知財高等裁判所 平成28年(ネ)10057号 判決 2016年12月22日
控訴人
X
被控訴人
Y
訴訟代理人弁護士
前田哲男
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 別紙控訴人請求目録記載の各請求を求める。
第2事案の概要
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴人がAOLのチャット機能又はメール機能を使用して被控訴人のスクリーンネームであるA又は同人のメールアドレスであるA@aol.com に文章を伝達するなどして被控訴人の創作に関与したとして,控訴人は宇多田ヒカル名義の編集著作物(CDアルバム「First Love」)及び「誰かの願いが叶うころ」と題する楽曲の歌詞の共同著作者であると主張し,また,控訴人が「B&C」,「はやとちり」及び「Wait & See~リスク~」と題する各楽曲の歌詞につき,被控訴人の創作に関与したものの被控訴人が控訴人の氏名を表示せず被控訴人のみが著作者として利益を得るなどしたと主張して,著作権法115条,民法709条等に基づき,別紙控訴人請求目録記載の各請求(当審第1回口頭弁論調書参照)を求めた事案である。
原審は,控訴人において主張する伝達内容が被控訴人に伝えられたものとは認められないとして,控訴人の各請求をいずれも棄却した。控訴人がこれを不服として控訴した。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の各請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,後記2において当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決2頁19行目から4頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決3頁20行目の「具体的な表現」を「創作的な表現」に改める。
2 当審における控訴人の主張について
控訴人は,当審においても,控訴人がAOLのチャット機能又はメール機能を使用して被控訴人のスクリーンネームであるA又は同人のメールアドレスであるA@aol.com に文章を伝達した旨主張する。しかしながら,仮に控訴人がA又はA@aol.com に対し文章を伝達したことまで認められるとしても,被控訴人がA又はA@aol.com を使用していたことを認めるに足りる証拠がないのであるから,控訴人が被控訴人に対し文章を伝達したものと認めることはできない。そのほかに控訴人の当審における主張及び証拠を改めて検討しても,上記判断を左右するに至らない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
なお,控訴人は,本件口頭弁論終結後に,平成28年9月24日付け口頭弁論再開申立書及び同年10月17日付け上申書を提出した上,口頭弁論の再開の申立てをした。しかしながら,当該申立書における控訴人の主張を改めて十分検討しても,上記判断を左右するものではなく,口頭弁論を再開しなければ手続的正義の要求に反するということはできない。したがって,当裁判所は,口頭弁論の再開は命じないこととした。
第4結論
以上によれば,控訴人の各請求はいずれも理由がなく,控訴人の各請求をいずれも棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 設楽隆一 裁判官 中島基至 裁判官 岡田慎吾)
file_2.jpg別紙