大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

知財高等裁判所 平成28年(行ケ)10027号 判決 2016年11月30日

原告

日東精工株式会社

同訴訟代理人弁護士

藤本英二

富永夕子

金順雅

同弁理士

藤本英夫

西村幸城

被告

田井精機株式会社

同訴訟代理人弁理士

戸島省四郎

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

特許庁が無効2015-800018号事件について平成27年12月25日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

1  特許庁における手続の経緯等

(1)  原告は,平成9年3月31日,発明の名称を「スクリューポイント」とする発明について特許出願(特願平9-98288号)をし,平成14年11月1日,特許権の設定登録(特許第3365722号。以下「本件特許」という。)がされた。

(2)  被告は,平成27年1月21日,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び同2に係る発明の特許について無効審判を請求し,特許庁はこれを無効2015-800018号事件として審理した。

(3)  原告は,平成27年10月21日,訂正請求書を提出した(甲25。以下,当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)。

(4)  特許庁は,平成27年12月25日,「訂正請求書に添付された明細書のとおり訂正することを認める。特許第3365722号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,平成28年1月7日,原告に送達された。

(5)  原告は,平成28年2月2日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2  特許請求の範囲の記載

本件訂正後の特許請求の範囲請求項1及び同2の記載は,次のとおりである(甲25)。以下,この請求項1に記載された発明を「本件訂正発明1」と,請求項2に記載された発明を「本件訂正発明2」と,これらを併せて「本件訂正発明」と,訂正された明細書及び図面(甲25)を併せて「本件訂正明細書」という。なお,文中の「/」は,原文の改行箇所を示し(以下同じ。),下線部は,本件訂正による訂正箇所を示す。

【請求項1】スウェーデン式サウンディング試験に際して,一端に有底のめねじ,他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ,ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され,所定の荷重と,必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって,/先端尖鋭な本体部を有し,この本体部の基端部にめねじを形成し,このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成したことを特徴とするスクリューポイント。

【請求項2】本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のスクリューポイント。

3  本件審決の理由の要旨

(1)  本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,①本件訂正発明1は,当業者が,下記の引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。),下記の引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)又は引用例4に記載された発明(以下「引用発明4」という。),及び,下記の周知例1ないし5に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである,②本件訂正発明2は,引用発明1において材質に係る技術事項を特定した発明(以下「引用発明1の2」という。),引用発明2又は引用発明4,下記の周知例1ないし5に記載の周知技術,及び,下記の引用例3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである,というものである。

ア 引用例1:実願平1-111883号(実開3-50624号)のマイクロフィルム(甲2)

イ 引用例2:「図解ボーリング便覧」の76,77,92.93,100ないし113頁(株式会社ラテイス,昭和43年5月21日発行。甲4)

ウ 引用例3:「土と基礎 Vol.12 No.7」の23ないし29頁,資料-76「JIS原案 スウェーデン式サウンディング試験法」(社団法人土質工学会,昭和39年7月25日発行。甲5)

エ 引用例4:米国特許第4332160号明細書(甲10)

オ 周知例1:特開平7-133649号公報(甲11)

カ 周知例2:特開平8-86047号公報(甲12)

キ 周知例3:特開昭58-50344号公報(甲13)

ク 周知例4:特表昭62-501515号公報(甲14)

ケ 周知例5:特開平7-161472号公報(甲15)

(2)  本件訂正発明と引用発明1との対比

本件審決が認定した引用発明1及び引用発明1の2,本件訂正発明1と引用発明1との一致点及び相違点並びに本件訂正発明2と引用発明1の2との一致点及び相違点は,次のとおりである。

ア 引用発明1

スウェーデン式サウンディング試験に際して,一端に雄ねじ部31,他端に雌ねじ部32が設けられた所定の長さの継手ロッド3の雄ねじ部31に取り付けられ,継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成され,所定の重さと,回転とによって継手ロッド3と一体に地中に貫入されるスクリューポイント2であって,/スクリューポイント2は先端尖鋭な形状であり,このスクリューポイント2の基端部に雌ねじ部21を形成し,この雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成したスクリューポイント。

イ 引用発明1の2

スクリューポイント2は,クロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料からなり,継手ロッド3は,S45C,SS41等の鋼材からなること(材質に係る技術事項)

ウ 本件訂正発明1と引用発明1との一致点及び本件訂正発明2と引用発明1の2との一致点

スウェーデン式サウンディング試験に際して,所定の長さのロッド部材に取り付けられ,ロッド部材に他のロッド部材をおねじとめねじにより連結して延長可能に構成され,所定の荷重と,回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって,/先端尖鋭な本体部を有し,この本体部の基端部にめねじを形成し,このめねじにねじ部を螺合し,このねじ部でロッド部材を連結するように構成したスクリューポイント。

エ 本件訂正発明1と引用発明1との相違点

(ア) 相違点1

ねじ部について,本件訂正発明1は「(本体部の基端部に形成した)めねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成した」のに対し,引用発明1は「雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成した」ものである点。

(イ) 相違点2

ロッド部材同士の連結構造(おねじとめねじ)について,本件訂正発明1は「他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」ているのに対し,引用発明1は「他端に雌ねじ部32が設けられた」「継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成され」ている点(すなわち,連結部におけるロッド部材に設けたおねじとめねじの配置が,本件訂正発明1と引用発明1とでは逆の関係である点。)。

オ 本件訂正発明2と引用発明1の2との相違点

(ア) 相違点1及び相違点2と同じ

(イ) 相違点3

本件訂正発明2は「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した」のに対し,引用発明1の2は,スクリューポイント2(スクリューポイントの本体部)は「クロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料」からなり,「継手ロッド3は,S45C,SS41等の鋼材からなる」点。

4  取消事由

(1)  本件訂正発明1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1)

ア 本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定の誤り

イ 相違点1の容易想到性の判断の誤り

ウ 相違点2の容易想到性の判断の誤り

(2)  本件訂正発明2の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)

