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知財高等裁判所 平成26年(行ケ)10226号 判決 2015年8月27日

原告

テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)

訴訟代理人弁理士

大塚康徳

大塚康弘

高柳司郎

江嶋清仁

永川行光

木村秀二

下山治

被告

特許庁長官

指定代理人

須田勝巳

小田浩

手島聖治

稲葉和生

根岸克弘

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1請求

特許庁が不服2012-4626号事件について平成26年5月28日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

1  特許庁における手続の経緯等

⑴  原告は,発明の名称を「通信ネットワークにおけるサービスノードへ接続されたエンドユーザ端末へのねらいの定められたメッセージの送信」とする発明について,2001年(平成13年)5月18日(優先権主張日2000年〔平成12年〕5月18日,スウェーデン国。以下「本願優先日」という。)を国際出願日とする特許出願(甲7,甲8〔甲7の国内書面〕。特願2001-585535号。以下「本件出願」という。)をした。

原告は,平成23年11月4日付けで拒絶査定(甲12)を受けたので,平成24年3月9日,これに対する不服の審判を請求する(甲13)とともに,特許請求の範囲の変更を内容とする手続補正(甲14)をした。

⑵  特許庁は,上記請求を不服2012-4626号事件として審理を行った。

原告は,平成25年6月4日付けで拒絶理由通知(甲17)を受けたので,同年12月9日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする手続補正(甲18。以下「本件補正」という。)をした。

⑶  特許庁は,平成26年5月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(出訴期間の付加期間90日。以下「本件審決」という。)をし,同年6月9日,その謄本が原告に送達された。

原告は,同年10月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2  特許請求の範囲の記載

本件補正後の特許請求の範囲の請求項7(以下「本件補正後請求項7」という。)の記載は,次のとおりである(以下,同請求項に係る発明を「本願発明」という。)。

【請求項7】

通信ネットワークによってエンドユーザ移動体端末により選択されて接続され,さらにwebベースのプロトコルを用い,専用のインタフェースによって第1のメッセージと第2のメッセージおのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョンを有したインターネット広告者ノードとに接続され,前記インターネット広告者ノードに保持された少なくとも1つのメッセージを前記端末に提供するサービスプロバイダノードであって,

前記インターネット広告者ノードから前記端末が情報を取り出す前記端末への配信のために,前記少なくとも1つのメッセージの配信を前記インターネット広告者に対して要求し,前記要求において前記インターネット広告者ノードから提供されることになる前記メッセージを選択するときに用いられる広告のサイズと前記端末のタイプについての情報を含むパラメータを指定する手段と,

前記パラメータに従って前記インターネット広告者ノードにより選択され提供された前記少なくとも1つのメッセージの適切なバージョンを受信する手段とを有することを特徴とするサービスプロバイダノード。

3  本件審決の理由の要旨

⑴  本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,要するに,本願発明は,本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である引用例1(特開平11-265398号公報。甲1)に記載された発明(以下「引用発明」という。),引用例2(特開2000-132566号公報。甲2)及び引用例3(森永輔「アクセス時に表示形式を変換するソフトが登場 モバイル向けWebページを生成」日経コンピュータ2000年5月8日号〔no.495〕,42頁から44頁。甲3)に記載されている事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきであるというものである。

⑵  本件審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

ア 引用発明

「広告,イベント情報などの様々な情報をパソコンや携帯情報端末(PDA)等を所持するユーザに提供する情報提供システムにおける情報提供サーバ110であって,

情報提供システムは,情報提供サーバ110,ユーザ管理サーバ130,地図サーバ140,店情報サーバ150及び広告イベント情報サーバ160を備えており,

情報提供サーバ110,ユーザ管理サーバ130,地図サーバ140,店情報サーバ150及び広告イベント情報サーバ160は,LAN(ローカルエリアネットワーク)170を介して互いに接続されており,

情報提供サーバ110はインターネット180に接続されていて,ユーザはパソコンや携帯情報端末(PDA)などのユーザ端末200からインターネット180を介してこの情報提供システムにアクセスでき,

情報提供サーバ110は,この情報提供システムに保持されている膨大な情報の中からユーザが必要としている特定の情報等を,ユーザ管理サーバ130,地図サーバ140,店情報サーバ150,広告イベント情報サーバ160と連携して抽出し,抽出された情報は,インターネット180を介してユーザ端末200に提供され,

情報提供サーバ110は,WWWサーバ118,データ合成装置114,セッション管理部115,制御部116及び内部時計117を備え,制御部116は,情報提供サーバ110及びこれに接続されたユーザ管理サーバ130,地図サーバ140,店情報サーバ150及び広告イベント情報サーバ160を統括して制御するものであり,

制御部116の制御により,各サーバにおける情報の検索,検索結果のフィルタリング,抽出された情報の合成,ユーザ端末200への情報の配信などが実施され,

地図サーバ140は,地図データ制御部141及び地図データファイル142を備え,

地図データ制御部141は,情報提供サーバ110を介して入力されるユーザからの入力に従って,特定の範囲に限定された特定の縮尺の地図データを地図データファイル142から検索して抽出し,

店情報サーバ150は,RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)151と店情報ファイル152を備え,店情報ファイル152には,様々な店について,名称,住所,営業時間,料金,地図上の座標などの情報を保持しており,

ユーザからの検索指示が情報提供サーバ110を介して入力されると,RDBMS151は該当する店を検索し,その店に関する詳細な情報を情報提供サーバ110に出力し,

ユーザ管理サーバ130は,RDBMS131,ユーザ情報ファイル132,ログデータファイル133及び現在地情報取得管理部134を備えており,ユーザ情報ファイル132には,ユーザ情報テーブルが登録されており,

ユーザ情報テーブルにはデータ項目として,「ユーザID」,「パスワード」,「氏名」,「生年月日」,「性別」,「興味対象1」~「興味対象10」,「年収」,「職種コード」,「職業管理コード」及び「役職管理コード」の各項目が含まれており,

ログデータファイル133には,各ユーザの通信の記録やユーザ情報ファイル132の更新記録のデータが保存され,現在地情報取得管理部134は,位置検出が可能な登録されたユーザについて,定期的に現在位置の情報を取得して管理し,

RDBMS131は,情報提供サーバ110からの要求に応じて,ユーザ情報ファイル132,ログデータファイル133,現在地情報取得管理部134から特定のユーザの個人情報を取り出し,情報提供サーバ110の制御部116に渡し,制御部116は,ユーザの個人情報に基づいて,情報の選別を実施し,

広告イベント情報サーバ160にはRDBMS161,広告イベント情報ファイル162及びログ情報ファイル163が備わっており,広告イベント情報ファイル162には,広告イベント情報テーブルが登録されており,この広告イベント情報テーブルのデータ項目には,「広告イベントID」,「名称」,「開始日時」,「終了日時」,「掲載開始日時」,「掲載終了日時」,「掲載緯度 MIN」,「掲載緯度 MAX」,「掲載経度MIN」,「掲載経度 MAX」,「緯度」,「経度」,「対象ユーザ1」~「対象ユーザ5」,「対象年齢 MIN」,「対象年齢 MAX」,「対象性別」,「対象年収 MIN」,「対象年収 MAX」,「対象職種」及び「対象職業」が含まれており,

掲載(提供)対象ユーザを識別するための趣向が「対象ユーザ1」~「対象ユーザ5」の各項目に示され,年齢の範囲が「対象年齢 MIN」~「対象年齢 MAX」に限定され,年収の範囲が「対象年収 MIN」~「対象年収 MAX」に定めてあり,また,対象ユーザの性別,職種,職業についても指定されており,

RDBMS161は,情報提供サーバ110の制御部116からの要求に従って,広告イベント情報ファイル162の内容を検索し,抽出された広告イベント情報のデータを情報提供サーバ110に渡し,ログ情報ファイル163には,広告掲載の記録が保存され,

ユーザが,ユーザ端末200からインターネット180を介してこの情報提供システムにアクセスすると,ユーザ端末200の表示画面上には,上側の地図情報表示エリアに地図情報が表示されるとともに,下側の広告イベント情報表示エリアには特別な広告イベント情報が表示され,この広告イベント情報表示エリアに表示される情報は,ユーザが能動的に取り出したものではなく,情報提供システムが自動的に選択してユーザに提供するものであり,

ユーザからの入力に応答して,特定の領域の地図画像データD1を生成し(ステップS13),

ユーザからの入力に応答して,特定の条件に適合する店情報D2を検索し(ステップS14),

ステップS13で抽出した地図画像データD1とステップS14で抽出した店情報D2を合成してフレーム情報D0を生成し,このフレーム情報D0が,地図情報表示エリアに表示され(ステップS15),

ステップS13で生成した地図画像データD1の地図の中心位置の座標を,ユーザの注目位置とみなして取得し(ステップS16),

ユーザIDに基づいて,ユーザ管理サーバ130に登録されている様々なユーザ情報のうち,ユーザの属性と趣向の情報を取得し(ステップS17),

ここで使用するユーザIDは,ユーザがこの情報提供システムと接続する際にユーザがIDとして入力した情報であり,ステップS17で取得するユーザの属性には,年齢,性別,年収,職種及び職業が含まれており,また,ステップS17で取得するユーザの趣向には,「興味対象1」~「興味対象10」の各項目のデータレコードが含まれており,

情報提供サーバ110の内部時計117から,現在の日時の情報を入力し(ステップS18),

ステップS16で取得した注目位置の情報と,ステップS17で取得したユーザの属性及び趣向の情報と,ステップS18で取得した現在の日時に基づいて,条件に適合する提供情報(広告イベント情報)を,広告イベント情報サーバ160の広告イベント情報ファイル162の中から検索し(ステップS19),

ステップS19で抽出された広告イベント情報D3と表示雛形ファイルの内容とに基づいて,フレーム情報D4を生成し(ステップS20),

ステップS15で生成されたフレーム情報D0とステップS20で生成されたフレーム情報D4とを合成して,情報ページD6を生成し(ステップS21),

この情報ページD6をユーザに送出する(ステップS22),

情報提供システムにおける情報提供サーバ110。」

イ 本願発明と引用発明との一致点

「通信ネットワークによってエンドユーザ移動体端末により接続され,さらに第1のメッセージと第2のメッセージを有したインターネット広告者ノードに接続され,前記インターネット広告者ノードに保持された少なくとも1つのメッセージを前記端末に提供するサービスプロバイダノードであって,

前記インターネット広告者ノードから前記端末が情報を取り出す前記端末への配信のために,前記少なくとも1つのメッセージの配信を前記インターネット広告者ノードに対して要求し,前記要求において前記インターネット広告者ノードから提供されることになる前記メッセージを選択するときに用いられるパラメータを指定する手段と,

前記パラメータに従って前記インターネット広告者ノードにより選択され提供された前記少なくとも1つのメッセージを受信する手段とを有するサービスプロバイダノード。」である点。

ウ 本願発明と引用発明との相違点

(相違点1)

