易想到とすることはできないから,本件訂正発明1は,甲1発明及び甲2ないし26に記載の技術的事項(以下,各証拠に記載の発明を証拠番号を付して「甲2発明」等という。)に基づいて容易に想到することはできない。
本件訂正によって訂正された後の本件特許に係る明細書(以下「本件訂正明細書」という。本件訂正による訂正前の本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。)及び本件訂正発明1ないし5は,特許法36条4項1号及び同条6項1号に規定する要件を満たしている。
(2) 本件特許発明
本件訂正による訂正前の本件特許の請求項1ないし5の記載(本件特許発明1ないし5)は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,
ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段と,
前記識別情報の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止操作手段と,
前記停止操作手段が操作されたときに,該停止操作手段の操作手順と前記事前決定手段の決定結果とに応じて前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段と,
通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利状態に遊技状態を制御する有利状態制御手段と,
所定の設定操作手段の操作に基づいて,前記事前決定手段により入賞表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を設定値毎に異ならせる複数種類の設定値のうちから,いずれかの設定値を選択して設定する設定値設定手段と,
前記設定値設定手段により設定された設定値を示す設定値データを含むゲームの進行を制御するためのデータを読み出し及び書き込み可能に記憶するデータ記憶手段と,
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されている前記ゲームの進行を制御するためのデータを保持する保持手段と,
前記スロットマシンの電源投入時に,前記ゲームの進行を制御するためのデータのうちの前記設定値データが適正か否かの判定を個別に行わず,前記保持手段により保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と,
前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに,ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と,
ゲームの開始操作がなされる毎に,前記データ記憶手段から前記設定値データを読み出し,該読み出した設定値データが示す設定値が前記設定値設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値データが適正であると判定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが適正ではないと判定する設定値判定手段と,
前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定されたときに,ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と,
前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても,前記設定操作手段の操作に基づいて前記設定値設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に,前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進行を可能とする不能化解除手段とを備え,
前記事前決定手段は,前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正であると判定したときに,該読み出した設定値データが示す設定値に応じた確率で当該ゲームにおいて入賞表示結果を導出させることを許容するか否かを決定するとともに,前記特定表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,前記短期有利表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,
前記有利状態制御手段は,
前記可変表示装置の表示結果として前記短期有利表示結果が導出されたときに,前記有利状態のうちで所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態に遊技状態を制御する短期有利状態制御手段と,
予め定められた長期移行条件が成立したときに,前記有利状態のうちで前記所定ゲーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続するとともに,終了までに遊技者の得られる利益が前記短期有利状態よりも大きい長期有利状態に遊技状態を制御する長期有利状態制御手段とを含み,
前記長期有利状態において前記短期有利表示結果が導出されたときに,該長期有利状態を終了させて,前記短期有利状態に遊技状態を制御し,
前記導出制御手段は,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が第一手順で操作されたときに該特定表示結果を導出させる第一手順時導出手段と,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とは異なる第二手順で操作されたときに該短期有利表示結果を導出させる第二手順時導出手段とを含み,
前記スロットマシンは,
前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報を報知する情報報知手段をさらに備える
ことを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】
前記事前決定手段は,前記有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定し,前記短期有利状態制御手段は,前記短期有利状態として前記通常遊技状態よりも前記再遊技表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を高くする再遊技高確率状態に遊技状態を制御し,
前記スロットマシンは,
前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出されるまで,該特別表示結果の導出を許容する旨の決定を持ち越させる特別決定持越手段と,
前記可変表示装置の表示結果として前記特別表示結果が導出されたときに,前記特別遊技状態に遊技状態を制御する特別遊技状態制御手段と,
前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出されなかった後,及び前記短期有利表示結果が導出された後に所定の演出を実行する演出実行手段とをさらに備え,
前記導出制御手段は,前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定が持ち越されている状態で前記再遊技表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに該特別表示結果よりも該再遊技表示結果を優先して前記可変表示装置の表示結果として導出させる再遊技優先導出手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。
【請求項3】
前記特別遊技状態に制御された後に所定の特別終了条件が成立したときに,該特別遊技状態を終了させて,前記長期有利状態に遊技状態を制御する特別遊技状態終了手段とをさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載のスロットマシン。
【請求項4】
前記事前決定手段は,
前記特別表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに該特別表示結果とも前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を許容する旨を決定するとともに,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに前記第三表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,
前記導出制御手段は,
前記特別表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて,前記停止操作手段が特別手順で操作されたときに該特別表示結果を導出させるとともに,前記停止操作手段が該特別手順とは異なる非特別手順で操作されたときに該第三表示結果を導出させる特別許容時導出手段と,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とも前記第二手順とも異なる第三手順で操作されたときに該第三表示結果を導出させる第三手順時導出手段とをさらに含み,
前記スロットマシンは,
前記長期有利状態に制御されているゲームで前記第三表示結果が導出されたときに,前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されているか否かを示す特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2または3に記載のスロットマシン。
【請求項5】
前記事前決定手段は,少なくとも前記特定表示結果として所定数の遊技用価値の付与を伴う小役表示結果の導出を許容するか否かを決定し,
前記情報報知手段は,通常遊技状態に制御されているゲームでも前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,前記所定の情報を報知し,
前記スロットマシンは,
前記可変表示装置の表示結果として前記小役表示結果が導出されたときに前記所定数の遊技用価値により実行可能なゲーム数と前記所定ゲーム数との差が1未満となる数の遊技用価値を遊技者に付与する遊技用価値付与手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスロットマシン。」
(3) 本件訂正
本件訂正の訂正事項1及び6は次のとおりである。
ア 訂正事項1
本件特許の請求項1(本件特許発明1)の「情報報知手段をさらに備える」を,
「情報報知手段をさらに備え,
前記情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報知する」と訂正する。
イ 訂正事項6
本件明細書【0009】の「情報報知手段(ステップS1007)をさらに備える」を,
「情報報知手段(ステップS1007)をさらに備え,前記情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報知する」と訂正する。
(4) 本件訂正発明
本件訂正によって訂正された後の本件特許の請求項1ないし5の記載(本件訂正発明1ないし5)は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,
ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段と,
前記識別情報の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止操作手段と,
前記停止操作手段が操作されたときに,該停止操作手段の操作手順と前記事前決定手段の決定結果とに応じて前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段と,
通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利状態に遊技状態を制御する有利状態制御手段と,
所定の設定操作手段の操作に基づいて,前記事前決定手段により入賞表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を設定値毎に異ならせる複数種類の設定値のうちから,いずれかの設定値を選択して設定する設定値設定手段と,
前記設定値設定手段により設定された設定値を示す設定値データを含むゲームの進行を制御するためのデータを読み出し及び書き込み可能に記憶するデータ記憶手段と,
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されている前記ゲームの進行を制御するためのデータを保持する保持手段と,
前記スロットマシンの電源投入時に,前記ゲームの進行を制御するためのデータのうちの前記設定値データが適正か否かの判定を個別に行わず,前記保持手段により保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段と,
前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに,ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段と,
ゲームの開始操作がなされる毎に,前記データ記憶手段から前記設定値データを読み出し,該読み出した設定値データが示す設定値が前記設定値設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値データが適正であると判定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが適正ではないと判定する設定値判定手段と,
前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定されたときに,ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段と,
前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても,前記設定操作手段の操作に基づいて前記設定値設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に,前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進行を可能とする不能化解除手段とを備え,
前記事前決定手段は,前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正であると判定したときに,該読み出した設定値データが示す設定値に応じた確率で当該ゲームにおいて入賞表示結果を導出させることを許容するか否かを決定するとともに,前記特定表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,前記短期有利表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,
前記有利状態制御手段は,
前記可変表示装置の表示結果として前記短期有利表示結果が導出されたときに,前記有利状態のうちで所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態に遊技状態を制御する短期有利状態制御手段と,
