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知財高等裁判所 平成26年(行コ)10009号 判決 2015年3月25日

控訴人

株式会社イー・ピー・ルーム

被控訴人

代表者

法務大臣

処分行政庁

特許庁長官

指定代理人

中島伸一郎

浅原陽子

駒﨑利徳

平川千鶴子

古閑裕人

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  原判決1頁23行目の「請求の主旨」を「請求の趣旨」と更正する。

3  控訴費用は,控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  出願審査の請求と同時にした手続補正が,特許法29条2項の規定に違反したものであり,特許法113条2号に該当するとして控訴人が有していた特許第2640694号を取り消した異議の決定は無効である。

第2事案の概要

1  本件は,放電焼結装置に係る発明について特許権の設定登録を受けた控訴人が,特許庁がした同特許を取り消す旨の決定は違法であると主張して,同決定が無効であることの確認を求めた事案である。

原判決は,本件訴えは,前訴の実質的蒸し返しであり,信義則に反し,不適法なものであるとして本件訴えを却下したため,控訴人は,これを不服として,本件控訴をした。

2  前提事実及び当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」第2の1及び2に摘示されたとおりであるから,これを引用する(以下,原判決を引用する場合,原判決中の「原告」とあるのを「控訴人」と,「被告」とあるのを「被控訴人」とそれぞれ読み替える。)。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,本件訴えは,前訴の実質的蒸し返しであり,信義則に反し,不適法なものであり,却下すべきものと判断する。その理由は,当審における控訴人の主張に対する判断を次項で付加するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の1に説示のとおりであるから,これを引用する。

2(1)  控訴人の主張は,善解すれば,①前訴(東京地方裁判所平成26年(行ウ)第98号事件)は,(ア)控訴人の証人尋問申請を認めなかったのであるから,未だ裁判所に係属中であって,訴訟の蒸し返しとはいえない,(イ)特許法40条,41条についての裁判を脱漏したのであるから訴訟の蒸し返しとはいえない,②原判決が実質的な訴訟の蒸し返しの基礎とした各訴訟(東京地方裁判所平成16年(ワ)第19959号,同庁平成23年(ワ)第13780号,同年(ワ)第24887号,同年(ワ)第9248号,同年(ワ)第30818号,同庁平成24年(ワ)第13372号,同庁平成25年(ワ)第22575号,同年(ワ)第25651号及び同年(ワ)第29155号。以下「本件各訴訟」という。)の判決は,いずれも控訴人の給付請求に対する判断を脱漏したのであるから本訴は訴訟の蒸し返しとはいえないと主張するものと解される。

しかし,証人尋問申請の採否は証拠の採否の判断にすぎず,その判断は判決による当該審級における審理の終局を左右するものではない上,前訴及び本件各訴訟に係る判決について裁判の脱漏があることを認めるに足りる証拠はない。

したがって,控訴人の主張はその前提を欠き,本訴は,実質的にみれば,前訴及び本件各訴訟の蒸し返しであり,信義則に反し,かつ,訴権の濫用というほかない。

(2)  なお,控訴人は,原判決は,民事訴訟法23条1項6号の規定により判決に関与することができない裁判官が関与した東京地方裁判所平成26年(行ウ)第98号事件及び同庁平成25年(ワ)第29155号事件の判決を,弁論の全趣旨として考慮したから,取り消すべきであると主張する。

しかし,民事訴訟法23条1項6号が除斥原因として定める「前審」の裁判への関与とは,当該事件の直接又は間接の下級審の裁判に関与したことをいうところ,控訴人が指摘する各判決はいずれも地方裁判所が第一審として判断したものであり,その担当裁判官が当該事件の下級審の裁判に関与することはあり得ないから,各判決が法律上判決に関与することができない裁判官によってされたものであるとの控訴人の主張はそもそもその前提を欠き,失当である。

(3)  控訴人はその他縷々主張するが,いずれも上記認定,判断を左右するものではない。

3  以上によれば,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきである。

なお,原判決1頁23行目の「請求の主旨」との記載は,「請求の趣旨」の誤記であることが明らかであるから,民事訴訟法257条により,本判決主文第2項のとおりに更正する。

よって,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 設楽隆一 裁判官 大寄麻代 裁判官 平田晃史)

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