本願発明では,サービスプロバイダノードが,エンドユーザ移動体端末により「選択されて」接続されるのに対して,引用発明では,情報提供サーバ110が,ユーザ端末200に「選択されて」いるかどうか明らかではない点。

(相違点2)

本願発明では,サービスプロバイダノードとインターネット広告者ノードとが,「webベースのプロトコルを用い,専用のインタフェースによって」接続されているのに対して,引用発明は,情報提供サーバ110と広告イベント情報サーバ160とが,LAN170によって接続されている点。

(相違点3)

本願発明では,インターネット広告者ノードが第1のメッセージと第2のメッセージについて,「おのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョン」を有しており,サービスプロバイダノードが,メッセージの配信要求において,「端末のタイプについての情報を含む」パラメータを指定すると,インターネット広告者ノードは,当該パラメータに従って,メッセージの「適切なバージョン」を選択して提供するのに対して,引用発明はそのような構成となっていない点。

(相違点4)

本願発明では,サービスプロバイダノードが,メッセージの配信要求において,「広告のサイズについての情報を含む」パラメータを指定しているのに対して,引用発明は,そのような構成となっていない点。

4  取消事由

⑴  一致点の認定の誤り-取消事由1

⑵  相違点3に係る容易想到性の判断の誤り-取消事由2

⑶  相違点4に係る容易想到性の判断の誤り-取消事由3

第3当事者の主張

1  取消事由1(一致点の認定の誤り)について

〔原告の主張〕

以下のとおり,引用例1(甲1)には,本願発明の「インターネット広告者ノード」に係る構成の記載がなく,引用発明は同構成を備えていないから,本件審決がした一致点の認定は,誤りである。

⑴ア ①本願の願書に添付した明細書(甲8。以下,図面を含めて「本願明細書」という。)において,「サービスプロバイダ」は,自身のサービスに加え,「インターネット広告者」からの広告をエンドユーザに提供することによって,サービスの資金を調達する旨が記載されていること(【0002】等),②単に,インターネット広告の提供のみであれば,「インターネット広告ノード」と表現すれば足りるところ,あえて,「インターネット広告者ノード」という表現を用いていること,③本願明細書中,「インターネット広告者ノード」が「インタフェース」を用いて「外の世界との通信を行なう」との記載(【0045】)は,「インターネット広告者ノード」と「サービスプロバイダノード」とが互いに「別の世界」に存在することを意味することによれば,本願発明の「インターネット広告者」は,「サービスプロバイダ」とは互いに異なる者あるいは組織(事業者等)であり,本願発明の「インターネット広告者ノード」は,「サービスプロバイダ」とは別個の独立した者である「インターネット広告者」の所有又は管理に係る装置ないしシステムであるといえる。

イ 本件審決は,引用発明の「広告イベント情報サーバ160」が本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当する構成である旨判断した。

しかるところ,引用発明の「情報提供サーバ110」は,情報をユーザ端末に提供するという点において,本願発明の「サービスプロバイダノード」に相当するものであり,また,引用例1(甲1)には,「広告イベント情報サーバ160」は,「LAN(ローカルエリアネットワーク)170」を介して「情報提供サーバ110」に接続されたものであり,「情報提供サーバ110」の「制御部116」によって制御されることが記載されている(【0034】,【0037】,図3,図4)。

そうすると,引用発明において,「情報提供サーバ110」,「広告イベント情報サーバ160」等を備えた「情報提供システム」は,同一の組織(事業者等)の所有又は管理に係るものであるから,引用発明の「広告イベント情報サーバ160」は,本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当するものとはいえない。

ウ したがって,引用発明において,本願発明の「サービスプロバイダノード」に相当する「情報提供サーバ110」を含む「情報提供システム」が,他の組織(事業者等)である「インターネット広告者」の所有又は管理に係る「インターネット広告者ノード」に対してメッセージの配信を要求するという構成は,存在しない。

⑵ 以上によれば,引用発明は,本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当する構成を備えていないというべきであるから,本件審決がした一致点の認定は誤りである。

〔被告の主張〕

原告は,本願発明の「インターネット広告者ノード」が「サービスプロバイダ」とは別個の独立した者である「インターネット広告者」の所有又は管理に係るものであることを前提として,引用発明は,本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当する構成を備えていないなどと主張するが,以下によれば,上記前提は,本件補正後請求項7及び本願明細書(甲8)の記載に基づかないものであるから,原告の上記主張は,前提を欠く。

⑴ 本件補正後請求項7においては,「インターネット広告者ノード」につき,所定の広告情報を記憶してこれを「サービスプロバイダ」との間でやり取りするという技術的な機能,構成が特定されているにすぎず,所有又は管理の主体に関する営業上の取決めは具体的に特定されていない。

⑵ 本願明細書においては,「インターネット広告者ノード」の所有又は管理の主体について何ら記載されておらず,「インターネット広告者ノード」という記載のみをもって,それが「インターネット広告者」の所有又は管理に係るもののみを指し,それ以外の者によって所有又は管理される「ノード」は排除されるとまで限定的に解釈することはできない。

ア 原告がその主張の根拠として挙げる本願明細書の【0002】の記載から理解できることは,従来,「サービスプロバイダ」が,広告料収入をもって,無料で提供するサービスの資金源の1つとしていたことにとどまり,上記記載は,「インターネット広告者ノード」を「インターネット広告者」の所有又は管理に係るものに限定していない。

イ 「インターネット広告者ノード」という表現は,多義的なものであり,「ノード」の所有又は管理の主体を「インターネット広告者」に限定するものではない。

すなわち,本願明細書には,「インターネット広告者ノード」の所有や管理に関する明示的な記載はなく,他方,【0021】中の「移動体インターネットの広告者を呼出すノード11」という記載によれば,「ノード」の所有又は管理の主体は,広告者を「呼出す」側とも解することができる。加えて,【0023】には「インターネット広告ノード」という表記も見られる。

また,インターネットの分野においては,広告を格納し,提供する「ノード(サーバ)」が広告者以外の者によって所有又は管理されている場合もあることは常識であり,情報やサービスを提供する側の主体を「・・者」と呼ぶことは普通に行われていることにも鑑みると,広告者以外の者の所有又は管理に係る「ノード(サーバ)」を「インターネット広告者ノード」と表現しても,何ら不合理ではない。

ウ 本願明細書の【0045】においては,「移動体広告スケジューラ」の通信機能が説明されているにすぎない。

すなわち,インターネット広告者ノード11の側からみれば,外部との「インタフェース」よりも先の通信相手は「外の世界」である。「外の世界との通信を行なう」との記載は,その表現自体曖昧なものといえるが,「移動体広告スケジューラ」と呼ばれる「インタフェース」を介して通信相手と通信を行うという程度の意味を有するにとどまり,同記載から,「インターネット広告者ノード」をインターネット広告者の所有又は管理に係るものに限定して解釈することはできない。

⑶ 前記⑴及び⑵によれば,本願発明の「インターネット広告者ノード」と引用発明の「広告イベント情報サーバ160」との間には,広告者の広告イベント情報を記憶し,「サービスプロバイダノード」(本願発明)ないし「情報提供サーバ110」(引用発明)からの「要求」に応じて広告イベント情報を「サービスプロバイダノード」ないし「情報提供サーバ110」へ送信するという機能を有している点において,実質的に相違はなく,引用発明の「広告イベント情報サーバ160」が本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当するものであるから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。

2  取消事由2(相違点3に係る容易想到性の判断の誤り)について

〔原告の主張〕

本件審決は,①引用例2(甲2)及び引用例3(甲3)によれば,本願優先日当時において,サーバから端末に送信するコンテンツを当該端末の属性(端末のタイプ)に応じたものとすることは,周知技術(以下「周知技術A」という。)であった,②複数のバージョンのコンテンツをあらかじめ作成しておき,その中から所望のバージョンを選択して提供すれば,コンテンツの提供速度が増すことは,引用例3記載のとおり,自明のことであるから,コンテンツの提供速度を増すために複数のバージョンのコンテンツをあらかじめ作成しておくことは,当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であるとして,引用発明において,端末に送信するコンテンツを当該端末のタイプに応じたものとし,その際,複数のバージョンのコンテンツをあらかじめ作成しておき,その中から所望のバージョンを選択して提供するように構成することは,当業者が本願優先日当時において容易に想到し得た旨判断し,相違点3に係る容易想到性を肯定しているが,以下によれば,この認定,判断は,誤りである。

⑴ ①引用例2には,配信すべきコンテンツをユーザの使用端末に合わせて最適化した上で,同端末に送信することが(【0056】,【0073】から【0075】,図4),②引用例3には,モバイル端末からのアクセス要求に応じてWebサーバからWebぺージを受け取り,Webぺージ変換ソフトにより,あらかじめ設定しておいた定義情報に基づいて別の形式のWebぺージに変換することが,それぞれ記載されているにすぎない。

この点に鑑みると,引用例2及び3に記載された発明は,端末の仕様に適合していないことを除く全ての編集が完成したWebページのデータを,端末が接続されるサーバ,すなわち,ユーザ端末に最も近いサーバにおいて,生成又は取得し,ユーザ端末の仕様に適合するように変換した上で配信する程度のものである。

以上によれば,仮に,引用例2及び引用例3に記載された発明又は周知技術Aを引用発明の「情報提供システム」に適用することが,当業者において本願優先日当時に容易に想到し得た事項であったとしても,上記適用によって得られるのは,「情報提供システム」の「情報提供サーバ110」において生成済みのWebページ(より具体的には,甲1の図16に例示されている広告付きの情報ページD6のようなもの)を,端末の属性に適合するように変換して提供するという程度のものにすぎず,相違点3に係る本願発明の構成には至らない。

⑵ 被告主張のとおり,引用発明において,「広告イベント情報サーバ160」に,「おのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョン」の「メッセージ」を保持させることについては,以下のような技術的な欠陥がある。

すなわち,「情報提供サーバ110」で生成される情報ページD6(甲1の図16)は,フレーム情報D0(地図画像データD1,店情報D2)及び広告イベント情報D3を含むものであるから,後者のみを送信先の端末の属性(端末のタイプ)に応じたバージョンとしても無意味であり,前者も当該端末の属性(端末のタイプ)に応じたバージョンにしなければならない。

したがって,周知技術Aを引用発明に適用するならば,「情報提供サーバ110」に適用するべきであり,そうであれば,「広告イベント情報サーバ160」には適用されないはずである。

⑶ 以上によれば,引用発明に,相違点3に係る「第1のメッセージと第2のメッセージについて,『おのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョン」を有する「インターネット広告者ノード」を設けることは,当業者が本願優先日当時において容易に想到し得た事項ではない。

〔被告の主張〕

引用例2(甲2)及び引用例3(甲3)によれば,周知技術Aが認められ,これらの引用例においては,コンテンツ送信の都度,当該送信先の端末に適したコンテンツを「編集」又は「変換」により作成している。