ア 本件訂正発明2と引用発明1の2の相違点の認定の誤り

イ 相違点3の容易想到性の判断の誤り

第3当事者の主張

1  取消事由1(本件訂正発明1の容易想到性の判断の誤り)について

〔原告の主張〕

(1) 本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定の誤りについて

本件訂正発明1と引用発明1の間には,以下の相違点A及び相違点Bも存在するから,これらを見逃した点において,本件審決の相違点の認定には誤りがある。

(相違点A)本件訂正発明1の「無頭ねじ部品」は「ロッド部材」とは別体であるのに対し,引用発明1の「雄ねじ部31」は「ロッド部材」の一部であって「ロッド部材」と別体の部品でない点。

(相違点B)本件訂正発明1の「スクリューポイント」は,「ロッド部材」先端に取り付けられることを前提とするものであって,「本体部」と(「本体部」と「ロッド部材」を連結する)「無頭ねじ部品」を含めたものであるのに対し,引用発明1の「雄ねじ部31」は,既に「ロッド部材」に設けられていて「ロッド部材」先端に取り付けられることを前提としていないのであるから,「スクリューポイント」には含まれない点。

(2) 相違点1の容易想到性の判断の誤りについて

ア 本件訂正発明1と引用発明1の課題の相違について

本件訂正発明1と引用発明1の解決しようとする課題及び効果が相違する。

本件訂正発明1は,スクリューポイントの各部,すなわち本体部とねじ部に要求される,それぞれ異なった性質を備えることを目的 (課題) とし,かかる効果を奏する。しかし,引用発明1は,かかる点を目的 (課題) とはしておらず,またそうした作用効果を奏するものでもない。

すなわち,本件訂正発明1と引用発明1とは,従来の技術としておねじ部を有するスクリューポイントを挙げている点では共通しているが,本件訂正発明1は,あくまでも「おねじ部を有するスクリューポイント」であることを前提に,このスクリューポイントを本体部とおねじ部を司る無頭ねじ部品とに分けたものである。これに対して,引用発明1は,「おねじ部を有するスクリューポイント」を用いるのをやめ,その代わりに「めねじ部を有するスクリューポイント」を用いるようにしたものであって,この「めねじ部を有するスクリューポイント」において,各部で異なった性質を備えるようにするといったことは,引用発明1に一切開示,示唆されていない。

本件審決は,「引用発明1は,スクリューポイントの各部,すなわち本体部とねじ部に要求される,それぞれ異なった性質を備えることを目的(課題)とする点で,本件訂正発明1と共通している。」と判断する。しかし,おねじ部が根本から折れてしまうという課題を解決するために引用発明1の構成を採用したとしても,そのことから,引用発明1の目的(課題)が,本体部とねじ部に要求される,それぞれ異なった性質を備えることであるということにはならないことは明らかである。本件審決の認定は,スクリューポイントを本体部と無頭ねじ部品とによって構成するという本件訂正発明1の解決手段の要素ないし「本体部,無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保することができる」という本件訂正発明1の解決結果の要素が入り込んだ誤った認定である。

イ 無頭ねじ部品の周知技術性について

引用例2の「ロッドカップリング」及び引用例4の「結合部33」は,中央部の外径が両端のおねじ部分の外径よりも大きく,この中央部が実質的に頭部になっていると捉えられるので,無頭ねじではない。したがって,引用例2及び引用例4の記載をもって,「一般的に,地質試験装置における継手(連結)手段として,無頭ねじ部品を用いることは,本件特許出願前から公知である。」とはいえない。また,周知例2ないし4にも,無頭ねじが開示されていない。

ウ 無頭ねじ部品の適用の容易想到性について

(ア) 地質試験装置における継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることが公知であり,また,一般的に継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることが周知であるとしても,「スクリューポイントの各部,すなわち本体部とねじ部に要求される,それぞれ異なった性質を備える」という本件訂正発明1の技術的課題を解決するために,何らの課題も示唆されていない引用発明1の部材の構造が利用できることを着想することは容易でないことは明らかである。また,無頭ねじ部品は,あくまでもめねじとめねじを連結するために用いられるものとして公知ないし周知であるにすぎないから,おねじとめねじを連結する引用発明1に無頭ねじ部品を用いることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

したがって,引用発明1において,ねじ部品とロッドとを別体に製作することは当業者が容易に着想し得たとの指摘には根拠がなく,仮に,引用発明1において,ねじ部品とロッドとを別体に製作することを当業者が容易に着想し得たとしても,そこから本件訂正発明1に想到するには別異の動機付けが必要であって,そのような動機付けを各甲号証から得ることはできない。

また,仮に,引用発明1において,ねじ部品とロッドとを別体に製作することを当業者が容易に着想し得たものであるとしても,この場合,スクリューポイントに連結される継手ロッドは,両端にめねじを有することとなり,一端におねじ,他端にめねじが一体成形されたロッドに連結されることに限定した本件訂正発明1とは異なるものとなる。

(イ) 本件訂正発明1の無頭ねじ部品が,引用例2のロッドカップリング等のように側方に突出して露出する頭部を有していると,この頭部は地中進入時に礫土からの摩擦抵抗を受けるため,磨滅対策としてその硬度を高める必要が生じ,その結果,靱性を高めるのが困難となり,折れやすくなってしまう。しかし,本件訂正発明1の無頭ねじ部品は,上記のような頭部を有していないので,靱性を高めることが容易である。そして,本件訂正発明1の無頭ねじ部品が,上記のような頭部を有していないことは,本件訂正明細書の図1及び図2の記載から明らかである上,本件特許出願に対する平成14年5月14日付けの拒絶理由通知書(甲31の3)の「図2を参照すると,ロッド部材210はスクリューポイント1に端面が接する状態で接続しており,」との指摘からも肯定される。なぜなら,本件訂正発明1の無頭ねじ部品が,上記のような頭部を有している場合には,ロッド部材はスクリューポイントに端面が接する状態で接続しないからである。

エ 阻害要因について

本件訂正発明1と引用発明1とでは,従来の技術としておねじ部を有するスクリューポイントを挙げている点では共通するが,引用発明1では,スクリューポイントからおねじ部を実質的に無くすという解決手段を採用したのであり,かかる解決手段を示す引用例1は,スクリューポイントからおねじ部を実質的に無くさない解決手段を採用する本件訂正発明1から当業者を遠ざけるものである。よって,引用発明1から出発して本件訂正発明1に想到することは,引用例1自体によって阻害されることになる。