予め定められた長期移行条件が成立したときに,前記有利状態のうちで前記所定ゲーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続するとともに,終了までに遊技者の得られる利益が前記短期有利状態よりも大きい長期有利状態に遊技状態を制御する長期有利状態制御手段とを含み,
前記長期有利状態において前記短期有利表示結果が導出されたときに,該長期有利状態を終了させて,前記短期有利状態に遊技状態を制御し,
前記導出制御手段は,
記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が第一手順で操作されたときに該特定表示結果を導出させる第一手順時導出手段と,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とは異なる第二手順で操作されたときに該短期有利表示結果を導出させる第二手順時導出手段とを含み,
前記スロットマシンは,
前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報を報知する情報報知手段をさらに備え,
前記情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報知する
ことを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】
前記特定表示結果は,前記有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別表示結果を含み,
前記事前決定手段は,前記特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定し,
前記短期有利状態制御手段は,前記短期有利状態として前記通常遊技状態よりも前記再遊技表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を高くする再遊技高確率状態に遊技状態を制御し,
前記スロットマシンは,
前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出されるまで,該特別表示結果の導出を許容する旨の決定を持ち越させる特別決定持越手段と,
前記可変表示装置の表示結果として前記特別表示結果が導出されたときに,前記特別遊技状態に遊技状態を制御する特別遊技状態制御手段と,
前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定に基づいて該特別表示結果が導出されなかった後,及び前記短期有利表示結果が導出された後に所定の演出を実行する演出実行手段とをさらに備え,
前記導出制御手段は,前記特別表示結果の導出を許容する旨の決定が持ち越されている状態で前記再遊技表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに該特別表示結果よりも該再遊技表示結果を優先して前記可変表示装置の表示結果として導出させる再遊技優先導出手段をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。
【請求項3】
前記特別遊技状態に制御された後に所定の特別終了条件が成立したときに,該特別遊技状態を終了させて,前記長期有利状態に遊技状態を制御する特別遊技状態終了手段とをさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載のスロットマシン。
【請求項4】
前記特定表示結果は,前記特別表示結果とは異なる所定表示結果を含み,
前記事前決定手段は,
前記特別表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を許容する旨を決定するとともに,
前記所定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに前記第三表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,
前記導出制御手段は,
前記特別表示結果と前記短期有利表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて,前記停止操作手段が前記第一手順のうちの特別手順で操作されたときに該特別表示結果を導出させるとともに,前記停止操作手段が該特別手順とは異なる非特別手順で操作されたときに該第三表示結果を導出させる特別許容時導出手段と,
前記所定表示結果と前記短期有利表示結果と前記第三表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて,前記停止操作手段が前記第一手順のうちの所定手順で操作されたときに前記所定表示結果を導出させるとともに,前記停止操作手段が前記第一手順のうちの前記所定手順とも前記第二手順とも異なる第三手順で操作されたときに該第三表示結果を導出させる第三手順時導出手段とをさらに含み,
前記スロットマシンは,
前記長期有利状態に制御されているゲームで前記第三表示結果が導出されたときに,前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されているか否かを示す特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項2または3に記載のスロットマシン。
【請求項5】
前記特定表示結果は,特別表示結果とは異なる所定表示結果として所定数の遊技用価値の付与を伴う小役表示結果を含み,
前記事前決定手段は,少なくとも前記特定表示結果として前記小役表示結果の導出を許容するか否かを決定し,
前記情報報知手段は,通常遊技状態に制御されているゲームでも前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,前記所定の情報を報知し,
前記スロットマシンは,
前記可変表示装置の表示結果として前記小役表示結果が導出されたときに前記所定数の遊技用価値により実行可能なゲーム数と前記所定ゲーム数との差が1未満となる数の遊技用価値を遊技者に付与する遊技用価値付与手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスロットマシン。」
(5) 甲1発明
審決が認定した甲1発明は,次のとおりである。
「遊技媒体を用いて1ゲームに対して所定数の前記遊技媒体を投入することによりゲームを開始させることが可能となり,複数種類の図柄を変動表示させる図柄表示窓3に表示結果が表示されることにより1ゲームが終了し,該図柄表示窓3に表示された表示結果に応じて入賞が発生可能であるパチスロ機において,
ゲーム毎に,複数種類の表示結果のうち引込み制御を行う表示結果をいずれにするかを,スタートレバー9を操作することで出力されるスタート信号の受信を契機として抽選する主制御部100と,
前記図柄の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止ボタン部10と,
前記停止ボタン部10が操作されたときに,該停止ボタン部10の操作タイミングと前記主制御部100の決定結果とに応じて前記図柄表示窓3に表示結果を表示する前記主制御部100と,
一般遊技状態よりも遊技者にとって有利なボーナスゲーム状態に遊技状態を制御する前記主制御部100と,
電源スイッチ170c,設定変更キー,設定用キースイッチ170aの操作に基づいて,出玉率の段階設定を行う段階値1~6の中から選択された所望の設定値を選択して設定する段階設定部150と,
前記段階設定部150により設定された段階設定値を示す段階設定値データを含むゲームの進行を制御するための制御データを読み出し及び書き込み可能に記憶するRAM102と,
前記段階設定値及び段階設定値の履歴情報を記憶し,前記パチスロ機への電源供給が遮断しても電池でバックアップされるRAMを内蔵する副制御部160と,
遊技者が所定数のメダルを投入後,スタートレバー9を操作する毎に,ワークRAM領域に記憶している段階設定値のデータ読み出し,該読み出した段階設定値データが示す段階設定値が前記段階設定部150により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した段階設定値データが適正であると判定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが適正ではないと判定する前記主制御部100と,
前記主制御部100により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定されたときに,エラー処理を行わせる主制御部100と,
前記主制御部100により前記エラー処理が行われている状態において,前記段階設定部150の操作に基づいて前記段階設定部150により前記段階設定値が所定範囲の中から新たに設定されたことを条件に,該新たに設定された段階設定値を使用して変動表示ゲームの当落を決定する前記主制御部100とを備えたパチスロ機。」
(6) 相違点
審決が認定した本件訂正発明1と甲1発明との相違点は10あり,審決が認定した相違点10は次のとおりである(なお,審決の相違点1ないし9についての認定判断については当事者間に争いがない。)。
[相違点10]
本件訂正発明1の情報報知手段は「長期有利状態の残りゲーム数が所定ゲーム数以下である場合には所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には事前決定手段により特定表示結果と短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報知」するが,甲1発明では,そもそも情報報知手段が存在しない点。
第3取消事由に関する当事者の主張
1 原告の主張
(1) 訂正事項1及び訂正事項6についての訂正の可否(取消事由1)
本件訂正の訂正事項1及び訂正事項6では,本件特許発明1の「情報報知手段」に関連する訂正がされている。
本件特許発明1は,「情報報知手段」が,一定の条件の成立に基くものとされており,長期有利状態に制御されたゲームにおいて,特定表示結果と短期有利表示結果の導出が許容されている場合には,長期有利状態の最終ゲームまで所定の情報を「必ず(又は当然に)」報知するとの意味で解釈されるべきであって,所定の情報を報知する場合と報知しない場合を含むものではない。
この点,審決は,本件訂正発明1の「情報報知手段」の意義を実施例に基づいて認定し,それを前提にして本件訂正前の発明(本件特許発明1)の意義を認定する判断手法を採用しているが,誤った手法である。また,「短期有利状態」への移行は常に不利な遊技状態となるわけではなく,審決の認定は技術常識を無視するものである。
また,審決では,「所定の情報の報知」によって実現される,「特定表示結果の導出が許容されていること」の通知機能や「特定表示結果と短期有利表示結果の導出が許容されていないこと」の通知機能を無視するものであり,誤りである。
本件訂正前の発明(本件特許発明1)では,遊技者は,経過・残りゲーム数を把握していれば,「所定の情報の報知」に基づき,特定表示結果が導出されるように停止操作手段を操作することも,短期有利表示結果が導出されるように停止操作手順を操作することもでき,また,「所定の情報の報知」がなければ,特定表示結果以外の役が導出されるように停止操作手段を操作し,遊技用価値の取得(増加)を狙うこともできることとなり,技術介入性の高いものであった。これに対して,本件訂正後の発明(本件訂正発明1)は,長期有利状態の残りゲーム数が所定ゲーム数以下の場合には,報知が行われないため技術介入の関与する余地がない。
以上のとおり,本件訂正は,特許請求の範囲の実質的拡張・変更に該当するもので,これを適法であるとした審決には誤りがある。
(2) 相違点10についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)
審決は,相違点10について容易想到性を否定した。
本件特許の出願当時において,内部抽選においてリプレイに当選する確率が通常遊技状態よりも高く設定された遊技状態は,リプレイタイム(RT)と呼ばれ,広く知られていた。また,甲35(特開2006-15000号公報)及び甲36(特開2006-68443号公報)にも開示されているとおり,ボーナス終了後のRT中に解除図柄当選を報知する演出をし,所定回数を超えると表示せず,そのため,遊技者が意図的に解除図柄を回避できる技術は周知技術であった。
審決は,長期有利状態の残りゲーム数との関係で,所定の情報を報知する場合と報知しない場合を制御するとの技術思想がいずれの文献にも記載されていないとして,相違点10に係る構成が容易想到ではないとしているが,甲35及び甲36に記載されているとおり,ボーナス遊技の終了直後に開始されたRTにおいて,遊技開始から所定回数までは,解除図柄(所定の図柄)の当選を遊技者に報知し,遊技者が解除図柄の導出を意図的に回避できるようにする一方,前記所定回数を超えると,解除図柄の当選を遊技者に報知しない技術は,周知技術である。
ここで,RT最大回数があらかじめ決まっていれば,①RTの開始からのゲーム数が所定回数までは報知するが,所定回数を超えると報知しないとする技術と,②RTの残りゲーム数が所定回数より多ければ報知するが,所定回数以下であれば報知しないとする技術とは,実質的に同じ技術内容である。
さらに,本件特許の出願当時において,遊技者にとって不利な図柄の導出の可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知しないという技術思想は一般的であった。
そうすると,相違点10に係る構成とすることは,甲1発明に甲2発明及び甲3発明を組み合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術を組み合わせることにより,容易に想到することができたもので,審決の容易想到性判断には誤りがある。
(3) 記載要件についての判断誤り(取消事由3)
ア 本件特許発明1の「ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段」は,発明の詳細な説明に記載されていない。
また,本件特許発明4の「前記事前決定手段は,前記特別表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに該特別表示結果とも前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を許容する旨を決定するとともに」も,発明の詳細な説明に記載されていない。
本件明細書の図5には,当選役テーブルの記載例があるが,そのいずれにも短期有利表示結果は含まれていない。審決は,短期有利表示結果が抽選対象役に含まれていない事実を無視し,短期有利表示結果が可変表示手段に導出される図柄の1つであることのみを根拠として事前決定手段の決定対象の1つであると認定したもので誤りである。なお,この認定手法を採用するのであれば,短期有利表示結果だけでなく可変表示手段に導出され得る全ての図柄が事前決定手段における決定の対象となるべきであるが,そのような事実は本件明細書には開示も示唆もされていない。また,特別表示結果と再遊技表示結果の両方が同時当選し得る抽選対象となることを示す記載も本件明細書にはない。
イ 本件特許発明2の「前記事前決定手段は,前記有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定し」は,発明の詳細な説明に記載されていない。
審決は,この記載は,「特別表示結果」と「再遊技表示結果」が導出を許容するか否か決定される複数種類の表示結果に含まれるものであると認定するが,この記載には,前記複数種類の表示結果に,特別表示結果及び再遊技表示結果が含まれるとは記載されておらず,特別表示結果と再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定するとのみ記載するのであり,「特別表示結果と再遊技表示結果」を決定対象としていることは明らかである。
