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知財高等裁判所 平成26年(ネ)10006号 判決 2014年5月29日

控訴人

訴訟代理人弁護士

大濱正裕

土生川千陽

石田達郎

被控訴人

株式会社扶桑社

被控訴人

Y1

被控訴人

Y2

上記3名訴訟代理人弁護士

加藤義樹

矢野京介

毛塚重行

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して3193万5000円及びこれに対する被控訴人株式会社扶桑社(以下「被控訴人扶桑社」という。)及び被控訴人Y1(以下「被控訴人Y1」という。)につき平成24年6月15日から,被控訴人Y2(以下「被控訴人Y2」という。)につき平成25年5月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)  訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人ら

主文同旨

第2事案の概要

1  本件は,控訴人が,被控訴人扶桑社の出版する原判決別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の表紙,帯及び本文には,その品質及び内容について誤認させるような表示をした部分があるから,本件書籍の出版は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項13号所定の不正競争及び平成17年法律第87号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)2条9項所定の不公正な取引方法(一般指定8項のぎまん的顧客誘因)に該当し,被控訴人らによる共同不法行為を構成すると主張し,被控訴人らに対し,不競法4条又は民法709条及び同法719条1項に基づき,逸失利益2593万5000円,慰謝料300万円及び弁護士費用300万円の合計3193万5000円並びに各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

原審は,原判決別紙表示目録1ないし3記載の各表示は,いずれも本件書籍の品質及び内容を誤認させる表示に該当するとは認められないから,本件書籍の出版は,不競法2条1項13号所定の不正競争に該当するものとは認められず,また,同様に本件書籍の出版は独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当せず,不法行為を構成するものとは認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,これを不服として控訴した。

2  前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1及び2並びに第3記載のとおりであるから,これを引用する(以下,原判決を引用する場合は,「原告」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と,それぞれ読み替える。)。

(1)  原判決13頁3行目末尾に,次のとおり加える。

「また,③A鑑定人による鑑定結果(甲77)のとおり,乙10ないし12の印影同士は相違印影である。乙10ないし12は,いずれも楽天証券における同じ部署において,同一人物によって,同一の印鑑によって処理されたものであると考えるのが自然であるから,本来,乙10ないし12の印影同士が異なるはずはない。したがって,乙10ないし12の印影同士が相違印影であるという事実は,乙10ないし12が偽造であることをうかがわせるものである。」

(2)  原判決13頁11行目冒頭から同頁26行目末尾までを削る。

(3)  原判決17頁9行目末尾に,改行の上,次のとおり加え,同頁10行目冒頭の「オ」を「カ」と改める。

「オ 控訴人は,乙10ないし12の印影同士が相違印影であることから,乙10ないし12の偽造が疑われる旨主張する。しかし,偽造をしようとする者が敢えて異なる印影を用いるというのは,不合理である。控訴人の上記主張は,失当である。」

(4)  原判決19頁22行目冒頭から同20頁5行目末尾までを削る。

第3当裁判所の判断

当裁判所も,本件書籍の出版は,不競法2条1項13号所定の不正競争に該当するものとは認められず,また,独禁法2条9項の不公正な取引方法に該当せず,不法行為を構成するものとは認められないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第4の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。

1  原判決の補正

(1)  原判決33頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 さらに,控訴人は,乙10ないし12の印影同士が相違印影であるところ,乙10ないし12は,いずれも楽天証券における同じ部署において,同一人物によって,同一の印鑑によって処理されたものであると考えるのが自然であるから,本来,乙10ないし12の印影同士が異なるはずはないことから,乙10ないし12の印影同士が相違印影であるという事実は,乙10ないし12が偽造であることをうかがわせるとも主張する。

しかし,楽天証券において使用している印鑑が,時期や対象者にかかわらず1個であるか否かが不明である上,控訴人が指摘する印影のずれはわずかなものであり(甲77),上記程度のずれが写し作成時に生ずることもあること,また,控訴人が指摘するように,乙10ないし12がいずれも偽造されたものであるとすれば,偽造しようとする者が敢えて異なる印影を作出して偽造をしたということになるが,そのような行動は,偽造の発覚を容易にするものであるから,偽造をしようとする者の行動としては不合理であり,これらのことからすれば,控訴人の指摘する上記の点も,乙10ないし12に押捺された印影が偽造されたものであることを認めるに足りるものではない。」

(2)  原判決33頁8行目冒頭の「b そのほか,」を次のとおり改め,同頁17行目冒頭の「c」を削り,同頁20行目冒頭の「d」を「c」と改める。

「b 乙13ないし16について

乙13ないし16は,楽天証券が顧客に交付したIDとパスワードを,顧客がパソコン画面に入力して初めて表示されるものである。このようなIDやパスワードは,印章と同様に,楽天証券において厳重に管理されているものであり(弁論の全趣旨),通常,楽天証券の関係者以外の者が上記IDやパスワードを入手して乙13~16の画像を見ることはできないものである。これに加えて,乙15(被控訴人Y2の母親名義口座)及び乙16(被控訴人Y2名義口座)については,各枝番のURLは一致しており,それぞれ同一人に係る該当ページを表示したものであると認められる。以上によれば,乙13~16は,いずれも真正に成立したものと推認される。

これに対し,」

(3)  原判決34頁21行目ないし22行目の「著者が大学生のときに」から同頁24行目ないし25行目の「合計3億円を超える差益金を得たことが認められる」までを次のとおり改める。

「著者が大学生のときに株取引で元手30万円をその1000倍の3億円に増やしたという点であると解されるところ,上記オ(ウ)a及びbでみたとおり,被控訴人Y2が,大学生に相当する年齢のときに,株取引により,平成15年2ないし3月当時,資産残高が30万円程度となった後,平成16年及び平成17年の2年間で,これをその1000倍以上の3億1941万円余りに増やしたという事実が認められる」

(4)  原判決36頁14行目「被告Y2が,」から同頁16行目「差益金を得たことが認められる」までを次のとおり改める。

「被控訴人Y2が,大学生に相当する年齢のときに,株取引により,平成15年2ないし3月当時,資産残高が30万円程度となった後,平成16年及び平成17年の2年間で,これをその1000倍以上の3億1941万円余りに増やしたという事実が認められる」

(5)  原判決36頁22行目冒頭から37頁18行目末尾までを削る。

2  結論

よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 設樂隆一 裁判官 西理香 裁判官 田中正哉)

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