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知財高等裁判所 平成26年(行ケ)10112号 判決 2014年12月08日

原告

軽井沢ブルワリー株式会社

訴訟代理人弁護士

生田哲郎

高橋隆二

森本晋

佐野辰巳

中所昌司

尾原央典

弁理士

濱田百合子

北島健次

山下彰子

被告

株式会社星野リゾート

被告

株式会社ヤッホーブルーイング

両名訴訟代理人弁護士

三好豊

上村哲史

桑原秀明

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1原告の求めた裁判

特許庁が無効2013-890029号事件について平成26年3月28日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

本件は,商標登録無効審決の取消訴訟である。争点は,原告の有する本件商標と被告らの業務に係る商品との混同を生じるおそれの有無(商標法4条1項15号)である。

1  本件商標

原告は,次の商標(本件商標)の商標権者である。(甲1,16,17)

「 軽井沢浅間高原ビール 」(標準文字)

①  登録番号  第5519499号

②  出 願 日  平成23年 5月30日

③  登 録 日  平成24年 9月 7日

④  商品及び役務の区分並びに指定商品及び指定役務

第32類  エールビール,ラガービール,黒ビール,スタウトビール,ドラフトビール,その他のビール

2  特許庁における手続の経緯

被告は,平成25年4月5日,特許庁に対し,本件商標が商標法4条1項11号又は15号に該当するとして,その登録を無効とすることについて審判を請求した(無効2013-890029号)。

特許庁は,平成26年3月28日,「登録第5519499号の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同年4月7日に原告に送達された。

(甲17,21)

3  審決の理由の要点

(1)  引用商標

被告株式会社星野リゾート(被告星野リゾート)及び被告株式会社ヤッホーブルーイング(被告ヤッホー)は,下記1・2の商標(ロゴ部分以外の部分を含まない。以下,順に「引用商標1」「引用商標2」という。)を付したビールを販売し,被告星野リゾートは,同3の商標(引用商標3)の登録を受けている。(甲2,3,18)

【引用商標1】

file_2.jpgSHAR Ch【引用商標2】

file_3.jpgiV. ay Tale ck【引用商標3】

file_4.jpgRH SReERE—IL① 登録番号  第3212962号

② 出 願 日  平成 6年 3月18日

③ 登 録 日  平成 8年10月31日

④ 存続期間満了日  平成28年10月31日

⑤ 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務

第32類  ビール,ビール製造用ホップエキス

(2)  商標法4条1項15号該当性について

ア 商標の類似性の程度

(ア) 本件商標について

① 本件商標の構成中の「ビール」は商品名を表すものであるから,「軽井沢浅間高原」の部分も独立して自他商品の識別機能を発揮し得る。

② 「浅間高原」が広く知られた地名であるとはいえない。

③ 「軽井沢浅間」が「軽井沢」と「浅間」とが同一の地域を表すかのごとく使用されている例はある。

④ そうすると,「軽井沢浅間高原」の部分からは,「軽井沢周辺の浅間山麓に位置する高原地域」ほどの意味合いを認識させるものである。

⑤ したがって,本件商標は,「軽井沢周辺の浅間山麓に位置する高原地域のビール」ほどの意味合いを認識させるものであり,「カルイザワアサマコウゲンビール(...............)」との称呼を生ずるものである。

(イ) 引用商標1~引用商標3について

① 引用商標1~引用商標3の構成中の「ビール」は商品名を表すものであるから,「軽井沢高原」の文字部分も独立して自他商品の識別機能を発揮し得る。

② 「軽井沢高原」が特定の地域,地名を示すものとはいえない。

③ 「軽井沢」は,長野県東部,北佐久郡にある避暑地を指称する。

④ そうすると,引用商標1~引用商標3は,「軽井沢高原」の部分から「軽井沢一帯の高原地域」ほどの意味合いを認識させるものである。

⑤ したがって,引用商標1~引用商標3は,「軽井沢一帯の高原地域のビール」ほどの意味合いを認識させるものであり,「カルイザワコウゲンビール(............)」の称呼を生ずるものである。

(ウ) 本件商標と引用商標との対比

a 外観

本件商標と引用商標1・引用商標2とは,外観上明らかに区別できる。

本件商標と引用商標3とを対比すると,10文字という比較的冗長な本件商標の文字列にあって,中間に位置する「浅間」の文字は,商標全体の中で特段に目立つものとはいえず,離隔的観察の下においては,両者は,看者に全体の外観において近似した印象を与える。

b 称呼

本件商標と引用商標1~引用商標3とは,「アサマ(...)」の音の有無及び構成音数の相違から,それぞれを一連に称呼しても相紛れるものとはいえない。

c 観念

本件商標と引用商標1~引用商標3とは,いずれも軽井沢一帯の高原地域ほどの地域的,地勢的特徴を想起,連想させるものといえ,その点において,両者は需要者に極めて近似した印象を与えるものといえ,観念において近似したものである。

(エ) 小括

本件商標と引用商標1~引用商標3とは,両者を同一又は類似するものということはできないとしても,外観,観念において近似したものといえ,その類似性は,相当程度高いものといえる。

イ 引用商標1~引用商標3の周知著名性及び独創性の程度

(ア) 周知著名性

「軽井沢高原ビール」との商品(被告商品)は,平成7年に発売を開始されて以来,長野県北佐久郡軽井沢町(軽井沢町)及びその周辺地域において継続して販売及び広告宣伝がされていること,そして,被告商品は,地域が限定されてはいるものの,地ビールとして相当量の販売実績があること,被告商品が各種雑誌,新聞等に取り上げられていることなどにより,被告商品に表示された引用商標1~引用商標3は,被告商品を表示するものとして,遅くとも本件商標の登録出願日前には軽井沢町及びその周辺地域の需要者の間に広く認識されていたものといえ,その著名性は,本件商標の登録査定時においても継続していた。

(イ) 独創性

引用商標1~引用商標3の独創性の程度は高いものとはいえない。

ウ 取引の実情

(ア) 商品の関連性

本件商標の指定商品と被告商品は,「ビール」という範ちゅうにおいて同一のものであり,共に長野県内で販売されるものであって,販売地域が同一又は近接し,使用地域の共通性も高い。

(イ) 取引者・需要者の共通性

本件商標の指定商品と被告商品は,共に「ビール」であるから,取引者,需要者を同一とする。

(ウ) その他

本件商標を付したビールと被告商品との間で,商品の出所混同が現実に生じている。

エ 混同のおそれ

以上ア~ウによれば,本件商標をその指定商品について使用した場合は,その需要者をして,引用商標1~引用商標3又はこれを使用した商品「ビール」を連想させ,当該商品が被告ら又は被告らと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について誤認,混同を生じさせるおそれがあるというべきである。

オ 審決判断のまとめ

本件商標は,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」である。

第3原告主張の審決取消事由

1  取消事由1(引用商標の特定の誤り)

複数の引用商標がある場合,商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無は,個々の引用商標ごとに本件商標と対比して検討されるべきであるにもかかわらず,審決は,引用商標1~引用商標3を「引用商標」とひとくくりにして「混同を生ずるおそれ」があるとしている。さらに,引用商標1及び引用商標2の表示主体は,被告ヤッホーであり,引用商標3の表示主体は,被告星野リゾートであり,混同のおそれが問題となる表示主体がそれぞれ異なる。

したがって,審決の引用商標の特定には,誤りがある。

2  取消事由2(引用商標の認定の誤り)

(1)  引用商標1について

引用商標1は,次のとおり(ただし,下記図中の「軽井沢高原ビール」とのロゴ部分のみを指す。)とすべきであり(以下「引用商標1´」という。),図形商標である。

したがって,審決の引用商標1の認定には,誤りがある。

【引用商標1´】

file_5.jpg(2)  引用商標2について

引用商標2は,次のとおりのものとすべきであり(以下「引用商標2´」という。),図形商標である。

したがって,審決の引用商標2の認定には,誤りがある。

【引用商標2´】

file_6.jpg3  取消事由3(引用商標2´の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)

(1)  商標の類似性の程度

ア 本件商標について

① 本件商標の「浅間高原」の文字部分は,「浅間高原観光協会」(甲39),「浅間高原カントリー倶楽部」(甲40),「浅間高原雪合戦」(甲41),「嬬恋・浅間高原ウインターフェスティバル」(甲42),「浅間高原ファミリーオートキャンプ場」(甲43),「浅間高原しゃくなげ園」(甲44),「浅間高原スノーシュー天国aspara」(甲45),「浅間高原 御宿 地蔵川」(甲46),「浅間高原エリア」(甲48)などの用例があることからみて,旧軽井沢地域(甲47)の周辺の浅間山(長野県北佐久郡軽井沢町及び同御代田町と群馬県吾妻郡嬬恋村との境にある活火山)山麓の市町村,特に,浅間山北麓の群馬県地域を指す名称といえる。

② 本件商標の「軽井沢浅間高原」の語を一連一体で用いている例は,本件商標の外には見当たらないから(甲49),特定の地域を指す名称としては従来にないものであり,いわば原告による造語というべきであって,相当程度の出所識別機能を発揮するものである。

イ 引用商標2´について

① 引用商標2´は,全体として鳥を表すと思われる形状のベージュ色の地を細い赤い線で縁取り,鳥の頭に相当する部分に,右側に太陽を示すと思われる黒色渦巻き線状の図形を,左側に三日月を表すと思われる赤色の図形を配置し,鳥の羽及び胴体に相当する部分に,楔や木片を思わせる特殊な形状にデザインされた赤色の「軽井沢高原」と「ビール」の文字が二段に併記されているものである。

② 引用商標2´の構成中の「ビール」は,指定商品そのものであって,「ビール」の部分から識別力が発揮される余地はない。

③ 引用商標2´の構成中の「軽井沢」は,指定商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する語に過ぎないから,「軽井沢」の部分から識別力が発揮される余地はない。