2 被告の反論
(1) 訂正事項1及び訂正事項6についての訂正の可否(取消事由1)に対して
本件明細書の【0009】,【0015】及び「情報報知手段」をサポートする実施例(図19)を参酌しても,本件訂正前の「情報報知手段」が,「前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたとき」に必ず所定の情報を報知すると限定して解釈すべき事情は存在しない。
むしろ,本件明細書の記載を参酌すれば,本件訂正前の「情報報知手段」の概念は,ある条件が成立したときに必ず報知するものと,ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したときに初めて報知するものとの双方を含むと解釈されるべきである。
本件訂正前の「情報報知手段」について「必ず報知する」と限定解釈する根拠はなく,原告の主張は失当である。
審決は,本件訂正前の「情報報知手段」の記載の検討に先だって,本件訂正後の「情報報知手段」の技術的意義を確認しているものの,前者の検討は本件訂正前の「情報報知手段」の記載に基づいて行っており,本件訂正前の「情報報知手段」の技術的意義の認定に誤りはない。審決の判断に誤りはない。
(2) 相違点10についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)に対して
審決がいずれの証拠にも記載も示唆もないと認定した本件訂正発明1の構成は,「報知する場合と報知しない場合とを長期有利状態の残りゲーム数が“短期有利状態の継続ゲーム数と同じゲーム数”以下であるか否かで制御する構成」(以下「本件特有構成」という。)である。
本件特有構成は,甲35及び甲36を含むいずれの証拠においても記載も示唆もされていないのであるから,甲3に記載された60GのRT中に所定の情報を報知する技術事項に対して甲2に記載された事項などを組み合わせる根拠は存在しない。
原告は,甲35と甲36とを追加して引用した上で,甲21,甲22,甲35及び甲36から,本件特許の出願当時において,遊技者にとって不利な図柄の導出の可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知しないという技術思想は一般的であったと主張する。しかし,原告主張に係る技術思想は,「遊技者にとって不利な図柄の導出の可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知しない」ものであり,「長期有利状態」「短期有利状態」とは関係がなく,長期有利状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという技術思想とは異なる。
甲2には,「2PRT中において所定の情報を報知しない」という技術事項が記載されているにすぎず,「リプレイタイムの総ゲーム数が遊技者にとって不利益であるかの価値判断の下,所定の情報に相当する予告音を意図的に報知しないという技術事項」も「リプレイタイムとして継続するゲーム数が遊技者にとって不利益でないゲーム期間であれば所定の情報の報知を必要としないという動機」も記載されていない。さらに「現在のリプレイタイムが途中で終了して別のリプレイタイムが新たに開始されることが,遊技者にとって不利益となるかの価値判断に基づいて所定の情報を報知しないとする技術思想」も記載されていない。
また,甲3には,「長期のリプレイタイムにおいても,その残りゲーム数が短期のリプレイタイムの遊技ゲーム数以下であれば,仮にプチRT絵柄(短期有利表示結果)が導出されて遊技状態が長期のリプレイタイムから短期のリプレイタイムに移行したとしても,長期のリプレイタイムから継続するリプレイタイムの総ゲーム数が長期のリプレイタイムのゲーム数よりも短くならないこと」に着眼する記載はなく,その着眼自体に困難性を有するから,自明であるということはできない。
したがって,相違点10に係る構成が容易想到でないとした審決の判断に誤りはない。
(3) 記載要件についての判断誤り(取消事由3)に対して
本件明細書の【0101】【0103】には,「特定表示結果」に相当する「ボーナス」か「スイカ」に当選して導出が許容されたときに,「短期有利表示結果」に相当する「チャンス目」の導出も許容されることが記載されているから,「ボーナス」や「スイカ」と「チャンス目」とが導出を許容するか否か決定される複数種類の表示結果に含まれていることが記載されている。
導出が許容される対象に「短期有利表示結果」が含まれることは,本件特許明細書の【0101】【0103】などの記載から明らかである。
本件明細書(【0101】【0108】【0110】)には,内部抽選においてボーナスやスイカに当選させて導出を許容するか否かの決定を行うことにより,ボーナスかスイカに当選して導出を許容する旨が決定されたときにチャンス目の導出を許容する旨も決定されることが記載されている。
特許請求の範囲には,「特別表示結果」と「再遊技有利表示結果」とが,事前決定手段によって導出を許容するか否かが決定される表示結果であることが規定されているにすぎず,両表示結果を「同時当選し得る抽選対象役」と解釈すべき記載はない。
本件明細書の【0113】【0115】には,「特別表示結果」に相当する「ボーナス」と,「再遊技表示結果」に相当する「リプレイ」とについて,導出を許容するか否か決定されることが記載されている。
したがって,記載要件に関する審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1 認定事実
(1) 本件明細書の記載
本件明細書(甲27)には,次のとおりの記載がある(図5,17は別紙のとおり。本件訂正前のもの。)。
「【0001】
本発明は,スロットマシンに関し,特に有利状態として,所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態と該所定ゲーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続する長期有利状態とを有するスロットマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンは,一般に,外周部に識別情報としての複数種類の図柄が描かれた複数(通常は3つ)のリールを有する可変表示装置を備えており,各リールは,遊技者がスタートレバーを操作することにより回転を開始し,また,遊技者が各リールに対応して設けられた停止ボタンを操作することにより,その操作タイミングから予め定められた最大遅延時間の範囲内で回転を停止する。そして,全てのリールの回転を停止したときに導出された表示態様に従って入賞が発生する。
【0003】
入賞となる役の種類としては,小役,ボーナス,リプレイといった種類がある。ここで,小役の入賞では,小役の種類毎に定められた数のメダルが払い出されるという利益を遊技者が得ることができる。ボーナスの入賞では,次のゲームからレギュラーボーナスやビッグボーナスといった遊技者にとって有利な遊技状態へ移行されるという利益を遊技者が得ることができる。リプレイ入賞では,賭け数の設定に新たなメダルを消費することなく次のゲームを行うことができるという利益を得ることができる。
【0004】
ボーナス役を含めた各役の入賞が発生するためには,一般的には,事前(通常はスタートレバー操作時)に行われる内部抽選に当選して当選フラグが設定されていなければならない。ここで,リプレイ入賞による賭け数の設定にメダルを消費しないで済むという利益を遊技者が得られることを利用して,可変表示装置に導出された図柄によりRT入賞が発生することで予め定められた所定ゲーム数だけ通常の遊技状態とはリプレイ以外の役の当選確率を変えずにリプレイの当選確率を高くするRT(ReplayTime)を,ビッグボーナスやレギュラーボーナスのようなボーナスと呼ばれる特別遊技状態以外の遊技者にとって有利な遊技状態として定めているスロットマシンがあった(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
遊技状態がRTに制御されているゲームでは,かなりの高確率でリプレイ当選し,また,リプレイ当選しているゲームでは,さらにボーナス当選していても通常はリプレイの方が優先して導出される。つまり,遊技状態がRTに制御されていると,ボーナス当選していてもボーナス入賞しにくくなるため,このRTに制御されている期間を利用して,複数ゲームの期間に亘って実行される連続演出を行うものとしたスロットマシンがあった(例えば,非特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2005-131323号公報(段落0035)
【非特許文献1】パチスロ攻略マガジン2003年1月号(16,17頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように,従来のスロットマシンにおけるRTは,特許文献1のようにボーナス以外で遊技者に有利な遊技状態を設けることで遊技の興趣を向上させようとするものか,非特許文献1のように当選の有無に関わらずボーナス入賞しにくくなることを利用して連続演出を行うことで遊技の興趣を向上させようとするものでしかなかった。遊技状態がRTに制御されるかどうかで遊技を有利に進められるかどうかということに差異が生じても,そこに遊技における戦略性が生じることはなかった。
【0008】
本発明は,有利状態として,所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態と該所定ゲーム数よりも長いゲーム数の間だけ継続する長期有利状態とを設け,長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に応じて回避できるものとすることで,技術介入性を高めるとともに遊技の戦略性を高くしたスロットマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため,本発明にかかるスロットマシンは,
遊技用価値(メダル)を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置(可変表示装置2)に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるスロットマシンにおいて,
ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果(レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1),ビッグボーナス(2),スイカ)及び短期有利表示結果(チャンス目)を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段(ステップS403)と,
前記識別情報の変動表示を停止させるために遊技者により操作される停止操作手段(停止ボタン12L,12C,12R)と,
前記停止操作手段が操作されたときに,該停止操作手段の操作手順と前記事前決定手段の決定結果とに応じて前記可変表示装置の表示結果を導出させる導出制御手段(ステップS404)と,
通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な有利状態(RT)に遊技状態を制御する有利状態制御手段(ステップS815,S916)と,
所定の設定操作手段(設定キースイッチ92,設定スイッチ91)の操作に基づいて,前記事前決定手段により入賞表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を設定値毎に異ならせる複数種類の設定値(設定値)のうちから,いずれかの設定値を選択して設定する設定値設定手段(ステップS201~S210)と,
前記設定値設定手段により設定された設定値を示す設定値データを含むゲームの進行を制御するためのデータを読み出し及び書き込み可能に記憶するデータ記憶手段(RAM112)と,
前記スロットマシンへの電源供給が遮断しても前記データ記憶手段に記憶されている前記ゲームの進行を制御するためのデータを保持する保持手段と,
前記スロットマシンの電源投入時に,前記ゲームの進行を制御するためのデータのうちの前記設定値データが適正か否かの判定を個別に行わず,前記保持手段により保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが電源遮断前のデータと一致するか否かの判定を行う記憶データ判定手段(ステップS105,S106)と,
前記記憶データ判定手段により前記保持手段により保持されている前記ゲームの進行を制御するためのデータが前記電源遮断前のデータと一致しないと判定されたときに,ゲームの進行を不能化する第1の不能化手段(ステップS106(NO),ステップS301)と,
ゲームの開始操作がなされる毎に,前記データ記憶手段から前記設定値データを読み出し,該読み出した設定値データが示す設定値が前記設定値設定手段により設定可能な設定値の範囲内である場合に前記読み出した設定値データが適正であると判定し,前記設定可能な設定値の範囲内でない場合に前記読み出した設定値データが適正ではないと判定する設定値判定手段(ステップS508,S509)と,
前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正ではないと判定されたときに,ゲームの進行を不能化する第2の不能化手段(ステップS509(NO),ステップS301)と,
前記第1の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても前記第2の不能化手段により前記ゲームの進行が不能化された状態においても,前記設定操作手段の操作に基づいて前記設定値設定手段により前記設定値が新たに設定されたことを条件に,前記ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進行を可能とする不能化解除手段(ステップS111,図11)とを備え,
前記事前決定手段は,前記設定値判定手段により前記読み出した設定値データが適正であると判定したときに,該読み出した設定値データが示す設定値に応じた確率で当該ゲームにおいて入賞表示結果を導出させることを許容するか否かを決定するとともに,前記特定表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,前記短期有利表示結果の導出を許容する旨も同時に決定し,
前記有利状態制御手段は,
前記可変表示装置の表示結果として予め定められた短期有利表示結果(チャンス目)が導出されたときに,前記有利状態のうちで所定ゲーム数(3ゲーム)の間だけ継続する短期有利状態(ショートRT)に遊技状態を制御する短期有利状態制御手段(ステップS815)と,
予め定められた長期移行条件が成立したときに,前記有利状態のうちで前記所定ゲーム数よりも長いゲーム数(100ゲーム)の間だけ継続するとともに,終了までに遊技者の得られる利益が前記短期有利状態よりも大きい長期有利状態(ロングRT)に遊技状態を制御する長期有利状態制御手段(ステップS906)とを含み,前記長期有利状態において前記短期有利表示結果が導出されたときに,該長期有利状態を終了させて,前記短期有利状態に遊技状態を制御し(ステップS815では,これまでのRTカウンタの値に関わらず,RTカウンタの初期値として4をセット),
前記導出制御手段は,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が第一手順で操作されたときに該特定表示結果を導出させる第一手順時導出手段(図2,図8,図9)と,
