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知財高等裁判所 平成26年(ネ)10022号 判決 2014年9月11日

控訴人兼被控訴人

株式会社クローバー・ネットワーク・コム

(以下「第1審原告」という。)

訴訟代理人弁護士

石嵜信憲

山中健児

柊木野一紀

林康司

補佐人弁理士

坂本智弘

被控訴人兼控訴人

株式会社ジンテック

(以下「第1審被告」という。)

訴訟代理人弁護士

飯塚卓也

田中浩之

野口明男

訴訟代理人弁理士

原島典孝

主文

1  第1審原告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

(1)  第1審被告は,第1審原告に対し,3847万9779円及びこれに対する平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)  第1審原告のその余の請求をいずれも棄却する。

2  第1審被告の本件控訴を棄却する。

3  訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを25分し,その2を第1審被告の負担とし,その余は第1審原告の負担とする。

4  この判決は,1(1)に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  第1審原告

(1)ア  原判決主文第2項及び第3項を取り消す。

イ  第1審被告は,原判決別紙物件目録2記載の装置(ただし,原判決別紙別件訴訟物件目録記載のものを除く。)を製造し,使用してはならない。

ウ  第1審被告は,その占有に係る前項記載の装置を廃棄せよ。

エ  第1審被告は,第1審原告に対し,4億7251万4444円及びこれに対する平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)  訴訟費用は,第1,2審とも,第1審被告の負担とする。

(3)  仮執行宣言

2  第1審被告

(1)  原判決中,第1審被告敗訴部分を取り消す。

(2)  上記部分につき,第1審原告の請求を棄却する。

(3)  訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告の負担とする。

第2事案の概要

1  本件は,第1審原告が,第1審被告による原判決別紙物件目録2記載の装置の製造及び使用が,第1審原告の有する特許権の侵害に当たる旨主張して,第1審被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,上記装置(ただし,原判決別紙別件訴訟物件目録記載のものを除く。)の製造及び使用の差止め並びに廃棄を求めるとともに,上記特許権侵害の不法行為に基づく平成19年8月17日から平成21年8月31日までの間の損害賠償金のうち5億円及びこれに対する不法行為後の日である平成21年10月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審が,上記不法行為に基づく損害賠償金2748万5556円及びこれに対する平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命ずる限度で第1審原告の請求を認容し,その余の請求を棄却したため,第1審原告及び第1審被告の双方が敗訴部分につきそれぞれ控訴した。

2  前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)  原判決6頁11行目冒頭から16行目末尾までを,次のとおり改める。

「2 争点

(1)  平成19年8月17日から平成21年8月31日までの間の第1審被告装置(以下「損害賠償対象装置」という。)の構成

・ 第1審被告装置の構成

・ 第1審被告が,第1審被告装置につき,原判決別紙別件訴訟物件目録記載のものと異なる構成を主張することは,信義則上許されないか

(2)  損害賠償対象装置が本件発明の技術的範囲に属するか

・ 第1審被告装置1~5の文言侵害の成否

・ 第1審被告装置5の均等侵害の成否

(3)  差止め及び廃棄の可否

・ 第1審被告装置6の文言侵害の成否

・  第1審被告装置6の均等侵害の成否

(4)  第1審被告が賠償すべき第1審原告の損害額

・ 特許法102条2項の規定の適用の可否

・ 損害額の算定

・ 被告が得た利益額

・ 推定の覆滅事由及び本件発明の寄与度」

(2) 同6頁26行目の「被告装置であるから,」を「第1審被告装置であり,第1審被告の後記主張も全く別異の装置というわけではなく,一定の共通性を有するものであって,本件訴訟と別件訴訟とは高い関連性,密接性を有するのであるから,」と改める。

(3)  同7頁11行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「(エ) 平成25年1月から同年2月(第1審被告が第2設計変更をしたと主張する時期より後である。)に,日本政策金融公庫が「電話番号使用履歴参照サービスの調達」の入札手続を実施したが,同手続における充足証明書の内容や第1審被告が作成し提出した説明資料(乙240)の記載に照らしても,平成24年4月の第2設計変更の前後において,第1審被告装置の調査対象は変わっていないし,上記入札の条件である「全ての電話番号から成るデータベースについて過去3年以上のデータを蓄積していること」を第1審被告装置が満たしているとすると,第1審被告装置5の調査対象の限定に係る第1審被告の主張も真実ではないこととなる。これらのことからも,第1設計変更に関する第1審被告の主張は虚偽というべきである。」