そして,引用例3の記載によれば,複数のバージョンのコンテンツをあらかじめ作成しておき,その中から所望のバージョンを選択して提供するようにすれば,コンテンツの提供速度が増すことは自明のことであるから(引用例3に加え,乙3〔特開2000-90001〕【0011】から【0013】,乙4〔特開平11-65950〕【0026】,【0027】,【0093】,【0094】,【0184】参照。),引用発明において,本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当する「広告イベント情報サーバ160」に保持された第1のメッセージと第2のメッセージにつき,「おのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョン」をあらかじめ作成しておき,「端末のタイプについての情報を含むパラメータが」指定されると,当該パラメータに従って,「メッセージの適切なバージョン」を選択して提供するように構成することは,当業者が本願優先日当時において容易に想到し得たといえる。

以上によれば,引用例2及び引用例3から認定した周知技術Aに加えて,メッセージ変換をあらかじめ行うか,必要に応じて行うかは設計的事項である旨を示した上で,相違点3に係る容易想到性を肯定した本件審決の判断に誤りはなく,原告の主張は,本件審決の上記判断の趣旨を正解しないものである。

したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。

3  取消事由3(相違点4に係る容易想到性の判断の誤り)について

〔原告の主張〕

本件審決は,「端末のタイプによって,画面サイズやメモリ量に制約があることは,よく知られていることであるから,引用発明に周知技術Aを適用する際,『端末のタイプ』に加えて,画面サイズやメモリ量に適合する『広告のサイズ』も指定するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。」旨判断するが,以下によれば,同判断は誤りである。

⑴ア 本件審決の前記判断は,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」に応じて決定されるというものである。

しかしながら,「端末のタイプ」が「サービスプロバイダノード」に接続される端末に従って一義的に定まるものであるのに対し,「広告のサイズ」は,「サービスプロバイダノード」が一定の範囲内において自由に指定できるものであるから,「端末のタイプ」と「広告のサイズ」は,全く異なる概念といえる。

そして,「サービスプロバイダ」によって指定されるメッセージのサイズ,すなわち,「広告のサイズ」は,エンドユーザ端末の表示部において相対的に大きな面積を占める場合も小さな面積を占める場合もあり,「端末のタイプ」によって一義的に決定されるものではない。

イ 本願発明は,「サービスプロバイダ」が,エンドユーザ端末に提供するメッセージのサイズ,すなわち,「広告のサイズ」の指定を通じて,収益をコントロールできるようにするものであり,この効果は,「サービスプロバイダノード」が,「広告のサイズ」についての「情報を含むパラメータを指定する手段」を備えることにより,実現される。

すなわち,「広告のサイズ」は,契約等に基づいて「サービスプロバイダノード」に設定され,「サービスプロバイダノード」は,同設定に基づき,「インターネット広告者ノード」に対し,「広告のサイズ」をパラメータによって指定することができ,同指定に応じたサイズの広告が,「インターネット広告者ノード」から「サービスプロバイダノード」に送信される。そして,「広告のサイズ」を指定することが,「サービスプロバイダ」によるサービスの資金調達に有利な効果をもたらすことは,当業者が推論できることである。

本件審決の前記判断のように,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」のみに応じて決定されるものとすると,「サービスプロバイダ」は,収益のコントロールに当たって「端末のタイプ」のみに従うほかなくなり,「インターネット広告者」も,小さな広告の提供で足りる場合も高額な広告料の支払を要するなどの不都合が生じる。

ウ 以上によれば,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」に応じて決定されるという本件審決の前記判断は,失当である。

⑵ また,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」に応じて決定されるのであれば,そもそも「端末のタイプ」の他に「広告のサイズ」を指定する必要はなく,したがって,「引用発明に周知技術Aを適用する際,『端末のタイプ』に加えて,画面サイズやメモリ量に適合する『広告のサイズ』も指定するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。」という本件審決の前記判断は,自己矛盾をはらむものともいえる。

〔被告の主張〕

⑴ 原告は,本願発明につき,「サービスプロバイダ」が「広告のサイズ」の指定を通じて収益をコントロールできるようにするものである旨主張するが,以下のとおり,同主張は,本件補正後請求項7及び本願明細書(甲8)の記載に基づくものではない。

ア すなわち,本件補正後請求項7には,「サービスプロバイダ」が「広告のサイズ」を自由に指定することも,同指定によって収益をコントロールすることも,何ら記載されていない。

イ 本願明細書中,【0012】,【0033】,【0035】及び【0056】において「サイズ」に関する記載があるところ,これらにおいても,「サービスプロバイダ」が「広告のサイズ」を自由に指定することも,同指定によって収益をコントロールすることも,何ら言及されていない。

本願明細書の【0033】によれば,「サービスプロバイダ」は,広告のサイズが「限界を超えていないこと」,すなわち,所定のサイズ以下であることをチェックしているにすぎず,収益をコントロールすることはできない。

⑵ 本件審決は,相違点4に係る容易想到性の有無の判断において,「広告のサイズ」のパラメータを決定する要因としては,端末の画面サイズやメモリ量などの端末能力が想定されることを踏まえて,相違点3に係る容易想到性の有無の判断において言及した「端末のタイプ」のパラメータに加え,前記端末能力に起因する「広告のサイズ」もパラメータとして指定するように構成することは,当業者が容易に想到し得た旨判断しており,同判断に誤りはない。

したがって,原告主張の取消事由3は理由がない。

第4当裁判所の判断

1  取消事由1(一致点の認定の誤り)について

⑴  本願発明について

ア 本願発明の特許請求の範囲(「本件補正後請求項7」)の記載は,前記第2の2記載のとおりである。

イ 本願明細書(甲8)の「発明の詳細な説明」には,以下のとおり記載されている(下記記載中に引用する図面について別紙1甲8号証図面を参照。)。

【0001】

技術分野

本発明は通信ネットワークにおける加入者に個人的なメッセージを提供する方法及びコンピュータプログラムに関する。

【0002】

関連技術の説明

あらゆる種類の通信ネットワークにおいてコストのかからないサービスを提供することが望まれている。そのようなサービスの資金を調達する1つの方法は、サービスを受ける加入者が一定の量の広告を受け入れることである。この場合、例えば、加入者端末における対応するクライアントに情報を提供するネットワークのプッシュサーバによって、広告が加入者によって要求された情報に付加されねばならない。また、好ましくは、受信される広告はいくらか加入者のプロフィールと合致しているべきである。インターネットを用いたそのような解決策は、国際特許出願PCT/SE99/01454に開示されている。

【0003】

例えば、人口統計学上のデータに依存して、選択された個人のグループにねらいを定めた情報を送信する別の方法は、ナローキャスト(narrowcast)として知られている。今日のナローキャストは、ねらいを定められたメッセージ、主として、広告が、例えば、バナー形式で伝統的なインターネットを介して選択された個人のグループに送信されるのを可能にしている。

【0004】

この解決策は、HTTPとHTMLを用いたインターネットタイプのネットワークではよく作用している。今日のたいていの移動体端末はプッシュ・クライアントを有しておらず、それ故に同じクライアント-サーバ技術に基づくプッシュ・サーバからの情報を受信することはできない。このため、移動体ネットワークにおいてインターネットのようなサービスを提供するための統一された標準は発展していないのである。その代わり、各サービスプロバイダはそのようなサービスを提供するための専有の解決策を開発している。

【0006】

本発明の目的

本発明の目的は、移動体の加入者によって用いられる端末や、サービスや、運用者のネットワークの種類に係らず、その移動体の加入者への個人的なメッセージの配信を可能とすることにある。

【0007】

本発明の要約

本発明に従うこの目的は、通信ネットワークにおけるサービスノード(判決注:サービスプロバイダノードを指す。以下同じ。甲11参照。)に接続可能なエンドユーザ端末に少なくとも1つのメッセージを提供する方法であって、そのネットワークはサービスノードに接続されるライブラリノード(判決注:インターネット広告者ノードを指す。以下同じ。甲11参照。)を有し、そして、そのサービスノードに接続される少なくとも第1のメッセージの少なくとも第1及び第2のバージョンを有し、そのバージョンは異なる接続タイプを用いる端末に適合されており、その方法は、前記ライブラリノードから前記サービスノードへ前記端末への配信のために少なくとも1つのメッセージの配信を要求する一方で、前記端末によって用いられる前記接続タイプを前記要求において指定する工程と、前記ライブラリノードから前記サービスノードへと、前記端末によって用いられる前記接続タイプに依存して前記少なくとも1つのメッセージの適切なバージョンを提供する工程とを有することを特徴とする方法によって達成される。

【0008】

本発明に従う解決策があれば、広告のようなメッセージが、プッシュ・クライアントを有していない端末を含む、どんな種類のエンドユーザ端末、サービス、運用者ネットワークにも提供される。

【0009】

好適な実施形態に従えば、その方法にはさらに、前記ライブラリノードにおいて第2のメッセージの少なくとも第1及び第2のバージョンを提供する工程と、前記要求において、前記ライブラリノードから前記サービスノードへと提供されることになる前記メッセージを選択するときに用いられる少なくとも1つのパラメータを指定する工程と、前記少なくとも1つのパラメータに従って、前記ライブラリノードからのメッセージを選択する工程とを有する。

【0010】

各メッセージはその時、異なる端末について異なるバージョンで提供され、適切なバージョンが要求時には選択され、端末に提供され、各端末に適切な形式で提供するのにどんな変換も必要がない。

【0011】

前記要求を行なう工程は、前記サービスノードから前記端末へのサービスを要求する工程によって開始される。このようにして、適切な形式での広告が要求されたサービスとともに提供される。

【0012】

前記少なくとも1つのパラメータは、次のことに関する情報を含んでも良い。即ち、・要求されたサービスと、・前記移動体端末の瞬間的な地理的位置と、・前記端末の能力と、・前記端末のユーザの身元と、・広告のサイズと、・サービスプロバイダの身元と、・適切であることが理解された他のパラメータとである。

【0013】

これにより、メッセージ選択で、例えば、ねらいの定められた個人向けの広告を加入者に提供することが可能になる。

【0014】

好適な実施形態に従えば、前記端末は移動体端末であり、前記ネットワークは通信ネットワークである。

【0018】

実施形態の詳細な説明

図1は、本発明が用いられるシステムの基本的な要素の概観を示している。移動体端末1のユーザは、移動体通信ネットワーク3の加入者である。ネットワーク3を通して、ユーザは、自分が加入している数多くのサービス・プロバイダ5、7、9の1つから情報を要求して取り出すことができる。この例において、加入者に提供されているメッセージはその情報と共に呈示される広告であると仮定する。別の例は以下に示される。