前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されているときにおいて前記停止操作手段が前記第一手順とは異なる第二手順で操作されたときに該短期有利表示結果を導出させる第二手順時導出手段(図2,図8,図9)とを含み,
前記スロットマシンは,
前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報(SRT可能性報知)を報知する情報報知手段(ステップS1007)をさらに備える
ことを特徴とする。
【0010】
上記スロットマシンでは,有利状態に制御されると遊技者が通常遊技状態よりも有利にゲームを進めることが可能となるが,この有利状態には,所定ゲーム数の間だけ継続する短期有利状態と,これよりも長いゲーム数の間だけ継続する長期有利状態とがある。長期有利状態に制御されているときでも短期有利表示結果が導出されると,短期有利状態に遊技状態が制御され,有利状態全体としてのゲーム数が少なくなってしまう場合がある。長期有利状態に制御されているときには,短期有利表示結果を導出させない方が遊技者にとって有利なものとなる場合がある。
【0011】
ここで,短期有利表示結果が可変表示装置の表示結果として導出されるのは,特定表示結果と短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されていて,且つ停止操作手段が第二手順で操作された場合だけである。また,長期有利状態で特定表示結果と短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されると,所定の情報(実質的に,第二手順で停止操作手段を操作することで該短期有利状態が導出される旨を示すこととなる)が報知されるので,どのような操作手順で停止操作手段を操作すればよいかを判断できる。これにより,長期有利状態の維持に対して遊技者の技術介入性が生じるとともに,遊技の戦略性も高まるので,遊技の興趣を向上させることができる。」
「【0014】
なお,前記短期有利状態と前記長期有利状態とは,終了までの継続ゲーム数の他は同じ有利状態としてもよい。この場合には,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記短期有利状態のゲーム数よりも大きいときに,長期有利状態の残りゲームで遊技者が得られる利益は短期有利状態において遊技者が得られる利益よりも大きなものとなる。
また,前記事前決定手段は,前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果(リプレイ)の導出を許容するか否かを決定するものとすることができ,ここで,
前記有利状態は,例えば,前記通常遊技状態よりも該再遊技表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を高くする再遊技高確率状態とすることができる。
また,前記特定表示結果は,複数種類あってもよい。ここで,前記特定表示結果の導出が許容する旨が決定されているときに該特定表示結果を導出させるための第一手順は,前記特定表示結果の種類毎に異なっていてもよい。また,前記第二手順は,前記停止操作手段の操作手順のうちの前記第一手順以外の全ての操作手順としても,前記第一手順以外の操作手順のうちの一部の操作手順としてもよい。
【0015】
また,前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる利益よりも大きいことを条件として,前記所定の情報を報知するものとしてもよい。一方,前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで前記所定の情報を報知するものの,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる利益よりも小さいときには,その旨を示す情報も併せて報知するものとすることができる。これらの場合には,短期有利表示結果を導出させた方が本当は有利な筈であるのに,遊技者が第二手順で停止操作手順を操作しないで短期有利表示結果をわざと外してしまうといったことがなくて済むようになる。」
「【0029】
上記スロットマシンにおいて,
前記事前決定手段は,少なくとも前記特定表示結果として所定数(9枚)の遊技用価値の付与を伴う小役表示結果(スイカ)の導出を許容するか否かを決定し,
前記情報報知手段は,通常遊技状態に制御されているゲームでも前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,前記所定の情報を報知してもよい。この場合において,上記スロットマシンは,
前記可変表示装置の表示結果として前記小役表示結果が導出されたときに前記所定数の遊技用価値により実行可能なゲーム数(3ゲーム)と前記所定ゲーム数との差が1未満(0)となる数の遊技用価値を遊技者に付与する遊技用価値付与手段(ステップS902)をさらに備えるものとすることができる。
【0030】
この場合,情報報知手段から所定の情報が報知されたときに通常遊技状態であるか有利状態であるかが遊技者に判断できなくなる場合もある。通常遊技状態であった場合に短期有利表示結果が導出されないように停止操作手段を操作すると,遊技者は,短期有利状態による利益を喪失してしまうこととなる。もっとも,第一手順で停止操作手段を操作すれば小役表示結果を導出させることができ,これで付与される遊技用価値によって喪失した短期有利状態の利益を保全することができるので,遊技者にとって不利なものとなることはない。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下,添付図面を参照して,本発明の実施の形態について説明する。
【0050】
図1は,この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。スロットマシン1の前面扉は,施錠装置19にキーを差し込み,時計回り方向に回動操作することにより開放状態とすることができる。このスロットマシン1の上部前面側には,可変表示装置2が設けられている。可変表示装置2の内部には,3つのリール3L,3C,3Rから構成されるリールユニット3が設けられている。リール3L,3C,3Rは,それぞれリールモータ3ML,3MC,3MR(図3参照)の駆動によって回転/停止させられる。
【0051】
リール3L,3C,3Rの外周部には,図2に示すように,それぞれ「7」,「BAR」,「JAC」,「スイカ」,「チェリー」,「ベル」といった互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で描かれている。リール3L,3C,3Rのいずれについても,「JAC」及び「ベル」は,最大でも5コマ以内の間隔で配置されている。中と右のリール3C,3Rについて「スイカ」は,5コマ以内の間隔で配置されている。右のリール3Rについて「チェリー」,「7」または「BAR」のいずれかが最大で5コマ以内の間隔で配置されている。リール3L,3C,3Rの外周部に描かれた図柄は,可変表示装置2において上中下三段に表示される。
【0052】
リールユニット3内には,リール3L,3C,3Rのそれぞれに対して,その基準位置を検出するリールセンサ3SL,3SC,3SR(図3参照)と,背面から光を照射するリールランプ3LP(図3参照)とが設けられている。可変表示装置2には,後述するレギュラーボーナスにおいて賭け数として1が設定されているときには,中段の1本の入賞ラインが設定される。レギュラーボーナス以外では賭け数として3が設定されている状態でのみゲームを開始させることができ,この賭け数として3が設定されているときには,上中下段の3本及び対角線の2本の合計5本の入賞ラインが設定される。」
「【0096】
上記スロットマシン1においては,可変表示装置2のいずれかの入賞ライン上に役図柄が揃うと,入賞となる。入賞となる役の種類は,遊技状態に応じて定められているが,大きく分けて,特別遊技状態(レギュラーボーナス,ビッグボーナス)への移行を伴う特別役と,メダルの払い出しを伴う小役と,賭け数の設定を必要とせずに次のゲームを開始可能となる再遊技役とがある。図5(a)は,このスロットマシン1において入賞となる役の種類と可変表示装置2における図柄の組み合わせを説明する図である。」
「【0101】
もっとも,適正な操作手順で操作されずに,これらの役に入賞しなかった場合には,チャンス目(例えば,チェリー-スイカ-スイカ)が導出されることがある。停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順(特に停止ボタン12Lの操作タイミング)によって「チェリー」の引き込みができずにチャンス目も導出できないときには,リーチ目(例えば,JAC-スイカ-スイカ)が導出される(スイカに併せて当選している場合を含む)。すなわち,チャンス目及びリーチ目は,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選しているときには,それぞれの役の表示態様とともに可変表示装置2の表示結果として導出が許容されている表示態様ということになる。」
「【0103】
もっとも,この場合にも,チャンス目(例えば,チェリー-スイカ-スイカ)が導出されることがある。停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順(特に停止ボタン12Lの操作タイミング)によって「チェリー」の引き込みができずチャンス目も導出できないときには,ハズレ目(例えば,ベル-スイカ-スイカ)が導出される。すなわち,チャンス目及びハズレ目は,スイカに当選しているときには,「スイカ-スイカ-スイカ」の表示態様とともに可変表示装置2の表示結果として導出が許容されている表示態様ということになる。」
「【0107】
リプレイは,通常の遊技状態またはRTにおいて入賞ライン(5本)のいずれかに「JAC-JAC-JAC」の組み合わせが揃ったときに入賞となる。レギュラーボーナス(ビッグボーナス中を含む)では,この組み合わせが揃ったとしてもリプレイ入賞とならない。リプレイに入賞したときには,メダルの払い出しはないが次のゲームを改めて賭け数を設定することなく開始できるので,次のゲームで設定不要となった賭け数(レギュラーボーナスではリプレイ入賞しないので必ず3)に対応した3枚のメダルが払い出されるのと実質的には同じこととなる。「JAC」は,リール3L,3C,3Rの全てについて5コマ以内の間隔で配置されているので,後述する内部抽選においてリプレイに当選したときには,必ずリプレイに入賞するものとなっている。
【0108】
以下,内部抽選について説明する。内部抽選は,上記した各役への入賞を許容するかどうかを,可変表示装置2の表示結果が導出表示される以前に(実際には,スタートレバー11の操作時),決定するものである。内部抽選では,乱数発生回路115から内部抽選用の乱数(0~16383の整数)が取得される。そして,遊技状態に応じて定められた各役について,取得した内部抽選用の乱数と,遊技者が設定した賭け数と,設定スイッチ91により設定された設定値に応じて定められた各役の判定値数に応じて行われる。内部抽選における当選は,排他的なものである。
【0109】
図5(b)は,遊技状態別当選役テーブルを示す図である。遊技状態別当選役テーブルは,ROM113に予め格納され,内部抽選において当選と判定される役を判断するために用いられるものであるが,遊技状態別当選役テーブルの登録内容は,遊技状態に応じて定められた役を示すものとなる。各ゲームにおける遊技状態において抽選対象となる役が参照される。ここで,複数の役が同時に抽選対象となる場合もある。
【0110】
遊技状態がレギュラーボーナス(ビッグボーナス中に提供された場合を含む)にあるときには,スイカ,ベル,チェリーが内部抽選の対象役として順に読み出される。
通常の遊技状態にあるときには,レギュラーボーナス+スイカ,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)+スイカ,ビッグボーナス(1),ビッグボーナス(2)+スイカ,ビッグボーナス(2),スイカ,ベル,チェリー,リプレイ(通常)が内部抽選の対象役として順に読み出される。遊技状態がRTにあるときには,レギュラーボーナス+スイカ,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)+スイカ,ビッグボーナス(1),ビッグボーナス(2)+スイカ,ビッグボーナス(2),スイカ,ベル,チェリー,リプレイ(RT)が内部抽選の対象役として順に読み出される。」
「【0113】
レギュラーボーナス+スイカ,ビッグボーナス(1)+スイカ,ビッグボーナス(2)+スイカは,通常の遊技状態またはRTで内部抽選の対象となり,通常の遊技状態及びRTでの賭け数3に対応する判定値数の格納アドレスが登録されている。これらの役の共通フラグの値は1であり,設定値に関わらずに共通の判定値数の格納アドレスが登録されている。レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1),及びビッグボーナス(2)は,通常の遊技状態またはRTで内部抽選の対象となり,通常の遊技状態及びRTでの賭け数3に対応する判定値数の格納アドレスが登録されている。これらの役については,共通フラグの値が0となっており,設定値に応じて個別に判定値数の格納アドレスが登録されている。」
「【0115】
リプレイは,通常の遊技状態またはRTにおいて内部抽選の対象となるが,通常の遊技状態とRTとでは別個の抽選対象の役として判定値数の格納アドレスが,それぞれの遊技状態における賭け数3に対応して登録されている。通常の遊技状態におけるリプレイについてもRTにおけるリプレイについても,共通フラグは1であり,設定値に関わらず共通の判定値数の格納アドレスが登録されている。」
「【0161】
SRT可能性報知は,RT残りゲーム数が4ゲーム以上であるゲーム(このときは,必ずロングRT)においてチャンス目が導出される可能性があるとき,すなわち,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選しているときに行われる。SRT可能性報知演出は,チャンス目が導出される可能性があることを直接的に示す態様で行われるのではなく,RT残りゲーム数が4ゲーム以上でレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選しているとき以外には絶対に表示されることのない所定の画像を液晶表示器4に表示することにより行われる。
【0162】
チャンス演出は,SRT可能性報知が行われたゲームでチャンス目が導出されなかったときに行われるが,入賞の観点で言うとチャンス目はハズレなので,入賞情報コマンドを参照してもハズレの表示結果が導出されたのならばそれがチャンス目であるかどうかを演出制御基板102のCPU121が認識することはできない。可変表示装置2に導出されている表示態様(特にリール3L,3C,3Rの全てが停止し,チャンス目が導出されるものとなったか)は,リール回転コマンド及びリール停止コマンドに基づいて判断される。」
「【0164】
また,連続演出は,RT残りゲーム数が3となったゲームで開始され,RT残りゲーム数が1となるゲームまで3ゲームの期間継続した後に終了させられる。連続演出は,ロングRTで97ゲームを消化してRT残りゲーム数が3となったゲームにおいても開始されるものの,前回のゲームでのチャンス目の導出によりショートRTに制御されたゲームでは,必ず開始されるものとなる。RT残りゲーム数は,遊技制御基板101から送信される遊技状態コマンドにより判断することができる。
