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知財高等裁判所 平成28年(ネ)10085号 判決 2017年2月20日

控訴人(一審原告)

被控訴人(一審被告)

株式会社リコー(以下「被控訴人リコー」という。)

被控訴人(一審被告)

リコーインダストリー株式会社(以下「被控訴人リコーインダストリー」という。)

上記2名訴訟代理人弁護士

竹田稔

服部謙太朗

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1億円及びこれに対する平成24年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

第2事案の概要

本判決の略称は,特に断らない限り,原判決に従う。

1  事案の要旨

本件は,日立工機株式会社(日立工機)等に勤務していた控訴人が,勤務期間中に職務発明(本件各特許発明)を行い,同発明に係る特許を受ける権利を同社に譲渡したところ,被控訴人らにおいて同社の相当対価支払義務を承継した旨主張して,被控訴人らに対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(以下,同条について「特許法」という場合,特に断らない限り,平成16年法律第79号による改正前の特許法をいう。)に基づき,相当対価2億円及びうち1億円に対する訴状送達日の翌日(被控訴人リコーにつき平成24年8月16日,被控訴人リコーインダストリーにつき同月21日)から,うち1億円に対する平成27年4月27日付け「訴えの変更申立書」送達日の翌日(平成27年5月1日)から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

控訴人は,本件訴えを提起した時点では,日立工機も被告としていたが,平成25年3月18日,同被告に対する訴えを取り下げた。また,当初,被告であったリコープリンティングシステムズ株式会社(リコープリンティングシステムズ)は,同年4月1日,被控訴人リコーインダストリーに吸収合併され,同被控訴人が被告たる地位を承継した。

原審では,①被控訴人らによる日立工機の相当対価支払義務の承継の有無,②本件特許発明3及び5の実施の有無,③相当対価の額の3点が争われ,原判決は,①につき,被控訴人リコーによる承継を認め,②につき,本件特許発明3の自社実施及び本件特許発明5の米国子会社による実施(ただし,カット紙レーザプリンタのみ。)を認め,③については,本件特許2ないし4は基本特許ではなく,本件特許5は独占の利益がないか,あるとしてもその程度は低いとの前提の下に相当対価の額を算定した結果,いずれも控訴人が支払を受けた報奨金の額が相当対価の額を上回るとして,控訴人の請求を全部棄却したため,これを不服として控訴人が控訴した。

控訴人は,当審において,その請求する相当対価の額を控訴の趣旨第2項記載のとおり2億円から1億円に減縮した。

2  前提事実及び争点

原判決の「事実及び理由」の第2の1及び2(2頁20行目から16頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

第3争点に関する当事者の主張

下記1のとおり付加,訂正し,下記2のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の3(16頁3行目から39頁18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

1  原判決の訂正

28頁25行目に「上記aないしe同様であるが」とあるのを,「上記aないしeと同様であるが」と改め,30頁22行目の「特許であるため,」の次に「対価の対象となるものは,」を加える。

2  当審における控訴人の主張

(1)  本件特許発明3の実施について(争点(2)関係)

原判決は,同特許発明の請求項1についてのみ実施を認定しているが,請求項2,同5及び同6も実施している。

(2)  本件特許発明5の実施について(争点(2)関係)

ア 原判決は,いずれもマルチビーム斜め走査を採用している連続紙レーザプリンタとカット紙レーザプリンタにおいて,連続紙レーザプリンタについてのみ同特許発明の実施を認めなかったが,カット紙レーザプリンタよりも印刷速度が高速である連続紙レーザプリンタの方が同特許発明の実施を必要とするというべきであり,原判決の判断は不合理である。

イ 原判決は,連続紙レーザプリンタに関し,IBM(米国IBMを指す。

以下同じ。)がマルチビーム方式の画像信号の処理に関する米国特許第4978849号(乙66。以下「本件IBM特許」という。なお,乙67は対応する日本特許出願の特許出願公告公報である。)を有していたことを根拠に,IBMは,本件特許5と同様にマルチビーム走査レーザ装置における画素位置の修正に関する課題を解決するための特許権,すなわち本件特許発明5に代替し得る特許権を有していたと認定するが,本件IBM特許は本件特許発明5に代替し得るものではない。