【0019】

この情報は加入者が関心をもった如何なる情報でも良く、例えば、時刻スケジュール機能、天気情報、或いは、スポーツイベントについての情報などである。そのような情報を受信するために、加入者はそれとともにある一定量の広告を受信することを受け容れている。それ故に、加入者が所望の情報を要求するとき、サービスプロバイダはまた、1つ以上の広告を提供する。これらの広告は加入者によって用いられているタイプの移動体端末で読出し可能な形式でなければならない。もちろん、加入者は異なるタイプのいくつかの端末を有して、異なるネットワークを利用し、その情報が同じ加入者に対してさえも同じ形式で常に与えられなくとも良い。

【0020】

統計情報がフィードバックとして収集されて提供されるメッセージに対する応答、例えば、広告のキャンペーンの結果を監視し、さらに広告活動を改善し、将来における広告のターゲットを改善するようにしても良い。

【0021】

幾つかの異なる形式で、本発明に従う非常に数多くの広告の供給を可能にするため、移動体インターネットの広告者を呼出すノード11が備えられ、そして、ノード11とネットワークのサービス・プロバイダノード5、7、9夫々との間のインタフェース13が備えられる。広告要求のインタフェースとして言及されるインタフェース13は後でより詳細に議論する。インタフェース13を介して、サービス・プロバイダノード5、7、9はインターネットの広告者ノード11に対して、用いられる端末のタイプ、即ち、アクセスタイプと、好ましくはユーザ身元のような他のパラメータを指定することができる。それから、インターネットの広告者ノード11は加入者のプロフィールにマッチし、そして、加入者の端末に表示されるに適切な形式をもった広告を返す。ネットワークにおける各サービス・プロバイダノード5、7、9は、1つ以上の移動体運用者の加入者にサービスを提供する。また、広告要求のインターネット13(判決注:「インタフェース13」の誤記と思われる。)に加えて、統計データが通信される統計インタフェース(図1には示されていないが)は、インターネットの広告者ノード11とサービス・プロバイダノード5、7、9との間に存在してもよい。

【0022】

加入者のプロフィールは、統計データと動的データとの両方を有していても良い。統計データは加入者が加入しているサービスの種類、加入者の年齢、住所、趣味についての情報、他の人口統計学的なパラメータに関係し、インターネット広告者のユーザプロフィール・データベースに格納される。動的データは、加入者がサービス・プロバイダからデータを引き出す度ごとに提出され、例えば、端末のタイプ、要求されたサービス、加入者の現在の地理的な位置を含んでも良い。

【0023】

それ故に、加入者に広告を呈示できるようにするため、サービス・プロバイダ5は、広告要求を適切なインターネットの広告者ノード11に対して送信して、あるターゲット、選択、或いはパラメータに基づいて広告をフェッチする。サービス・プロバイダは、加入者端末上への広告表示を(通常は他のサービスデータとともに)扱う。同時に、サービス・プロバイダは好ましくは、その広告に対する応答として生成されるイベントを収集すると良い。その応答は、統計要求において、広告者の統計を作り上げるインターネットの広告者ノードへと転送される。そのサービス・プロバイダは、インターネット広告者のノード11への接続をオープンし確立すること、要求送信を含むこと、応答を読み戻すこと、インターネットの広告者ノードが応答するまで接続をオープンにしたままにすることを担当する。そのサービス・プロバイダとインターネット広告ノードとの間の接続について、HTTPが用いられても良いし、或いは、安全な接続が望まれるなら、HTTPSを用いると良い。

【0024】

インターネットの広告者ノード11は如何なるタイプの広告をも扱うことができ、広告が表示されるべき形式でそれを格納し、そして配信する。そのような広告が1つ以上のコンテンツプロバイダ(不図示)によってインターネットの広告者ノード11に提供される。

【0026】

インタフェース13は、システムに入力される種々のデータに基づいて正しい広告を取り出すために、サービス・プロバイダによって用いられる特別に開発された外部インタフェースである。そのインタフェースは数多くのパラメータを含み、これらのたいていのものは、後で検討するようにオプションである。インターネットの広告者ノード11はこれらのパラメータに基づいて、的が最も良く絞られた広告を提供すべきである。

【0027】

インタフェース13はHTTPによるXMLに基づいていても良い。XML文書は、全てが文書型定義(Document Type Definition:DTD)によって定義された数多くのタグを含んでいるであろう。XMLを用いる理由は、多くの現存するメッセージシステムがXMLを用いていることにある。

【0028】次のパラメータがインタフェースによってサポートされねばならない。即ち、アクセスタイプとしては、例えば、無線マークアップ言語(Wireless Mark-up Language:WML)、ハイパーテキスト・マークアップ言語(Hypertext Markup Language:HTML)、コンパクト・HTML(C-HTML)、XML、IP電話、シンプルメール転送プロトコル(Simple Mail Transfer Protocol:SMTP)、ショート・メッセージ・ピアー・ツウ・ピアー(SMPP)である。このデータはサービスプロバイダがどのフォーマットがこの特定のアクセスに用いられるのかを知るために必要である。インターネットの広告者は広告をトランスペアレントに扱い、その広告の実際の形式については何も知る必要はない。広告のコンテンツのプロバイダは、広告の要求プロトコルに対して知られている何らかの形式と要求されたときには連続的に付加される新しい形式との広告をアップロードできる。

【0029】

加えて、そのインタフェースは、例えば、動的な次のパラメータをサポートして、そして、コンテンツ、形式、或いは、それらの両方に関して、特定の加入者に送信される適切な広告を選択するのに用いられる。

【0030】

・サービスプロバイダ:要求を入力するサービスプロバイダの身元であり、これは広告要求における他のパラメータとともに移動体のサービスプロバイダから送信される。

【0031】

・ユーザアイデンティティ:ユーザの或いはユーザグループの身元である。

【0032】

・サービス:ユーザによって要求されたサービスの識別である。

【0033】

・サイズ:サービス・プロバイダは広告のサイズがその要求で述べられた限界を超えていないことをチェックすべきである。このデータは、その広告がシステムに登録されるときに、アップロード機構によって設定されるべきである。

【0034】

・位置:ユーザの瞬間的な地理的な位置である。その位置はまた、移動体のサービスプロバイダから受信される動的なデータでもある。その位置は、広告がアップロードされるとき、テキストの基準として入力される。(以下略)

【0035】

・端末タイプ:端末の能力を指定するものである。このパラメータにより、サービスプロバイダが加入者によって用いられているタイプの端末に適切な広告を選択することが可能になる。このことは、スクリプトが広告のサイズとタイプとに基づいたカテゴリを設定できるなら、広告をアップロードするそのスクリプトによって自動的に扱われる。端末タイプの代わりに、広告用の適切な形式が記述されても良い。

【0036】

・動的なターゲットデータ:加入者が関心をもつかもしれない広告の種類に関して加入者或いはサービスプロバイダによって入力される好みである。

【0037】

統計を収集するため、特別なインタフェースがサービスプロバイダとインターネットの広告者ノードとの間に備えられる。この統計インターネット(判決注:「統計インタフェース」の誤記と思われる。)は好ましくは、カスタマ定義のデータに加えて、次のパラメータをサービスすると良い。

【0038】

・広告のアイデンティティ:加入者に配信される広告のアイデンティティである。

【0039】

・ユーザアイデンティティ:加入者の身元である。

【0040】

・時刻:インタラクションの日付と時刻である。

【0041】

・インタラクション:例えば、広告を受信した加入者がそれをクリックしたかどうかなどのインタラクションのタイプである。この情報はいくつかの種類のネットワークで取り出される。

【0042】

・顧客特有のデータ:これは、顧客が望んでいる何らかのタイプのデータである。

【0043】

・広告要求のインタフェースで定義されるような他の全ての動的パラメータである。

【0044】

もちろん、ネットワークにおけるサービス・プロバイダノード5、7、9の1つ以上のもの、或いは、何か他のノードにおいて広告を提供することも可能である。本発明に従うインタフェースは、その時、そのような広告を含む各ノードと広告を取り出してそれを加入者に転送することが可能な各ノード5、7、9と間において備えられねばならないであろう。

【0045】

インターネット広告者(判決注:インターネット広告者ノードの誤記と思われる。)とそれがどのように作用するのかについて、図2を参照してより詳細に説明する。インターネット広告者(判決注:「インターネット広告者ノード11」の誤記と思われる。)は、移動体広告スケジューラ15を有しており、それは全てのアクセスタイプからの要求を実行するために同じプログラムを用いることができるべきである。DTDはXML/HTTPを用いた全てのアクセスからの要求を扱うのに十分に柔軟性があるべきである。このインタフェースは、正しく的を定められた広告をフェッチすることを望むプッシュ・クライアントなく、必ずしも移動体端末のためだけではないが、何らかの外部アクセスのために用いることができるべきである。ここで、移動体広告スケジューラと呼ばれているインタフェースにサービスを行なう処理は、広告要求インタフェース13と統計インタフェース17とを用いる外の世界との通信を行なうであろう。或いは、2つの処理が2つの異なるインタフェースのために用いられても良い。

【0046】

どの広告が特定のユーザに提供されるべきであるのかを決定するために、サービス・プロバイダノードからの要求時に、移動体の広告スケジューラ15は、各ユーザについてのプロフィールデータを含むインターネットの広告者11(判決注:「インターネット広告者ノード11」の誤記と思われる。)において、或いは、その広告者に関連して見出されるユーザ・プロフィール・データベース19からの情報を取り出す。この情報は、インターネット・広告ノード11(判決注:「インターネット広告者ノード11」の誤記と思われる。)において、或いは、そのノードに関連した広告プロフィール・データベース21に見出された情報と一致しており、どの広告、そして、その広告のどのバージョンが呈示されるのかを決定する。この実施形態では、広告データベース22がその広告のために備えられている。好適な実施形態に従えば、インターネットの広告者ノード11はまた、後述するように統計データを格納する統計データベース23を有している。

【0047】

情報が上述したデータベースよりも多くのデータベースに分割できること、或いは、図2に示された2つ以上のデータベースが結合できることは、当業者には明らかであろう。

【0048】

端末はプッシュ・クライアントをもっておらず、移動体サービスプロバイダがどの広告が特定の加入者に対して既に示されたのかに関する情報を確保しているのは非常にまれなことであるから、移動体インターネット広告者が好ましくは、この情報を別の“広告済み”データベース23(判決注:「“広告済み”データベース24」の誤記と思われる。)に格納しておくと良い。移動体の広告スケジューラはそのとき、何回広告が一定のユーザに示されたのかを判断することができるであろう。

【0049】

次のシナリオは、広告要求の受信時に広告スケジューラにとっては妥当なものである。

【0050】

1.移動体の広告スケジューラは外部サービスプロバイダから広告要求を受信する。受信されたDTDではこの特定の要求について妥当なパラメータを定義している。移動体広告スケジューラでは、これらのパラメータをとって、次の広告を選択し、関係する加入者に送信するために構成された方法、findNextAd 方法を呼び出す。findNextAd 方法は、受信した動的パラメータ、静的なユーザパラメータ、統計的な広告パラメータを処理して正しく的が定められた広告を見出す。