(3) 相違点2の容易想到性の判断の誤りについて

ア 本件審決は,相違点2は実質的な相違点とはいえないとする。

しかし,本件訂正発明1のスクリューポイントは,ロッド部材に取り付けられることを前提とするものであり,この前提は,スクリューポイントの用途ないし使用方法を特定するものである。したがって,スクリューポイントの用途ないし使用方法を特定する上記前提を,相違点の認定に当たって,除外するべき理由はない。

イ また,本件審決は,ロッド部材同士の連結に際して,めねじとおねじを連結部における上下どちら側に設けるかは,当業者が適宜に決定し得る程度の事項であるとする。

ここで,引用発明1のスクリューポイントの連結対象である継手ロッドについて,おねじとめねじの配置を逆にすることは,引用発明1のスクリューポイントの連結対象をロッドのめねじ部に変更することになる。しかし,引用発明1の目的(課題)は,「スクリュウーポイントに従来設けられていた雄ねじ部をなくして,代わりにスクリュウーポイントに雌ねじ部を設けるとともに,継手ロッドに雄ねじ部を設けてこれらスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合するように構成する」ことと明記されている。この記載は,明らかに,スクリューポイントの連結対象をロッドのめねじ部に変更することを排除するものであるとともに,引用発明1の目的(課題)に反するため,相違点1と同様に相違点2についても阻害要因があることは明らかである。

ウ そもそも,引用発明1においては,ロッド部材のめねじとおねじを上下どちら側に設けるかは重要な技術的事項である。すなわち,従来のスクリューポイントにはおねじが設けられ,これに対してロッド部材には下側にめねじ,上側におねじが設けられていたところ,引用発明1では,スクリューポイントにめねじを設け,これに対してロッド部材には下側におねじ,上側にめねじを設けたのである。そのため,引用発明1において,ロッド部材に設けるめねじとおねじの配置を逆にするということは,従来のスクリューポイントに逆戻りすることにほかならない。

したがって,本件審決の上記指摘は,少なくとも引用発明1には当てはまらないことが明らかである。

(4) 効果に係る判断の誤りについて

ア 引用発明1は,「おねじ部を有するスクリューポイント」であることを前提とする本件訂正発明1とは異なり,ロッド部材のおねじを利用することを前提に,「めねじ部を有するスクリューポイント」を用いるようにしたものである。そのため,引用発明1のスクリューポイントは,各部で異なった性質を備えるようにするといったことを目的としておらず,また,そうした作用効果を奏するものでもない。しかも,引用発明1は,従来のスクリューポイントではこのスクリューポイントに設けてあるおねじ部が折れてしまうことを問題としているが(引用例1の4枚目下から4行~下から3行),このおねじ部を継手ロッド側に設けた場合,継手ロッドに設けたおねじ部が折れてしまうおそれが生じることについては全く考慮していない。これに対し,本件訂正発明1では,例えば無頭ねじ部品の靱性をロッド部材より高めることにより,スクリューポイントのみならずこのスクリューポイントに連結されるロッド部材の折損をより積極的に防止することができるのであって,かかる作用効果は引用発明1では決して奏することはできない。

イ 本件訂正発明2のように無頭ねじ部品の素材やその特性の限定をしていない本件訂正発明1においても,破損の問題を解決することができる。まず,本件訂正明細書の図5に示す従来のスクリューポイント52は,基端面におねじ52aが一体に突出成形されており,スクリューポイントに作用する応力が,スクリューポイント52の基端面とおねじ52aとの境界部分に集中しやすいため,スクリューポイント52は形状的に破損しやすい。

これに対し,本件訂正明細書の図2に示す本件訂正発明1のスクリューポイント1では,スクリューポイント1の本体部2自体に応力集中しやすい箇所が形成されず,また,本体部2に作用する応力は,この本体部2のめねじ3に面状に接する無頭ねじ部品4に分散されて伝達されるため,本体部2及び無頭ねじ部品4からなるスクリューポイント1は形状的に破損し難い。したがって,本件訂正発明1のスクリューポイント1において,例えば無頭ねじ部品4の素材や特性を本体部2と同一にした場合でも,従来のスクリューポイント52に比べて破損し難くなるのであるから,本件訂正発明2のように無頭ねじ部品の素材やその特性の限定をしていない本件訂正発明1においても,破損の問題を解決することができる。

このように本件訂正発明1は破損の問題を解決することができるという効果を奏するものであり,被告が本件訂正発明1では破損の問題を解決できないと主張していることからも明らかなように,この効果は,出願時の技術常識から予測し得ない顕著な効果であって,かかる効果を奏することは本件訂正発明1の進歩性を肯定する要素となる。

また,本件審決は,「引用発明1も本体部もねじ部を別個に製作するものであるから,本件発明と同様の効果を奏するといえる。」とする。しかし,引用発明1では,本件訂正発明1の上記顕著な効果を奏することはできない。なぜなら,引用発明1において,継手ロッドに設けられたおねじ部(すなわち継手ロッド)の素材や特性をスクリューポイントと同一にした場合,継手ロッドに一体に設けられたおねじ部は,従来のスクリューポイントに一体に設けられていたおねじ部と同様に折れやすいものとなることは明らかであるからである。したがって,本件審決の上記判断は失当である。

(5) 発明の困難性及び商業的成功について

ア 引用例1の記載からすると,従来のおねじ一体型のスクリューポイントではおねじ部が折れやすいという問題点があることを,積水ハウス株式会社は平成元年9月25日以前から認識していたといえる。上記のように問題点を認識し,その解決手段をも提示していた同社にあっても,その約6年半後の平成8年4月19日の時点で,スクリューポイントのねじ部の強度不足にいまだ悩まされていたのであり,上記問題点の解決が容易ではないことがうかがえる。また,上記問題点は,遅くとも平成3年5月16日には公知となっているが,それから本件特許の出願日までの約6年もの間,その抜本的な解決方法は何ら提示されてこなかったのであり,この点からも,上記の問題点の解決は容易とはいえない。これらのことは,本件訂正発明1に進歩性があることを肯定する要素になる。