【0165】
ロングRTで97~99ゲームを消化した後もレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していないこともあり,ショートRTを開始させるチャンス目もスイカのみの当選でも導出されることがあるので,連続演出は,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選(持ち越しを含む)している場合にも当選していない場合にも行われる。」
「【0214】
次に,上記したステップS405の入賞判定処理について詳しく説明する。図17は,CPU111がステップS405で実行する入賞判定処理を詳細に示すフローチャートである。入賞判定処理では,遊技状態に応じた入賞対象役を最初から順に読み出す(ステップS801)。次に,当該読み出した役の図柄組み合わせが可変表示装置2の5本の入賞ラインのうちのいずれかに(レギュラーボーナス時は,中段1本の入賞ラインに)揃っているかどうかを判定する(ステップS802)。
【0215】
当該役の図柄組み合わせが揃っていれば,当該役の入賞フラグをRAM112に設定して(ステップS803),ステップS804の処理に進む。当該役の図柄組み合わせが揃っていなければ,そのままステップS804の処理に進む。ステップS804では,当該遊技状態に応じた役のうちで未だ入賞判定の対象としていない役があるかどうかを判定する。未だ入賞判定の対象としていない役があれば,ステップS801の処理に戻り,当該遊技状態に応じた次の役を読み出すものとする。
【0216】
当該遊技状態に応じた役の全てを入賞判定の対象としていれば,次に,RAM112にリプレイの入賞フラグが設定されているかどうかにより,リプレイ入賞したかどうかを判定する(ステップS805)。リプレイ入賞していれば,リプレイゲーム中フラグをRAM112に設定する(ステップS806)。このリプレイゲーム中フラグは,次のゲームで賭け数が自動設定されると消去されるものとなる。そして,ステップS816の処理に進む。
【0217】
リプレイ入賞していなければ,RAM112にビッグボーナス(1)の入賞フラグが設定されているかどうかにより,ビッグボーナス(1)入賞したかどうかを判定する(ステップS807)。ビッグボーナス(1)入賞していれば,ビッグボーナス中フラグをRAM112に設定すると共に,RAM112に設定されているビッグボーナス(1)当選フラグを消去する。また,RAM112のRTカウンタの値を0に初期化する(ステップS808)。そして,ステップS816の処理に進む。
【0218】
ビッグボーナス(1)入賞していなければ,RAM112にビッグボーナス(2)の入賞フラグが設定されているかどうかにより,ビッグボーナス(2)入賞したかどうかを判定する(ステップS809)。ビッグボーナス(2)入賞していれば,ビッグボーナス中フラグをRAM112に設定すると共に,RAM112に設定されているビッグボーナス(2)当選フラグを消去する。また,RAM112のRTカウンタの値を0に初期化する(ステップS810)。そして,ステップS816の処理に進む。
【0219】
ビッグボーナス(2)入賞していなければ,RAM112にレギュラーボーナスの入賞フラグが設定されているかどうかにより,レギュラーボーナス入賞したかどうかを判定する(ステップS811)。レギュラーボーナス入賞していれば,レギュラーボーナス中フラグをRAM112に設定すると共に,RAM112に設定されているレギュラーボーナス当選フラグを消去する。また,RAM112のRTカウンタの値を0に初期化する(ステップS812)。そして,ステップS816の処理に進む。
【0220】
レギュラーボーナス入賞もしていなければ,リール3L,3C,3Rにそれぞれ停止されている図柄を参照して,可変表示装置2にチャンス目が導出されているかどうかを判定する(ステップS813)。チャンス目が導出されていれば,RAM112にレギュラーボーナス中フラグまたはビッグボーナス中フラグが設定されているかどうかにより,今回のゲームの遊技状態(または次のゲームで適用される遊技状態)がレギュラーボーナスまたはビッグボーナスであるかどうかを判定する(ステップS814)。
【0221】
遊技状態がレギュラーボーナスでもビッグボーナスでもなければ,現時点のRTカウンタの値に関わらずに(すなわち,現在の遊技状態が通常の遊技状態,ショートRT,ロングRTのいずれであるかに関わらずに),RAM122のRTカウンタの初期値として4をセットし,ショートRTに遊技状態を制御する。ここで,初期値として4をセットするのは,後述するステップS913において今回のゲームのうちにRTカウンタの値が1減算されてしまうため,ショートRTのゲーム数として3ゲームを確保するためである(ステップS815)。そして,ステップS816の処理に進む。チャンス目が導出されていなかった場合,或いは遊技状態がレギュラーボーナスまたはビッグボーナスであった場合には,そのままステップS816の処理に進む。
【0222】
ステップS816では,RAM112に設定されている入賞フラグ(但し,ハズレの場合は入賞フラグの設定はない)に基づいて入賞した役の種類を示す入賞情報コマンドを生成して,演出制御基板102に送信する。そして,入賞判定処理を終了して,図13のフローチャートに復帰する。」
「【0235】
図19は,演出制御基板102のCPU121が実行する処理を示すフローチャートである。演出制御基板102側では,遊技制御基板101から送られてくるコマンドを受信したかどうかを判定している(ステップS1001)。遊技制御基板101からいずれかのコマンドを受信すると,受信したコマンドの種類が何であるかを判定する(ステップS1002)。
【0236】
受信したコマンドの種類がステップS526で送信された当選状況通知コマンドであった場合には,まず,受信した当選状況通知コマンドが示す当選状況(すなわち,今回のゲームにおける当選フラグの設定状況)をRAM122の所定の領域に保存する(ステップS1003)。次に,前回のゲームのステップS1027(後述)でRAM122に保存した遊技状態がRT残りゲーム数が3以下であることを示しているかどうかを判定する(ステップS1004)。RT残りゲーム数が4以上である場合には,今回のゲームの遊技状態はロングRTである。
【0237】
ここでは,まず,受信した当選状況通知コマンドがレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選を示しているかどうかを判定する(ステップS1005)。レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)及びビッグボーナス(2)のいずれにも当選していないのであれば,受信した当選状況通知コマンドがスイカの当選を示しているかどうかを判定する(ステップS1006)。スイカにも当選していないのであれば,ロングRTであってもチャンス目が導出される可能性はないので,そのままステップS1001の処理に戻る。
【0238】
レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),もしくはスイカに当選していれば,ロングRTにおいてチャンス目が導出される可能性があるということなので,液晶表示器4に所定の画像(但し,チャンス目の導出可能性を直接的に示すものではなく,これ以外の場合に表示されることのない画像)を表示し,ロングRTからショートRTに移行されてしまう可能性があることを示すSRT可能性報知を行う。また,RAM122にSRT可能性フラグを設定する(ステップS1007)。そして,ステップS1001の処理に戻る。
【0239】
ステップS1004でRT残りゲーム数が3以下であった場合には,さらに前回のゲームでのステップS1027(後述)でRAM122に保存した遊技状態がRT残りゲーム数が1以上であることを示しているかどうかを判定する(ステップS1008)。RT残りゲーム数が0,すなわちRT以外の遊技状態であれば,そのままステップS1001の処理に戻る。
【0240】
RT残りゲーム数が1以上,すなわちロングRTで97ゲーム以上を消化して残りゲーム数が1以上3以下となっているか,ショートRT中である場合には,RAM122にボーナス告知フラグが設定されているかどうかにより,前回以前のゲームで既にボーナス告知が行われているかどうかを判定する(ステップS1009)。前回以前のゲームで既にボーナス告知が行われていれば,そのままステップS1001の処理に戻る。未だボーナス告知が行われていなければ,RT残りゲーム数に応じて,3ゲームで継続する連続演出のうちの今回のゲーム分の演出を開始させるとともに,RAM122に連続演出フラグを設定する(ステップS1010)。そして,ステップS1201の処理に戻る。
【0241】
受信したコマンドの種類がステップS704で送信されたリール回転コマンドであった場合には,前のゲームでRAM122に保存したリール3L,3C,3Rの停止図柄に関する情報をクリアする(ステップS1011)。そして,ステップS1001の処理に戻る。
【0242】
受信したコマンドの種類がステップS716で送信されたリール停止コマンドであった場合には,受信したリール停止コマンドに従ってROM123のテーブルを参照して図柄を特定し,当該リール停止コマンドが示すリールについて停止した図柄をRAM122の停止図柄テーブルに保存する(ステップS1012)。
【0243】
次に,停止図柄テーブルを参照して,リール3L,3C,3Rの全てが停止したかどうかを判定する(ステップS1013)。リール3L,3C,3Rのうちで未だ回転中のものがあれば,そのままステップS1001の処理に戻る。リール3L,3C,3Rの全てが停止した場合には,RAM122にSRT可能性フラグが設定されているかどうかを判定する(ステップS1014)。SRT可能性フラグが設定されていなければ,そのままステップS1001の処理に戻る。
【0244】
SRT可能性フラグが設定されていれば,ステップS1007で行ったSRT可能性報知を終了するとともに,RAM122に設定したSRT可能性フラグを消去する(ステップS1015)。さらに,停止図柄テーブル3L,3C,3Rを参照して,可変表示装置2にチャンス目が導出されているかどうかを判定する(ステップS1016)。チャンス目が導出されていなければ,液晶表示器4に所定の画像を表示することなどによりチャンス演出を行う(ステップS1017)。そして,ステップS1001の処理に戻る。チャンス目が導出されていれば,そのままステップS1001の処理に戻る。
【0245】
なお,可変表示装置2の表示結果によりレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に入賞したときにおいては,チャンス目が導出されている訳ではないので,ステップS1017の処理としてチャンス演出は一応行われることとなる。もっとも,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に入賞していると,続けて受信する入賞情報コマンドによって,遊技者がチャンス演出の実行を認識できるよりも前にチャンス演出が強制終了させられ,実質的にはチャンス演出が行われていないのと同じことになる。
【0246】
受信したコマンドの種類がステップS816で送信された入賞情報コマンドであった場合には,当該入賞情報コマンドがレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)のいずれかの入賞を示しているかどうかを判定する(ステップS1018)。
【0247】
レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)のいずれかの入賞を示していれば,現在実行中の演出(連続演出,チャンス演出,ボーナス告知,SRT可能性報知を含む)を強制終了させる(ステップS1019)。さらに,RAM122に設定されている連続演出フラグを消去し,ボーナス告知フラグを消去する。これらのフラグが元々設定されていなければ,その状態が維持されるだけである(ステップS1020)。そして,ステップS1021の処理に進む。
【0248】
ステップS1021では,液晶表示器4に所定の画像を表示することなどにより,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の入賞を示すボーナス入賞演出を行う。このボーナス入賞演出は,入賞したボーナスの種類に応じて異なるものを行うものとしてもよい。そして,ステップS1001の処理に戻る。
【0249】
ステップS1018でレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)及びビッグボーナス(2)のいずれにも入賞していなかった場合には,RAM122に連続演出フラグが設定されているかどうかにより,連続演出が実行されているかを判定する(ステップS1022)。連続演出が実行されていなければ,そのままステップS1001の処理に戻る。連続演出が実行されていれば,今回のゲーム分の連続演出の結果を示すとともに,RAM122に設定されている連続演出フラグを消去する(ステップS1023)。
【0250】
次に,前回のゲームのステップS1027でRAM122に保存した遊技状態がRT残りゲーム数が1であることを示しているかどうかを判定する(ステップS1024)。RT残りゲーム数が1でなければ,今回のゲーム限りでRTが終了することはなく,次ゲームでも連続演出を行うものとなるので,そのままステップS1001の処理に戻る。RT残りゲーム数が1であれば,今回のゲーム限りでRTが終了し,次のゲームでは通常の遊技状態になるということである。
【0251】
この場合には,ステップS1003でRAM122に保存した当選状況が,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)のいずれかの当選を示しているかどうかを判定する(ステップS1025)。レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)及びビッグボーナス(2)のいずれの当選も示していなければ,そのままステップS1001の処理に戻る。レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選を示していれば,液晶表示器4に所定の画像を表示することなどにより,これらの役の当選を確定的に遊技者に報知するボーナス告知を行い,RAM122にボーナス告知フラグを設定する(ステップS1026)。そして,ステップS1001の処理に戻る。
【0252】
受信したコマンドの種類がステップS915で送信された遊技状態コマンドであった場合には,受信した遊技状態コマンドが示す遊技状態(すなわち,次のゲームにおける遊技状態)をRAM122の所定の領域に保存する(ステップS1027)。そして,ステップS1001の処理に戻る。
【0253】
また,受信したコマンドの種類が他のコマンドであった場合には,それぞれのコマンドの種類に応じた処理(本発明と関係ないので,詳細は省略)を実行する(ステップS1028)。その後,ステップS1001の処理に戻る。
【0254】
以上説明したように,この実施の形態にかかるスロットマシン1では,通常の遊技状態よりもリプレイ当選確率を高くするRTとして,100ゲームの間継続するロングRTと,3ゲームで終了するショートRTとがある。ここで,例えば,ロングRTに制御されてRT残りゲーム数が4ゲーム以上あるときであっても,可変表示装置2の表示結果としてチャンス目が導出されると,ショートRTに制御され,RTが終了するまでのゲーム数が少なくなってしまう。