ウ 原判決は,「日立工機らがIBMに対し本件特許権5を実施許諾したとの事実や,IBM製品において本件特許発明5が実施されている事実を認めるに足りる証拠はない。」とするが,日立工機とIBMは,平成4年以降,高速連続紙レーザプリンタの共同開発を行っており,平成5年8月には,日立工機がIBMに対し,従来の1ビーム走査からマルチビーム斜め走査光学系を用いたレーザプリンタへの転換を提示し,平成6年には,IBMからの要求で日立工機が本件特許5のマルチビーム斜め走査制御方式を開示している(甲61の1)ことからすると,IBMがコントローラ部分を製造していたとしても,その内容をなすマルチビーム斜め走査光学系に係る制御の技術に関しては,日立工機がIBMに対し本件特許5を実質的にライセンスしていたとみるのが合理的であり,IBMのプリンタ部門がリコーグループに吸収された平成19年以降は,正に自社内で実施していたことになる。

エ 以上によれば,連続紙レーザプリンタでも本件特許発明5を実施しているとみるのが相当である。

(3)  相当対価の額について(争点(3)関係)

ア 本件特許2ないし5に基づく光学系及びそれを用いたレーザプリンタは,①社内外から表彰を受け,②グローバル企業(世界企業)に採用されて世界中で販売され,③独自発明であるから,他社から特許抵触のクレームを受けることはなく,類似製品もなく,④数年にわたり,日立工機らの全レーザプリンタの約90%に採用された。

このような発明の相当対価が原判決認定の6万2563円であるはずがなく,原判決の認定判断は不当である。

イ 本件特許2ないし4について

(ア) 本件特許2ないし4の位置付けについて

原判決は,「本件特許2ないし4に対する関係で公知技術となる本件特許1は,マルチビーム斜め走査光学系に関する技術を開示しており,本件特許2ないし4は,本件特許1等で開示されたマルチビーム斜め走査光学系の技術を前提とした特許という位置付けになる」ことなどを前提に,「本件特許2ないし4はマルチビーム斜め走査光学系における基本特許ではなく,他の特許と比較して特に必要性が高いとはえいない。」と結論付けるが,不合理な判断である。

すなわち,本件特許1は半導体レーザアレイに限定した特許であるのに対し,本件特許2ないし4は,レーザ光を分岐する方式で,マルチビームを高速に光変調する光学系を発明し,この発明した光学系においてもマルチビーム斜め走査が有効であることを発見したものである。したがって,本件特許発明2ないし4は,マルチビーム高速光変調光学系の発明とマルチビーム斜め走査が有効であるという発見とを結合させたものであり,レーザ光源からのレーザ光を分岐する方式によるマルチビーム斜め走査光学系の基本特許というべきものである。

また,本件特許2ないし4に基づくマルチビーム斜め走査光学系より高速性,高解像度性において優位にあるものはない(他の技術は全て性能面で劣っており,代替手段ではない。)。かかる事実を理解しているから,グローバル企業であるIBMやゼロックスが日立工機らの製品を採用したのである。

(イ) 本件特許2ないし4に係る相当対価の具体的算出について

a 売上高について

被控訴人らが開示した売上高はY値(工場出荷価格)であり,Y値には営業経費及び営業利益が含まれていない。顧客への販売価格(顧客販売価格)はY値に営業経費及び営業利益などが加算されるものとなることから,顧客販売価格がY値と異なるのは当然である。したがって,値引きをして販売されることを考慮しても,被控訴人らが開示した額の1.8倍をもって実際の売上高とするのが相当である。

b 超過売上率について

超過売上率については,原判決が認定するとおり0.45とするのが相当である(ただし,乙57に基づき,日立製作所などの実施可能であった特許件数の年平均値を1086件とし,これに情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率〔24.7%〕を考慮して,「これらの特許が全体として日立工機らのプリンタの売上げに相当程度貢献したものと認められる。」と認定している点は争う。すなわち,上記件数は,一般オフィス用レーザプリンタの開発に注力する日立製作所の出願分や,対象製品が採用していない分野の特許を含んでいる。また,被控訴人らは,対象製品に採用されている特許は全部把握しているはずであるのに,これらを一切開示していない。よって,乙57は誤った集計であり,この集計を採用する原判決は不衡平かつ不当というべきである。)。

c 仮想実施料率について

発明協会発行の「実施料率(第5版)」(甲63)において,プリンタについては5%が最頻値となっていること,本件特許2ないし4は基本特許であり,キヤノン,IBM,ゼロックスなどの有力企業に製品を納入できたのは,これらの特許の存在が大きいこと,当時,日立工機らは●●●●●に対して●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ことなどを考慮すると,本件の仮想実施料率は5%とするのが相当である。