(4)  同7頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,第1審被告が主張する上記各構成はいずれも根拠のあるものである。第1審原告は,日本政策金融公庫が行った公募手続の際に第1審被告が提出した資料(乙240)等から,第1審被告の主張が虚偽であるなどと主張するが,上記資料には,サンプリングの手法によって使用中の電話番号についてはカバーできている旨の記載があるだけであり,第1審被告の主張が虚偽であることを窺わせるものではない。」

(5)  同9頁3行目の「判決後に」から5行目末尾までを「別件控訴審判決後にDVDドライブを取り外したからといって,「番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」が機能した結果ないし効能(既存のデータ)が第1審被告の製品から取り除かれていない以上,構成要件Aの充足性が否定されるものではない。」と改める。

(6)  同10頁20行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,実施態様(a)においてはハードディスクに登録された既存のデータを利用しており,実施態様(b)においても,番号を自動生成するプログラムはハードディスクに登録されており,市外局番と市内局番について新たな総務省からの割当てのたびに装置のハードディスクに手動で入力し,連続するあらかじめ電話番号が存在すると想定される下4桁の番号を付加した電話番号を一つずつハードディスクに自動生成するものであるから,「ハードディスクに登録する手段」は本件発明と第1審被告装置5の相違点ではない。」

(7)  同18頁16行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 特許法102条2項による推定の一部覆滅事由としての寄与割合を判断するに当たっては,需要者の選択購入の動機,侵害部分の顧客吸引力,侵害部分の製品全体に対する不可欠性,需要度等が考慮要素となるが,基軸的な判断要素と解されるのは需要者の選択購入の動機である。本件装置の機能や用途によるサービスの需要者は,銀行・信用金庫・農協,証券会社,クレジット会社など多岐にわたっているが,第1審原告と第1審被告との取引先や導入実績は,上記の業種・業態にほぼ一致しており,両者が提供するサービスはその市場において具体的かつ現実的な競合関係に立っている。したがって,本件侵害行為とその役務を需要者が購入することとの因果関係は強いものというべきである。

第1審被告は,自らの3件の特許発明を実施していることのほか,後記のとおり,顧客の6割以上が本件特許登録前からの取引先であること,同種サービスが多数存在していること,本件発明と同様の調査データをとる方法として第1審被告装置5の実施態様(b)等の代替方法があることなどを主張するが,いずれも第1審被告の利益に対して本件特許の寄与が低いことの根拠とはならない。」

(8)  同20頁13行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,第1審被告の顧客は,特許侵害行為前からの顧客が多数を占めることは前記アのとおりであるが,第1審被告装置2~4の使用期間に取引が開始された新規の顧客について,その固定電話情報関連の売上げを合計してみても,その固定電話情報関連の売上げに対する割合は8%程度にすぎない。」

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,(1) 第1審被告装置は,① 平成18年3月から平成19年8月末日まで,② 同年9月から同年11月末日まで,③ 平成20年1月から同年10月末日まで,④ 同年11月から平成21年2月25日まで,⑤ 同月26日から同年8月31日(損害賠償請求の終期)までの各期間ごとに,原判決別紙第1審被告装置目録1~5記載のとおりの構成であった,(2) 第1審被告装置2~4は本件発明の技術的範囲に属するが,第1審被告装置1及び5は文言上本件発明の技術的範囲に属せず,第1審被告装置5は本件発明と均等なものともいえない,(3) 第1審被告装置6も文言上本件発明の技術的範囲に属せず,本件発明と均等なものともいえないから,差止め及び廃棄請求には理由がないと判断するが,原判決と異なり,(4) 第1審原告の損害賠償請求については,3847万9779円及びこれに対する平成21年10月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は,後記のとおり原判決を補正するほかは(掲記した証拠のうち,枝番のあるものはそれを含む。),原判決「事実及び理由」の第3の1ないし4記載のとおりであるからこれを引用する。

2  原判決の補正

(1)  原判決20頁26行目末尾に,改行の上,「 第1審原告は,第1審被告が第1審被告装置の構成について別件訴訟と異なる主張をすることは,正義に反し,信義則上許されないと主張するので,まず,この点につき検討する。」を,同21頁26行目末尾に「したがって,第1審原告の上記主張は採用することができない。」を,それぞれ加える。

(2)  同22頁15行目の「証拠はないことから,」を「証拠はないこと,(エ) 日本政策金融公庫が実施した入札手続における充足証明書の内容や第1審被告作成に係る説明資料の記載及び上記入札の条件に照らすと,第1設計変更に関する第1審被告の主張が真実とは認められないことなどから,」と改める。