④ 引用商標2´の文字部分を「軽井沢高原」と切った場合,[1]「軽井沢高原教会」(甲24,25),「軽井沢高原ゴルフ倶楽部」(甲26),「軽井沢高原文庫」(甲27),「東急ハーヴェストクラブ/軽井沢高原」(甲28),「軽井沢高原牛乳」(甲73),「軽井沢高原とうふ」(甲74),「軽井沢高原ビュッフェ」(甲75),「軽井沢高原フルーツソース」(甲76)といった用例が見られるほか,[2]軽井沢観光協会のホームページにおいても「軽井沢」とはほぼ同義のものとして用いられていること(甲29),[3]軽井沢では,「高原バームクーヘン」(甲77),「信州高原ビール」(甲78)なる商品が販売されていたり,「高原和食A」なる店もあったり(甲74),旅行誌「まっぷる軽井沢‘15」の表紙に「高原ステイ」「高原グルメ」「極上の高原リゾート」「軽井沢の高原みやげ」「高原野菜」といった記載があること(甲74),からすれば,「軽井沢高原」は,おおむね,軽井沢地域を表す名称として一般に通用しているものといえる。

⑤ 引用商標2´の文字部分を「高原ビール」と切った場合,「御殿場高原ビール」(甲30),「銀河高原ビール」(甲31),「伊豆高原ビール」(甲32),「那須高原ビール」(甲33),「富士桜高原ビール」(甲34),「志賀高原ビール」(甲35),「胎内高原ビール」(甲36),「妙高高原ビール」(甲37),「霧島高原ビール」(甲38),「平庭高原ビール」(岩手県),「草津高原ビール」(群馬県),「嬬恋高原ビール」(群馬県),「火の谷高原ビール」(三重県),「曽爾高原ビール」(奈良県),「吉井高原ビール」(岡山県),「久住高原地ビール」(大分県)など多数の地域で使用されており(甲79,80),ビールに頻繁に用いられる慣用名称となっているといえる。

⑥ そうすると,引用商標2´の文字部分からは,「軽井沢高原のビール」又は「軽井沢の(高原)ビール」程度の意味合いが認識されるにとどまり,これは,地名と指定商品の普通名称を結合したものにすぎないから,出所識別機能を発揮し得ない。

ウ 本件商標と引用商標2´との対比

(ア) 外観

本件商標は,「軽井沢浅間高原ビール」の標準文字からなり,引用商標2´は,特殊な形状にデザインされた赤色文字と鳥形の図形からなるから,両者は,外観上明らかに相違する。加えて,「軽井沢浅間高原」が相当程度の出所識別機能を発揮することからみて,「浅間」の有無による外観上の相違は,外観の類似性を判断する上で重視されるべきである。

したがって,本件商標と引用商標2´とは,外観において,非類似であり,かつ,近似もしていない。

(イ) 称呼

「軽井沢浅間高原」の語が相当程度の出所識別力を発揮することからみて,「アサマ(...)」の音を含むか否かという両者の称呼上の相違は,称呼の類似性を判断する上で重視されるべきである。

したがって,本件商標と引用商標2´とは,称呼において,非類似であり,かつ,近似もしていない。

(ウ) 観念

本件商標は,原告による造語であって,特定の観念を生ずるものではない。仮に,「浅間高原」の文字部分から旧軽井沢地域とは異なる何らかの地域が想起され得るものとしても,その想起される地域は,引用商標2´の「軽井沢高原」の文字部分から想起される地域とは一致しない。

一方,引用商標2´は,「軽井沢高原ビール」の文字部分が何ら出所識別標識としての観念を生じさせるものではないから,図形部分の形状やデザインから,鳥,太陽,月の観念を生じる。

したがって,本件商標と引用商標2´とは,観念において,非類似であり,かつ,近似もしていない。

エ 小括

本件商標と引用商標2´とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,非類似であり,かつ,近似するものでもない。

(2)  引用商標2´の周知著名性及び独創性の程度

ア 周知著名性

① 被告商品の雑誌等広告は,被告ヤッホー創業時である平成9年~10年ころを中心にされているにすぎず,その後には広告の数は減り,平成19年~20年ころには,ほとんど広告はされていない(甲85。乙24~37,186~207参照)。

② 平成18年5月3~5日に実施されたアンケートに係る「軽井沢高原ビールに関するアンケート調査報告書」(甲7,12,乙229。「本件アンケート」)は,[1]質問項目が適切ではないこと,[2]どのような状況下で実施されたものであるか不明であること,[3]対象者に網羅性があるとはいえないこと,[4]母数が少ないこと(甲56),[5]本件商標登録出願の約5年前の平成18年に行われたことなどから,信頼性に乏しい。

③ ビール審査会は,地ビールの業界団体が主体となって,受賞歴を各メーカーが宣伝に用いることを目的として開催しているものであり,毎回多数のビールが何らかの賞を受賞しており,出展さえすれば受賞する率も高い(甲109)。

④ 平成22年度において,販売量が100kℓを超える地ビール製造業者は,国内に25社ある(甲13の2)。被告商品の販売量は,「銀河高原ビール」の販売量(年間1800kℓ。ただし,最盛期には年間8000kℓ。)よりも格段に少なく,宮下酒造の「独歩」(年間200kℓ)などよりも小さい(甲90~92)。

⑤ 以上からすれば,引用商標2´は,軽井沢町及びその周辺地域においてすら周知であるはいえない。

また,仮に,引用商標2´が軽井沢町及びその周辺地域において周知であるとしても,その程度では,商標法4条1項15号において要求される広い範囲で知られている広知性の程度には達していない。

イ 独創性

引用商標2´は,図形商標としてみれば,独創性を有することは否定できないが,「軽井沢高原ビール」という文字部分は,「軽井沢高原のビール」又は「軽井沢の(高原)ビール」程度の意味合いを有するにすぎず,独創性は皆無である。

(3)  取引の実情

ア 商品の関連性及び取引者・需要者の共通性

引用商標2´を付された被告商品の店頭販売地域は,軽井沢町及びその周辺地域に限定されているのに対し,「軽井沢浅間高原ビール」との商品(原告商品)は,軽井沢町及びその周辺地域のみならず,全国的に店頭販売されている。

また,被告ヤッホーは,「よなよなエール」を全国展開ブランドの主力商品と,被告商品を軽井沢の地域限定商品としてそれぞれ位置付けるという販売戦略を採用している。被告商品の長野県外への販売は,約2割が被告星野リゾートのグループ内の施設への出荷である(甲87)。長野県外への出荷先690件のうち538件は,平成23年6月以降の3年間で10ケース未満の出荷量にとどまっており,それら出荷先に対する出荷量も,平成23年6月以降3年間で約129kℓにすぎない。被告商品を取り扱う売り場も,軽井沢町及びその周辺にとどまっており,長野県においてすら,軽井沢町域を離れるにつれて,取り扱っている店舗がなくなってくる(甲88)。軽井沢町と群馬県吾妻郡嬬恋村の北軽井沢地域において被告商品が多く出荷されているとしても,その領域は,1市町村程度という極めて限られた範囲での広がりであるにすぎない(甲89)。

したがって,引用商標2´と本件商標との使用地域の共通性は,高いとはいえない。

イ その他

一般にビールにおいて標準文字商標をそのまま商品に付することはなく(甲79),図柄等のデザインを伴った標章を商品に付するのが通常であり,原告商品に付されている標章も,1例をあげれば,次のとおりである。

file_7.jpgこのような取引の実情の下では,たとえ専門的知識を有しない一般通常人であっても,文字だけではなく,図柄等を含めた図形商標の全体から出所を識別することが可能である。

(4)  混同のおそれ

以上(1)~(3)によれば,本件商標をその指定商品について使用した場合でも,当該商品が被告ら又は被告らと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じるおそれはない。

なお,商標法4条1項15号は,「商標」(本件商標)が「他人」(被告ヤッホー)の業務に係る「商品」(被告商品)と混同を生じさせるおそれがある場合に適用され,引用商標2´が原告商品と混同を生じるおそれがある場合(逆混同)には適用されない。

(5)  まとめ

本件商標は,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」ではない。

したがって,審決の認定判断には,誤りがある。

4  取消事由4(引用商標1´の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)

引用商標1´は,平成15年までにその使用を終了した(甲2,乙24)。

そうすると,本件商標の出願時及び登録査定時において,引用商標1´を本件商標と対比すべき他人の業務に係る表示として,本件商標が商標法4条1項15号に該当するか否かを論ずる余地はない。

したがって,審決の認定判断には,誤りがある。

5  取消事由5(引用商標3の認定の誤り)

引用商標3が,商標的に使用されたことはない。

そうすると,本件商標の出願時及び登録査定時において,引用商標3を本件商標と対比すべき他人の業務に係る表示として,本件商標が商標法4条1項15号に該当するか否かを論ずる余地はない。

したがって,審決の認定判断には,誤りがある。

6  取消事由6(引用商標3の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)

(1)  商標の類似性の程度

ア 本件商標について

前記3(取消事由3)(1)アに記載のとおり。

イ 引用商標3について

前記3(取消事由3)(1)イ②~⑥と同旨。

ウ 本件商標と引用商標3との対比

(ア) 外観

本件商標と引用商標3とは,前者が「浅間」の語を含む点において外観上相違する。また,「軽井沢浅間高原」の語が相当程度の出所識別力を発揮することからみて,「浅間」の有無によると外観上の相違は,外観上の類似性を判断する上で重視されるべきである。

したがって,本件商標と引用商標3とは,外観において,非類似であり,かつ,近似もしていない。

(イ) 称呼

「軽井沢浅間高原」の語が相当程度の出所識別力を発揮するものであることからみて,「アサマ(...)」の音を含むか否かという両者の称呼上の相違は,称呼の類似性を判断する上で重視されるべきである。

したがって,本件商標と引用商標3とは,称呼において,非類似であり,かつ,近似もしていない。

(ウ) 観念

本件商標は,原告による造語であって,特定の観念を生ずるものではない。仮に,「浅間高原」の文字部分から旧軽井沢地域とは異なる何らかの地域が想起され得るものとしても,その想起される地域は,引用商標3の「軽井沢高原」の文字部分から想起される地域とは一致しない。