原判決は,被控訴人らが,キヤノン職務発明相当対価支払請求事件の控訴審判決(知財高裁平成19年(ネ)第10021号・平成21年2月26日判決。以下「キヤノン職務発明事件控訴審判決」という。)において,レーザビームプリンタについて仮想実施料率が2.4%と認定されていることを前提に,特許件数の比に応じて本件の仮想実施料率を約0.31%と主張するのは基本的に合理的であるとする。しかし,前記判決で採用されている仮想実施料率は,ライセンス料が低く抑えられる包括ライセンスに係るものであって,前提が異なるというべきであるし,業務用と一般オフィス用とでは技術分野が異なるから,一般オフィス用が大部分と思われる企業との間で特許件数を比較しても無意味である。よって,被控訴人らの計算は採用できないというべきである。

なお,原判決は,控訴人が原審において,「感光体」,「現像剤(トナー,キャリア)」及び「露光」に関しては外部から部品を購入したと主張した点につき,証拠がなく採用できないとしているが,かかる事実は周知のことであり,現に証拠も存在する(甲64ないし70。枝番号があるものは枝番号も含む。)。

d 本件特許2ないし4の被控訴人製品における寄与度について前記のとおり,本件特許2ないし4は基本特許であり,被控訴人製品に実施された有意な特許はこれらの特許以外に存在しない(このことは,被控訴人製品において,有意な特許に支給される実績補償金が支給された例が,本件特許2ないし4以外に存在しないことからも明らかである。)。

したがって,本件特許2ないし4の被控訴人製品における寄与度については,本件特許2の寄与度が100%,対象製品が本件特許2と重なる本件特許3及び4の寄与度は50%とするのが相当である。

e 発明者(控訴人)の貢献度について

次の開発経緯を考慮すれば,控訴人の貢献度が10%を下ることは考えられない。

(a) 控訴人は,基本特許である本件特許2ないし4を単独で発明した。

(b) 控訴人は,これらの特許に基づく光学系を製品に採用できるまで,ほぼ独力で実用化した。

(c) 当時の日立工機のレーザプリンタは他社のLEDアレイプリンタに性能面で劣勢であり,日立工機もこれに追随しようと大規模な態勢でLEDアレイプリンタを開発していたが障害を克服できず,結局,性能の大幅な向上を目的として,控訴人が開発中の上記特許に基づく光学系を大型顧客であるIBMに提案した。

(d) その後,控訴人は直ちに上記特許に基づくマルチビーム斜め走査光学系を試作し,実証実験にも成功した。そして,この実証実験をIBMに展示(デモ)することで受注につなげた。

f aないしeを前提とした相当対価の額

以上に基づき本件特許2ないし4に係る相当対価の額を算出すると,その総額は,次のとおり,3億4639万4216円となる(ただし,小数点以下は全て四捨五入した。)。

(a) 本件特許2

598億3615万4000円×1.8×0.45×0.05×1×1×0.1=2億4233万6424円

(b) 本件特許3

55億0275万円×1.8×0.45×0.05×0.5×1×0.1=1114万3069円

(c) 本件特許4

458億8381万4000円×1.8×0.45×0.05×0.5×1×0.1=9291万4723円

(d) (a)ないし(c)の合計

3億4639万4216円

ウ 本件特許5について

(ア) 原判決は,米国特許である本件特許5(請求項1)は,日本における対応特許と同様に,乙21発明との関係で進歩性を欠き無効とされるべき特許であるにとどまらず,第三者にとっても代替技術を利用することで当該特許を回避することが極めて容易であったと解されることから,このような特許を承継した被控訴人らにおいては,何ら独占の利益(当該特許の寄与度を考慮したもの)を取得できないか,取得し得たとしてもその程度は低く,寄与度はせいぜい0.1%であるとした。

しかし,日本における対応特許が拒絶されたのは,新技術の価値を説明できなかったからであり,米国では登録が認められている以上,相違点に係る構成に格別の技術的意義があると認められたと解することが合理的である。

また,日立工機らの高速連続紙レーザプリンタは,グローバル企業であるIBMやゼロックスに販売され,世界の市場占有率50%以上を獲得する成果を出したが,類似技術を採用した模倣製品はない。このことからも,他社が本件特許5の代替技術を保有していないとすることは合理的である。

そして,本件特許1及び本件特許2ないし4のマルチビーム斜め走査光学系の全てに本件特許5が採用されていること,他に有効な特許や代替手段がないことからすれば,本件特許5の寄与度は100%とするのが相当である。

(イ) 共同発明者間における控訴人の貢献度についても,実質100%とするのが相当である。すなわち,本件特許2ないし4は控訴人の単独発明であったのに,本件特許5だけ発明者が10人の連名(共同発明)となっているのは不自然である。これは,本件特許2ないし4は製品採用決定前に特許出願したものであるのに対し,本件特許5は製品化決定後に特許出願したものであることから,上長が新製品に関わる多くの開発者を本件特許5の発明者として連名にし,控訴人も同意したという事情による。特許出願報奨金,特許登録報奨金は既に連名者に均等配分されているが,発明の相当対価は連名者間の単純な均等配分ではなく,真の発明者である控訴人に支給されるべきである。