【0058】

図3は特定の加入者について適切なメッセージを選択する一般的な原理を示している。論理的決定ユニット30は3つの異なるタイプの入力データを受信する。即ち、第1のタイプは、加入者プロフィール或いはサービスプロフィールに関係した、ユーザプロフィールのデータベース19、或いは加入者によって要求されたサービスについての情報を有する別のデータベース(不図示)からの静的データである。第2のタイプのデータは、加入者或いは加入者によって要求されたサービスに関係した、広告が要求されたときサービス・プロバイダから受信される動的データである。第3のタイプの情報は、広告のプロフィールに関係しており、広告プロフィールデータベース21と“広告済み”データベース24とから受信される。加入者或いはサービスプロフィールに関係するデータは、広告プロフィールに関連するデータと一致させられ、最良な一致を見出す。矢31によって表現される出力データは、3つの異なるタイプのデータ間の最良の一致を構成する広告である。そのとき、その広告は広告データベース22から取り出され、加入者に転送されるためにサービスプロバイダへと提供される。

ウ 前記ア及びイによれば,本願明細書には,本願発明につき,以下のとおり開示されているものと認められる。

(ア) 通信ネットワークにおいてコストを要しないサービスの提供手段の1つとして,当該通信ネットワークの加入者に対し,同加入者が要求した情報を提供する際,一定量の広告(好ましくは,同加入者のプロフィールに合ったもの)も共に提供するというものがある。

インターネットを用いてそのような広告を提供する手段は,国際特許出願PCT/SE99/01454に開示されている。それは,ネットワークのプッシュ・サーバにおいて,加入者から要求された情報に広告を付加して,加入者の端末に対応するプッシュ・クライアントに提供するというものであり,これは,HTTPとHTMLを用いたインターネットタイプのネットワークにおいてはよく機能している。

しかしながら,今日,大半の移動体端末は,プッシュ・クライアントを有していないので,プッシュ・サーバからの情報を受信できない。このことから,移動体ネットワークにおいては,前述したインターネットと同様のサービスを提供するための統一された標準は発展しておらず,各サービスプロバイダが,上記サービスを提供するための専有の解決策を開発している(【0002】から【0004】)。

(イ) 本願発明の目的は,移動体の加入者に対し,同加入者が使用する端末,サービス及び運用者のネットワークの種類にかかわらず,個人的なメッセージの配信を可能とすることである(【0006】)。

本願発明は,移動体の加入者から要求された情報と共に広告等の「メッセージ」を,当該加入者の移動体端末(「エンドユーザ移動体端末」)に提供する「サービスプロバイダノード」に係るものである。

この「サービスプロバイダノード」は,「インターネット広告者ノード」に対し,通信ネットワークによって「サービスプロバイダノード」と接続される「エンドユーザ移動体端末」に前記情報と共に提供する広告等の「メッセージ」の配信を要求する。この要求の際,「サービスプロバイダノード」は,「専用のインタフェース」を介して,「広告のサイズ」と「エンドユーザ移動体端末」の能力を指定する当該「端末のタイプ」についての情報を含む「パラメータ」を指定する。

「インターネット広告者ノード」は,広告等の「メッセージ」につき,異なるタイプの端末に適合する複数の「バージョン」をあらかじめ備えており,その中から,上記指定された「パラメータ」に係る「広告のサイズ」及び「端末のタイプ」に即して「エンドユーザ移動体端末」に表示されるのに適切な形式を備え,その他に指定された「パラメータ」があれば,それにも合致した「適切なバージョン」を選択肢,当該バージョンの広告等の「メッセージ」を,「サービスプロバイダノード」に返す。「サービスプロバイダノード」は,上記「メッセージ」を受信して,加入者から要求された情報と共に,「エンドユーザ移動体端末」に提供する(【0007】,【0009】,【0011】,【0012】,【0018】,【0019】,【0021】,【0023】,【0024】,【0026】,【0028】から【0036】,【0044】から【0046】,【0049】,【0050】,【0058】,図1から図3)。

(ウ) 本願発明によって,移動体の加入者に対し,同加入者が使用する端末,サービス及び運用者のネットワークの種類に適した「バージョン」の広告等の個人向けメッセージを配信することができる(【0008】,【0010】,【0013】)。

⑵  引用発明について

ア 引用例1から,本件審決が認定したとおりの引用発明(前記第2の3⑵ア)が認められる。

イ そして,引用例1(甲1)には,引用発明につき,以下のとおり開示されている(下記記載中に引用する図面について別紙2甲1号証図面を参照。)。

(ア) パソコンや携帯情報端末等を所持するユーザが,インターネット等を使用して必要な特定の情報源を検索することについて,従来の技術には,ユーザの能動的な入力操作が不可欠である,ユーザに不要な情報が届くなどの問題点があった。

そこで,引用発明は,ユーザが実施する入力操作を削減もしくは不要にするとともに,当該ユーザが必要とする情報が届く確率を改善し,不要な情報が届く確率を減少させることを目的としたものである(【0002】,【0003】,【0005】から【0007】,【0008】)。

(イ) 引用発明は,ユーザが地図情報を取り出すために入力操作を実施すると,その地図情報に加えて,商店の広告等,当該地図の範囲内の所定位置に対応する,現在の日時において有効な情報であり,かつ,ユーザの年齢や職業等の属性に応じたものを,自動的に選別してユーザに提供する情報提供システムに係るものである(【請求項1】,【請求項3】,【請求項4】,【0009】から【0012】,【0017】から【0020】,図1)。

すなわち,ユーザが,パソコン等のユーザ端末200からインターネット180を介して情報提供システムにアクセスし,地図情報を求めると,ユーザ端末200の表示画面上には,上側の地図情報表示エリアに当該地図情報が表示されるとともに,下側の広告イベント情報表示エリアには特別な広告イベント情報が表示される。この広告イベント情報表示エリアに表示される情報は,ユーザが能動的に取り出したものではなく,情報提供システムが自動的に選択してユーザに提供したものである(【0035】,【0052】,【0053】,図3,図16)。

(ウ) 情報提供システムは,以下のとおり,ユーザに対し,ユーザの求めた地図情報を提供するとともに,同情報に対応する広告イベント情報を自動的に選択して提供する。

a 情報提供システムは,LAN(ローカルエリアネットワーク)170を介して互いに接続された,情報提供サーバ110,ユーザ管理サーバ130,地図サーバ140,店情報サーバ150及び広告イベント情報サーバ160を備えている。情報提供サーバ110は,インターネット180に接続されており,ユーザからのアクセスを受ける。

情報提供サーバ110を構成する制御部116は,情報提供サーバ110及びこれに接続されたユーザ管理サーバ130,地図サーバ140,店情報サーバ150及び広告イベント情報サーバ160を統括して制御するものであり,同制御により,各サーバにおける情報の検索,検索結果のフィルタリング,抽出された情報の合成,ユーザ端末200への情報の配信などが実施される(【0033】,【0034】,【0036】から【0038】,図3,図4)。

b 情報提供サーバ110は,以下のとおり,ユーザから受けたアクセスの内容を,地図サーバ140及び店情報サーバ150に伝え,これらのサーバからの情報を受けてユーザに提供する。また,情報提供サーバ110は,ユーザからのアクセスを受けて,ユーザ管理サーバ130に対し,当該ユーザの個人情報を要求してこれを受け取り,その個人情報に基づいて情報の選別等を行った上で,広告イベント情報サーバ160に対し,広告イベント情報を要求してこれを受け取り,ユーザに提供する。

まず,ユーザからの入力に応答して,特定の領域の地図画像データD1を生成する(ステップS13)。

すなわち,地図サーバ140において,情報提供サーバ110を介して受けたユーザからの入力に従い,特定の領域の地図データに合成し,これを情報提供サーバ110に出力する。

また,ユーザからの入力に応答して,特定の条件に適合する店情報D2を検索する(ステップS14)。

すなわち,店情報サーバ150において,情報提供サーバ110を介して受けたユーザからの検索指示に該当する店を検索し,その店に関する詳細な情報を情報提供サーバ110に出力する。

ステップS13で抽出した地図画像データD1とステップS14で抽出した店情報D2を合成してフレーム情報D0を生成する(ステップS15)。このフレーム情報D0が,ユーザ端末200の表示画面上の地図情報表示エリアに表示される(【0041】から【0043】,【0054】,【0055】,図4,図5,図16)。

c ステップS13で生成した地図画像データD1の地図の中心位置の座標を,ユーザの注目位置とみなして取得する(ステップS16)。

ユーザIDに基づいて,ユーザ管理サーバ130に登録されている様々なユーザ情報のうち,ユーザの属性と趣向の情報を取得する(ステップS17)。

すなわち,ユーザ管理サーバ130において,情報提供サーバ110からの要求に応じて,「性別」,「興味対象」等のデータ項目を含むユーザ情報テーブル(図13)が登録されているユーザ情報ファイル132等から特定のユーザの個人情報を取り出して,情報提供サーバ110に渡す。情報提供サーバ110の制御部116は,ユーザの個人情報に基づいて,情報の選別や連絡先の決定等を行う。

情報提供サーバ110の内部時計117から,現在の日時の情報を入力する(ステップS18)。

ステップS16で取得したユーザの注目位置の情報,ステップS17で取得したユーザの属性及び趣向の情報並びにステップS18で取得した現在の日時の情報に基づいて,条件に適合する提供情報(広告イベント情報)を,広告イベント情報サーバ160の広告イベント情報ファイル162の中から自動検索し,広告イベント情報D3を抽出する(ステップS19,32)。

すなわち,広告イベント情報サーバ160は,情報提供サーバ110の制御部116からの要求に従って,「広告イベントID」,「表示雛形ファイル」等のデータ項目を含む広告イベント情報テーブル(図14,図15)が登録されている広告イベント情報ファイル162を検索し,抽出した広告イベント情報のデータを情報提供サーバ110に渡す。

ステップS19,32で抽出した広告イベント情報D3と表示雛形ファイルの内容とに基づいて,フレーム情報D4(図10,図12)を生成し(ステップS20),これをステップS15で生成されたフレーム情報D0と合成して情報ページD6(図16)を生成して(ステップS21),ユーザに送出する(ステップS22)。

この情報ページD6は,ユーザが求めた地図の情報及び情報提供システムによって自動的に選択された広告イベント情報の両方を含むものである (【0043】,【0046】から【0049】,【0051】,【0056】から【0060】,【0066】,【0077】,図3から図6,図10,図12から図16)。

(エ) 引用発明によれば,ユーザが地図情報を取り出すために情報提供システムに入力操作をするのに伴い,ユーザの注目位置が自動的に識別され,当該注目位置に興味を有する人にとって有益な情報が自動的に識別されて上記地図情報と共にユーザに届けられる。