一方,引用商標3は,「軽井沢高原のビール」又は「軽井沢の(高原)ビール」程度の観念を想起させるにすぎないものであって,何ら出所識別標識としての観念を生じさせるものではない。

したがって,本件商標と引用商標3とは,観念において,非類似であり,かつ,近似もしていない。

エ 小括

本件商標と引用商標3とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,非類似であり,かつ,近似するものでもない。

(2)  引用商標3の周知著名性及び独創性の程度

ア 周知著名性

前記3(取消事由3)(2)アと同旨。

なお,広告や雑誌記事等で使用されているのは,図形商標である引用商標1´及び引用商標2´であり,「軽井沢高原ビール」の文字は,説明文中に用いられているだけであり,商標的使用はされていない。また,新聞記事等の第三者が「軽井沢高原ビール」の文字を使用している場合も,商標的使用ではない態様で用いられている。広告等に引用商標3を使用した例は,2例にすぎない(乙9,乙32。甲86参照)。

イ 独創性

引用商標3は,「軽井沢」という販売地名,「高原」という地ビールに用いられる慣用名称及び「ビール」という普通名称の組合せにすぎず,「軽井沢高原のビール」又は「軽井沢の(高原)ビール」程度の意味合いを生ずるにすぎないから,独創性は皆無である。

(3)  取引の実情

ア 商品の関連性及び取引者・需要者の共通性

前記3(取消事由3)(3)アと同旨。

イ その他

前記3(取消事由3)(3)イに記載のとおり。

(4)  混同のおそれ

以上(1)~(3)によれば,本件商標をその指定商品について使用した場合でも,当該商品が被告ら又は被告らと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じるおそれはない。

(5)  まとめ

本件商標は,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」ではない。

したがって,審決の認定判断には,誤りがある。

第4被告らの反論

1  取消事由1(引用商標の特定の誤り)に対して

商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無は,本件商標を指定商品に使用した場合の当該商品と被告商品との間で商品の出所に混同を生ずるおそれがあるか否かを検討するものであって,引用商標1~引用商標3のそれぞれと本件商標との間で混同が生じるおそれがあるか否かを検討するものではない。

また,引用商標1~引用商標3と本件商標との間の類似性や引用商標1~引用商標3の周知性・独創性の程度についてみれば,審決は,それらを引用商標1~引用商標3ごとにそれぞれ個別に検討している。

したがって,審決の引用商標の特定には,誤りはない。

2  取消事由2(引用商標の認定の誤り)に対して

(1)  引用商標1について

審判請求人である被告らが「引用商標1」として特定したのは,審決の認定に係る引用商標1そのものであるから,審決の引用商標1の認定には,誤りはない。

したがって,審決の引用商標1の認定には,誤りはない。

(2)  引用商標2について

審判請求人である被告らが「引用商標2」として特定したのは,審決の認定に係る引用商標2そのものであるから,審決の引用商標2の認定には,誤りはない。

したがって,審決の引用商標2の認定には,誤りはない。

3  取消事由3(引用商標2´の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)に対して

(1)  商標の類似性の程度

「引用商標2」は,原告の主張する引用商標2´の構成をとっていないから,原告の主張はすべて失当である。以下,審決の認定に係る引用商標2に基づいて反論する。

ア 本件商標について

「軽井沢浅間高原」が造語であることは認めるが,「軽井沢」が指す地域は,旧軽井沢地区に限定されるものではなく,日本有数の観光地・避暑地である軽井沢を意味し,そして,軽井沢と浅間山麓は,地理的に重なり合うか又は近接している(乙233)。

イ 引用商標2について

原告が,第3,3(1)イ④で指摘する用例をもって,「軽井沢高原」が,軽井沢町内又はその周辺地域を表す名称として一般に通用しているとはいえない(なお,「軽井沢高原教会」は,被告星野リゾートが経営する教会である。)。

「軽井沢高原」は,日本有数の観光地・避暑地である「軽井沢」に爽やかなイメージを想起させる「高原」を組み合わせた造語であり,何ら出所識別機能に欠けるところはない。

また,「高原ビール」は,地ビールの慣用名称ではなく,「高原ビール」の文字を含む登録商標が存在する(乙294~296)。

ウ 本件商標と引用商標2との対比

(ア) 外観

引用商標2は,飾り文字であって,かつ,二段に並記されてはいるものの,「軽井沢高原ビール」の文字を横に表したものであり,本件商標は,「軽井沢浅間高原ビール」の文字が横に表されたものであるから,両者の外観上の相違は,「浅間」の2文字のみである。

したがって,本件商標と引用商標2とは,外観において,類似するか,又は,少なくとも近似している。

(イ) 称呼

本件商標の「カルイザワアサマコウゲンビール(...............)」との称呼と,引用商標2の「カルイザワコウゲンビール(............)」との称呼の差異は,軽微である。

したがって,本件商標と引用商標2とは,称呼において,類似するか,又は,少なくとも近似している。

(ウ) 観念

本件商標と引用商標2の想起させる観念は,類似している。

したがって,本件商標と引用商標とは,観念において,類似するか,又は,少なくとも近似している。

エ 小括

本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,類似するか,又は,少なくとも近似している

(2)  引用商標2´の周知著名性及び独創性の程度

ア 周知著名性

① 被告商品は,発売から現在に至るまで,「軽井沢高原ビール」の文字や被告商品の画像とともに,新聞において繰り返し取り上げられている(乙66~207)。また,被告商品は,全国向けのテレビ番組において特集として取り上げられたことがあるほか(乙208),インターネット記事でも取り上げられている(乙209)。

被告ヤッホーは,被告商品の発売から本件商標の登録がされた平成24年9月7日までの間,多数回にわたり,「軽井沢高原ビール」の文字や被告商品の画像を記載した広告を雑誌等に掲載している(乙1~37)。また,被告ヤッホーは,被告商品のプロモーション活動として,信州デリ・キッチン,軽井沢フードテラスなどの様々なイベントに出店し,被告商品を販売する等している(乙53~65)。

② 本件アンケートによれば,軽井沢の別荘所有者の91%,観光客の77%が被告商品を認知していることになる。関東地方を中心に全国から大勢の観光客や別荘所有者が毎年訪れる軽井沢において,無作為に抽出された観光客及び別荘所有者の大多数が,被告商品を少なくとも知っていると回答したことは,引用商標2が全国で周知になっていることの証左である。

③ 被告商品は,日本のみならず世界的に権威のあるビール審査会やコンペティションでも多数の賞を獲得するなどして,高い評価を受けている(乙210~228)。

④ 被告商品は,平成17年度から平成24年度に限ってみても,国内で,毎年約240~290kℓ(350mℓ缶換算で70万本~80万本)程度販売されているが(乙236),これは,約70kℓ~110kℓ程度の全国の地ビール業者の同期時の平均製造量を大きく上回るものである。また,約81%~86%の国内地ビール製造者は,生産量が100kℓ未満にすぎない(乙236)。

⑤ 以上からすれば,引用商標2は,軽井沢町及びその周辺地域のみならず,関東地方を中心に全国から軽井沢を訪れる大勢の観光客や全国のビール愛好家にも広く認識されており,全国又は少なくとも関東地方を中心とする相当な広範囲の需要者の間に広く認識されている。

イ 独創性

「軽井沢高原」の文字は,日本有数の観光地・避暑地である「軽井沢」に,爽やかなイメージを想起させる「高原」を組み合わせた造語であるから,独創性がある。

(3)  取引の実情

ア 商品の関連性及び取引者・需要者の共通性

本件商標は,「エールビール,ラガービール,黒ビール,スタウトビール,ドラフトビール,その他のビール」を指定商品とするものであるから,被告商品と同一である。

被告商品は,主に軽井沢町及びその周辺地域で販売されるが,軽井沢は日本有数の観光地・避暑地であって,関東地方を中心に全国から毎年800万人近くもの観光客が訪れている(乙239,240)。また,被告商品は,長野県内の各土産品,酒屋,スーパー,コンビニエンスストア等において多く販売されており,その販売店舗(小売,卸売店及び業務店を問わない。)は,長野県のほぼ全域に及んでいる(乙237)。

また,被告商品の全体の販売数量の約2割程度は,長野県外でも販売されており(乙237,238),さらに,インターネットを利用して全国に販売されている(乙248)。被告商品の売上の全体の約2割を占める県外出荷量(乙237)のうち,29.8%が群馬県へ,25.3%が東京都へ,11.2%が神奈川県へ,7.1%が埼玉県へ出荷されている(甲87)。

引用商標2は,少なくとも,関東地方を中心とする相当な広範囲の需要者の間に広く認識されていたといえる。

イ その他

一般に,ビールにおいては,標準文字標章が商標に付されることも多い(乙292,293)。本件商標の指定商品と被告商品の需要者は,いずれも商品や商標について専門的知識を有するとはいえない一般成人であり,商品の選択,購入等の際に格別の注意を払うものとはいえない。そのため,被告商品と原告商品との間で,商品の出所について,実際にも誤認混同が生じている(乙250~287)。

(4)  混同のおそれ

以上(1)~(3)によれば,本件商標を指定商品について使用した場合,これに接する取引者又は需要者が,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

(5)  まとめ

本件商標は,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」である。

したがって,審決の認定判断には,誤りはない。

4  取消事由4(引用商標1´の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)に対して

「引用商標1」は,原告の主張する引用商標1´の構成をとっていないから,原告の主張はすべて失当である。以下,審決の認定に係る引用商標1に基づいて反論する。

引用商標1は,平成16年以降も小売店内に設置される暖簾(乙48)やイベント出店の際に設置されるのぼり(乙54~57,乙59,乙63)などに使用されている。

また,引用商標1と引用商標2とは,文字の表記が1段か2段に列記されているかの相違しかないから,引用商標2が平成16年以降継続的に使用されていることによって,引用商標1も平成16年以降現在に至るまで使用されているといえる。