イ また,本件特許の出願人であり権利者でもある原告は,本件訂正発明1の実施品であるスクリューポイントを販売開始後,5年以上にわたってその出荷本数を順調に伸ばしていったのであり(甲32の資料1),短期的には売上本数が伸びることのある価格設定の工夫や営業努力等のみでは説明がつかないこうした長期間にわたる商業的成功もまた,本件訂正発明1に進歩性があることを肯定する要素になる。

〔被告の主張〕

(1) 本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定の誤りについて

ア 相違点1の前段は,本件訂正発明1は,「(本体部の基端部に形成した)めねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成した」というものであるから,無頭ねじ部品がロッド部材とは別体であることが認定されていることは明らかである。そして,相違点1の後段は,引用発明1は,「雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成した」というものであるから,雄ねじ部31は継手ロッド3の一部であると認定している。

よって,相違点Aは,相違点1の中で正しく認定されている。

イ さらに,相違点B中の本件訂正発明1のスクリューポイントは,ロッド部材先端に取り付けられることを前提とするものであって,本体部と(本体部とロッド部材を連結する)無頭ねじ部品を含めたものである旨の原告主張は,本件訂正明細書での,特許出願人のスクリューポイントの独自の定義にすぎず,実体は同じである。本件訂正明細書の定義に従えば,本件審決における本体部に無頭ねじ部品を螺合すれば,本件訂正明細書による定義のスクリューポイントとなる。よって,本件審決は,スクリューポイントという用語を使用せずに実体を表現したものであり,相違点の実体を認定済みである。

また,本件訂正明細書の定義に従えば,相違点1の後段の「引用発明1は,雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成した」ものであるとの記載は,相違点Bの後段の引用発明1の「雄ねじ部31」は,既にロッド部材に設けられていてロッド部材先端に取り付けられることを前提としていないのであるから,スクリューポイントには含まれないといえるものであり,表現が違うのみで,引用発明1の実体の主張内容は同じであり,本件審決では相違点として正しく認定している。

ウ よって,原告が主張する相違点A及び相違点Bの事項は,相違点1及び相違点2において認定された事項にすぎず,本件審決の認定に誤りはない。

(2) 相違点1の容易想到性の判断の誤りについて

ア 本件訂正発明1と引用発明1の課題の相違について

本件訂正発明1の課題は,要約すれば,「貫入時の衝撃的な曲げモーメントあるいは回転トルクによる引っ張り応力などで破損することがないようにすること」にあると認められる。

このように,本件訂正発明1の課題達成及び発明の効果の達成には,本体部のめねじに無頭ねじ部品の螺合を必要とする上で,「本体部,無頭ねじ部品を別個に製作して」かつ「それぞれに必要な性質を確保すること」を必要としている。

しかし,本件訂正発明1では,素材の限定(それぞれ必要な性質の確保)の構成がないので,接続部が折れることを解決できず,前記課題・目的を達成できていない。

よって,本件訂正発明1は課題が解決されない発明である。単なる貫入試験におけるスクリューポイントとロッドの無頭ねじ部品を介しての接続構造の提示の発明にすぎない。したがって,本件訂正発明1自体が解決できていない課題を,先行技術の組合せの容易性の必要条件とすることはできない。

イ 無頭ねじ部品の周知技術性について

本件訂正発明1の無頭ねじ部品(単に無頭ねじと表現されている用語も含む。)は,「両端にねじ部分を有し,かつこの両端の部分に「頭」といえる拡巾部を有しないもので,両端のねじ部分で他の部材とねじ螺合連結できるもの」と定義されるものと解するのが相当である。そして,無頭ねじ部分の中間部分の拡巾部の有無又は中間部分のねじ刻設の有無に関係なく,無頭ねじ部品といえる。原告が主張するように,中間部分の拡径部分・拡巾部分を「頭」と呼ぶことはなく,「胴部」というべき部所のものである。

かかる観点で判断すると,引用例2のロッドカップリング,引用例4の結合部33,周知例2の中央継手13,周知例3のカラー接続部材5,周知例4のカップリング2は,いずれも「無頭ねじ部品」と解され,周知技術である。

ウ 無頭ねじ部品の適用の容易想到性について

(ア) 本件審決は,主引用例である引用発明1の技術・分野・課題をベースとし,このベースの発明の認定の上に,出願前公知・周知技術である副引用例の引用発明4,引用発明2及び周知例1ないし5の技術・分野・課題・作用効果を認定し,本件訂正発明1は当業者であれば容易に想到することができると判断している。よって,原告の主張は成り立たない。

(イ) なお,本件訂正発明1は本件訂正発明2と違って,その無頭ねじ部品の素材限定がないので,スクリューポイントとロッドとの「接続部の破損・折損がないこと」の課題が達成されていない。このため,本体部,無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれ必要な性質を確保することができる等の利点があるという可能性を示すにすぎない。

エ 阻害要因について

原告の主張は争う。

(3) 相違点2の容易想到性の判断の誤りについて

原告の主張は争う。相違点2は容易に想到することができる。

(4) 効果に係る判断の誤りについて

本件訂正発明1の効果は,無頭ねじ部品の一般的特性で,周知である。特にインド規格 PartⅡ(甲6,7)では,同じ貫入試験具で無頭ねじ部品を使用した貫入試験工具とロッドの同じ連結構造が開示され,公知である。

(5) 発明の困難性及び商業的成功について

原告の主張は争う。

2  取消事由2(本件訂正発明2の容易想到性の判断の誤り)について

〔原告の主張〕

(1) 本件訂正発明2と引用発明1の2の相違点の認定の誤りについて

引用発明1は,無頭ねじ部品を有していない点で本件訂正発明1とは異なる。そして,引用発明1において材質に係る技術事項を特定した発明とされる引用発明1の2も,無頭ねじ部品を有していない点で本件訂正発明1とは相違し,この相違点は,引用発明1の2と本件訂正発明2との間にも存在する。

一方,本件訂正発明2には,本体部の硬度を特定する発明特定事項(「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,」)と,無頭ねじ部品の靱性を特定する発明特定事項(「無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した」)とが含まれ,このうち,前者の発明特定事項では,無頭ねじ部品の硬度を基準にして本体部の硬度が特定されている。