(ウ) 以上に基づき,次の計算式に従って本件特許5に係る相当対価の額を算出すると,その額は8347万9815円となる。

a 計算式

相当対価の額=米国への製品売上高(工場出荷額×1.8)×超過売上率0.45×仮想実施料率5%×関連発明間の寄与率100%×共同発明者間における控訴人の寄与割合100%×控訴人貢献度5%

b カット紙レーザプリンタ

相当対価の額=82億7960万円×1.8×0.45×0.05×1×1×0.05

=1676万6190円

c 連続紙レーザプリンタ

相当対価の額=329億4500万円×1.8×0.45×0.05×1×1×0.05

=6671万3625円

d bとcの合計

8347万9815円

エ 既払分

日立工機らは,控訴人に対し,本件特許2ないし4の報奨金として合計71万2160円,本件特許5の報奨金として合計1万6000円を支払っている。

オ イ及びウの相当対価の額の合計から,エの既払分の合計を差し引くと,次のとおり,その額は4億2914万5871円となる。控訴人は,一部請求としてこのうち1億円を請求する。

4億2987万4031円-71万2160円-1万6000円

=4億2914万5871円

3  被控訴人らの反論

(1)  本件特許発明3の実施について(争点(2)関係)

対象製品が同発明の請求項2,同5及び同6を実施しているかは不知。

もっとも,これらはいずれも請求項1の従属項であり,相当対価の算定については,請求項1で評価し尽くされている。したがって,原判決が請求項1についてのみ判断しているとしても,そのことは結論に影響がない。

(2)  本件特許発明5の実施について(争点(2)関係)

控訴人は,連続紙レーザプリンタでも本件特許5を実施していると主張するが,同事実についての立証はない。IBMは乙66や乙67に係る代替技術(本件IBM特許)を有していた以上,本件特許5を実施しているとはいえないし,甲61の1も記載内容や作成された時期からして同事実の証拠となるものではない。

(3)  相当対価の額について(争点(3)関係)

ア 本件特許2ないし4について

(ア) 本件特許2ないし4の位置付けについて

控訴人の主張は争う。原判決の認定判断に誤りはない。

(イ) 対象製品の売上高について

控訴人の主張は争う。Y値こそが被控訴人らにとっての実売価格である。被控訴人らの顧客がエンドユーザーに販売した顧客販売価格については,被控訴人らに独占の利益が生じていない以上,控訴人の主張は失当である。

(ウ) 超過売上率について

原判決は控訴人が主張する0.45という数値を採用しているのであり,控訴人の主張は失当である。

(エ) 仮想実施料率について

控訴人の主張は争う。本件特許発明2ないし4はいずれも代替技術を有する改良発明にすぎないのであるから,これらの特許について仮想実施料率を5%とする控訴人の主張が失当であることは明らかである。

(オ) 本件特許2ないし4の被控訴人製品における寄与度について

控訴人の主張は争う。原判決は,日立製作所や被控訴人らが毎年保有していた対象製品に実施可能な特許件数をそのまま用いるのではなく,情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率(24.7%)を参照するなど合理的な補正を行っているのであり,原判決の認定判断に誤りはない。

(カ) 発明者(控訴人)の貢献度について

控訴人の主張は争う。原判決の認定判断に誤りはない。

イ 本件特許5について

控訴人の主張は争う。原判決が認定するように,本件特許5は乙21発明に基づき進歩性がないことが出願経過から明らかである。そうである以上,独占の利益がないことも明らかであるから,代替技術の有無について検討するまでもなく,控訴人の主張は失当である(なお,本件特許5の代替技術としては,乙21発明等が存在する。)。

第4当裁判所の判断

当裁判所も,控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,下記1のとおり付加,訂正し,下記2ないし4のとおり当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1ないし3(39頁20行目から70頁26行目まで。ただし,62頁5行目から63頁20行目までと66頁2行目から同12行目までを除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する。

1  原判決の訂正

(1)  50頁11行目に「本件特許発明2及び4」とあるのを,「本件特許発明2及び4(ただし,請求項4及び同5を除く。)」と改める。

(2)  52頁3行目「日本において」の前に「被控訴人らの調査によれば,」を加える。

(3)  55頁2行目「日立製作所」の前に「被控訴人らの調査によれば,」を加える。

(4)  同9行目「他方で,」の後に「同調査によれば,」を加える。

2  本件特許発明3の実施について(争点(2)関係)