また,現在の日時において有効な情報のみが自動的に選別されてユーザに届けられるので,ユーザの希望する情報が提供される可能性が高まる。さらに,ユーザに提供する情報が,あらかじめ登録された個人情報と各提供情報に対応付けられた提供対象者の属性とを比較することによって自動的に選別され,ユーザに提供される情報の種別とユーザの興味の対象とが,あるいは,ユーザに提供される情報の種別と当該情報を提供する業者の希望する提供対象者とが一致する可能性が高まる(【0012】,【0018】から【0020】,【0084】から【0086】)。

このように,引用発明においては,情報提供システムにおいてユーザの属性等に即した情報を自動的に識別してユーザに提供することにより,ユーザが必要な情報にアクセスするために実施する入力操作の削減,また,ユーザに必要な情報が届く確率の向上及び不要な情報が届く確率の減少という効果を奏するものといえる。

⑶  一致点の認定の誤りの有無について

ア 本願発明における「サービスプロバイダノード」及び「インターネット広告者ノード」について

(ア) 特許請求の範囲の記載

本件補正後請求項7においては,「サービスプロバイダノード」につき,①通信ネットワークによって「エンドユーザ移動体端末」により選択されて接続され,さらに「インターネット広告者ノード」に接続され,「インターネット広告者ノード」に保持された「メッセージ」を「エンドユーザ移動体端末」に提供するものであること,②「エンドユーザ移動体端末」への配信のために,少なくとも1つの「メッセージ」の配信をインターネット広告者に対して要求し,前記要求において,「インターネット広告者ノード」から提供されることになる「メッセージ」を選択するときに用いられる広告のサイズと「エンドユーザ移動体端末」のタイプについての情報を含む「パラメータ」を指定する手段と,「インターネット広告者ノード」により選択され提供された「メッセージ」の適切なバージョンを受信する手段とを有することを特徴とすることが記載されている。

また,「インターネット広告者ノード」については,第1のメッセージと第2のメッセージおのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョンを有することが記載されている。

(イ) 本願明細書(甲8)の開示内容

前記⑴ウによれば,本願明細書には,「サービスプロバイダノード」(ただし,本願明細書においては「サービスノード」と表現されている。)につき,①「インターネット広告者ノード」(ただし,本願明細書においては「ライブラリノード」と表現されている。)に対し,通信ネットワークによって「サービスプロバイダノード」と接続される「エンドユーザ移動体端末」に提供する広告等の「メッセージ」の配信を要求すること,②この要求の際,「サービスプロバイダノード」は,「広告のサイズ」と「エンドユーザ移動体端末」の能力を指定する当該「端末のタイプ」についての情報を含む「パラメータ」を指定すること,③「インターネット広告者ノード」から広告等の「メッセージ」を受信して「エンドユーザ移動体端末」に提供することが開示されている。

また,「インターネット広告者ノード」については,広告等の「メッセージ」につき,異なるタイプの端末に適合する複数の「バージョン」をあらかじめ備えており,その中から,上記指定された「パラメータ」に係る「広告のサイズ」及び「端末のタイプ」に即して「エンドユーザ移動体端末」に表示されるのに適切な形式を備え,その他に指定された「パラメータ」があれば,それにも合致した「適切なバージョン」を選択し,当該バージョンの広告等の「メッセージ」を,「サービスプロバイダノード」に返すことが開示されている(【0007】,【0009】,【0011】,【0012】,【0018】,【0019】,【0021】,【0023】,【0024】,【0026】,【0028】から【0036】,【0044】から【0046】,【0049】,【0050】,【0058】,図1から図3)。

(ウ) 以上によれば,本願発明の「サービスプロバイダノード」は,「インターネット広告者ノード」に対し,通信ネットワークによって「サービスプロバイダノード」と接続される「エンドユーザ移動体端末」に提供する広告等の「メッセージ」の配信を要求し,同要求に応じて「インターネット広告者ノード」から返された「メッセージ」を「エンドユーザ移動体端末」に提供するものである。

イ 引用発明における「情報提供サーバ110」と「広告イベント情報サーバ160」について

前記⑵ア及びイによれば引用発明の「情報提供サーバ110」は,インターネット180を介して「ユーザ端末200」からのアクセスを受け,「広告イベント情報サーバ160」に対し,「ユーザ端末200」に提供する「広告イベント情報」を要求してこれを受け取り,「ユーザ端末200」に提供するものである。

ウ 本願発明における「サービスプロバイダノード」,「インターネット広告者ノード」と,引用発明における「情報提供サーバ110」と「広告イベント情報サーバ160」との対比

(ア) 以上に鑑みると,本願発明の「エンドユーザ移動体端末」は,引用発明の「ユーザ端末」に相当するものであることは明らかといえるところ,本願発明の「サービスプロバイダノード」は,通信ネットワークによって「エンドユーザ移動体端末」と接続されており,引用発明の「情報提供サーバ110」も,通信ネットワークの一種である「インターネット180」によって「ユーザ端末200」に接続されている。

(イ) そして,前記ア(ウ)及びイによれば,本願発明の「サービスプロバイダノード」と引用発明の「情報提供サーバ110」は,いずれもユーザの端末からの要求ないしアクセスを受けて,それぞれ本願発明の「インターネット広告者ノード」,引用発明の「広告イベント情報サーバ160」に対してユーザの端末に提供すべき情報を要求してこれを受け取り,ユーザの端末に提供するものであり,本願発明の「インターネット広告者ノード」と引用発明の「広告イベント情報サーバ160」は,それぞれ本願発明の「サービスプロバイダノード」,引用発明の「情報提供サーバ110」からの要求を受け,同要求に応じた情報を提供するものといえる。

(ウ) 以上によれば,本願発明の「サービスプロバイダノード」,「インターネット広告者ノード」は,それぞれ引用発明の「情報提供サーバ110」,「広告イベント情報サーバ160」に相当するものと考えられ,同旨の認定をした上で,これに基づき,前記第2の3⑵イのとおり本願発明と引用発明との一致点を認定した本件審決の判断に,誤りはない。

エ 原告の主張に対し

これに対し,原告は,以下のとおり主張する。

すなわち,①本願明細書(甲8)において,「サービスプロバイダ」は,自身のサービスに加え,「インターネット広告者」からの広告をエンドユーザに提供することによって,サービスの資金を調達する旨が記載されていること,(【0002】等),②単に,インターネット広告の提供のみであれば,「インターネット広告ノード」と表現すれば足りるところ,あえて,「インターネット広告者ノード」という表現を用いていること,③本願明細書中の「インターネット広告者ノード」が「インタフェース」を用いて「外の世界との通信を行なう」との記載(【0045】)は,「インターネット広告者ノード」と「サービスプロバイダノード」とが互いに「別の世界」に存在することを意味することから,本願発明の「インターネット広告者ノード」は,「サービスプロバイダ」とは別個の独立した者である「インターネット広告者」の所有又は管理に係る装置ないしシステムである。

他方,引用発明における「広告イベント情報サーバ160」は,本願発明の「サービスプロバイダノード」に相当する「情報提供サーバ110」と,同一の組織(事業者等)の所有又は管理に係るものであるから,引用発明の「広告イベント情報サーバ160」は,本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当するものとはいえない。

したがって,引用発明は,本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当する構成を備えてないというべきであるから,本件審決が,引用発明の「広告イベント情報サーバ160」が本願発明の「インターネット広告者ノード」に相当する旨判断した一致点の認定は,誤りである。

(ア) しかしながら,前記⑴によれば,本件補正後請求項7及び本願明細書のいずれにおいても,「インターネット広告者」と「サービスプロバイダ」との異同については何ら触れられておらず,「インターネット広告者ノード」及び「サービスプロバイダノード」の各所有又は管理の主体の異同についても,全く言及されていない。また,本願明細書の【0044】には,「もちろん,ネットワークにおけるサービス・プロバイダノード5,7,9の1つ以上のもの,或いは,何か他のノードにおいて広告を提供することも可能である。」と記載されており,同記載は,「サービスプロバイダ」が自ら広告を提供する「インターネット広告者」にもなり得ることを示すものといえる。

そして,前記⑴ウによれば,本願発明は,移動体の加入者に対し,同加入者が使用する端末,サービス及び運用者のネットワークの種類にかかわらず,個人的なメッセージの配信を可能とすることを目的としており(【0006】),移動体の加入者に対し,同加入者が使用する端末,サービス及び運用者のネットワークの種類に適した「バージョン」の広告等の個人向けメッセージを配信することにより,同目的を達成するという効果を奏するものである(【0008】,【0010】,【0013】)。同効果は,「サービスプロバイダノード」が「インターネット広告者ノード」に対して「エンドユーザ移動体端末」に提供する「メッセージ」の配信を要求する際,「広告のサイズ」と「エンドユーザ移動体端末」の能力を指定する当該「端末のタイプ」についての情報を含む「パラメータ」を指定し,「インターネット広告者ノード」は,「メッセージ」につき,異なるタイプの端末に適合する複数の「バージョン」をあらかじめ備えており,その中から,上記指定された「パラメータ」に係る「広告のサイズ」と「端末のタイプ」等の情報に即した「適切なバージョン」を選択して,当該バージョンの「メッセージ」を「サービスプロバイダノード」に返し,「サービスプロバイダノード」が上記「メッセージ」を「エンドユーザ移動体端末」に提供するという構成によるものである。

この点に鑑みると,本願発明の「インターネット広告者ノード」及び「サービスプロバイダノード」の各所有又は管理の主体の異同と,本願発明の目的,効果との間に,特段の関連性は認め難く,「インターネット広告者ノード」及び「サービスプロバイダノード」の各所有又は管理の主体の異同にかかわらず,本願発明は,前記の目的を達成する効果を奏するというべきである。

(イ) 原告が挙げる①の点については,原告が指摘する本願明細書の【0002】には,前記⑴イ及びウのとおり,通信ネットワークにおいてコストを要しないサービスの提供手段の1つとして,当該通信ネットワークの加入者に対し,同加入者が要求した情報を提供する際,一定量の広告(好ましくは,同加入者のプロフィールに合ったもの)も共に提供するというものがあること,インターネットを用いてそのような広告を提供する手段は,国際特許出願PCT/SE99/01454に開示されていること,それは,ネットワークのプッシュ・サーバにおいて,加入者から要求された情報に広告を付加して,加入者の端末に対応するプッシュ・クライアントに提供するというものであることが記載されているにすぎず,「インターネット広告者」と「サービスプロバイダ」との関係及び「インターネット広告者ノード」と「サービスプロバイダノード」の各所有又は管理の主体の異同のいずれについても,何ら言及されていない。

加えて,前記イのとおり,本願明細書の【0044】には,「サービスプロバイダ」が自ら広告を提供する「インターネット広告者」にもなり得ることを示す記載がある。

(ウ) 原告が挙げる②の点については,確かに,本願明細書においては,「インターネット広告者ノード(Internet advertiser node」という表現が用いられているが,前述した本願明細書の【0044】の記載内容にも鑑みると,上記表現が使用されているという事実をもって,必然的に,「インターネット広告者」が「サービスプロバイダ」とは別個の主体であり,「インターネット広告者ノード」が「サービスプロバイダノード」を所有又は管理する主体とは別個の異なる主体によって所有又は管理されているものということは,できない。

