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知財高等裁判所 平成28年(ネ)10030号 判決 2016年5月11日

控訴人(一審原告)

被控訴人(一審被告)

株式会社リコー

訴訟代理人弁護士

田中昌利

近藤正篤

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほか,原判決に従う。

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は,控訴人に対し,1094万8800円及びこれに対する昭和56年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

1  本件は,カツター装置付きテープホルダーに関する実用新案権(実用新案登録番号第978602号。本件実用新案権)を有していた控訴人が,被控訴人による原判決添付別紙「「カッター装置付きテープホルダー」という名称の考案(「カッター装置付テープホルダー」という物品の構造に係る考案)に係る実用新案権(登録番号第978602号。昭和56年6月13日に存続期間満了。本件実用新案権)を有していたXが主張する侵害対象物A及びB並びにCの共通目録」(原判決共通目録)記載の「侵害対象物A」,「侵害対象物B」及び「侵害対象物C」の製造販売は本件実用新案権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償金250億9892万円のうち,「侵害対象物A」につき昭和50年9月1日から昭和56年6月13日までの間に製造販売された10万5500台のうち当初の122台に係る実施料相当額651万4800円,「侵害対象物B」につき上記期間に製造販売された3万8300台のうち当初の10台に係る実施料相当額53万4000円,「侵害対象物C」につき上記期間に製造販売された6万7000台のうち当初の15台に係る実施料相当額390万円の合計1094万8800円及びこれに対する不法行為の後である昭和56年6月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は,本件訴えは,控訴人が被控訴人に対して平成13年に提起して敗訴し,確定した訴訟と同一の紛争を蒸し返すものであるから,信義則に反し訴権の濫用に当たる不適法なものであり,控訴人が昭和53年以降も実質的に同一の訴訟を繰り返し提起してきたことを考慮すれば,その不備を補正することができないものであることが明らかであるとして,口頭弁論を経ないでこれを却下した。

控訴人は,当審において,本件実用新案権を侵害した被控訴人の製品を示す原判決共通目録を交換的に変更し,「侵害対象物A」,「侵害対象物B」及び「侵害対象物C」を,「イ号侵害物件」,「ロ号侵害物件」及び「ハ号侵害物件」と変更するとした上,不法行為に基づく損害額の総額を406億8948万円と変更し,「イ号侵害物件」については,昭和47年3月から昭和56年6月13日までの間に製造販売された16万1100台のうち当初の122台に係る実施料相当額651万4800円,「ロ号侵害物件」については,上記期間に製造販売された9万1100台のうち当初の10台に係る実施料相当額53万4000円,「ハ号侵害物件」については,昭和47年2月から昭和56年6月13日までの間に製造販売された10万4700台のうち当初の15台に係る実施料相当額390万円として,その合計1094万8800円及びこれに対する不法行為の後である昭和56年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとした。

2  控訴理由は,本判決添付別紙A(控訴理由書写し),別紙B(追加控訴理由書写し)及び別紙C(再追加控訴理由書写し)記載のとおりである。

第3当裁判所の判断

当裁判所も,控訴人の本件訴えは不適法な訴えとして却下すべきであり,その不備を補正することができないものであることが明らかであると判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の2項記載のとおりである。

当審において,控訴人が,訴状添付の原判決共通目録と交換的に変更した本判決添付別紙A控訴理由書添付の別紙(本件控訴理由書別紙)1-1~3の記載と,原判決添付別紙2平成13年訴訟判決添付の別紙(平成13年訴訟判決別紙)の記載とを比較すると,本件控訴理由書別紙における「イ号侵害物件」,「ロ号侵害物件」及び「ハ号侵害物件」と平成13年訴訟判決別紙における「イ号製品」,「ロ号製品」及び「ハ号製品」とは,実質的に同一の製品であると認められるから,控訴理由を勘案してもなお,交換的変更後と主張する本件訴えは,実質的には平成13年訴訟等で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものというべきであり,本件訴えは信義則に反し訴権の濫用に当たる不適法なものであって,その不備を補正することができないものである。

よって,本件訴えを却下した原判決は相当であるから,口頭弁論を経ないで本件控訴を棄却することとし(最3小昭和57年10月19日判決・裁判集民事137号391頁),主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清水節 裁判官 片岡早苗 裁判官 古庄研)

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