(3)  同22頁24行目から同頁25行目の「提出していることに照らすと,」を「提出しており,これを覆すに足りる証拠もないこと,また,(エ)については,上記(ウ)判示の点に加え,第1審被告装置5の構成における調査対象が同装置の構成に関する認定と直接関係するものではなく,上記各文書の記載内容も同装置の構成と直接関連するものではないことに照らすと,」と改める。

(4)  同34頁19行目の「そのものであり,」の次に「「番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」が機能した結果ないし効能(既存のデータ)が第1審被告の製品から取り除かれていない以上,」を加える。

(5)  同35頁2行目末尾に「そして,設計変更後の装置に本件特許権を侵害する第1審被告装置2~4により得られたデータが残存していたとしても,本件発明がこのようなデータそのものを発明の構成要素とするものではない以上,構成要件充足性の判断に影響を及ぼすものではない。」を加える。

(6)  同38頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。

「 なお,第1審原告は,実施態様(a)及び(b)のいずれについても,「ハードディスクに登録する手段」は本件発明と第1審被告装置5の相違点ではないとして種々主張するが,実施態様(a)について,ハードディスクに登録された既存のデータを利用することは,新たにハードディスクにデータを登録するものではない以上,「ハードディスクに登録する手段」には該当しないし,実施態様(b)において,新たな総務省からの割当てのたびに手動で装置に入力される市外局番と市内局番が装置のハードディスクに入力されることや,一つずつ自動生成される連続するあらかじめ電話番号が存在すると想定される下4桁の番号を付加した電話番号がハードディスクに自動生成されることについては,これを認めるに足りる証拠もない以上,第1審原告の上記主張は採用することができない。」

(7)  同38頁23行目の「そこで判断するに,」を「そこで,「番号テーブル」の内容を備えていればその利用方法は当業者が適宜選択することで足りる旨の第1審原告の前記主張について,更に判断するに,」と改める。

(8)  同39頁13行目の「発したこと,」の次に「上記引用例(乙180)の発明の詳細な説明にはクリーニング処理しようとする電話番号リストをメモリに読む込む手段の開示があり,実施例には,クリーニングしようとする電話番号リストが,フロッピーディスクに所定のフォーマットで記録されて与えられ,そのディスクをフロッピーディスク装置にセットし,キーボードからリスト名を指定してクリーニングの指令を与えると,CPUが指定された電話番号リストをフロッピーディスクから読み取ってメモリに格納し,クリーニングを開始する技術が開示されていること,」を加える。

(9)  同43頁2行目の「239」の次に「,241」を加え,同頁20行目の「着信音等」を「着呼音(呼び出し音)等(ただし,前記2(2)イの説示のとおり,本件特許の「接続信号」は可聴音に限定されるものではない。)」と改める。

(10)  同44頁1行目末尾に「また,同期間における第1審被告の売上げにおいて,これら本件特許の設定登録前からの顧客の占める割合(乙第241号証に添付された計算表において,第1審被告装置2~4についての「①既存」の固定電話分の売上げの合計額を「①既存」,「②切替」及び「③新規」の固定電話分の売上げの合計額で除したもの)は,81.5%であった。」を加える。

(11)  同44頁10行目の「甲15,」の次に「33~36,39~41,43,44,乙164,」を加え,同頁18行目冒頭から23行目末尾までを,次のとおり改める。

「 第1審被告事業を含むサービスには,リアルタイムに特定の電話番号の利用状況を発呼調査するものと,定期的に行った電話番号の利用状況の調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するものとがある。これらの調査結果は,銀行,生命保険,クレジットカード会社,消費者金融,証券会社,通信販売,小売りサービス等において,申込みの審査,ダイレクトメールや電話勧誘等に利用されているが,第1審原告と第1審被告とは,取引先の多くが競合している(甲39,40)。

なお,上記のとおり,同種サービスを提供する業者も多数存在するが,定期的に行った電話番号の利用状況の調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するサービスを提供する業者は,第1審原告及び第1審被告のほかには,証拠上,ほとんど見当たらない。」

(12)  同44頁24行目冒頭から45頁8行目末尾までを,次のとおり改める。

「イ 特許法102条2項は,特許権者における損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定であるが,損害の発生の事実を推定するものではないから,同規定を適用するためには,特許権者において損害発生の事実が認められることが必要であるところ,同規定が置かれた趣旨に照らすと,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在することをもって,損害発生の事実があるものとして,同規定の適用が認められるものと解される。