したがって,無頭ねじ部品を有していない引用発明1の2では,この無頭ねじ部品の硬度を基準にして本体部の硬度を特定する前者の発明特定事項も,無頭ねじ部品自体の靱性を特定する後者の発明特定事項も含まれていないのは明らかである。

(2) 相違点3の容易想到性の判断の誤りについて

ア 引用発明1の2について

(ア) 前記(1)に記載のとおり,引用発明1の2には,本件訂正発明1に存在せず,本件訂正発明2のみに存在する発明特定事項が全く含まれていない。また,本件訂正発明2のみに存在する発明特定事項は,いずれも無頭ねじ部品に関連するものであるから,無頭ねじ部品を用いることが一切記載されていない引用例1に,本件訂正発明2のみに存在する発明特定事項の示唆がないことは明らかである。

(イ) 本件審決は,継手ロッドに設けたおねじ部(本件発明の「無頭ねじ部品」と「ねじ部」として共通する。)は,折れないような材料であるとした上,本件訂正明細書の記載(【0010】)から,無頭ねじ部品に高い靭性を持たせるのは,折損を防止するためであるとして,引用発明1の2のおねじ部にも,スクリューポイントと比べて高い靭性を有する材料を用いることが示唆されているとする。

しかし,まず,継手ロッドに設けたおねじ部は折れないような材料であるといえるとする根拠が不明である。

また,本件訂正明細書の記載に基づいて引用発明1の2を認定しているが,かかる認定は,「無頭ねじ部品には高い靭性を持たせて曲げモーメント,引っ張り応力などによる折損を防止する」という本件訂正発明1の「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込んだものであるので許されない。

さらに,引用例1に,おねじ部31がスクリューポイントより硬度が低く靱性が高いといった記載はない。仮に,引用例1に,おねじ部31がスクリューポイントより硬度が低く靱性が高くなっていて,これによりおねじ部31が折れ難くなっているとの知見が開示,示唆されているとするなら,引用例1の折れ難いおねじ部31を無くして代わりに折れ難いか否かが定かではない無頭ねじ部品を用いるようにする動機付けは引用例1からは得られず,上記知見は引用例1に無頭ねじ部品を採用することの阻害要因ともなるから,この場合,本件訂正発明1に進歩性があることは明らかであり,その従属発明である本件訂正発明2の進歩性については論じるまでもないこととなる。

イ 引用例3について

引用例3の「2.2ロッド」欄における「連結部に強ジン特殊鋼を用いたり,テーパーネジとすることにより,連結部の強さを増加させる試みがなされている。」との記載は,ロッドの連結部に強ジン特殊鋼を用いていると断定しているのではなく,その「試みがなされている」ことを示しているにすぎない。すなわち,この試みが成功したのか否か,そもそもこの試みを行うこと自体が合理的であったのか否かといったことは,この記載からは不明である。そして,引用例3の記載から直ちに,ロッドの連結部以外のスウェーデン式サウンディング試験用具の連結部においても高い靱性を有する材料を用いることを示唆していると拡張して解釈されるべき理由はない。

さらに,上記記載において,強ジン特殊鋼を用いることを試みているロッドの連結部としておねじ部付近を考えた場合でも,ねじ山の部分のみを指すのか,本体部から突出している部分全体を指すのかを明確に把握することはできない。しかも,いずれのように解した場合でも,強ジン特殊鋼を用いた部分とそうでない部分との境界で折損等しやすくなるというデメリットがある。

そもそも,引用例3には,引用例1と同じく,無頭ねじ部品を用いることは開示,示唆されていない。

ウ したがって,引用例1及び引用例3には,無頭ねじ部品を用いること等は記載されていないので,相違点3は,当業者が適宜なし得たことではない。

本件訂正発明2は,引用例1,引用例4,引用例2,周知例1ないし5及び引用例3に開示も示唆もされていない独自の構成よりなるものであり,これらの甲号証からは本件訂正発明2に想到するための動機付けが得られないので,これらの甲号証の存在に関わりなく特許されるべきものである。

〔被告の主張〕

(1) 本件訂正発明2と引用発明1の2の相違点の認定の誤りについて

原告の主張は争う。

(2) 相違点3の容易想到性の判断の誤りについて

本件訂正発明2は,本件訂正発明1の構成に,素材に関する構成「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるように構成し,また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成したこと」を付加した発明であり,その効果・課題は,「ロッドとコーンの接続部付近の破損を少なくすること」にあると認められる。この素材に関する記載及びロッドとコーンの接続部の破損の課題は,本件審決で言及されているように,公知刊行物である引用例1,引用例3,引用例4及び引用例2並びに周知技術であることを示す周知例1ないし5に開示されている技術課題である。

しかも,その素材についての付加構成「スクリューポイントのめねじがある本体部の硬度より,このめねじ部に螺合する部材が硬度が低く且つ高い靭性を有する」部材としている例が,引用例1のロッドの「おねじ部31」として開示されていて,その素材の特性についても,引用例1(6頁7~20行目)に「この土質貫入試験杆は,ハンドル1と,クロムゼリブデン鋼(クロムモリブデン鋼の誤記と判断される),セラミック等の固い材料からなる捩り角錐形状のスクリュウーポイント2と,前記ハンドル1と捩り角錐形状のスクリュウーポイント2との間に配され,S45C,SS41等の鋼材からなる複数本の継手ロッド3…と,…」と開示されている。また,スクリューポイントのJIS規格である甲16,甲5にも,スクリューポイントとロッドの好ましい素材について同様な記載がある。

よって,進歩性がなく容易に創作できたと判断される本件訂正発明1の構成の無頭ねじ部品に,引用例1のおねじの素材同様に「本体部の硬度より低く,かつ高靭性の素材」を採用することは容易なことであり,前記付加構成を追加した本件訂正発明2も容易に発明をすることができたものである。

第4当裁判所の判断

1  本件訂正発明について

(1)  本件訂正発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件訂正明細書(甲25)には,おおむね,次の記載がある。