仮に,引用商標1が平成16年以降使用されていないとしても,商標法4条1項15号が混同の防止を目的とするものである以上,引用商標が使用されていないことのみで同号の適用ができないものではない。

したがって,審決の認定判断には,誤りがない。

5  取消事由5(引用商標3の認定の誤り)に対して

引用商標3は,被告ヤッホーにおいて製造販売する被告商品の商品名として使用されているのであり,引用商標3の表示主体は,被告ヤッホーである。被告ヤッホーは,引用商標3を被告商品の広告に付して現に使用している。被告星野リゾートが引用商標3の商標権者であることは,引用商標3の表示主体が被告ヤッホーであることを何ら否定しない。

したがって,審決の認定判断には,誤りがない。

6  取消事由6(引用商標3の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)に対して

(1)  商標の類似性の程度

ア 本件商標について

前記3(取消事由3)(1)アに記載のとおり。

イ 引用商標3について

前記3(取消事由3)(1)イと同旨。

ウ 本件商標と引用商標3との対比

(ア) 外観

本件商標と引用商標3とは,いずれも,特徴のない書体で横一列に表された商標であり,本件商標の文字数は10,引用商標3の文字数は8であり,両者の外観の差異は,「浅間」という2文字のみであり,しかも,「浅間」の文字は,本件商標の中間部の目立ちにくい箇所に配置されており,その差異は,より一層軽微なものとなっている。

したがって,本件商標と引用商標3とは,外観において,類似であるか,又は,少なくとも近似している。

(イ) 称呼

本件商標の「カルイザワアサマコウゲンビール(...............)」(15音)と,引用商標3の「カルイザワコウゲンビール(............)」(12音)との称呼の差異は,差異ある音数が3音にすぎないことや差異ある音が中間部に位置していることから見て,軽微である。

したがって,本件商標と引用商標3とは,称呼において,類似であるか,又は,少なくとも近似している。

(ウ) 観念

引用商標3は,「軽井沢高原のビール」という観念を想起させる。他方,本件商標は,「軽井沢浅間高原のビール」という観念を想起させる。

そして,「軽井沢高原」は,長野県東部,北佐久郡にある日本有数の観光地・避暑地(乙232)である「軽井沢」に,爽やかなイメージを想起させる「高原」を組み合わせた造語であり,「軽井沢一帯の高原地域」といった意味合いを想起させる。他方,「軽井沢浅間高原」は,①日本有数の観光地・避暑地である「軽井沢」と「浅間山の略」(乙232)として知られる「浅間」とが,地理的に重なり合うか又は近接していること(乙233),②軽井沢が浅間山山麓の高地に位置する観光地として広く知られていること,③軽井沢と浅間を連結した「軽井沢浅間」が,軽井沢と浅間があたかも同一の地域を表すがごとく使用されている実情があること(乙234,235)に照らせば,「(浅間山麓を含む)軽井沢一帯の高原地域」といった意味合いを想起させるものである。

したがって,本件商標と引用商標3とは,観念において,類似であるか,又は,少なくとも近似している。

エ 小括

本件商標と引用商標3とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,類似するか,又は,少なくとも近似している。

(2)  引用商標3の周知著名性及び独創性の程度

ア 周知著名性

前記3(取消事由3)(2)アに記載のとおり。

なお,新聞記事等が,報道において商品名等の説明記載として「軽井沢高原ビール」の文字を使用している場合であっても,「軽井沢高原ビール」の文字が需要者,取引者の間に広く認識されていることの証左とはなり,新聞記事等において,「軽井沢高原ビール」が商標的に使用されている必要はない。

イ 独創性

前記3(取消事由3)(2)イに記載のとおり。

(3)  取引の実情

ア 商品の関連性及び取引者・需要者の共通性

前記3(取消事由3)(3)アに記載のとおり。

イ その他

前記3(取消事由3)(3)イに記載のとおり。

(4)  混同のおそれ

以上(1)~(3)によれば,本件商標を指定商品について使用した場合,これに接する取引者又は需要者が,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

(5)  まとめ

本件商標は,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」である。

したがって,審決の認定判断には,誤りはない。

第5当裁判所の判断

1  時機に後れた攻撃防御方法の申立てについて

原告は,乙第1~229,第250~287号証の提出について,時機に後れた攻撃防御方法である旨を申し立てたが,これら書証は,いずれも本件の争点に関連するものであって,本訴第1回口頭弁論期日後の平成26年9月3日にあらかじめ原告に写しが直送され,同年10月1日の第2回口頭弁論期日に被告らから証拠申出があり,直ちにその証拠調べを終了させることが可能なものであったから,訴訟の完結を遅延させないことは明らかであり,これを却下することはしない。

2  取消事由1(引用商標の特定の誤り)及び取消事由2(引用商標の認定の誤り)について

(1)  引用商標1について

原告は,本件商標と対比する引用商標1の構成として認定されるべきものは,審決の認定に係る8文字の構成からなる「軽井沢高原ビール」との「引用商標1」ではなく,

file_8.jpgのロゴ部分,すなわち,

file_9.jpgTHis chとの図形からなる引用商標1´であるとの主張をする。

しかしながら,上記標章は,特殊な書体ではあるものの,当該文字自体であることを超えて,その文字の表示から文字以外の特定の観念を想起させるほどに図案化されているものではなく,専ら「軽井沢高原ビール(........)」との文字であることが認識され得るにすぎない。

そうであれば,審決が,本件商標と対比する引用商標1を,8文字の構成からなる「軽井沢高原ビール」と認定したことには,誤りはない。

(2)  引用商標2について

原告は,本件商標と対比する引用商標2の構成として認定されるべきものは,審決の認定に係る8文字の構成からなる「軽井沢高原ビール」との「引用商標2」ではなく,

file_10.jpgとの図形からなる引用商標2´であるとの主張をする。

しかしながら,上記図形の地(ロゴの背景)の部分は,鳥とも人ともとれる形状であり,上部にある弓状及び渦巻状の模様は,三日月及び太陽とも,蝸牛とも,とれる形状であり,いずれも具体的に何を表示しているのかは直ちには判別できず,印象に残るような個性的な形状であるともいえない。したがって,上記図形のロゴ部分を除く部分からは,称呼が生じず,かつ,何らの観念も認識されず,また,外観に資する寄与もほとんどない。そうすると,ひとまとまりの標章の範囲をどの部分までとするかはさておいて,少なくとも,上記標章の要部といえる部分は,ロゴの部分にあるというべきである。そして,そのロゴ部分から,専ら「軽井沢高原ビール(........)」との文字が認識され得るにすぎないことは,上記(1)に認定判断のとおりである(「軽井沢高原」と「ビール」が2段に並記されていることによる格別の影響はない。)。

そうであれば,審決が,本件商標と対比する引用商標2を,8文字の構成からなる「軽井沢高原ビール」と認定したことには,誤りはない。

(3)  引用商標の特定について

審決は,引用商標1~引用商標3をひとくくりに「引用商標」として,「引用商標」を被告らの業務の表示とし,主に,商標法4条1項15号の混同のおそれを生じるか否かの認定判断をしている。しかるところ,上記(1)(2)のとおり,引用商標1~引用商標3は,いずれも8文字の構成からなるか又はそれを要部とする「軽井沢高原ビール」であるから,いずれかの引用商標を使用した場合であっても,すべての引用商標を使用したことになる関係にあり,それらを敢えて区別して論ずる必要性は乏しいものというほかない。

また,被告星野リゾートと被告ヤッホーとが親子会社の関係にあることは,当事者間において争わないところ,商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」には,いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等と誤信されるおそれ(広義の混同を生じるおそれ)も含むと解されるから,取引者,需要者が被告商品の出所を被告星野リゾートと認識するか,あるいは,被告ヤッホーと認識するかは,同号の適用には影響しない。そうすると,営業主体がいずれであるかや商標権の帰属先の違いに着目して,引用商標1~引用商標3を敢えて区別して論ずる必要性は乏しい。

以上からすれば,審決が,「引用商標」について商標法4条1項15号の該当性について認定判断をしたことには,誤りがあるとはいえない。

(4)  まとめ

以上(1)~(3)のとおり,取消事由1及び取消事由2は,いずれも,理由がない。

3  取消事由4(引用商標1´の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)及び取消事由5(引用商標3の認定の誤り)について

原告は,①引用商標1´は平成15年までにその使用を終了した,②引用商標3が商標的に使用されたことはない旨を主張する。

しかしながら,引用商標1´が,審決の認定に係る引用商標1にほかならないことは,上記2(1)に認定のとおりであり,引用商標1~引用商標3のいずれかの引用商標を使用した場合であっても,すべての引用商標を使用したことになる関係にあることは,上記2(3)に認定判断のとおりである。そうすると,引用商標2が本件商標出願時及び本件商標登録査定時において使用されていたこと自体には争いのない本件にあっては,上記原告の主張は,いずれも採用できないものというべきである。

したがって,取消事由4及び取消事由5は,いずれも理由がない。

4  取消事由3(引用商標2´の商標法4条1項15号該当性判断の誤り)について

上記2に認定判断によれば,原告主張に係る引用商標2´を本件商標と対比すべき商標とすべきではないことになるが,原告の主張は,引用商標2に基づく取消主張も含むものと解されるから,以下,これを前提に認定判断をする。

(1)  商標の類似性の程度

ア 本件商標について

(ア) 検討

本件商標は,指定商品をビール類として,「軽井沢浅間高原ビール」の文字を標準文字により表してなるものであるところ,その構成中の「ビール」は指定商品そのものであって自他商品識別力を全く有しないから,「軽井沢浅間高原」の部分が自他商品識別機能を独立して発揮し得る部分となる。