そこで検討すると,第1審原告は,電話番号の調査を必要とする顧客に対し,第1審原告装置を使用して蓄積された電話番号の利用状況履歴データベースを提供している(前記ア(イ))が,第1審原告装置は電話番号の一部を調査対象から除外するものであるから,それ自体は構成要件Aを構成要素とする本件発明の実施品には当たらないとしても,本件発明の実施品を使用したサービスと競合するサービスの提供をしているものであること,第1審被告は本件発明を実施して顧客にサービスを提供していること(前記ア(ア)a),第1審原告と第1審被告とは市場において同種の事業を行っており,取引先も競合していること(前記ア(ウ))などの事情を勘案すると,第1審原告によるサービスの提供が本件発明を実施して得られたデータに基づかないものであるとしても,本件において,第1審原告には,侵害者による侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情があるものと認めるのが相当である。」

(13)  同45頁16行目の「①については,」の次に「すでに説示したとおり,本件発明の実施には当たらないとしても,」を,同頁19行目の「(後記参照),」の次に,「上記説示のとおり,第1審原告が市場において第1審被告と競合する同種の事業を行っているところ,他方で」を,それぞれ加える。

(14)  同48頁26行目冒頭から49頁20行目末尾までを,次のとおり改める。

「(4) 特許法102条2項の規定により損害の額を算定するに当たっては,第1審被告が得た利益のうちに当該特許発明の実施以外の要因により生じたものと認められる部分があるときは,同項による推定を一部覆滅する事情があるものとして,その分の額を損害の額から減ずるのが相当である。

これを本件についてみると,第1審被告の侵害の態様は前記(2)ア(ア)aで認定したとおりであるが,第1審被告は本件特許の登録前から同種サービスを提供しており(前記(2)ア(ア)c),第1審被告装置1は本件特許を侵害するものではなかったこと(前記2(2)ア(イ)a),第1審被告は保有する3件の特許権に係る特許発明を実施しており,その提供するサービスについて,能率と費用の面でより効果的なものとしていること(前記(2)ア(ア)b),本件発明と同様の調査データを取得し得る方法として,本件特許の侵害とならない方法によることが困難なものとは認められないこと(例えば,被告装置5の実施態様(b)。前記2(2)ア(イ)c,(3))などからすると,本件発明の技術的意義はさほど高いものではなく,第1審被告事業による利益に対する本件特許の寄与は,相当限定的な範囲にとどまるものと認めるのが相当である。

加えて,特許権侵害期間における第1審被告の顧客55社のうち35社(約63%)が本件特許権の特許登録前からの顧客であり,また,固定電話分の売上げの約8割がこれらの顧客によるものであるところ(前記(2)ア(ア)c),第1審被告による本件発明の実施の影響が新規顧客のみに限定されるものではないとしても,本件発明の実施に対応して需要者が何らかの具体的な選択をしたことをうかがわせるような証拠もないことに照らすと,上記の顧客の状況については,第1審被告事業の利益に対する本件発明の寄与を更に限定する要素と認めざるを得ない。

第1審原告は,寄与割合を判断するに当たっては,需要者の選択購入の動機が基軸的な要素として重視されるべきであると主張するが,上記のとおり,その主張を認めるに足りる証拠はなく,本件においては,第1審原告の上記主張は採用することができない。

また,本件においては,市場に同種のサービスを提供する業者の存在が認められる(前記ア(ウ))。しかし,定期的に行った電話番号の利用状況の調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するサービスに関しては,第1審原告と第1審被告のほかにサービスを提供する業者は,ほとんど見当たらないこと(前記ア(ウ))からすると,上記の点は,推定を覆滅する要素として重視することはできない。

以上の各事情に加え,第1審原告及び第1審被告の主張に照らし,本件の証拠上認められる一切の事情について検討すると,上記第1審被告の利益が特許権侵害による第1審原告の損害額であるとの推定を一部覆滅する事情があると認められ,その割合は65%と認めるのが相当である。

そうすると,特許法102条2項の規定に基づいて算定される損害額は,前記(3)において認定した利益額9994万2225円に35%を乗じた3497万9779円となり,第1審原告がこれを上回る損害を被ったことを認めるに足りる証拠はない。

(5) 次に,第1審被告の本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用については,第1審原告の損害額,本件事案の難易度,審理の内容,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,350万円と認めるのが相当である。」

第4結論

以上によれば,第1審原告の請求は,損害賠償請求につき主文掲記の限度で理由があり,その余は理由がないから,これに反する原判決を主文の限度で変更することとし,また,第1審被告の控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井忠雄 裁判官 西理香 裁判官 神谷厚毅)

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