控訴人は,原判決が同特許発明の請求項1についてのみ実施を認定しているとの前提の下に,請求項2,同5及び同6も実施している(ので原判決の認定判断には誤りがある)旨主張する。これは,実施の範囲を不当に狭く認定したことにより,相当対価の額の算定に誤りが生じていることを指摘する趣旨であると解される。

しかしながら,原判決は,本件特許発明3の実施の有無に関し,請求項1における「矩形パターン」との文言が凸部のみを指すのか(凹部を除外するものか)否かを検討して,かかる文言は凹部を除外しないとの判断の下に被控訴人製品では本件特許発明3が実施されているとの結論を導いているところ,かかる争点は従属項である請求項2以下においても共通の争点であって,他に検討を要する個別の争点がないことから,請求項1についてのみ検討及び判断しているにすぎず,他の請求項についての実施を殊更除外(否定)する趣旨でないことは明らかである。

また,相当対価の額の算定において,原判決が認定した本件特許3に係る被控訴人製品の売上高は合計55億0275万円であり,その対象製品は4ビーム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB16)であるところ,原判決添付の別紙をみれば,いずれも請求項1のみならず,請求項2,同5及び同6の実施も前提とされている(各該当欄に丸印が付されており,その実施の範囲は完全に一致する。)ことが明らかであるから,原判決は,相当対価の額の算定に当たり,請求項1以外の上記請求項についての実施も含めて上記売上高を認定し,これを算定の基礎としているものと認められる。

したがって,本件特許発明3の実施を認定するに当たり,請求項1以外の上記請求項の実施を殊更除外しているとは認められず,また,相当対価の額の算定に当たっても,請求項1以外の上記請求項の実施を殊更除外しているものとは認められない。

よって,本件特許3に係る相当対価の額の算定に当たっては,請求項1のみならず,請求項2,同5及び同6の実施も実質的に評価されているというべきであり,これに反する控訴人の主張は採用できない。

3  本件特許発明5の実施について(争点(2)関係)

控訴人は,①カット紙レーザプリンタよりも印刷速度が高速である連続紙レーザプリンタの方が本件特許発明5の実施を必要とするというべきであること,②本件IBM特許は本件特許発明5に代替し得る技術ではないこと,③日立工機とIBMは,平成4年以降,高速連続紙レーザプリンタの共同開発を行っており,平成5年8月には,日立工機がIBMに対し,従来の1ビーム走査からマルチビーム斜め走査光学系を用いたレーザプリンタへの転換を提示し,平成6年には,IBMからの要求で日立工機が本件特許5のマルチビーム斜め走査制御方式を開示している(甲61の1)ことからすると,IBMがコントローラ部分を製造していたとしても,その内容をなすマルチビーム斜め走査光学系に係る制御の技術に関しては,日立工機がIBMに対し本件特許5を実質的にライセンスしていたとみるのが合理的であることから,(カット紙レーザプリンタのみならず)連続紙レーザプリンタでも本件特許発明5を実施しているとみるのが相当である旨主張する。

しかしながら,かかる控訴人の主張は採用できない。

すなわち,少なくとも平成19年以前は,カット紙レーザプリンタは被控訴人らの米国子会社(DPC)を通じて製品化し(その過程でコントローラも同子会社が製造し),同子会社の自社製品として出荷されていたのに対し,連続紙レーザプリンタはIBM製品として出荷され,コントローラもIBMが製造しており,IBMはそのための技術も有していたというのであるから,両者の間では事情が全く異なるのであり,被控訴人らが実質的には自社製品として製造販売するカット紙レーザプリンタについては本件特許発明5を実施していたとしても,他社製品として供給される連続紙レーザプリンタについても当然に同発明を実施していたということはできない。また,被控訴人リコーがIBMの事業部を併合した同年以降も,IBMがそれまで自社の技術を用いてコントローラを製作していたのであれば,あえてそれを他の技術(構成)に置き換える必要はないというべきであるから,仮に本件特許発明5に置き換えられたと主張するのであれば,それなりに具体的な根拠を示す必要がある。

したがって,連続紙レーザプリンタにおける本件特許発明5の実施を認定するためには,平成19年の前後を問わず,その実施を認めるに足りる具体的な事実の主張立証が必要となるというべきところ,日立工機らがIBMに対して本件特許発明5を実施許諾したとの事実や,IBM製品において本件特許発明5が実施されている事実を認めるに足りる証拠がないことは,原判決が説示するとおりである。