「軽井沢」と「浅間」が地名であることは明らかであるところ,「軽井沢浅間」が固有の地域,地名等を指称する語であるとする証拠はないから,「軽井沢浅間高原」の語順・語義に従った自然な読み方としては,「軽井沢」と「浅間高原」とに分けられるものといえる。しかるに,①「軽井沢」は,長野県東部,北佐久郡にある著名な避暑地を想起させるところ,その中心である軽井沢町の町域が,浅間山の南麓・南東斜面に広がる高原地域となっていることは公知の事実であること(乙232参照),②「浅間」の語は,長野県北佐久郡軽井沢町・同郡御代田町と群馬県吾妻郡嬬恋村にまたがる著名な浅間山を想起させること,③「浅間高原」が固有の地域,地名等を指称する語であるとする証拠はないから,「浅間高原」は,②からみて,浅間山山麓一帯の高原地域程度の意味合いを有するといえる。

そうすると,「軽井沢」と「浅間高原」とは地理的に隣接又は重複するのであるから,「軽井沢浅間高原」のごく自然な理解とすれば,一定の地域を異なる語で連記して場所の特定を強調するとの例に依ったものとして,「軽井沢及びその周辺の浅間山山麓に位置する高原地域」ほどの意味合いを認識させるものと認められる。

したがって,本件商標からは,「軽井沢及びその周辺の浅間山麓に位置する高原地域で製造又は販売されるビール」ほどの意味合いが認識され,「カルイザワアサマコウゲンビール(...............)」の称呼を生ずる(なお,当事者双方は,濁音のない「カルイサワ(.....)」との称呼に言及しないので,それに従う。)。

(イ) 原告の主張に対して

原告は,群馬県側の施設等において「浅間高原」を用いていることから,「浅間高原」が,浅間山山麓北側の群馬県地域を指称する旨を主張し,これに沿う証拠(甲39~46,48)を提出するが,群馬県側の高原地域を「浅間高原」と称する例を示しただけでは,「浅間高原」が群馬県側の高原地域のみを指称し,長野県側の高原地域を指称しないと認めるには足りない。

したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

イ 引用商標2について

(ア) 検討

引用商標2は,前記2(2)に認定のとおり,「軽井沢高原ビール」の文字を要部とするものであるところ,その構成中の「ビール」は商品名そのものであって自他商品識別力を全く有しないから,「軽井沢高原」の部分が自他商品識別機能を独立して発揮し得る部分となる。

「軽井沢高原」が固有の地域,地名等を指称する語であるとする証拠はないところ(甲29には,「軽井沢高原」が固有の地域を指称する旨の記載があるが,そのような呼称が固有名として一般化しているとまでは認めるに足りない。),「軽井沢」の意義は,上記ア(ア)のとおりであるから,「軽井沢高原」は,「軽井沢及びその周辺の高原地域」ほどの意味合いを認識させるものと認められる。

したがって,引用商標2からは,「軽井沢及びその周辺の高原地域で製造又は販売されるビール」ほどの意味合いが認識され,「カルイザワコウゲンビール(............)」の称呼を生ずる。

(イ) 原告の主張について

原告は,「軽井沢高原」は,軽井沢地域を指称する名称として一般に通用しているから,引用商標2中の「軽井沢高原ビール」には出所識別機能がない旨を主張する。

しかしながら,「軽井沢高原」が固有の地域,地名等を指称する語ではないことは上記(ア)のとおりであり,また,原告の指摘する用例(甲24~29,73~76)から,直ちに,「軽井沢高原」が「軽井沢」と同義であるもいえないから,原告の上記主張は,その前提を欠く。かえって,下記(2)アにて認定する事実によれば,引用商標2は,その表示態様を離れた文字としてみただけであっても,出所識別機能を有しているものと認められる。

したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

ウ 本件商標と引用商標2との対比

(ア) 外観

前記2(1)に認定のとおり,引用商標2の書体は,その表示自体から文字以外の特定の観念を想起させるほどに図案化されているものではなく,専ら「軽井沢高原ビール(........)」との文字が認識され得るにすぎない。しかるに,本件商標と引用商標2とを対比すると,両商標は,いずれも横文字で表記され(引用商標2は2段に並記),その構成中の「軽井沢」「高原」「ビール」の文字を共通にし,中間に位置する「浅間」の文字の有無のみに差異を有するものである。そして,本件商標は,10文字という比較的冗長な構成を有する上に,「軽井沢」と「浅間高原」という重複する地域を連記するものである。そうすると,本件商標中の中間に位置する「浅間」の文字が看者に強い印象を与えるとはいえず,離隔的観察の下においては,両商標の外観は,少なくも,看者に近似した印象を与える。

原告は,「浅間」の文字があることを重視すべき旨を主張するが,中間部の「浅間」の文字の有無の相違のみにより,全体の近似する印象が覆されるとはいえない。

(イ) 称呼

本件商標から生ずる「カルイザワアサマコウゲンビール(...............)」の称呼と引用商標2から生ずる「カルイザワコウゲンビール(............)」の称呼とを対比すると,両商標は,その構成音の「カルイザワ(.....)」「コウゲン(....)」「ビール(...)」の音を共通にし,中間に位置する「アサマ(...)」の音の有無のみに差異を有するものである。そして,本件商標は,15音という比較的冗長な音数で構成されており,本件商標中の中間に位置する「アサマ(...)」の音が看者に強い印象を与えるとはいえず,離隔的観察の下においては,両商標の称呼は,少なくても,看者に近似した印象を与える。

原告は,「アサマ(...)」の音があることを重視すべき旨を主張するが,中間部の「アサマ(...)」の音の有無の相違のみにより,全体の近似する印象が覆されるとはいえない。

(ウ) 観念

前記ア,イに認定のとおり,本件商標からは「軽井沢及びその周辺の浅間山山麓に位置する高原地域で製造又は販売されるビール」との観念を生じ,引用商標2からは,「軽井沢及びその周辺の高原地域で製造又は販売されるビール」との観念を生じる。

そうすると,両商標は,いずれも,軽井沢一帯の高原地域で製造又は販売されるビールを想起させるものであるから,両商標の観念は,少なくとも,看者に近似した印象を与える。

エ 小括

以上ア~ウによれば,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても近似すると認められる。

(2)  引用商標2の周知著名性及び独創性の程度

ア 周知著名性

(ア) 検討

a 新聞記事

下記掲記の証拠によれば,引用商標2又はその要部である「軽井沢高原ビール」の文字を付した商品(1段か,2段に並記されているかは問わない。以下,このような意味で「被告商品」という。)が,次のように新聞記事として取り上げられていることが認められる。

① 平成9年1月8日付け信濃毎日新聞朝刊(乙66)

「軽井沢の地ビール会社 売上金を一部寄付 文化財や森林保護・・・」との見出しの下で,「地域限定用では昨年までに『軽井沢高原ビール』の商標を登録。このうち味の違う二種類にそれぞれ『ナショナルトラスト』(…)『ワイルドフォレスト』(…)の名を付け,五百ミリリットル缶で町内外の小売店などを通じて四月以降に売り出す。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成9年の発行部数は,約45万1000部である(乙304の12)。

② 平成9年3月25日付け日本経済新聞長野県版(乙67,302)

「ヤッホーブルーイング」「地ビールを本格生産」「7月,全国で拡販攻勢」との見出しの下で,「地ビールメーカーのヤッホーブルーイング(…)は二十四日に地ビール製造の本免許を取得,量産に乗り出す。五月中には軽井沢地域限定の『軽井沢高原ビール』(五百ミリリットル缶)を発売,七月からは全国展開する三百五十ミリリットル缶を売り出す。」との記事内容。

③ 平成9年6月26日付け信濃毎日新聞朝刊(甲4,乙69)

「缶入りの地ビール」「『よなよなエール』」「軽井沢の『ヤッホー』来月発売」との見出しの記事中に,「同社は,軽井沢周辺で販売する従来型の地ビール『軽井沢高原ビール』もこのほど発売。」との記事内容のほか,「よなよなエール」の写真と共に被告製品の写真の掲載。

④ 平成9年7月21日付け食料醸界新聞(乙70)

「関東,中京,近畿エリアで」「地ビールよなよなエール発売」「価格おさえ,NBビールめざす」との見出しの記事中に,「六月には地元軽井沢町からの依頼により地域限定ビール『軽井沢高原ビール・ナショナルトラスト』『同・ワイルドフォレスト』を販売している。」との記事内容。

なお,食料醸界新聞の平成9年の発行部数は,約15万3000部である(乙304の25)。

⑤ 平成9年11月13日付け信濃毎日新聞朝刊(乙74)

「軽井沢の地ビール会社 売上の一部,市民団体へ寄付」との見出しの下に,「この夏町内を中心に販売した地ビール『軽井沢高原ビール』の売り上げのほぼ一%に当たる約六十五万円を,…寄付した。」との記事内容。

⑥ 平成10年4月23日付け東京読売新聞全国版夕刊(乙75,302)

「ふるさとプラザ情報」「地ビール」の項において,「☆長野県 軽井沢高原ビール」との紹介記事。

なお,東京読売新聞全国版夕刊の平成10年の発行部数は,約433万7000部である(乙304の13)。

⑦ 平成10年5月29日付け上毛新聞(乙76)

「地ビール」との項に,「ヤッホー・ブルーイングは6月1日からプレミアム地ビール『軽井沢高原ビールアンバーエール』=写真=を発売する。」との記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,上毛新聞の平成10年の発行部数は,約28万6000部である(乙304の13)。

⑧ 平成10年6月29日付け日本食糧新聞(甲11の1,乙78)

「ヤッホー・ブルーイング 『軽井沢高原ビールアンバーエール』発売」との見出しの下に,「(株)ヤッホーブルーイング(・・・)は,…地ビール『軽井沢高原ビールアンバーエール』を今月から発売した。」との記事内容。

なお,日本食糧新聞の平成10年の発行部数は,約10万1000部である(乙304の31)。

⑨ 平成10年7月11日付け日経流通新聞(現・日経MJ)(乙79)

「売れ筋 Special 人気商品・新製品」との項に,「軽井沢の地ビール」「『軽井沢高原ビール・アンバーエール』」との紹介記事のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,日経流通新聞の平成10年の発行部数は,約31万5000部である(乙304の26)。

⑩ 平成10年10月17日付け信濃毎日新聞朝刊(乙84)