ア 発明の属する技術分野

本発明は,地中に軸状のロッド部材を貫入して各種データを採取する地質調査試験において,ロッド部材の先端に連結されて地中に貫入されるスクリューポイントに関するものである(【0001】)。

イ 従来の技術

従来,土地の地耐力を調査するために,貫入ロッドに荷重と回転とを付加して地中に貫入し,所定深度毎の貫入ロッドの半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数),荷重などのデータを元にその土地の地層構造を判定する,いわゆるスウェーデン式サウンディング試験が一般に広く行われている。図5(別紙1参照)に示すように,この試験において使用される貫入ロッド50は,所定の長さのロッド部材51と,このロッド部材51の先端に取り付けられるスクリューポイント52とから構成されている。前記ロッド部材51には,一端におねじ(図示せず),他端にめねじ51aが形成されており,図示しない同一構成の他のロッド部材を継ぎ足し可能に構成されている。また,前記スクリューポイント52は,日本工業規格(JIS規格)に準じて製作されるものであり,略四角錘形状の素材をねじって先端尖鋭なドリル状に成形されている。このスクリューポイント52の基端面には,おねじ52aが一体に突出成形されており,前記ロッド部材51のめねじ51aを螺合して連結可能に構成されている(【0002】)。

ウ 発明が解決しようとする課題

一般にスクリューポイントには,ドリル状を成す表面的な部分は,貫入時に土砂,礫などとの接触で摩耗し易いため,硬さが求められ,一方ロッド部材に接続されるおねじ部近辺は貫入時の衝撃的な曲げモーメント,あるいは回転トルクによる引っ張り応力などで破損することがないように強度および靱性が求められる。しかしながら,上記従来のスクリューポイントは,ドリル状部分もおねじ部も全て同一材料で一体に構成されているため,前述のような性質を両立させることが極めて困難である等の問題が発生している(【0003】)。

エ 課題を解決するための手段

本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり,各部に要求されるそれぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的とする。この目的を達成するため,本発明は,スウェーデン式サウンディング試験に際して,一端に有底のめねじ,他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ,ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され,所定の荷重と,必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって,先端尖鋭な本体部を有し,この本体部の基端部にめねじを形成し,このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成されている。前記本体部は,無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成されており,また,前記無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成されている(【0004】)。

オ 発明の実施の形態

以下,本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図4(別紙1参照)において,100は詳細を後記する貫入ロッドを地中に貫入して地質を調査する,いわゆる貫入試験を行うための自動貫入試験機であり,所定重量の錘110を載荷可能かつ支柱120に沿って昇降自在な載荷台130を有している。この載荷台130には,モータ140の駆動を受けて回転可能なチャック150が配置されており,このチャック150には,下方に垂下して延びる貫入ロッド200が一体に回転可能なように保持される。また,前記載荷台130には支柱120背面側に位置してスプロケット160が回転可能に取り付けられており,このスプロケット160は,支柱120背面に鉛直に延びて固定されているチェーン部材170に常時噛合している。また,このスプロケット160は前記載荷台130の内部に設けられているブレーキ機構(図示せず)に連結されており,このブレーキ機構の作動を受けて回転を制動されるようになっている(【0005】)。

前記貫入ロッド200は,図1ないし図3(別紙1参照)に示すように,所定の長さに構成されたロッド部材210と,このロッド部材210先端に取り付けたスクリューポイント1とから構成されている。前記ロッド部材210には,その一端にめねじ211が,また他端にはおねじ212がそれぞれ一体形成されており,同一構成からなる他のロッド部材(図示せず)のめねじをおねじ212に螺合させて長さを延長可能に構成されている。また,前記スクリューポイント1は,先端先鋭なドリル状の本体部2を有し,この本体部2の基端面には前記ロッド部材210のめねじ211と同一構成を成すめねじ3が中心線上に延びて形成されている。この本体部2のめねじ3には,スタッドボルトなどの無頭ねじ部品4が螺合されており,この無頭ねじ部品4に前記ロッド部材210のめねじ211を螺合させて連結可能に構成されている(【0006】)。

前記スクリューポイント1の本体部2は,SCM材などの焼入れ可能な材料からなり,実際に焼入れが施されてその硬度が高められている。また,前記無頭ねじ部品4もSCM材によって構成されているが,この無頭ねじ部品4には,靭性が高くなるよう熱処理が施されている(【0007】)。

上記構成の自動貫入試験機100は,貫入ロッド200に所定の荷重を負荷しつつ,必要に応じて回転を加えて地中に貫入し,この貫入ロッド200が所定量貫入するごとに,その時の荷重とそれまでの回転回数とをデータとして収集する,いわゆるスウェーデン式サウンディング試験に準拠する貫入試験を行うものである。この貫入試験に際しては,まず,載荷台130に所定重量の錘110を載荷することにより載荷台130の全装備重量を100kgf[980N]にし,続いてブレーキ機構(図示せず)が作動して所定の制動力を生み,この制動力によりスプロケット160が制動され,載荷台130に下降抵抗力が加えられる。この時,貫入ロッド200にかかる荷重は,載荷台130の装備重量100kgf[980N]から前述の抵抗力を減じた値となる。このように貫入ロッド200にかかる荷重は,ブレーキ機構の発生する制動力によって調整され,貫入ロッド200の地中への貫入速度に応じて25kgf[245N]単位で増減される。このように荷重を調整して貫入ロッド200の貫入を行い,全くブレーキ機構の制動力が作用していない100kgf[980N]の荷重でも貫入ロッド200が貫入しない場合は,モータ140の駆動によりチャック150が回転し,貫入ロッド200を回転させながら貫入(以下,回転貫入という)する。この貫入試験では,貫入ロッド200が所定量貫入する毎に,所定量貫入するに要した貫入ロッド200の半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数)と,所定量貫入した時点における荷重値とが試験データとして記録される。なお,このようにして得られた試験データは,その試験地の地質を判定するための判定基準として用いられる(【0008】)。