(エ) 原告が挙げる③の点に関し,本願明細書によれば,「移動体広告スケジューラ」は,「インターネット広告者ノード」を構成するインタフェースの 1 つであり,「全てのアクセスタイプからの要求を実行するために同じプログラムを用いることができるべき」ものである(【0045】,図2)。

また,本願明細書には,「インタフェース13を介して,サービス・プロバイダノード5,7,9はインターネットの広告者ノード11に対して,用いられる端末のタイプ,即ち,アクセスタイプと,好ましくはユーザ身元のような他のパラメータを指定することができる。」(【0021】),「インタフェース13は,システムに入力される種々のデータに基づいて正しい広告を取り出すために,サービス・プロバイダによって用いられる特別に開発された外部インタフェースである。そのインタフェースは数多くのパラメータを含み,(中略)インターネットの広告者ノード11はこれらのパラメータに基づいて,的が最も良く絞られた広告を提供すべきである。」(【0026】),「統計を収集するため,特別なインタフェースがサービスプロバイダとインターネットの広告者ノードとの間に備えられる。この統計インタフェースは好ましくは,カスタマ定義のデータに加えて,次のパラメータをサービスすると良い。」(【0037】),「広告のアイデンティティ」(【0038】),「顧客特有のデータ」(【0042】)等の記載がある。

これらの記載並びに甲8号証の図1及び図2によれば,「インタフェース13」は,「サービスプロバイダノード」が指定したユーザ端末のタイプ等のパラメータを,「統計インタフェース」は,広告のアイデンティティや顧客特有のデータ等のパラメータを,それぞれ「インターネット広告者ノード」に伝えるものと認められる。

以上に鑑みると,原告が指摘する本願明細書の「(インターネット広告者ノード11が有する)移動体広告スケジューラと呼ばれているインタフェースにサービスを行なう処理は,広告要求インタフェース13と統計インタフェース17とを用いる外の世界との通信を行なうであろう。」(【0045】)との記載の趣旨は,「インターネット広告者ノード」が,その構成に含まれる「移動体広告スケジューラ」というインタフェースを用いて,「広告要求インタフェース」及び「統計インタフェース」を介した通信により,前述したパラメータを取得するというものであり,「外の世界」とは,単に,「インターネット広告者ノード」の通信相手を意味するにすぎないと解される。

したがって,原告が指摘する上記記載をもって,「インターネット広告者ノード」が,「サービスプロバイダ」とは別個の独立した者である「インターネット広告者」の所有又は管理に係るものということはできない。

オ 以上によれば,本願発明において,必ずしも,「インターネット広告者ノード」と「サービスプロバイダノード」とは,互いに異なる者あるいは組織(事業者等)の所有又は管理に係る装置ないしシステムであるとはいえず,原告の前記主張は,前提を欠き,採用できない。

⑷  小括

したがって,原告主張の取消事由1は,理由がない。

2  取消事由2(相違点3に係る容易想到性の判断の誤り)について

⑴  相違点3について

前記1によれば,本願発明と引用発明との間には,本件審決が認定したとおりの相違点3(前記第2の3⑵ウ)が認められる。相違点3は,要するに,本願発明においては,「インターネット広告者ノード」が存在し,広告等の「メッセージ」につき,異なるタイプの端末に適合する複数の「バージョン」をあらかじめ備えており,「サービスプロバイダノード」から,「メッセージ」を配信すべき「端末のタイプについての情報を含む」パラメータが指定されると,当該パラメータに従って,前述した複数の「バージョン」の「メッセージ」の中から「適切なバージョン」の「メッセージ」を選択して提供するのに対し,引用発明はそのような構成を有していないというものである。

原告は,本件審決が相違点3に係る容易想到性を認めたことは誤りである旨主張する。

⑵  本願優先日当時の技術について

ア 引用例2(甲2)には,ユーザの多種多様な利用端末に応じたコンテンツの配信・提供を行うことができる情報提供装置について記載されているところ(【0001】,【0016】,【0018】),①従来のインターネット利用術については,端末性能と入手するデータとの不適合,すなわち,ユーザが自らの使用端末の性能等の端末属性にかかわらずコンテンツへアクセスするために,同端末属性に適合しない量のデータを受信することになり,受信に長時間を要するなどの不都合が生じるという問題があったこと(【0004】,【0014】)②同問題を解決するために,前記情報提供装置において,ユーザは,自らが利用する携帯電話等の端末装置の画面サイズ,色数,HTMLページを読み込めるメモリ量など性能に関する情報(「端末属性情報」)をプラットフォームに送信し,プラットフォームは,ユーザから送信された端末属性情報をデータベースに蓄えておき,ユーザから求められたコンテンツについては,上記端末属性情報に合わせて,画像サイズ調整,画像フォーマット変換など端末種類ごとに設定されたコンテンツ最適化処理を行った上で,ユーザに送信することが開示されている(【請求項6】,【0020】,【0040】から【0043】,【0056】,【0073】から【0075】)。

イ 引用例3(甲3)には,概要,以下の趣旨が記載されている。

(ア) 「Webぺージは,通常,パソコンのWebブラウザで表示することを前提としてHTML形式で作成されているので,携帯電話からWebぺージにアクセスできるようにするためには,例えば,iモード向けのWebぺージは,HTMLのサブセットであるC-HTML形式で作成しなければならないなど,同じコンテンツのWebぺージについて端末の種類ごとに異なるファイル形式のものを作成する必要があり,モバイル・コンピューティングに取り組む企業にとっては,大きな負担になりつつある。

『Webぺージ変換ソフト』は,モバイル端末からのアクセス要求を受けると,パソコンのWebブラウザで表示するために作成されたWebぺージのファイル形式を動的に変換して当該端末に合ったWebぺージを自動生成し,当該端末から閲覧できる状態にするものである。『Webぺージ変換ソフト』には,多数のモバイル端末からアクセスする大規模なシステム構成に向くPrism,多様なモバイル端末に対応するPortal-to-go,IBMサーバーを利用している企業に適したTranscoding Publisherがある。」

(イ) 「『Webぺージ変換ソフト』は,HTML形式のWebぺージを各端末向けのWebぺージに変換するための定義情報をあらかじめ設定しており,モバイル端末からのアクセス要求に応じて,WebサーバーからWebぺージを受け取り,これを,上記定義情報に基づき別の形式のWebぺージに変換する。変換後のデータはキャッシュしておくので,一度アクセスされたWebぺージに再びアクセス要求が来た場合は,結果を素早く返せる。」

ウ 乙3号証には,①標準的なSVGA解像度で見ることを想定してワールドワイドウエブ用に開発された電子文書には,携帯電話等の携帯装置のユーザが当該電子文書を見ようとしても,大半の携帯装置のディスプレイの解像度は前記SVGA解像度よりも低いために,同ディスプレイに上記電子文書の内容が適切に表示されないという問題があること(【0010】),②この問題の解決策の1つとして,各種の装置用に電子文書の様々なバージョンを準備することが挙げられるものの,この方策によると,電子文書の複数のコピーに広大な格納場所を割かれるなど電子文書の管理が困難になるという問題があること(【0011】),③別の解決策として,内容変換プログラムを提供して,装置やユーザの性能に合わせて電子文書を変換することが挙げられるものの,この方策によると,各携帯装置は必要な内容変換プログラムを保持しなければならないこと(【0012】),④電子文書用の内容変換プログラムをワールドワイドウエブ用に提供しようとする試みとして開発された技術は,画像用のハイパーテキスト文書を解析して画像データを圧縮し,ユーザ装置に高速でその画像を送信できるようにするものであり,また,ユーザから要求された画像をキャッシュに保存しておき,次に同じ要求があると,キャッシュからその画像を提供すること(【0013】)が開示されている。

エ 乙4号証には,携帯無線通信網を用いてデータ通信を行うシステム,方法及びシステムに使用する携帯無線通信端末及びサーバ装置に関する発明(【0001】)につき,①処理機能や処理能力の異なる携帯無線通信端末が混在する場合,各種携帯無線通信端末において,サーバ装置から送信されてくる情報を当該端末の機能や能力に応じて処理するためのアプリケーションが必要になり,結局,携帯無線通信端末の負担が大きくなるなどの問題があること(【0013】,【0014】),②上記発明の実施例は,処理機能や処理能力が異なる携帯無線通信端末のそれぞれに対して,各携帯無線通信端末の備える処理機能や処理能力に応じて情報を形成し,送信することができるようにした共通サーバ装置を備えていること(【0026】,【0027】),③共通サーバ装置から各会員端末に供給可能なコンテンツ情報などについては,処理機能や処理能力が異なる各会員端末ごとに送信する情報をあらかじめ作成しておき,会員端末から接続要求があったときに,即座にその会員端末の処理機能や処理能力に応じた情報を送信するように構成することもできること(【0184】)が開示されている。

オ 以上によれば,本願優先日当時において,端末に送信されるコンテンツが当該端末の性能に合わない場合,コンテンツの内容が適切に表示されないなどの支障が生ずることは,当業者に広く知られており,この問題を解決するために,サーバから端末に送信するコンテンツを当該端末の属性(タイプ)に応じたものにすることは,周知の技術(「周知技術A」)であったものと認められる。

そして,コンテンツを送信先の端末の属性に応じたものにする具体的方法については,①ユーザからコンテンツを求められる都度,当該コンテンツを当該ユーザの使用端末の属性に合うように変換等の処理を行う方法(引用例2),②①に加え,ユーザからのコンテンツの要求に応じて当該ユーザの使用端末の属性に合うように変換等して提供したコンテンツのデータを蓄積しておき,再度,同様の要求があった場合,同要求に沿うものを上記データから提供する方法(引用例3,乙3)及び③ユーザに供給可能なコンテンツにつき,属性を異にする各ユーザの使用端末ごとに送信する情報をあらかじめ作成しておき,ユーザからの要求に応じて,それらの情報のうち当該ユーザの使用端末に適したものを送信する方法(乙4)が存在していた。

これらの方法の違いは,ユーザの使用端末の属性に応じたコンテンツを提供する方法として,ユーザからコンテンツを求められるたびに,当該コンテンツを当該ユーザの使用端末の属性に適したバージョンになるように変換等の処理を行った上で送るか,ユーザからのコンテンツの要求を待たずに,異なるタイプの端末に適合する複数のバージョンのコンテンツをあらかじめ準備しておき,ユーザからの要求があった場合,複数のバージョンのコンテンツから当該ユーザの使用端末の属性に適したものを選んで送るかの相違にすぎない。

この点に鑑みると,当業者は,コンテンツを送信先の端末の属性に応じたものにする具体的方法につき,前記の方法から,データの種類,コンテンツを提供する構成,ユーザ使用端末の種類等に応じて適宜,選択し得たものというべきである。