この点,控訴人は上記①ないし③のとおり主張するが,単にカット紙レーザプリンタより連続紙レーザプリンタの方が本件特許発明5を実施する必要性があるとか,本件IBM特許は代替技術たり得ないなどと主張するだけでは不十分というべきである(むしろ,日立工機らから製品の供給を受けながらもコントローラはあえてIBMが自作していたという事実は,本件IBM特許であるか否かにかかわらず,当時,IBMが相応の代替技術を有していたことを強く推認させる。)。また,平成6年には,IBMからの要求で日立工機が本件特許5のマルチビーム斜め走査制御方式を開示している(甲61の1)との点についても,控訴人の実験ノート(甲61の1)に,「顧客要求内容」として,「Dual beamのコントロール方法を教えて欲しい」などとの記載があるというだけでは,当時,日立工機が本件特許発明5に係る制御技術をIBMに開示し,これを同社にライセンスしたという事実を認めるには足りない。むしろ,かかる顧客要求があったのは同年2月9日とされているところ,これは控訴人が,本件特許5について社内で出願依頼したのとほぼ同時期であり(乙70),実際に出願(国内出願)されたのはその4か月後の同年6月30日であること(甲6の1)を踏まえると,たとえ顧客であっても,出願前のそのような時期に,出願を予定している未公開の技術を他社に開示するとはにわかに認め難いというべきである。そして,ほかに日立工機らがIBMに対して本件特許発明5を実施許諾したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。

よって,連続紙レーザプリンタでも本件特許発明5を実施しているとみるのが相当であるとの控訴人の主張は,採用できないというべきである。

4  相当対価の額について(争点(3)関係)

(1)  まず,本件特許2ないし4について検討する。

ア 本件特許2ないし4の位置付けに関し,控訴人は,本件特許1は半導体レーザアレイに限定した特許であるのに対し,本件特許2ないし4は,レーザ光を分岐する方式で,マルチビームを高速に光変調する光学系を発明し,この発明した光学系においてもマルチビーム斜め走査が有効であることを発見したものであるから,本件特許発明2ないし4は,マルチビーム高速光変調光学系の発明とマルチビーム斜め走査が有効であるという発見とを結合させたものであり,レーザ光源からのレーザ光を分岐する方式によるマルチビーム斜め走査光学系の基本特許というべきものであると主張する。

しかしながら,原判決が説示するとおり,そもそも,本件特許2ないし4に対する関係で公知技術となる本件特許1は,マルチビーム斜め走査光学系に関する技術を開示しており,本件特許2ないし4は,本件特許1等で開示されたマルチビーム斜め走査光学系の技術を前提とした特許という位置付けになるものであることは疑いようがない。このことは,控訴人自身が,本件特許発明2ないし4に係る発明の経過において,レーザ光源からのレーザ光を分岐する方式の光学系においても,原因は異なるものの,半導体レーザアレイの場合と同様に,結像した光スポット列の各光スポット間隔が光スポットの大きさの数十倍(典型的には30倍)程度に大きくなることを発見し,この発見にマルチビーム斜め走査のアイデアを結合させたこと,すなわち,上記各発明は本件特許発明1の技術を応用したものであることを認めていること(控訴理由書17,18頁)からも明らかである。したがって,本件特許2ないし4が,新しい原理や発見に基づく最初の特許という意味での基本特許に当たらないことは当然である。

また,原判決が認定するとおり,レーザプリンタにおいては,露光以外にも様々な技術が不可欠であり,技術分野ごとに数多くの特許権が存在するほか,露光技術においても,LEDアレイ光学系とレーザ走査光学系があり,更に本件特許発明2ないし4が属する後者においても,複数ビームを発生させる方式については様々な方式(複数のレーザ光源を用いる方式や一本のレーザビームを分離する方式)があり,同様に角度調整手段においても様々な方式があって,各社が開発競争にしのぎを削ってきたことは疑いようがない事実であるところ,本件特許発明2ないし4は,飽くまでそのようにして開発された数ある方式の一つにすぎないというべきであり,かかる認定判断を覆すに足りる的確な証拠はない。控訴人は,本件特許2ないし4に基づくマルチビーム斜め走査光学系より,高速性,高解像度性において優位にあるものはないとか,他の技術は全て性能面で劣っており,代替手段ではないなどとも主張するが,本件特許2ないし4が実施されていない他社の競合製品が現に存在することは事実というべきであるし(それは要するに代替技術が存するということを意味する。),他社製品において採用されている技術との間に作用効果の面で技術的に顕著な差異があることを認めるに足りる証拠もない。日立工機の製品が一時期世界市場の約半分を占めたことは事実であるが,それは,原判決が認定するとおり,両面印刷機能の付加や高精細化,一層の高速化など様々な機能強化が図られたことが要因である上に,高速化に関しても,光学系の技術だけでなく,現像,定着等多くの技術が必要とされていることからすれば,必ずしも本件特許2ないし4に係る技術のみがそれに貢献したということはできない。