「業界チャンネル」との項に,「ヤッホー・ブルーイング(・・・)が製造する地ビール『軽井沢高原ビール・ワイルドフォレスト』が,このほど大阪で開かれたビール・コンテスト『インターナショナル・ビア・コンペティション』で金賞を受賞した。・・・同社の『軽井沢高原ビール・ナショナルトラスト」も,『アメリカン・エール』部門で銀賞を獲得した。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成10年の発行部数は,約45万9000部である(乙304の13)。

⑪ 平成10年12月7日付け日経産業新聞(乙86)

「アグリビジネス 地方からの変革」との項において,「地ビール 低価格で外販」「大量生産で家庭用狙う」との見出しの下に,「『よなよなエール』『軽井沢高原ビール』の二ブランドを展開するヤッホー・ブルーイング(・・・)が異彩を放っている。

…今や全国二番目の地ビール企業に成長した。」との記事内容。

なお,日経産業新聞の平成10年の発行部数は,約22万7000部である(乙304の26)。

⑫ 平成11年6月16日付け日本食糧新聞(乙88)

「ヤッホーブルーイングがビール『ブロンドエール』7月から発売」との見出しの下に,「(株)ヤッホーブルーイング(…)は,『軽井沢高原ビール』の新たなラインアップとして『軽井沢高原ビール ブロンドエール』(写真)を7月から全国で発売する。」との記事内容。

なお,日本食糧新聞の平成11年の発行部数は,約10万1000部である(乙304の32)。

⑬ 平成11年6月24日付け日本経済新聞長野県版(乙91,302)

「県内地ビール」「ジャパン杯で健闘」「3社4銘柄が入賞」との見出しの下に,「日本地ビール協会がこのほど開催した『ジャパンカップ´99』で,県内メーカーでは飯田ビール(・・・),ヤッホー・ブルーイング(・・・),蕃龍(・・・)の三社が出品した四銘柄が入賞を果たした。…昨年の第一回で『よなよなエール』で金を受賞したヤッホーは今回,『軽井沢高原ビール ワイルドフォレスト』で銀に選ばれた。」との記事内容。

⑭ 平成11年8月7日付け日本経済新聞長野県版(乙93,302)

「ヤッホー・ブルーイング」「首都圏の量販店に販路」「東京営業所設立で弾み」との見出しの下に,「同社は『よなよなエール』と『軽井沢高原ビール』の二種類の地ビールを生産,前期までは七割強が県内での販売だった。だがインターネットなどを通じた首都圏向けの通信販売が徐々に増えてきたこともあり,…購入できる店舗は,インターネットのホームページに一覧を掲載し,通販利用者などに利用を呼びかける。」との記事内容。

⑮ 平成12年10月19日付け信濃毎日新聞朝刊(乙95)

「情報リンクながの=『よなよなエール』金賞」との見出しの記事中に,「同社製品では『軽井沢高原ビール』の二種類も『アメリカンスタイル・アンバーエール』,『アメリカンスタイル・酵母なしウィートエールまたはラガー』の各部門で銀賞を受賞した。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成12年の発行部数は,約46万7000部である(乙304の14)。

⑯ 平成13年5月15日付け日本経済新聞長野県版(乙96,302)

「地ビール品評会で金・銅受賞」「ヤッホーブルーイング」「アメリカン・エール部門」との見出しの下に,「金賞は主に軽井沢町内で販売している『軽井沢高原ビールナショナルトラスト』=写真右=で,主力ブランドとして全国販売している『よなよなエール』=同左=が銅賞に入った。」との記事内容のほか,「よなよなエール」と共に被告商品の写真の掲載。

⑰ 平成13年5月27日付け信濃毎日新聞朝刊(甲11の4,乙97)

「情報リンクながの=軽井沢の地ビール,国内品評会で金賞」との見出しの下に,「ヤッホー・ブルーイング(・・・)の『軽井沢高原ビール・ナショナルトラスト』が,このほど東京で行われた日本地ビール協会主催の品評会『ジャパンカップ2001』で金賞を受賞した。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成13年の発行部数は,約47万1000部である(乙304の15)。

⑱ 平成13年7月14日付け日本経済新聞長野県版(乙98,302)

「信州の地ビール」との項において,「よなよなエール」「狙うは全国市場」との見出しの下の記事中に,「同社はこのほか,軽井沢地域を対象にした『軽井沢高原ビール』二種と期間限定の特別醸造商品も手掛けている。」との記事内容。

⑲ 平成13年7月27日付け日本経済新聞長野県版(乙99,302)

「ヤッホー」「地元向け『軽井沢高原ビール』」「飲食店に売り込み」との見出しの下に,「地ビール大手のヤッホーブルーイング(・・・)は『軽井沢高原ビール』を地元飲食店に売り込む。」との記事内容のほかに,被告商品の写真の掲載。

⑳ 平成14年5月21日付け信濃毎日新聞朝刊(乙100)

「ジャパン・ビアカップ 県内地ビールが銀と銅 高い評価・・・手応え」との見出しの下に,「東部町振興公社のビール二種と,軽井沢町内のヤッホー・ブルーイングのビール三種がともに,十九日発表された『ジャパン・ビアカップ2002』(…)の計十一部門の中で,銀賞,銅賞をダブル受賞した。…ヤッホー・ブルーイングは,今夏の新商品『軽井沢高原ビール』のシーズナルが,『ベルジャン・スペシャルビール部門』で銀賞。また,『イングリッシュ・ダークエール部門』でも,冬季限定販売のウィンターエールが銀賞,『軽井沢高原ビール』のナショナルトラストが銅賞に入った。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成14年の発行部数は,約47万5000部である(乙304の16)。

㉑ 平成14年10月19日付け信濃毎日新聞朝刊(乙101)

「情報リンクながの=地ビール品評会で金賞 よなよなエールなど」との見出しの下に,「大阪市でこのほど開かれた地ビール品評会『インターナショナル・ビア・コンペティション2002』で,ヤッホー・ブルーイング(・・・)の『よなよなエール』がアメリカン・ペールエール部門で三年連続の金賞を受賞,ロブストポーター部門でも『軽井沢高原ビール ナショナルトラスト』が金賞となった。」との記事内容。

㉒ 平成16年10月13日付け信濃毎日新聞朝刊(乙102)

「情報リンクながの=『よなよなエール』5年連続金賞 ヤッホー・ブルーイング」との見出しの下に,「日本地ビール協会などでつくる実行委員会が大阪市でこのほど開いた品評会『インターナショナル・ビア・コンペティション2004』で,ヤッホー・ブルーイング(・・・)の『よなよなエール』が,アメリカンスタイル・ペールエール部門で,五年連続の金賞を受賞した。同社は『軽井沢高原ビール』の『ワイルドフォレスト』『シーズナル』『バーレイワイン2002』でも,それぞれの部門で金賞となった。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成16年の発行部数は,約48万部である(乙304の17)

㉓ 平成17年11月22日付け朝日新聞朝刊長野県版(乙105,302)

「(ものづくり人づくり企業探検)ヤッホー・ブルーイング醸造所 エールビール/長野県」との見出しの下に,「97年に主力商品『軽井沢高原ビール』と『よなよなエール』が誕生した。」との記事内容。

㉔ 平成18年2月1日付け信濃毎日新聞朝刊(甲11の5,乙106)

「佐久で造る=ヤッホー・ブルーイング 個性あるビール,全国へ」との見出しの下に,「もう一つの柱,『軽井沢高原ビール』(…)は地元・軽井沢がターゲットで,別荘客や観光客に人気がある。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成18年の発行部数は,約48万3000部である(乙304の18)

㉕ 平成19年7月13日付け軽井沢新聞(乙107)

「NEWS DIGEST」の項に,「●ヤッホーブルーイングが,軽井沢高原ビールの売上金の一部を自然保護団体…と文化遺産保護団体…に寄付して,今年で10周年を迎えた。」との記事内容。

なお,軽井沢新聞の平成19年の発行部数は,約3万部である(乙304の6)。

㉖ 平成20年5月28日付け日本経済新聞長野県版(乙108,302)

「ヤッホー・ブルーイング」「地ビール3割増産」「大都市圏やネット好調」「今期,来夏向け備え」との見出しの下に,「軽井沢町周辺のレストランや酒屋,みやげ物店で販売する『軽井沢高原ビール』は一〇%増産する。」との記事内容。

㉗ 平成20年6月2日付け日経流通新聞(乙109)

「長野のヤッホー・ブルーイング」「地ビール 3 割増産」「大都市圏販売好調」と見出しの下に,「『軽井沢高原ビール』は一〇%増産する。」との記事内容。

なお,日経流通新聞の平成20年の発行部数は,約24万8000部である(乙304の28)。

㉘ 平成20年9月9日付け日本経済新聞長野県版(乙110,302)

「遠藤酒造場」「ヤッホー・ブルーイング」「‟地方の酒„好調に秘訣」「味に個性 受賞歴PR 観光客の口コミも効果」との見出しの下に,「ヤッホーの主力商品『よなよなエール』が全国的にヒットしたベースには地ビールとして名の通った『軽井沢高原ビール』の存在がある。」との記事内容。

㉙ 平成21年1月14日付け日本経済新聞長野県版(乙111,302)

「星野リゾート系のヤッホー」「地ビール2割増産」「09年11月期 コンビニ向け拡大」との見出しの下に,「ヤッホーは星野リゾート(・・・)のグループ企業で,『よなよなエール』や『軽井沢高原ビール』が主力商品。」との記事内容。

㉚ 平成21年6月27日付け信濃毎日新聞(乙113)

「地ビール収益一部」「町内2団体に寄付」「軽井沢の製造・販売会社」との見出しの下に,「同社は,地ビール『軽井沢高原ビール』のうち『ナショナルトラスト』,『ワイルドフォレスト』と名付けた製品が1本売れるごとに1円寄付する活動を1997年秋から続けている。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞の平成21年の発行部数は,朝刊が約48万9000部で,夕刊が約5万1000部である(乙304の19)。