前述のように貫入ロッド200を地中に貫入する場合,スクリューポイント1には岩盤,礫などとの接触による衝撃的な曲げモーメント,回転時の回転トルクによる引っ張り応力などが作用するが,無頭ねじ部品4は靱性が高いため,このような曲げモーメント,引っ張り応力などに耐え得る。また,前述のモーメント,応力のみならず,スクリューポイント1には礫土との摩擦も作用するが,本体部2は焼入れを行うことにより硬度が高められているため,礫土との摩擦によっても容易に摩滅することがない。このように,本スクリューポイント1は,その構成部品(本体部2および無頭ねじ部品4)を別個に製作することでそれぞれに必要な特性が確保されているのである(【0009】)。

カ 発明の効果

以上説明したように本発明のスクリューポイントは,ドリル状の本体部にめねじを形成し,このめねじに無頭ねじ部品を螺合することによって構成されている。このため,本体部,無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保することができる等の利点がある。したがって,無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント,引っ張り応力などによる折損を防止するとともに,本体部には焼入れなどの熱処理を施して硬度を高め,貫入時の摩滅を抑えることができる等の利点がある(【0010】)。

(2)  本件訂正発明の特徴

前記(1)の記載によれば,本件訂正発明の特徴は,以下のとおりのものと認められる。

ア 本件訂正発明は,地中に軸状のロッド部材を貫入して各種データを採取する地質調査試験において,ロッド部材の先端に連結されて地中に貫入されるスクリューポイントに関するものである(【0001】)。

イ 従来,土地の地耐力を調査するために,貫入ロッドに荷重と回転とを付加して地中に貫入し,所定深度毎の貫入ロッドの半回転数(貫入ロッドの半回転を1として計数した回転回数),荷重などのデータを元にその土地の地層構造を判定する,いわゆるスウェーデン式サウンディング試験が一般に広く行われている(【0002】)。

ウ 一般にスクリューポイントには,ドリル状を成す表面的な部分は,貫入時に土砂,礫などとの接触で摩耗しやすいため,硬さが求められ,一方ロッド部材に接続されるおねじ部近辺は貫入時の衝撃的な曲げモーメント,あるいは回転トルクによる引っ張り応力などで破損することがないように強度及び靱性が求められるところ,従来のスクリューポイントは,ドリル状部分もおねじ部も全て同一材料で一体に構成されているため,前述のような性質を両立させることが極めて困難である等の問題が発生している(【0003】)。

エ 本件訂正発明は,上記課題に鑑みて創成されたものであり,各部に要求されるそれぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供することを目的とする。

この目的を達成するため,スウェーデン式サウンディング試験に際して,一端に有底のめねじ,他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ,ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され,所定の荷重と,必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって,先端尖鋭な本体部を有し,この本体部の基端部にめねじを形成し,このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成し,本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,また,無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した(【0004】~【0009】)。

オ このため,本体部,無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保することができる等の利点があり,したがって,無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント,引っ張り応力などによる折損を防止するとともに,本体部には焼入れなどの熱処理を施して硬度を高め,貫入時の摩滅を抑えることができる等の利点がある,という効果を奏する(【0010】)。

カ すなわち,本件訂正発明1は,従来のスクリューポイントについて,本体部とおねじ部が一体で形成されていたため,本体部に必要な硬さとおねじ部に求められる強度及び靱性という性質の両立が困難であったところ,「ドリル状の本体部に対して無頭ねじ部品をロッド部材の接続部材とすることにより,貫入時に土砂に接する本体部とロッド部材との接続部材である無頭ねじ部品それぞれに必要な性質を確保可能としたもの」であると認められる。

しかし,本件訂正発明1では,スクリューポイントの「本体部」,「無頭ねじ部品」及び「ロッド」には何ら材質等の限定がないため,「スクリューポイント本体部」-「無頭ねじ部品」-「ロッド」による連結構造を単に提示したにとどまる。この連結構造によって,「本体部,無頭ねじ部品を別個に製作してそれぞれに必要な性質を確保すること」(【0010】)は可能であるものの,「各部に要求されるそれぞれ異なった性質を備えるスクリューポイントを提供する」(【0004】)という目的を達成しているとまでは認め難い。

したがって,本件訂正発明1は,ドリル状の本体部に対して無頭ねじ部品をロッド部材の接続部材とすることにより,貫入時に土砂に接する本体部とロッド部材との接続部材である無頭ねじ部品それぞれに必要な性質を確保可能として,「スクリューポイント本体部」-「無頭ねじ部品」-「ロッド」による連結構造とした点に技術的意義があるというべきである。そして,本体部と無頭ねじ部品それぞれに必要な性質は,本件訂正発明2によって特定されている。

2  引用発明1について

(1)  引用例1(甲2)には,おおむね,以下のとおり記載されている。

ア 実用新案登録請求の範囲

ハンドルと,捩り角錐形状のスクリュウーポイントと,前記ハンドルとスクリュウーポイントとの間に配される複数本の継手ロッドとを備え,定量の載荷板を載荷して土層に差し込んで回転させることによって土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆であって,下端に配置される前記スクリュウーポイントの上部に雌ねじ部が設けられ,このスクリュウーポイントに結合される継手ロッドの下部に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられていることを特徴とする土質貫入試験杆。

イ 産業上の利用分野

本考案は,土層に差し込んで土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆に関する。

ウ 従来の技術

一般に,建築物を建てる場合,建築後に地盤が弱いために建築物に変化,異常などが起こらないように予め地盤の調査を行う。特に,一般住宅は小建築物のように地盤荷重の少ないものであってもこの調査を省くことができない。

この調査には,一般にスエーデン式の土質貫入試験杆が使用される。

この試験杆は,第5図に示すように,スクリュウーポイントaに継手ロッドbを結合して,この継手ロッドbの上方に装着された台板c上に,所定の重さの載荷板d…を取手eを持って載せ,継手ロッドbの上端に装着されたハンドルfを回転させて,調査しようとする筒所の土地に前記スクリュウーポイントaと継手ロッドbを貫入させ,各荷重段階での貫入量及び一定重量載荷し回転させて一定深さ貫入させるに要する回転数を測定することによって,その地点における土層(地盤)の土質(強度)を測定する。