したがって,本件特許2ないし4については,いずれも基本特許であるとはいえないのはもちろんのこと,それに準ずるような独占力の強い特許であるということもできないというべきであり,これに反する控訴人の主張は採用できない。

イ 以上の前提の下に,本件特許2ないし4に係る具体的な相当対価の額について検討する。

(ア) 売上高について

原判決が認定するとおり,本件特許2に係る被控訴人製品の売上高は合計598億3615万4000円,本件特許3に係る被控訴人製品の売上高は合計55億0275万円,本件特許4に係る被控訴人製品の売上高は合計458億8381万4000円と認めるのが相当である。

これに対し,控訴人は,被控訴人らが開示した売上高はY値(工場出荷価格)であり,Y値には営業経費及び営業利益が含まれていないから,顧客販売価格がY値と異なるのは当然であるとして,被控訴人らが開示した額の1.8倍をもって実際の売上高とするのが相当である旨主張するが,被控訴人らの開示に係る売上高を1.8倍すべき合理的根拠が見当たらないことは原判決説示のとおりであり,かかる認定判断を覆すに足りる的確な証拠はない。

したがって,控訴人の主張は採用できない。

(イ) 超過売上率について

控訴人は原判決が認定した超過売上率(0.45)自体は争っておらず,当裁判所もかかる数値をもって本件の超過売上率と認めるのが相当であると判断する(控訴人は,原判決が上記数値を採用した理由付けが誤っていることについてるる主張するが,いずれにしても上記数値を争わないのであるから,その主張は失当である。)。

(ウ) 仮想実施料率について

仮想実施料率について,被控訴人らは,別件であるキヤノン職務発明事件控訴審判決において,レーザビームプリンタについての仮想実施料率が2.4%と認定されていること(同事実については,当事者間に争いはない)を前提として,日立製作所,日立工機,日立プリンティングソリューションズ及びリコープリンティングシステムズ(以下,本項において「日立等」という。)においてプリンタ分野で1994年(平成6年)から2006年(平成18年)において利用可能であった特許件数の年平均値と,キヤノン株式会社において同じ時期に利用可能であったプリンタ分野での特許件数の年平均値の比率をかけた約0.31%が仮想実施料率として相当であると主張する。

この主張のうち,上記判決が,レーザビームプリンタの仮想実施料率を2.4%と認定した点は,キヤノン株式会社において実際に行われた実施料率に基づいて算出されたものであるから,取引の実態に即したものということができ,本件においてこれを参酌することに問題はないものというべきである(控訴人は,発明協会発行の「実施料率(第5版)」〔甲63〕を根拠として,プリンタの実施料率の最頻値が5%であるから,仮想実施料率は5%と認定すべきであると主張するが,控訴人が示す数値は,プリンタに特化した実施料率ではなく,「事務用・サービス用・民生用機械器具製造技術」及び「その他の機械・同部分品製造技術」分野における実施料率なのであるから,直ちに参考になるものではないというべきである。また,控訴人は,①本件特許2ないし4は基本特許であるから価値が高いとか,②当時,日立工機らは,●●●●●に対して●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●などとも主張するが,①について,本件特許2ないし4を基本特許とはいえないことは既に説示したとおりであるし,②の点も,本件の仮想実施料を算定する上で,直ちに参考になる事情であるとはいえない。)。

これに対し,被控訴人らが,2.4%という実施料率に,日立等が利用可能であった特許件数と,キヤノン株式会社において利用可能であった特許件数の比を乗じている点は,相当とはいい難い。すなわち,被控訴人らの計算は,包括実施許諾契約における実施料率は,包括実施許諾の対象となる特許件数に単純に比例して増減するということを前提にしたものであると考えられるが,少数の特許権の実施が問題になっている場合はともかく,本件のように千件を超える特許権の実施が問題になっている場合に,実施許諾の対象となっている特許権の数に単純に比例して実施料率が増減していることをうかがわせる証拠はないし,そのような実態があるとも考え難い。むしろ,多数の特許権を対象とする包括実施契約においては,そこに含まれる特許権の数のみを問題とするのではなく,それらを一体のものとして評価した上で,他の様々な要因をも総合考慮して実施料率を算定するのが通常であり,その数値は,必ずしも特許権の数に比例しないと考えるのが常識に合致するというべきである(被控訴人らの論法に従ったとすると,仮に日立等とキヤノン株式会社の利用可能特許件数の比率が逆であった場合,仮想実施料率は,2.4%の約8倍である20%とならなければならないことになるが,このような結論を被控訴人らが認めるとは到底考えられない。)。