【0255】
もっとも,ショートRTに遊技状態を移行させるチャンス目が導出される可能性があるのは,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選しているときだけである。ここで,ロングRTでRT残りゲーム数が4ゲーム以上あるときにこれらの役に当選していれば,液晶表示器4においてSRT可能性報知が行われることとなる。SRT可能性報知は,ショートRTに移行される可能性を直接的に示すものではないが,これ以外の条件では行われないので,遊技者は,ロングRTにおいてRT残りゲーム数が4ゲーム以上ある状態からショートRTに移行される可能性があることを認識することができる。
【0256】
また,ショートRTに遊技状態を移行させるチャンス目が導出されるのは,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカの取りこぼしの場合だけに限られている。これらの取りこぼしの場合でも,さらに左のリール3Lに「チェリー」を停止させる(第2,第3リールとして停止されるなら,「スイカ」の停止する入賞ライン上に停止させる)ことのできるタイミングに限られており,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順によってチャンス目を導出させないようにすることができる。
【0257】
このため,遊技者は,遊技状態がショートRTに制御される可能性があるときであっても,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順によって遊技状態をロングRTのまま維持させることができるので,ここにも遊技者の技術介入が働いて,遊技の興趣を向上させることができる。また,レギュラーボーナスまたはビッグボーナスに遊技状態がある場合以外は,できる限りロングRTに維持させるという遊技における戦略性も高まるので,さらに遊技の興趣を向上させることができる。
【0258】
また,このようにチャンス目を導出させるかさせないかがRTの制御に影響を及ぼすものとなるため,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカを取りこぼしたときに導出されることのあるチャンス目に,単にレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選している可能性を示す以外にも役割を与えることができる。このため,可変表示装置2の表示結果としてチャンス目が導出されるか否かに対する遊技者の関心をさらに高めることができ,さらに遊技の興趣を向上させることができる。
【0259】
さらに,SRT可能性報知が行われた場合においてチャンス目が導出されなかった場合には,チャンス演出が行われる(レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に入賞した場合は,遊技者が認識する前に即座に強制終了されるので,実質的にチャンス演出が行われないものとなる)。チャンス目が導出されていなくてもSRT可能性報知が行われたということで,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選している可能性は高い。
【0260】
このため,チャンス演出によってもレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選に対する遊技者の期待感を高めさせることができるので,さらに遊技の興趣を向上させることができる。一方,ショートRTに移行させずにロングRTが継続されることの遊技者の期待感も,このチャンス演出によってさらに高めることができ,さらに遊技の興趣を向上させることができる。
【0261】
ところで,チャンス目が導出されるとショートRTに遊技状態が制御されるが,チャンス目が導出されたということは,他にはスイカの当選しか考えられないので,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選している可能性が高いということである。チャンス目は,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカの当選時に導出される出目なるので,チャンス目の導出及びこれに基づいて制御されるショートRT中に実行される連続演出では,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選に対して適度な期待感を遊技者に与えることができる。
【0262】
また,連続演出が行われるものとなっているショートRTに制御されている3ゲームの間は,リプレイ当選確率が高くなり,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していたとしてもリプレイの導出が優先されることで,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に関わらずに,これらの役に入賞する可能性が非常に低くなる。
【0263】
このようにレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していたとしてもショートRTの3ゲームの間は入賞の可能性を低めることで,1ゲームだけではなく3ゲームの間継続して遊技者に期待感を与えることができ,遊技の興趣を向上させることができる。連続演出の終了時において実際にレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していれば,ボーナス告知が行われることとなるので,さらに遊技者の期待感を高めて遊技の興趣を向上させることができる。
【0264】
また,ショートRTには,可変表示装置2にチャンス目が導出されることによって移行されるが,ロングRTには,ビッグボーナスが終了したことによって移行されることとなる。このため,ビッグボーナスが終了した後にもメダルの払出率が1を越えるRTで100ゲームを行うことができるので,ビッグボーナスが終了してから遊技者が手持ちのメダルを減らさずに次のビッグボーナスまたはレギュラーボーナスを迎えることができることとなる場合が増えるので,遊技者の期待感を高めさせて,さらに遊技の興趣を向上させることができる。一方,レギュラーボーナスが終了してもロングRTには制御されないので,ボーナスの種類としてレギュラーボーナスよりもビッグボーナスをと望む遊技者の期待感をさらに高めることができるようになる。
【0265】
さらに,RTは,単にリプレイ当選確率が通常の遊技状態よりも高くなるというだけではなく,通常の遊技状態とは異なりメダルの払出率も1を越えるものとなっている。このため,遊技状態がRTにときにレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していても,当該RTが終了するまでレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)入賞させずに遊技を進めた方がよくなる。このため,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)に当選していることでSRT可能性報知が行われたときには,これらに入賞もさせずチャンス目も導出させないという技量が要求されることとなるので,遊技者の技術介入性が非常に高いものとなり,さらに遊技の興趣を向上させることができる。
【0266】
また,ビッグボーナスの終了後に制御されるロングRTは,ショートRTと同様にリプレイ当選確率を極めて高くする遊技状態であり,ビッグボーナスの終了後しばらくの間は,多くのゲームでリプレイ入賞することとなる。ここで,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)は,当選確率の極めて高いリプレイとは同じゲームで当選しないので,可変表示装置2にハズレの表示結果が導出された場合は,当該ゲームでこれらのボーナス役に当選した可能性があるということである。このため,とりわけロングRTにおいてハズレの結果が導出されても,遊技者を落胆させることなく,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選の期待感を与えることができるものとなる。」
「【0288】
上記の実施の形態では,RT残りゲーム数が4以上であるときのみにSRT可能性報知を行うものとしていた。すなわち,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選していても,他の遊技状態にあるときにはSRT可能性報知を行うことはなかった。もっとも,レギュラーボーナスまたはビッグボーナス以外の遊技状態でレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選しているとき,すなわち新たにショートRTに遊技状態が制御される可能性があるときには,全てSRT可能性報知を行うものとしてもよい。
【0289】
この場合,SRT可能性報知が行われたときにおいて,通常の遊技状態にあるのかRT(特にロングRT)の遊技状態にあるのかが遊技者に分からない場合もある。通常の遊技状態であるならば,ハズレ目を導出させるよりもチャンス目を導出させた方が,3ゲームだけでも遊技状態がRTに制御されるので遊技者にとって有利なものとなる。ここで,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順によりチャンス目を外すとハズレ目しか導出されないのであれば,遊技者は,チャンス目をわざと外すようなことはしない方がよいということになる。
【0290】
もっとも,チャンス目の導出は,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカの当選当選が条件となっている。前者の場合において,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に応じてこれらの役に入賞させることができれば,レギュラーボーナスまたはビッグボーナスに遊技状態が制御されるので,遊技者が損をすることはない。入賞できないまでも停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に応じてリーチ目が導出されれば,ここでレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2)の当選を早期に確証することができるので,ショートRTに制御されなくても,必ずしも遊技者が損をするとは言えない。
【0291】
また,後者の場合でも,停止ボタン12L,12C,12Rの操作手順に応じてスイカに入賞させることができれば,これによって9枚のメダルの払い出しを受けることができる。通常の遊技状態における1ゲーム当たりに設定する賭け数は3であるので,払い出されたメダルによって少なくとも3ゲームを行うことができることとなる。このため,チャンス目を敢えて外したとしても,スイカに入賞させることができるのであれば,遊技者が損をすることはない。
【0292】
上記の実施の形態では,SRT可能性報知は,チャンス目の導出可能性を直接的に示すものではないが,ロングRTにおいてチャンス目が導出される可能性がある場合以外に表示されることのない所定の画像を液晶表示器4に表示することにより行うものとしていた。これに対して,ロングRTにおいてチャンス目が導出される可能性がある旨を直接的に報知してもよい。「スイカを狙え」や「BARを狙え」など,チャンス目の導出を避けることのできる図柄を報知するものとしてもよい。また,SRT可能性報知は,液晶表示器4に画像を表示して行う場合だけではなく,例えば,スタートレバー11を操作したときに所定のスタート音を出力したり,ランプ類を所定のパターンで点灯させることなどによって行うものとしてもよい。」
(2) 甲1の記載
甲1(特許第3750947号公報)には次のとおりの記載がある。
「【0005】
そして,このビッグボーナスゲーム(BBゲーム)においては,小役ゲームが所定数回(例えば,30回)消化されるか又はレギュラーボーナスゲーム(RBゲーム又はジャックゲーム)が所定数回(例えば,3回)実行されると,BBゲームモードが終了するようになっており,その結果,300枚~700枚程度のメダルが払い出される。」
「【0018】
以下,本発明に係る遊技機としてパチスロ機(回胴式遊技機)を一例に取り上げて実施の形態を図面と共に詳細に説明する。」
「【0074】
また,遊技者が所定数のメダルを投入後,スタートレバー9を操作すると,スタートSWセンサ110はスタート信号を出力し,主制御部100はこのスタート信号の受信を契機として乱数抽選等を行って変動表示ゲームを開始するとともに,ドラム部2に駆動パルス信号を出力するようになっている。なお,この1回のスタートレバー9の操作によって行われる遊技が1ゲームの変動表示ゲームとなっており,遊技者はボーナスゲーム(ビッグボーナス又はレギュラーボーナス)を獲得してメダルを増やすことを目的に遊技を繰り返す。
【0075】
そして,主制御部100は,変動表示ゲーム中に停止ボタン10a,10b及び10cが操作されると,回転ドラムの回転を停止させ,所定の役が成立(各回転ドラムの図柄が予め定めた所定の組み合わせで表示されると入賞)してメダルの払い出しを行う場合,その払出し数を表示LEDブロック4中のメダル払出枚数表示LED4cに表示し,これをクレジット数に加えてメダル貯留枚数表示LED4bに表示させる。なお,精算ボタン6によって払い出し操作が行われた場合やクレジット数が例えば最大数の50枚を超えた場合には,主制御部100はメダル払出装置18を駆動制御し,必要数のメダルをメダル払出口16から排出させて受け皿15に蓄積させる。」「【0077】150は,段階設定部であり,後述する出玉率の段階設定操作を行うことにより,ホール側は,イベントや新装オープンでの放出や収益改善のための回収状況に応じて,段階値1~6の中から所望の設定値を選択することができる。」
「【0087】
各回胴帯には,それぞれ異なった並びの図柄が21個描かれており,ビッグボーナス図柄の「赤7」や「青7」,ストックしているビッグボーナス又はレギュラーボーナス放出の契機となる十字架,低確率状態から高確率状態へモード移行させるための抽選の契機となるチェリー及びスイカ,逆の機能を有するベル及びリプレイがある。」
「【0090】
主制御部100は,変動表示ゲームのスタート信号を受信し,抽選結果が当選となって役が成立した場合には,有効ライン上にその役の図柄を揃えるように引き込むための引込制御を行う。
【0091】
例えば,ビッグボーナス役が内部当選し,停止した左ドラム2aと中ドラム2bの右斜め下の有効ライン上に図柄「7,7」が揃っている状態において,この有効ラインから4コマ以内に図柄「7」が位置する状態で停止ボタン10cが操作されたとき(図9(A)参照),主制御部100は,これを強制的に有効ライン上に揃えて「7,7,7」の組み合せとなるように引込制御を行う(図9(B)参照)。一方,抽選により内部当選して,いずれかの役が成立しているとしても,役に対応する所定の図柄が有効ライン上に表示されなければ遊技者に有利な状態とはならない。例えば,ビッグボーナスゲーム(BBゲーム)は,図9(B)のように表示されなければ,開始されないようになっている。なお,この引込制御は,右ドラム2cだけではなく,左ドラム2aや中ドラム2bのいずれの図柄に対しても行うようになっている。」
「【0094】
主制御部100は,変動表示ゲームのスタート信号を受信し,抽選結果がハズレとなって役が不成立の場合には,有効ライン上に当選役(ボーナスや小役)の図柄を揃えないための回避制御を行う。
【0095】