㉛ 平成21年7月10日付け軽井沢新聞(乙114)

「NEWS DIGEST」の項に,「●株式会社ヤッホー・ブルーイングは6月25日,製造販売する『軽井沢高原ビール』の売上の一部を,軽井沢の自然保護団体と文化保護のために活動する…2つの団体に寄付し,贈呈式をトンボの湯前広場で行った。」との記事内容。

なお,軽井沢新聞の平成21年の発行部数は,約3万部である(乙304の7)。

㉜ 平成22年3月9日付け日本経済新聞長野県版(乙115,302)

「赤銅色で甘い香り」「軽井沢高原ビールで新製品」との見出しの下に,「ヤッホー・ブルーイング(・・・)は4月1日,『軽井沢高原ビール』シリーズの新製品『アイリッシュ・レッド・エール』=写真=を発売する。」との記事内容のほかに,被告商品の写真の掲載。

㉝ 平成22年3月10日付け信濃毎日新聞朝刊長野県版(甲11の6,乙116)

「県内新製品=2010年版の軽井沢高原ビール ヤッホー・ブルーイング」との見出しの下に,「☆2010年版の軽井沢高原ビール」「地ビール醸造販売のヤッホー・ブルーイング(・・・)は4月1日,『軽井沢高原ビール シーズナル アイリッシュ・レッド・エール」=写真=を発売する。」との記事内容。

なお,信濃毎日新聞朝刊の平成22年の発行部数は,約48万7000部である(乙304の20)。

㉞ 平成24年7月日付不詳朝日新聞長野県版(乙120,302)

「缶ビールですがグラスで飲んで」との見出しの下に,「『軽井沢高原ビール』で有名な軽井沢町のヤッホーブルーイング社は『2012年夏季限定』のビールを発売している。」との記事内容のほかに,被告商品の写真の掲載。

b 雑誌記事

下記掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告商品が,次のように雑誌記事として取り上げられていることが認められる。

① 「日経ビジネス」平成8年10月21日号(乙127)

「異色企業」「星野リゾート」「老舗ホテルの甘え断ち 地ビールで全国区狙う」との見出しの下に,「地ビール事業への進出はもともとはこうした戦略に沿ってのことだった。当初生産する2000キロリットルのうち約400キロリットルは『軽井沢高原ビール』として地元で売る。」との記事内容。

なお,「日経ビジネス」の平成8年の発行部数は,約29万3000部である(乙305の28)

② 「軽井沢ヴィネット」平成9年春号(乙129)

「登場!軽井沢高原ビール」「ビールと軽井沢を愛する人のために誕生」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容。

なお,軽井沢ヴィネットの平成9年の発行部数は,約5万部である(乙305の2)。

③ 「Hanako」平成9年6月18日号(乙130)

「NewsFront」の項目に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「Hanako」の平成9年の発行部数は,約26万部である(乙305の30)。

④ 「るるぶ」平成9年7月号(乙133)

「軽井沢の自然とビールを愛する人たちへ『軽井沢高原ビール』」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品のラベルデザインの写真の掲載。

なお,「るるぶ」の平成9年の発行部数は,約30万部である(乙305の39)。

⑤ 「Men’s Ex」平成9年8月号(乙136)

「日本全国・極上地ビール取り寄せ便」との項に,被告商品を紹介する記事内容。なお,「Men’s Ex」の平成9年の発行部数は,約12万部である(乙305の36)。

⑥ 「ポタ」平成9年8月19日号(乙138)

「●話題の避暑地が変わった!」「この夏,軽井沢は『巨大アウトレットモール』と『缶入り地ビール』に注目」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほかに,被告商品の写真の掲載。

なお,「ポタ」の平成9年の発行部数は,約30万部である(乙305の34)。

⑦ 「軽井沢ヴィネット」平成9年夏イベント特集号(乙139)

「『軽井沢高原ビール』登場」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

⑧ 「日経トレンディ」平成9年9月号(乙140)

「地元離れ全国目指す地ビール」「『熱処理』も登場し中身も変化」との見出しの記事中に,被告商品の写真の掲載。

なお,「日経トレンディ」の平成9年の発行部数は,約39万5000部である(乙305の27)。

⑨ 「じゃらん」平成9年10月1日号(乙143)

「プレゼント情報」の項に,「軽井沢の地ビール」「よなよなエール新発売」の見出しの下の記事中に,「伝統的な上面発酵製法を採用し,エールビールのおいしさを徹底的に追求して作られた『軽井沢高原ビール』。」との記事内容。

なお,「じゃらん」の平成9年の発行部数は,約30万部である(乙305の14)。

⑩ 「じゃらん」平成10年5月20日号(乙149)

「この地ビールが飲める」の項に,「軽井沢高原ビール」「美味しく飲むだけで自然保護にも一役。」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「じゃらん」の平成10年の発行部数は,約30万部である(乙305の15)。

⑪ 「Hanako」平成10年6月24日号(乙154)

「自然の恵みから誕生。」「値段も味も新しい,軽井沢の地ビール。」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「Hanako」の平成10年の発行部数は,約26万部である(乙305の31)。

⑫ 「TRAINVERT」平成10年7月号(乙155)

「東日本沿線ファイル4」の項に,1頁全面を使用して,「お国自慢の『地ビール』」との見出しの下に,被告商品及び「よなよなエール」を紹介する記事内容のほか,被告商品及び「よなよなエール」の写真の掲載。

なお,「TRAINVERT」の平成10年の発行部数は,約48万部である(乙305の26)。

⑬ 「週刊宝石」平成10年7月15日号(乙158)

「信越」の項に,「軽井沢高原ビール」との見出し下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「週刊宝石」の平成10年の発行部数は,約38万部である(乙305の13)。

⑭ 「ポタ」平成10年7月7日号(乙162)

「Present&Campaign&Infomation ポタリング」の項に,被告商品を紹介する記事内容のほかに,被告商品の写真の掲載。

なお,「ポタ」の平成10年の発行部数は,約30万部である(乙305の35)。

⑮ 「ほしいリゾート」平成10年8月号(乙164)

「色と香りを楽しみながらコクを味わう。軽井沢から新・地ビールが誕生」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「ほしいリゾート」の平成10年の発行部数は,約10万部である(乙305の18)。

⑯ 「Hanako」平成10年8月特大号(乙166)

「PRESENTS&INFORMATION」の項に,「『軽井沢高原ビールアンバーエール』6 缶」の見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

⑰ 「saita」平成10年8月号(乙168)

「TOKU NOTE」の項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「saita」の平成10年の発行部数は,80万部である(乙305の11)。

⑱ 「オレンジページ」平成10年8月2日号(乙169)

「PRESENT」の項に,「美しいこはく色のプレミアム地ビール」「『軽井沢高原ビール アンバーエール』 7名様」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「オレンジページ」の平成10年の発行部数は,約120万部である(乙305の1)。

⑲ 「ゆほびか」平成10年9月号(乙171)

「手軽に飲める缶入りになった人気のプレミアム地ビール」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「ゆほびか」の平成10年の発行部数は,約20万部である(乙305の38)。

⑳ 「プレゼントfan」平成10年9月号(乙172)

「軽井沢高原ビール アンバーエール 長野県」「軽井沢を愛する真の地ビール」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「プレゼントfan」の平成10年の発行部数は,約36万部である(乙305の10)。

㉑ 「THE GOLD」平成10年10月号(乙174)

「伝統のホテルと軽井沢彫,地ビールにフロマージュ,個性的なショップがいっぱい」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。なお,「THE GOLD」の平成10年の発行部数は,約85万部である(乙305の12)。

㉒ 「DELIO」平成10年12月号(乙175)

「BEER 地ビール」の項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。なお,「DELIO」の平成10年の発行部数は,約30万部である(乙305の25)。

㉓ 「モノ・マガジン」平成10年12月16日号(乙176)

「よなよなエール 軽井沢高原ビール詰め合わせ」との見出しの下,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「モノ・マガジン」の平成10年の発行部数は,約40万部である(乙305の37)。

㉔ 「軽井沢ヴィネット」平成13年夏号(乙181)

「軽井沢の地ビールが金賞受賞」との見出しの下に,被告商品の受賞を紹介する記事内容。

なお,「軽井沢ヴィネット」の平成13年の発行部数は,約5万部である(乙303の6)。

㉕ 「軽井沢ヴィネット」平成13年秋冬号(乙182)

「軽井沢高原ビール」「金賞受賞」「軽井沢の地ビール」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

㉖ 「軽井沢ヴィネット」平成15年秋冬号(甲9の3,乙23)

「『軽井沢高原ビール』レポート第1回」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「軽井沢ヴィネット」の平成15年の発行部数は,約5万部である(乙303の8)。

㉗ 「軽井沢ヴィネット」平成16年春号(甲9の4,乙24)

「『軽井沢高原ビール』レポート第2回」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「軽井沢ヴィネット」の平成16年の発行部数は,約5万部である(乙303の9)。

㉘ 「軽井沢ヴィネット」平成16年夏号(甲9の5,乙25)

「『軽井沢高原ビール』レポート第3回」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

㉙ 「軽井沢ヴィネット」平成17年夏号(甲9の6,乙27)

「『軽井沢高原ビール』レポート第4回」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「軽井沢ヴィネット」の平成17年の発行部数は,約5万部である(乙303の10)。

㉚ 「軽井沢ヴィネット」平成17年秋冬号(甲9の7,乙29)

「『軽井沢高原ビール』レポート第5回」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

㉛ 「軽井沢ヴィネット」平成18年春号(甲9の8,乙30)

「『軽井沢高原ビール』レポート第6回」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,「軽井沢ヴィネット」の平成18年の発行部数は,約5万部である(乙303の11)。

㉜ 「軽井沢ヴィネット」平成18年夏号(乙31)

「『軽井沢高原ビール』レポート」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

㉝ 「軽井沢ヴィネット」平成18年秋冬号(乙186)

「絶対におさえるべし!」「軽井沢の達人がおすすめする軽井沢限定 美味しい想い出」との項に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