そして,本件においては,上記特許件数の差以外にキヤノン職務発明事件控訴審判決で認められた実施料率を大きく下回ることについて合理的理由があるというべき事情は見出し難いところ(少なくとも,この点について,具体的主張立証があるとは認められない。),その他諸般の事情を考慮すれば,本件における仮想実施料率は2.4%とするのが相当である。

(エ) 被控訴人製品における寄与度について

これについては,当裁判所も,本件特許2ないし4はマルチビーム斜め走査光学系における基本特許ではなく,他の特許と比較して特に必要性が高いとはいえないとの前提の下に,プリンタ分野において被控訴人製品に使用可能な特許の件数及び被控訴人らを含む情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率を考慮した上で寄与度を算定することは合理的であり,その寄与度は各0.5%と認めるのが相当であると判断する。

これに対し,控訴人は,本件特許2ないし4が基本特許であり,被控訴人製品に実施された有意な特許がほかに存在しないとの前提の下に,本件特許2の寄与度は100%,本件特許3及び4の寄与度は50%とするのが相当であるなどと主張するが,既に説示したとおり,前提が異なる以上,採用できないというべきである。

(オ) 本件特許発明2ないし4は,いずれも控訴人の単独発明であるから,共同発明者間の寄与率は問題にならない。

(カ) 発明者(控訴人)の貢献度について

発明者(控訴人)の貢献度については,原判決が説示するとおり,0.05(5%)と認めるのが相当である。

これに対し,控訴人は,控訴人の貢献度が10%を下ることは考えられないとして種々の事情を主張するが,要するに,本件特許2ないし4が基本特許であるとの前提の下に,控訴人の単独発明であることや,控訴人がほぼ独力で実用化したことなどを主張するものであって,やはり前提が異なる以上,採用できないというべきである。

(キ) 以上に基づいて計算すると,本件特許2ないし4についての相当対価の額は,以下のとおり,30万0300円となる。

a 本件特許2に係る相当対価  16万1557円

(計算式)

598億3615万4000円×0.45×0.024×0.005×1×0.05=16万1557円(小数点以下切り捨て。以下同じ。)

b 本件特許3に係る相当対価   1万4857円

55億0275万円×0.45×0.024×0.005×1×0.05=1万4857円

c 本件特許4に係る相当対価  12万3886円

458億8381万4000円×0.45×0.024×0.005×1×0.05=12万3886円

d aないしcの合計      30万0300円

ウ 以上のとおり,本件特許2ないし4についての相当対価の額は30万0300円と認めるのが相当であるところ,控訴人は,既に日立工機らから,本件特許2ないし4の報奨金としてこれを上回る額(合計71万2160円。外国特許分5万6000円を差し引くと65万6160円)の支払を受けている。

したがって,控訴人は,本訴において,改めて本件特許2ないし4の相当対価を請求することはできないというべきであり,この点において,原判決の結論に誤りはない。

(2)  次に,本件特許5について検討する。

原判決が認定するとおり,本件特許5については,日本においても対応特許が出願されたものの,先行技術(乙21発明)の存在によって拒絶査定されたものである。

この点,控訴人は,日本における対応特許が拒絶されたのは,新技術の価値を説明できなかったからであり,米国では登録が認められている以上,相違点に係る構成に格別の技術的意義があると認められたと解することが合理的であると主張するが,日本において,拒絶査定に対する不服審判請求も不成立となって確定している(甲6の2,4)ことからすれば,同主張は直ちに採用することができない。

そして,原判決が説示するとおり,無効事由が存する特許であっても,直ちに独占の利益が否定されるものではないが,本件のように,あらかじめ対応特許が日本で拒絶査定されたにもかかわらず,外国では登録が認められたというような事案では,第三者にとって代替技術を利用することにより当該特許を回避することは容易であったと推認できるから,このような特許を承継しても,会社には何ら独占の利益は生じないというべきである。

よって,本件特許5については,そもそも相当対価は発生していないというべきであるし,仮に何らかの独占の利益が生じて,これに対する相当対価が観念できるとしても,原判決の計算(ただし,仮想実施料率は前記のとおり修正する。)が示すとおり,その額が本件特許5に関して控訴人が得た報奨金の額(合計1万6000円)を超えることはないというべきである。

したがって,いずれにしても,控訴人は,本訴において,本件特許5の相当対価を請求することはできないというべきであり,この点においても,原判決の結論に誤りはない。

第5結論

以上によれば,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は結論において相当であり,控訴人の本件控訴は理由がない。

よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部

(裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 大西勝滋 裁判官 寺田利彦)

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