例えば,ビッグボーナス役が内部当選しておらず,停止した左ドラム2aと中ドラム2bの右斜め下の有効ライン上に図柄「7,7」が揃っている場合(所謂,「リーチ状態」である。)において,遊技者が「目押し」により,この有効ラインから1コマ以内に図柄「7」が位置する状態で停止ボタン10cが操作されたとき(例えば,「ビタ押し」と呼ばれている。図10(A)参照),主制御部100は,有効ライン上に「7,7,7」が揃わないように図柄「7」を一つ先まで移動させて強制的にハズレとする回避制御を行う(図10(B)参照)。なお,この回避制御は,右ドラム2cだけではなく,左ドラム2aや中ドラム2bのいずれの図柄に対しても行うようになっている。」
「【0105】
主制御部100は,遊技者により変動表示ゲームの開始操作が行われると,内部抽選を行い,その結果,上段チェリー(チェリー1)が当選した場合には,停止ボタンが操作された位置(タイミング)により,チェリー図柄の引込制御(図9参照)又は回避制御(図10参照)を行う。
【0106】
図31(B)は,引込制御の可能な範囲を示しており,主制御部100は,チェリー図柄が上段丁度の位置からその4コマ上の位置において停止ボタン10aが操作されると,窓部3の上段にチェリー図柄を停止させる。なお,実際には停止までに約36ms必要なのでその分だけ上に位置するが,説明の都合上このように記している。また,停止操作から190ms以内に停止することが規定されているので,4コマ滑らない場合もある。
【0107】
一方,図31(C)及び図31(D)は回避制御等が行われる範囲を示しており,主制御部100は,上段チェリーが当選した場合であっても,チェリー図柄が上段位置から4コマより上の位置(つまり,図31(A)の4よりも上の位置)又は上段位置を少しでも過ぎた位置において停止ボタン10aが操作されると,上段位置の一つ上又は下段位置の一つ下にチェリー図柄を停止させハズレとする。つまり,中段チェリー(チェリー2)又は下段チェリー(チェリー3)が当選していないので,チェリー図柄を強制的に窓部3の外に停止させなければならないのである。」
「【0134】
主制御部100は,図柄変動表示ゲームにおいてスタート信号を受信し,内部抽選結果がビッグボーナスの赤7図柄及びベルが同時に当選となって2つのフラグが立っている場合には,左ドラム2a及び中ドラム2bを図37(A)に示す様に停止させ,ライン9でベル及びライン10で赤7図柄のダブルリーチ状態とする。」
「【0142】
図38(A)に示す通り,右ドラム2c上の赤7図柄はコマ番号2であるから(図8参照),ビッグボーナスの赤7図柄及びベルが内部当選し,ダブルリーチ状態となっている場合,窓部3の最下段位置を計測基準とすると,主制御部100は図柄位置データ「3」及び入力パルス相データ「0」~「23」の範囲で停止ボタン10cが操作されると,図柄位置及び入力パルス相に関連付けて回転している図柄を停止させる位置を一つの図柄位置に対して少なくとも2つ以上記憶する図柄停止位置記憶テーブル(図38(B)参照)に基づいて,回転ドラムの停止制御を行う。つまり主制御部100は,変動表示ゲーム中に停止ボタンが操作されたタイミングで図柄位置データ記憶手段が記憶する図柄位置データ及び相データ記憶手段が記憶する入力パルス相データを認識するとともに,認識した図柄位置データ及び入力パルス相データに基づいて回転ドラムを停止させる制御を行って,図柄停止位置記憶手段が記憶する図柄(赤7図柄又はベル図柄)が下段に表示されるように回転ドラムを停止させる。」
「【0155】
例えば,本発明の回胴式遊技機の場合には,乱数値は0~65535の値をランダムにとり,低確率状態においてスタートレバー9が操作タイミングに合わせて図柄の抽選をしたとき,乱数値が0~m1の範囲であればビッグボーナス(BB)図柄が当選となる。同様に,高確率状態において図柄の抽選をしたとき,乱数値が0~n1の範囲であればビッグボーナス図柄が当選となるが,m1<n1の関係になっているので,高確率状態の方が低確率状態よりもビッグボーナス図柄が当選しやすくなっている。また,レギュラーボーナス図柄及びストックしているボーナスゲーム(乱数抽選により非常に高い確率で当選したボーナスゲームで,ストックする最大数は例えば255個である。)の放出契機となる十字架図柄が当選する確率も,m3<n2及びm5<n3の関係になっているので,高確率状態の方がボーナス図柄は当選しやすくなっている。なお,ボーナス図柄や十字架図柄が当選した場合には,RAM102のフラグエリアにフラグ1を立て,図柄が有効ライン上に揃うまでクリアしないので,遊技者は必ず所定の図柄を揃えてビッグボーナスゲームやドラキュラミッション(大当り前兆モード)等へ突入することができる。ただし,十字架図柄が有効ライン上に揃わなくても,所定ゲーム数が消化されると,ドラキュラミッションが自動的に開始される。」
「【0160】
抽選テーブルとしては,出玉率の段階設定値1~6(この図では,設定1~設定6と標記している。)及び投入メダル数に対応した6つの抽選テーブル1,抽選テーブル2…抽選テーブル6があり,主制御部は段階設定部150により設定された段階設定値及び投入メダル数に応じて抽選テーブルを選択し,変動表示ゲームにおいてボーナスゲームや複数の小役の内部抽選を実行する。なお,内部抽選でボーナスゲームが当選する期待値は,上記低確率状態及び高確率状態で説明した様に,抽選テーブル1<抽選テーブル2<…<抽選テーブル6となっているので,遊技者は高設定台を求めるのである。」
「【0162】
BB(ビッグボーナス)とは,「赤7」又は「青7」のBB図柄が有効ライン上に揃った場合の役名であり,これが揃うと15枚のメダルが獲得されるとともに,対応するフラグエリアにフラグ1を立ててビッグボーナスゲーム(BBゲーム:役物連続作動装置の作動)に突入する。」
「【0164】
スイカ図柄又はチェリー図柄が有効ライン上に揃った場合には,それぞれ5枚又は2枚のメダルが獲得されるとともに,低確率状態にいる場合には,高確率状態へ移行させるための昇格抽選がおこなわれる。更に,低確率状態から高確率状態へ移行した場合,抽選で決定されたスイカ図柄又はチェリー図柄の一方で,夜画面(第二表示ステージ)から昼画面(第一表示ステージ)へ画面表示が切り替えられる。なお,低確率状態から高確率状態へ移行した場合でも,画面表示切り替えの抽選に当選した場合にのみ,第二表示ステージから第一表示ステージへ切り替えることもある。」
「【0166】
リプレイとは,リプレイ図柄が有効ライン上に揃った場合の役名であり,これに対して通常はメダル獲得がされず,フラグエリアにフラグ1を立て,遊技者のスタートレバー9の操作によりリプレイ動作を行ってフラグを下げる(即ち,0とする)。つまり,次回のゲームはメダルを投入することなく行うことができる一方,高確率状態にいる場合には,低確率状態へ移行させるための降格抽選がおこなわれる。」
「【0215】
次に,主制御部100は,ステップS240において,変動表示ゲームのメイン処理を実行する。例えば,遊技者が所定数のメダルを投入後,スタートレバー9を操作すると,スタートSWセンサ110からスタート信号が出力されるので,まずワークRAM領域に記憶している段階設定値のデータが0~5(メダル払出枚数表示LED4cに表示される段階設定値は各々1~6に対応する)の範囲内にあるか否かを確認する。
【0216】
主制御部100は,段階設定値が所定の範囲内になければ,表示演出装置11,スピーカ部12及び遊技状態表示LED部13により警告(「EE」エラーの文字表示,発光及び警告音)を発生させてエラー処理を行わせる一方,所定の範囲内にあれば,以下で説明する乱数抽選を行って変動表示ゲームを続行する。
【0217】
この「EE」エラーが発生した場合,パチンコホール等の店員は設定変更スイッチの操作を行って,段階設定値を所定範囲の中から1つ選択して新たにRAM102に記憶させると,その後主制御部100は,新たに記憶した段階設定値を使用して変動表示ゲームの当落を決定する。また,主制御部100は,段階設定値を新たにRAM102に記憶させる場合,段階設定値をメダル払出枚数表示LED4cに表示しない。その一方,段階設定値に応じた音や映像(例えば,段階設定値「1」の場合,「ピッ」という音又は1匹のコウモリが表示演出装置11に表示される。)により間接的に表示される。そして,RAM102に記憶している制御データは,ROM101が記憶する制御データの初期値に書き換えられてリセット(初期化)される。
【0218】
他の実施例としては,「EE」エラーが発生した場合,パチンコホール等の店員が設定変更スイッチの操作を行って段階設定値を所定範囲の中から1つ選択したとき,副制御部160は主制御部100から受信した段階設定値と内蔵RAMに記憶する段階設定値とが一致した場合,一致した旨を表示又は報知する。例えば,副制御部160は,表示演出装置11に「開店時の段階設定値と一致しました。」を表示して,及びスピーカ部12からビープ音を発生させたり,音声で「開店時の段階設定値と一致しました。」の報知を繰り返す。その後,主制御部100は,副制御部160が一致した旨を表示又は報知している状態で,段階設定部150が操作された場合,送信した段階設定値を新たにRAM102に記憶させるとともに,新たに記憶した段階設定値を使用して変動表示ゲームの当落を決定する。この様にすることで,遊技者は安心して遊技を続行できる。」
「【0233】
そして,主制御部100は,一般遊技の各変動表示ゲームにおいて,同一図柄が有効ライン上に並んで窓部3に表示されれば入賞とし,図15に示す配当表に従って,遊技メダルをメダル払出装置(一般に「メダルホッパー」と呼ばれている。)から払い出し,メダル払出口16より排出して,ステップS250に移行する。なお,ビッグボーナスゲーム(BBゲーム)においては,直ちに6ゲームで1セットのRBゲーム(ジャックゲーム又は第一種特別役物)が繰り返し作動され,獲得枚数が375枚を超えた時点でBBゲームモードを終了する。また,レギュラーボーナスゲーム(RBゲーム)においては,6ゲームのジャックゲームを実行し,RBゲームモードを終了する。」
(3) 甲2の記載
甲2(パチスロ攻略マガジン,2006年4月号,42ないし44頁)には,次のとおりの記載がある。
「『萌え系パチスロ』の急先鋒『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』。本誌では,キャラや演出がコミカルで愛らしさ満点な本機の中身を暴くべく,解析&シミュレートを敢行。その結果,驚愕の事実が判明した!技術介入性の高さは既報の通りだが,内部数値をもとにシミュレートしたところ,完璧にプレイされた場合と適当に打った場合とでは,PAYOUTに8%もの差が生じたのだ!
その詳細はP44を見て頂きたいが,はやる気持ちを抑えつつ,まずは内部システムを把握しよう。本機最大の特徴は,スイカと1枚役の取りこぼし時に停止する「RT目」だ。出現後2P間のリプレイ確率がアップするのだが,ボーナス後60PのRT中に揃うと,逆にパンクしてしまう要因となる。そして,このRT目の存在が,高い技術介入性を生み出す要因でもある!」
「RTがゲーム性の核!」
「ボーナス終了後 → 60PのRT突入」
「RT目出現後 → 2PのRT突入」
「ボーナス成立後 → ボーナスを揃えるまでリプレイ確率アップ」
「RT目出現時はボーナス成立のチャンスだが,どのみちリプレイ確率がアップするため,ボーナス成立か否かはわからない。」
「RT中のリプレイ確率(解析値)」
「60PRT中 1/1.820」
「2PRT中 1/1.560」
「ボーナス成立時 1/2.427」
「役の構成」
「赤7・赤7・赤7」「BIG BONUS + 60PのRT」
「青7・青7・青7」「CT + 60PのRT」
「白/黒ムギまる・白ムギまる/スイカ・スイカ」「2PのRT」
「RT消化手順」
「ボーナス後のRTはRT目を揃えると2Pで終了!」
「打ち方ひとつで大きな差が付く!」
「次に,本機の最重要ポイント「打ち方」について解説しよう。通常時はスイカを取りこぼさず,1枚役をRT目で揃える上記手順がベストだ。左右の停止位置でRT目を取りこぼす場所があるので注意。一方,ボーナス後の60PRT中はRT目が揃うと2Pに書き換えられてしまう。このRTが本機の出玉能力の中核なので,絶対に途中で終わらせないように。特に,連続演出中は予告音が発生しないため,RT目が揃わない逆押し青7狙い(スイカ中段テンパイ時は左・スイカ狙い)で消化しよう。そして,ボーナスの完璧消化は1回あたりの効果が少ないものの,ボーナス回数が多くなる本機では積み重ねで大きな差となるぞ。」
「通常時の打ち方」
「通常時の小役確率」
「解析値(設定1~6)」「リプレイ役 1/7.300」
「オヤジ打ち(8263P)」「リプレイ役 1/7.35」
「ボーナス消化手順」
「CTMAX打法手順」「終了条件:払い出し224枚を越えると終了」
「BIG消化手順」「終了条件:払い出し345枚を越えると終了」
(4) 甲3の記載
甲3(パチスロオリジナル必勝法スペシャル 2006年4月号(2006年4月1日発行))には次のとおりの記載がある。
「小役&ボーナス同時当選機能だムギー」
「5号機の特徴である小役とボーナスの同時抽選がメイン。対象はチェリー・スイカ・1枚役と,それらの取りこぼしで出るプチRT目だ。チェリーはBIG確定なので,スイカとプチRT目に注目しよう」
「RTについての処方せん」
「・BIG・CT後に必ず突入」,「・RT中はリプレイ確率がアップ」,「・RTは60G消化,ボーナス成立,又はプチRT絵柄揃いで終了」,「BIG・CT後は60GのRTに入る。順押しだとプチRT目で終了するので注意」
「プチRT絵柄の処方せん」
「プチRT絵柄とは?」「一枚役,スイカ,チェリーの取りこぼし時に出現 ・ボーナス成立時に出現」
(5) 甲35の記載
甲35(特開2006-15000号公報)は,その明細書及び図面の記載からみて,「抽選で再遊技役が当選する確率を高くした状態を解除する条件に,遊技性のある内容を含ませることにより,遊技者の遊技に対する関心や新鮮味を長く継続させることのできるスロットマシンを提供すること」を目的として,特に「所定の開始要件を達成したときに,前記遊技の態様を,前記役抽選手段により前記再遊技役が当選する確率がより高い値に設定された再遊技選択高状態に変更し,前記再遊技選択高状態に変更後,所定の解除要件を達成したときに,前記再遊技選択高状態を解除する再遊技選択高状態制御手段と,を含み,前記解除条件に,前記役抽選手段により所定の役に当選し,かつ前記所定の役に対応した図柄が停止したときに前記再遊技選択高状態を解除すること」により,「所定の役に当選し,かつ所定の役に対応した図柄が停止したときに,再遊技選択高状態を解除するようにすることによって,遊技者は再遊技選択高状態を解除させるか否かについて,遊技的な面白さを体験することが可能であり,遊技に対する興味を持続させることが期待できる。」(【0026】)としたものである。
(6) 甲36の記載
甲36(特開2006-68443号公報)は,その明細書及び図面の記載からみて,「抽選で再遊技役が当選する確率を高くした状態を解除する条件に変化を与え,更に遊技性のある内容を含ませることにより,遊技者の遊技に対する関心や新鮮味を長く継続させることのできるスロットマシンを提供すること」を目的として,特に「所定の開始要件を達成したときに,前記遊技の態様を,前記役抽選手段により前記再遊技役が当選する確率がより高い値に設定された再遊技選択高状態に変更し,前記再遊技選択高状態に変更後,所定の解除要件を達成したときに,前記再遊技選択高状態を解除する再遊技選択高状態制御手段と,を含み,前記解除要件に,所定の図柄が停止したときに,前記再遊技選択高状態を解除することが含まれる場合において,遊技者が,前記所定の図柄が停止するのを回避して前記再遊技選択高状態を継続させる手段をとることができること」とすることにより,「遊技者は,例えばリールの停止操作によって,所定の図柄が停止することを意図的に回避することができる。従って,遊技者は,遊技的な面白さを感じながら,有利な遊技状態を継続させることができるので,遊技者の遊技に対する関心を高め継続させることが期待できる。また,報知画像によって,遊技者は所定の図柄について情報を得ることができるので,その情報に基づいて,所定の図柄が停止するのを回避させ,再遊技選択高状態を継続して行なうことができる,従って,遊技者の遊技に対する関心を高めることが期待できる。」(【0030】,【0031】)としたものである。