⑶  相違点3に係る本願発明の構成の容易想到性について

以上によれば,当業者は,本願優先日当時において,端末に送信されるコンテンツが当該端末の性能に合わないことにより,コンテンツの内容が適切に表示されないなどの支障が生ずることを避けるために,引用発明に周知技術Aを適用してサーバから端末に送信するコンテンツを当該端末の属性(タイプ)に応じたものとすることを容易に想到し,コンテンツを端末の属性に応じたものにする具体的方法の1つとして,ユーザに供給可能なコンテンツにつき,属性を異にするユーザの端末ごとに送信する情報をあらかじめ作成しておき,ユーザからの要求に応じて,それらの情報のうち当該ユーザの端末に適したものを送信する方法を,適宜,選択し得たものと認められる。

したがって,当業者は,本願優先日当時,引用発明に加え,周知技術A並びに前述した引用例2及び引用例3並びに乙3号証及び乙4号証の記載により,相違点3に係る本願発明の構成,すなわち,「インターネット広告者ノード」が,広告等の「メッセージ」につき,異なるタイプの端末に適合する複数の「バージョン」をあらかじめ備えており,「サービスプロバイダノード」から,「メッセージ」を配信すべき「端末のタイプについての情報を含む」パラメータが指定されると,当該パラメータに従って,前述した複数の「バージョン」の「メッセージ」の中から「適切なバージョン」の「メッセージ」を選択して提供するという本願発明の構成を,容易に想到し得たものと認定できる。

以上によれば,相違点3に係る本願発明の構成の容易想到性を肯定した本件審決の判断に誤りはない。

⑷  原告の主張について

ア 原告は,仮に,引用例2及び引用例3に記載された発明又は周知技術Aを引用発明の「情報提供システム」に適用することが,当業者において本願優先日当時に容易に想到し得る事項であったとしても,上記適用によって得られるのは,「情報提供システム」の「情報提供サーバ110」において生成済みのWebページを,端末の属性に適合するように変換して提供するという程度のものにすぎず,相違点3に係る本願発明の構成には至らない旨主張する。

しかしながら,前記⑶によれば,当業者は,本願優先日当時において,引用発明に周知技術Aを適用してサーバから端末に送信するコンテンツを当該端末の属性(タイプ)に応じたものとすることを容易に想到し得たものと認められる。

そして,本願優先日当時,コンテンツを端末の属性に応じたものにする具体的方法は,原告が挙げる,当該コンテンツを端末の属性に適合するように変換して提供するという方法に限られず,ユーザに供給可能なコンテンツにつき,属性を異にする各ユーザの端末ごとに送信する情報をあらかじめ作成しておき,ユーザからの要求に応じて,それらの情報のうち当該ユーザの端末に適したものを送信するという方法も存在していた。

当業者は,データの種類,コンテンツを提供する構成,ユーザ使用端末の種類等に応じて,同方法を適宜,選択し得たものというべきであり,したがって,上記方法を選択することによって,相違点3に係る本願発明の構成に至ることは,容易に想到し得たといえる。

以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。

イ 原告は,「情報提供サーバ110」で生成される情報ページD6(甲1の図16)は,フレーム情報D0(地図画像データD1,店情報D2)及び広告イベント情報D3を含むものであるから,これらの情報のいずれも送信先の端末の属性(端末のタイプ)に応じたバージョンとしなければならず,したがって,周知技術Aを引用発明に適用するならば,「情報提供サーバ110」に適用するべきであるところ,そうであれば,「広告イベント情報サーバ160」には適用されないはずであるとして,引用発明において,「広告イベント情報サーバ160」に,「おのおのの異なるタイプの端末に適合された少なくとも第1及び第2のバージョン」の「メッセージ」を保持させることについては,技術的な欠陥がある旨主張する。

前記アのとおり,当業者は,本願優先日当時において,引用発明に周知技術Aを適用してサーバから端末に送信するコンテンツを当該端末の属性(タイプ)に応じたものとすることを容易に想到し,コンテンツを端末の属性に応じたものにする具体的方法の1つとして,ユーザに供給可能なコンテンツにつき,属性を異にするユーザの端末ごとに送信する情報をあらかじめ作成しておき,ユーザからの要求に応じて,それらの情報のうち当該ユーザの端末に適したものを送信する方法を,適宜,選択し得たものと認められる。

そして,前記1⑶のとおり,引用発明の「情報提供サーバ110」は,「広告イベント情報サーバ160」に対し,「広告イベント情報」を要求してこれを受け取り,「ユーザ端末200」に提供するものであるが,引用例1(甲1)によれば,「情報提供サーバ110」は,「広告イベント情報サーバ160」のみならず,「ユーザ端末200」に提供する情報の種類に応じて,「地図サーバ140」及び「店情報サーバ150」に対しても,情報を要求してこれを受け取り,「ユーザ端末200」に提供することが認められる(甲1【0036】,【0041】から【0043】等)。

この点に鑑みると,当業者は,引用発明に周知技術Aを適用する際,コンテンツを送信先の端末の属性に応じたものにするために前記方法を選択したとき,常に「広告イベント情報サーバ160」にのみ同方法を適用するわけではなく,ユーザの使用端末に提供する情報の種類に応じて,「地図サーバ140」や「店情報サーバ150」にも前記方法を適用するものというべきである。

原告が掲げる「情報提供サーバ110」で生成される情報ページD6(甲1の図16)は,フレーム情報D0とフレーム情報D4とを合成して生成されるものであるところ,フレーム情報D0は,地図サーバ140から抽出された特定の領域の地図画像データD1と店情報サーバ150から抽出された特定の店情報D2とを合成して生成されるものであり,フレーム情報D4は,広告イベント情報サーバ160から抽出された広告イベント情報D3と表示雛形ファイルの内容とに基づいて生成されるものである(甲1【0054】,【0055】,【0060】,【0066】,【0077】)。

したがって,情報ページD6は,地図サーバ140から抽出された地図画像データD1,店情報サーバ150から抽出された店情報D2及び広告イベント情報サーバ160から抽出された広告イベント情報D3からなり,これらの情報をユーザに提供するものであるから,当業者は,地図サーバ140,店情報サーバ150及び広告イベント情報サーバ160に,前記方法,すなわち,ユーザに供給可能なコンテンツにつき,属性を異にするユーザの端末ごとに送信する情報をあらかじめ作成しておき,ユーザからの要求に応じて,それらの情報のうち当該ユーザの端末に適したものを送信する方法を採用するものと考えられ,そして,同採用によって,情報ページD6は,ユーザの端末に適したバージョンになるものと推認できる。

したがって,情報ページD6につき,必ずしも「情報提供サーバ110」においてコンテンツを送信先の端末の属性に応じたバージョンにする必要はないものといえるから,原告の前記主張は,前提を欠き,採用できない。

⑸  小括

以上によれば,原告主張の取消事由2は,理由がない。

3  取消事由3(相違点4に係る容易想到性の判断の誤り)について

⑴  前記2⑶のとおり,当業者は,本願優先日当時,引用発明に加え,周知技術A並びに前述した引用例2(甲2)及び引用例3(甲3)並びに乙3号証及び乙4号証の記載により,相違点3に係る本願発明の構成,すなわち,「インターネット広告者ノード」が,広告等の「メッセージ」につき,異なるタイプの端末に適合する複数の「バージョン」をあらかじめ備えており,「サービスプロバイダノード」から,「メッセージ」を配信すべき「端末のタイプについての情報を含む」パラメータが指定されると,当該パラメータに従って,前述した複数の「バージョン」の「メッセージ」の中から「適切なバージョン」の「メッセージ」を選択して提供するという本願発明の構成を,容易に想到し得たものと認定できる。

そして,前記「パラメータ」は,配信先の端末に適合する「バージョン」の広告等の「メッセージ」を選択して提供するために指定されるものであるところ,一般的に,端末が受信して表示し得る広告等の「メッセージ」のサイズについては,当該端末の画面サイズ及びメモリ量等によって一定の制約を受けるものといえる。

この点に鑑みると,当業者は,本願優先日当時,前述した相違点3に係る本願発明の構成において,「パラメータ」の指定に当たり,「端末のタイプについての情報」のみならず,配信すべき「メッセージ」である「広告のサイズについての情報」を含む「パラメータ」を指定することは,容易に想到し得たといえる。

以上によれば,相違点4に係る容易想到性を肯定した本件審決の判断に誤りはない。

⑵  原告の主張について

ア 原告は,①「広告のサイズ」は,「端末のタイプ」によって一義的に決定されるものではないこと,②本願発明は,「サービスプロバイダ」が「広告のサイズ」の指定を通じて収益をコントロールできるようにするものであるところ,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」のみに応じて決定されるものとすると,「サービスプロバイダ」は,収益のコントロールに当たって「端末のタイプ」のみに従うほかなくなり,「インターネット広告者」も,小さな広告の提供で足りる場合も高額な広告料の支払を要するなどの不都合が生じることから,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」に応じて決定されるという本件審決の判断は,失当である旨主張する。

しかしながら,本件審決の判断は,前記⑴のとおり,一般的に,端末が受信して表示し得る広告等の「メッセージ」のサイズについては,当該端末の画面サイズ及びメモリ量等によって一定の制約を受けるものといえるので,広告等の「メッセージ」についてあらかじめ複数備えられている「バージョン」から,配信先の端末に適合する「バージョン」の「メッセージ」を選択して提供するためには,「サービスプロバイダノード」は,「インターネット広告者ノード」に対し,「パラメータ」の指定に当たり,「端末のタイプについての情報」のみならず,配信すべき「メッセージ」である「広告のサイズについての情報」を含む「パラメータ」を指定するという本願発明の構成については,当業者は本願優先日当時に容易に想到し得たというものである。

本件審決は,「広告のサイズ」自体について「端末のタイプ」により一義的に決定されると判断したものとは解されない。

原告が主張する本願発明の意義,すなわち,「サービスプロバイダ」が「広告のサイズ」の指定を通じて収益をコントロールできるようにするものであることについては,本願明細書(甲8)に何ら開示されておらず,示唆もされていない。

以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。

イ 原告は,「広告のサイズ」が「端末のタイプ」に応じて決定されるのであれば,そもそも「端末のタイプ」の他に「広告のサイズ」を指定する必要はなく,したがって,「引用発明に周知技術Aを適用する際,『端末のタイプ』に加えて,画面サイズやメモリ量に適合する『広告のサイズ』も指定するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。」という本件審決の判断は,自己矛盾をはらむものともいえる旨主張する。

しかしながら,前記アのとおり,本件審決は,「広告のサイズ」自体について「端末のタイプ」により一義的に決定されると判断したものとは解されず,したがって,原告の上記主張は前提を欠くものといえ,採用できない。

⑶  小括

したがって,原告主張の取消事由3は,理由がない。

4  結論

以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 富田善範 裁判官 大鷹一郎 裁判官 鈴木わかな)

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