㉞ 「るるぶ 軽井沢’09」号(甲9の1,乙188)

1頁全面を使用して,「お土産選びはコレ(..)でキマり!」「美味しい軽井沢を召し上がれ!!」「軽井沢高原ビール」との見出しの下に,被告商品を紹介する記事内容のほか,被告商品の写真の掲載。

なお,同号の発行部数は,約5万部である(乙305の40)。

㉟ 「るるぶ 軽井沢’10」号(甲9の2,乙189)

1頁全面を使用して,「軽井沢」「おみやげ」「コレクション」との見出しの下に,「軽井沢でもっとも飲まれ,お土産売り上げナンバー1 の『軽井沢高原ビール』」との記載のほかに,被告商品の写真を掲載。

なお,同号の発行部数は,約3万部である(乙305の41)。

c 広告

「軽井沢ヴィネット」平成9年夏号(乙4),同平成9年秋冬号(乙5),同平成10年春号(乙6)及び平成10年秋冬号(乙9)に,1頁全面を使用して,被告商品の紹介及び写真の掲載。

「軽井沢ヴィネット」平成11年春号(乙11),同平成11年夏号(乙12),同平成12年春号(乙13),同平成12年夏号(乙14),同平成12年秋冬号(乙15),同平成13年春号(乙16),同平成13年夏号(乙17),平成13年秋冬号(乙18),同平成14年夏号(乙19),同平成14年秋冬号(乙20)及び同平成21年秋冬号(乙34)に,頁半面を使用して,被告商品の紹介及び写真の掲載。

「軽井沢ヴィネット」平成15年春号(乙21)及び同平成15年夏号(乙22)に,頁半面を使用して,被告製品の紹介の掲載。

「軽井沢ヴィネット」平成17年春号(乙26)に,頁3分の1面を使用して,被告商品の紹介と写真の掲載。

d 本件アンケート

軽井沢新聞社が平成18年5月3~5日の3日間にわたり軽井沢町内の主要5スポットにて実施した本件アンケートには,次の結果が示されている。

① 「Q.8軽井沢高原ビールをご存知ですか?※ひとつだけお答えください」

[1] 観光客

飲んだことがある 42%

買ったことがある  4%

名前は知っている 31%

飲んでみたい   10%

全く知らない   13%

[2] 別荘所有者

飲んだことがある 65%

買ったことがある  9%

名前は知っている 17%

飲んでみたい    3%

全く知らない    6%

② 「Q.9上記質問でA~Cの方,どこで知りましたか?※ひとつだけお答えください。」

[1] 観光客

雑誌  29%

駅看板  4%

店頭  60%

その他  7%

[2] 別荘所有者

雑誌  12%

駅看板  3%

店頭  77%

その他  8%

e 販売量等

(a) 販売量

平成17~23年度における全国地ビール製造者の平均製造量は,77.7kℓ~110.7kℓであるが,同期間の被告商品の販売量は,240~288kℓである(乙236)。

(b) 総出荷量

平成17~23年度における被告商品の長野県内への出荷量は,約193~230kℓであり,長野県外への出荷量は,約32~68kℓである(乙237)。

(c) 出荷先及び出荷先別出荷量

被告商品は,遅くとも平成17年以降は,長野県内の相当広範な地域に出荷されている(乙237)。

平成17年1月~平成23年5月までの間に被告商品が1kℓ以上出荷された長野県外の業者の所在地は,福島県,群馬県,茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県にわたる(乙238)。

f 小括

以上の認定事実からすると,平成9年に発売を開始した被告商品は,①少なくとも,新聞の地方紙又は全国紙地方版にたびたび取り上げられたこと,②地域雑誌や全国を販域とする雑誌にもたびたび紹介されていたこと,③平成18年時点で,軽井沢を訪れた観光客の77%に認知されており,その観光客の29%が雑誌から被告商品を知ったこと,④地ビールとしては相当量の販売実績があり,長野県内のみならず主として関東地方を中心に相応の販売実績があったことが認められる(なお,前記2(2)に認定のとおり,引用商標2は専ら文字として識別される商標であるから,刊行物に被告商品の名称のみが引用されている場合であっても,称呼のみならず,外観も直ちに引用商標2が想起される関係にあるといえる。)。

そうすると,被告商品に付された引用商標2は,被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして,遅くとも,本件商標登録出願前には,長野県内及び関東地方の取引者,需要者の間に広く認識されていたものといえ,その周知性は,本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。

(イ) 原告の主張について

① 原告は,平成19年以降には,被告商品が雑誌に取り上げられることはほとんどなかった趣旨の主張をする。

しかしながら,被告商品は,販売開始直後の平成9~10年ころには集中的にマスコミに取り上げられており,その中には全国的に著名な雑誌も複数含まれているのであり,引用商標2は,軽井沢を代表する地ビールの名称としてその地歩をそのころに確立させ,相当程度,その印象を取引者,需要者に浸透させたものと推認される。そして,その後も,散発的とはいえ新聞,雑誌にとりあげられていることや,被告商品の販売量にも減少傾向はないことからみると,当初に浸透した知名度は,本件商標登録査定時まで継続していたものというべきである。

原告の上記主張は,採用することができない。

② 原告は,本件アンケートの信用性が低い旨を主張する。

本件アンケートの調査対象者は,621~626人であり(乙229の4・5頁参照),その対象者数が,アンケートの目的に対する適正数であるか否かを明らかにする証拠はない。また,調査対象場所に,「星野」と被告らと何らかの関係を有すると推測される場所が含まれていたり,被告商品の販売店で行われた可能性が高いものである(甲7,乙229の12~14頁参照)。したがって,その調査結果には慎重な評価を加えるべきものではある。しかしながら,本件アンケートによれば,本件アンケート対象者となった観光客の約22%(被告商品を認知していた77%の観光客の29%)は,雑誌を通じて事前に被告商品を知っていたことが読み取れるのであり,この点について特に作為的な要素は見当たらない。そうであれば,本件アンケートから,観光客の被告商品に対する認知度のおおまかな傾向を十分に推認することができる。

原告の上記主張は,採用することができない。

③ 原告は,ビール受賞歴と周知著名性との間に関連性はない旨を主張するが,受賞の事実が新聞,雑誌等で報道されることにより,商標が広く知られる機会が増すのであり,その主張は,採用することができない。

④ 原告は,被告商品の販売量は必ずしも多いとはいえない旨を主張する。

しかしながら,平成23年に行われた地ビール製造業の実態調査(甲13の2)は,178者を調査対象製造業者とし,うち回答のあった146者の実態の調査結果をまとめたものであるところ,平成22年の時点において,製造数量が100kℓ以上の製造業者が25者であるということは,調査対象期間の製造数量が100kℓを超えている被告ヤッホーが,少なくとも上位25者(全体の17%)に含まれていることを意味するのであり,むしろ,製造数量としては多いものと評価すべきである。

原告の上記主張は,採用することができない。

イ 独創性

引用商標2は,広く知られた地名である「軽井沢」と,地勢を示す「高原」を組み合わせたものであり,軽井沢がもとより高原地域にあることにかんがみれば,独創性はかなり低いものといえる。

(3)  取引の実情

ア 商品の関連性及び取引者・需要者の共通性

(ア) 商品の関連性

本件商標の指定商品は,「エールビール,ラガービール,黒ビール,スタウトビール,ドラフトビール,その他のビール」であるから,被告商品と同一である。

(イ) 取引者・需要者の共通性

原告商品は,全国で店頭販売されているものであるから,当然の結果,被告商品の主たる販売地域である軽井沢町及びその周辺地域において(甲7),取引者・需要者を共通にする。

のみならず,軽井沢は,関東地方からを中心に(約7~8割)毎年800万人近くもの観光客が全国から訪れている日本有数の観光地であり(乙239,240),

① 被告商品が長野県内で広く取り扱われていること(甲7,乙237),②前記(2)アd(c)に認定のとおり,被告商品が1kℓ以上出荷された長野県外の業者の所在地が,福島県,群馬県,茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県にわたっていること,③被告ヤッホーが,被告商品をインターネットを利用して宣伝し,インターネットを通じて被告商品を販売していること(甲6,84,乙93,248)などにかんがみると,少なくとも,長野県内及び関東地方において,原告商品と被告商品とは,取引者・需要者を共通にしているといえる。

イ その他

ビールは嗜好品飲料であり,主としてその味覚により差別化が図られるものであるから,その内容物を特定し,品質保証の役目を果たす名称について,取引者・需要者は一定の注意を払うものといえる。一方で,同一名称でありながら,缶全体のデザインを異にするシリーズ商品が存在することは,ごく自然にあり得ることである。そうすると,缶全体のデザインが異なることは,名称が近似することにより生じた特定商品間の混同のおそれを減じる要素として重視できるものではない(なお,原告商品の発売時期は本件商標登録後の平成25年6月ころであるが〔甲20〕,そのデザインは,いずれの製品も,前記第3,3(3)イのように「軽井沢浅間高原ビール」を「軽井沢」「浅間高原」「ビール」と3段に並記し,「浅間高原」の部分を「軽井沢」及び「ビール」の2分の1以下の小さな文字で表するものであり〔甲63,64,69,81,82,乙249〕,「軽井沢ビール」とも読めるような構成であって,本件商標以上に引用商標2に近似する。)。

(4)  混同のおそれ

以上(1)~(3)のとおり,①本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても近似し,また,②引用商標2は,被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして,長野県内及び関東地方の取引者・需要者の間に広く認識されていたものといえ,さらに,③本件商標の指定商品と被告商品とは同一であって,④長野県内及び関東地方において,本件商標の指定商品と被告商品とは取引者・需要者を共通としているといえる。

以上の事情に照らせば,本件商標をその指定商品に使用するときは,その取引者・需要者において,同商品が被告ヤッホーの業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるというべきである。

第6結論

以上によれば,取消事由6について判断するまでもなく,審決の結論に誤りがないことは明らかであり,原告の請求は理由がない。

よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清水節 裁判官 中村恭 裁判官 中武由紀)

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