2 取消事由1(訂正事項1及び訂正事項6についての訂正の可否)について
(1) 原告は,審決には,本件訂正前の「情報報知手段」の認定は,技術的意義について誤りがある旨主張する。
この点,審決は,「情報報知手段」は,遊技者に対して利益が損なわれる可能性があることを報知して,未然に不利な状態に転落することを防ぐことができるようにしたものであって,本件明細書【0015】,【図19】の記載を踏まえると,長期有利状態中に短期有利表示結果が導出されると,短期有利状態に転落するものの,長期有利状態の残りゲーム数が3ゲーム以下であれば,そのことによって少なくとも遊技者にとって不利益が生じることはなく,報知を行わないとしたものであると認定した。
本件特許発明は,「長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に応じて回避できるものとすることで,技術介入性を高めるとともに遊技の戦略性を高くしたスロットマシンを提供すること」を達成するために,「長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報を報知する情報報知手段をさらに備える」ことにより,「長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に応じて回避できるものとすること」としたものである。
その際の具体的態様として,本件明細書には,「長期有利状態に制御されているときには,短期有利表示結果を導出させない方が遊技者にとって有利なものとなる場合がある。」(【0010】),「前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる利益よりも大きいことを条件として,前記所定の情報を報知するものとしてもよい。一方,前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで前記所定の情報を報知するものの,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる利益よりも小さいときには,その旨を示す情報も併せて報知するものとすることができる。」(【0015】)と記載されている。
これらの記載によれば,本件特許発明では,一般的には,「長期有利状態」が遊技者にとって有利で,「短期有利状態」が遊技者にとって不利であるので,「情報報知手段」の報知によって,「長期有利状態から短期有利状態への移行を遊技者の技量に応じて回避できるものとすること」としているものではあるが,本件特許発明では,「長期有利状態」は,遊技者にとって必ずしも有利な状態でない場合があることを前提としており,そのような場合,「前記情報報知手段は,前記長期有利状態に制御されているゲームで,該長期有利状態の残りゲーム数の間に得られる利益が前記短期有利状態において得られる利益よりも大きいことを条件として,前記所定の情報を報知するものとしてもよい。」(【0015】)とした選択肢を用意しているものと理解される。
また,本件明細書には「上記の実施の形態では,RT残りゲーム数が4以上であるときのみにSRT可能性報知を行うものとしていた。すなわち,レギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選していても,他の遊技状態にあるときにはSRT可能性報知を行うことはなかった。もっとも,レギュラーボーナスまたはビッグボーナス以外の遊技状態でレギュラーボーナス,ビッグボーナス(1)またはビッグボーナス(2),並びに/もしくはスイカに当選しているとき,すなわち新たにショートRTに遊技状態が制御される可能性があるときには,全てSRT可能性報知を行うものとしてもよい。」(【0288】)との記載があり,RT残りゲーム数が4以上であるときのみ報知する態様とRT残りゲーム数に限らず報知する態様の双方を許容している。
そうすると,本件訂正前の「情報報知手段」は,「長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたときに,所定の情報(SRT可能性報知)を報知する」ものであるが,その報知条件として,「長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定されたとき」に必ず報知することのみならず,他の条件をも加味して報知することをも包含していると解するべきであって,この点についての審決の認定,判断に誤りはない。
(2) また,原告は,本件訂正は,本件特許発明1は,技術介入性の高いものであったのに対して,本件訂正発明1は,技術介入する余地がなく,本件訂正は特許請求の範囲の実質的拡張・変更に当たるので不適法である旨の主張をする。
前記(1)のとおり,本件訂正前の「情報報知手段」は,ある条件が成立したときに必ず報知するものと,ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したときに初めて報知するものとの双方を含むものである。
訂正事項1は,前記第2,2(3)アのとおり,「前記長期有利状態に制御されているゲームで前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨が決定された」場合において,長期有利状態の中で2つに場合分けをして,「前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合」と「前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたとき」に分けて,前者の場合には,所定の情報を報知しないで,後者の場合には,必ず前記所定の情報を報知するようにしたものである。
このように,訂正事項1は,本件訂正前の「情報報知手段」が,ある条件が成立したときに必ず報知するものと,ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したときに初めて報知する(他の条件によっては報知しない)ものとの双方を含んでいたのに対し,訂正によって,これを「ある条件が成立したときに必ず報知するもの」と,「ある条件が成立し,さらに他の条件が成立したときに初めて報知する(他の条件によっては報知しない)」ものに分けたと解することができる。
以上のとおり,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また,訂正事項1は,特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
訂正事項6は,訂正事項1の訂正に伴い,本件明細書の関係箇所を訂正事項1と整合させるための訂正であり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
(3) よって,訂正事項1及び訂正事項6に係る本件訂正を適法な訂正であると認定判断した審決に誤りはない。
3 取消事由2(相違点10についての容易想到性判断の誤り)について
(1) 原告は,相違点10に係る構成は,甲1発明に甲2発明及び甲3発明を組み合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術を組み合わせることにより,容易に想到することができた旨を主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり採用することはできない。
すなわち,甲2や甲3には,本件訂正発明のように,長期有利状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという前提の下に,情報報知手段は,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数以下である場合には前記所定の情報を報知しない一方,前記長期有利状態の残りゲーム数が前記所定ゲーム数よりも多い場合には前記事前決定手段により前記特定表示結果と前記短期有利表示結果の導出を許容する旨の決定がされたときに必ず前記所定の情報を報知する技術について,記載及び示唆はない。
また,原告が周知技術を示すものとする甲35及び甲36には,遊技者にとって不利な図柄の導出の可能性を,遊技状態の途中までは報知するが途中からは報知しない,という技術思想についての記載はあるが,本件訂正発明のように,長期有利状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという技術についての記載はない。
そうすると,相違点10に係る構成は,甲1発明に甲2発明及び甲3発明を組み合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術を組み合わせることにより,容易に想到することができたとは認めることができない。
(2) これに対して,原告は,甲35及び甲36は,ボーナス遊技の終了直後に開始されたリプレイタイムにおいて,遊技開始から所定回数までは,解除図柄(所定の図柄)の当選を遊技者に報知して遊技者が解除図柄の導出を意図的に回避できるようにする一方,前記所定回数を超えると,解除図柄の当選を遊技者に報知しない技術を開示しているなどと主張する。
しかし,原告の主張は,採用することができない。すなわち,本件訂正発明における長期有利状態は,「長期有利状態」及び「短期有利状態」が存在している上で,長期有利状態中にある図柄が出現すると短期有利状態に移行するという前提の下における長期有利状態であるので,甲35及び甲36におけるボーナス遊技の終了直後に開始されるリプレイタイムが,本件訂正発明における長期有利状態に相当すると解することはできない。
また,原告は,甲2には,現在のリプレイタイムの残りゲーム数と新たに開始されるリプレイタイムの継続ゲーム数が一致することをもって遊技者に不利益を与えないという技術が開示されており,周知技術において開示されている非報知の期間を短期有利状態に一致させることについて十分な動機が存在する旨主張する。
しかし,原告の上記主張も採用することができない。すなわち,甲2には,2PのRT中において所定の情報を報知しないとの技術事項が記載されているにすぎず,リプレイタイムの総ゲーム数が遊技者にとって不利益であるかの価値判断の下,所定の情報に相当する予告音を意図的に報知しないとする技術,及びリプレイタイムとして継続するゲーム数が遊技者にとって不利益でないゲーム期間であれば所定の情報の報知を必要としない技術についての記載及び示唆はない。また,現在のリプレイタイムが途中で終了して別のリプレイタイムが新たに開始されることが,遊技者にとって不利益となるかの価値判断に基づいて所定の情報を報知しないとする技術についての記載及び示唆もない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
(3) 以上によれば,相違点10に係る構成が,甲1発明に甲2発明及び甲3発明を組み合わせることにより,又は,甲1発明に甲2発明,甲3発明及び周知技術を組み合わせることにより容易想到であるとは認めるに足りず,審決に原告の主張に係る違法があるとは認められない。
4 取消事由3(記載要件についての判断誤り)について
(1) 原告は,本件特許発明1(本件訂正発明1)の「ゲーム毎に前記可変表示装置の表示結果が導出されるより前に,特定表示結果及び短期有利表示結果を含む複数種類の表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段」は,発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,本件(訂正)明細書の【0101】【0103】には,「特定表示結果」に相当する「ボーナス」か「スイカ」に当選して導出が許容されたときに,「短期有利表示結果」に相当する「チャンス目」の導出も許容されることが記載されているから,「ボーナス」や「スイカ」と「チャンス目」とが導出を許容するか否か決定される複数種類の表示結果に含まれていることが記載されていると解される。導出が許容される対象に「短期有利表示結果」が含まれることは,本件(訂正)明細書の【0101】【0103】などの記載から明らかである。また,本件(訂正)明細書の【0101】【0108】【0110】の記載によれば,内部抽選においてボーナスやスイカに当選させて導出を許容するか否かの決定を行うことにより,ボーナスかスイカに当選して導出を許容する旨が決定されたときにチャンス目の導出を許容する旨も決定される旨の開示があると解するのが相当である。
したがって,原告の主張は採用の限りではない。
(2) 原告は,本件特許発明2(本件訂正発明2)の「前記事前決定手段は,前記有利状態とは異なる遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う特別表示結果と前記賭数の設定に遊技用価値を用いることなく次のゲームを行うことが可能となる再遊技表示結果との導出を許容するか否かを決定し」は,発明の詳細な説明に記載されていない旨を主張する。
しかし,この点の原告の主張も,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,本件特許発明2(本件訂正発明2)では,「特別表示結果」と「再遊技有利表示結果」とが,事前決定手段によって導出を許容するか否かが決定される表示結果であるとされているにすぎず,両表示結果を「同時当選し得る抽選対象役」と解釈すべき記載はない。かえって本件(訂正)明細書の【0113】【0115】には,「特別表示結果」に相当する「ボーナス」と,「再遊技表示結果」に相当する「リプレイ」とについて,導出を許容するか否か決定されることが記載されている。
したがって,原告の主張は,その前提を欠く。
(3) 原告は,本件特許発明4(本件訂正発明4)の「前記事前決定手段は,前記特別表示結果の導出を許容する旨を決定するときには,さらに該特別表示結果とも前記特定表示結果とも前記短期有利表示結果とも異なる第三表示結果の導出を許容する旨を決定するとともに」は,発明の詳細な説明に記載されていない旨の主張をする。
しかし,この点の原告の主張も,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,本件特許発明4において,「特別表示結果」と「短期有利表示結果」と「第三表示結果」とについて「抽選対象役」と解釈すべき記載はない。かえって本件(訂正)明細書の【0101】【0113】【0115】には,「特別表示結果」に相当する「ボーナス」と「短期有利表示結果」に相当する「チャンス目」との導出が許容されているときには,さらに「第三表示結果」に相当する「リーチ目」の導出も許容されることが記載されている。
したがって,原告の主張は採用の限りではない。
5 まとめ
以上のとおり,原告の主張に係る取消事由には理由がない。原告は,その他縷々主張するが,いずれも採用の限りではない。よって,原告の請求を棄却することとして主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 小田真治)
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