そして,継手ロッドbが地中に貫入して残り少なくなったら,ハンドルf,載荷板d…,及び台板cを継手ロッドbから外して次の継手ロッドbを接続し,その上方に台板c,載荷板d…及びハンドルfを再び装着して同様の操作を繰り返して土層(地盤)の土質(強度)を測定するようにしている。

従来の前記スクリュウーポイントaと継手ロッドbの結合形態は,第6図に示すようにスクリュウーポイントaの上端に雄ねじ部alが突出されていて,この雄ねじ部alに第7図に示すように継手ロッドbの下端に設けられた雌ねじ部blが螺合されることにより結合されるようになっていた。

エ 考案が解決しようとする課題

ところが,スクリュウーポイントaはクロムモリブデン鋼やセラミック等の固い材料で形成されているものであるために,前記雄ねじ部alが根本から折れてしまう場合があった。このように,雄ねじ部alが折れてしまうとこのスクリュウーポイントaは使用不可能となってしまう欠点があり,しかもスクリュウーポイントaは一般に高価なものであるために経済的損失が大きいといった間題点があった。

本考案は,上記従来の実情に鑑みて,前記課題を解決するためになされたものであって,その日的とするところは,スクリュウーポイントに従来設けられていた雄ねじ部をなくして,代わりにスクリュウーポイントに雌ねじ部を設けるとともに,継手ロッドに雄ねじ部を設けてこれらスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合するように構成することにより,スクリュウーポイントの長期使用ができ,経済的に有利である土質貫入試験杆を提供することにある。

オ 課題を解決するための手段

本考案は,ハンドルと,捩り角錐形状のスクリュウーポイントと,前記ハンドルとスクリュウーポイントとの間に配される複数本の継手ロッドとを備え,定量の載荷板を載荷して土層に差し込んで回転させることによって土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆であって,下端に配置される前記スクリュウーポイントの上部にめねじ部が設けられ,このスクリュウーポイントに結合される継手ロッドの下部に前記めねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられているものである。

カ 作用

まず,土層(地盤)の土質を測定するときに,スクリュウーポイントの上部に設けられためねじ部に継手ロッドの下部に設けられた雄ねじ部を螺合してスクリュウーポイントと継手ロッドとを結合する。次に,継手ロッドの上部に定量の載荷板を載荷し,この継手ロッドの上端にハンドルを取りつける。

このようにした状態で,前記スクリュウーポイントを土層に差し込んでハンドルを回転させながら,その箇所の土層(地盤)の土質(強度等)を測定する。

この土質貫入試験杆は,ハンドル1と,クロムゼリブデン鋼(クロムモリブデン鋼の誤記と判断される。以下同じ),セラミック等の固い材料からなる捩り角錐形状のスクリュウーポイント2と,前記ハンドル1と振り角錐形状のスクリュウーポイント2との間に配され,S45C,SS41等の鋼材からなる複数本の継手ロッド3…と,最上段の継手ロッド3…に装着される台板4と,この台板4上に載荷され取手51を有する所定の重さ(普通100kg)の載荷板5…とからなるものである。本考案では,前記スクリュウーポイント2の上部に雌ねじ部21が設けられ,このスクリュウーポイント2に結合される継手ロッド3の下部に前記雌ねじ部21に螺合される雄ねじ部31が設けられている。

更に,この継手ロッド3の上部には,この継手ロッド3に結合される他の継手ロッド3の雌ねじ部21に螺合される雌ねじ部32が設けられている。また,前記スクリュウーポイント2の上端部分両側には,スパナ等の工具を係止するための切欠段部22,22が形成されている。尚,11はハンドル1の中央部下方向きに設けられ,前記継手ロッド3の雌ねじ部32に螺合される雄ねじ部である。

キ 考案の効果

以上説明したように,本考案によれば,下端に配置される前記スクリュウーポイントの上部に雌ねじ部が設けられ,このスクリュウーポイントに結合される継手ロッドの下部に前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が設けられていることにより,従来,スクリュウーポイントに雄ねじ部が設けられていたもののように,雄ねじ部が折れてスクリュウーポイントが使用不可能となるようなことがない。このことにより,スクリュウーポイントの長期使用ができ,経済的に有利である等の効果を奏する。

(2)  引用発明1の特徴

引用例1(甲2)には,本件審決が認定したとおりの引用発明1及び同1の2(前記第2の3(2)ア及びイ)が記載されていることが認められ,前記(1)の記載によれば,引用発明1及び同1の2の特徴は,以下のとおりのものと認められる。

ア 引用発明1は,土層に差し込んで土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆に関するものである(産業上の利用分野)。

イ 従来のスクリューポイントaと継手ロッドbの結合形態は,第6図に示すようにスクリューポイントaの上端におねじ部alが突出されていて,このおねじ部alに第7図に示すように継手ロッドbの下端に設けられためねじ部blが螺合されることにより結合されるようになっていた(従来の技術)ため,スクリューポイントaはクロムモリブデン鋼やセラミック等の固い材料で形成されているものであるために,前記おねじ部alが根本から折れてしまう場合があった(考案が解決しようとする課題)。

ウ 引用発明1は,前記イの従来の実情に鑑みて,その日的とするところは,スクリューポイントに従来設けられていたおねじ部を無くして,代わりにスクリューポイントにめねじ部を設けるとともに,継手ロッドにおねじ部を設けてこれらスクリューポイントと継手ロッドとを結合するように構成することにより,スクリューポイントの長期使用ができ,経済的に有利である土質貫入試験杆を提供することにあり(考案が解決しようとする課題),ハンドルと,捩り角錐形状のスクリューポイントと,前記ハンドルとスクリューポイントとの間に配される複数本の継手ロッドとを備え,定量の載荷板を載荷して土層に差し込んで回転させることによって土質を測定するのに用いられる土質貫入試験杆であって,下端に配置される前記スクリューポイントの上部にめねじ部が設けられ,このスクリューポイントに結合される継手ロッドの下部に前記めねじ部に螺合されるおねじ部が設けられたものである(課題を解決するための手段)。

エ 実施例として,土質貫入試験杆は,ハンドル1と,クロムゼリブデン鋼,セラミック等の固い材料からなる捩り角錐形状のスクリューポイント2と,前記ハンドル1と振り角錐形状のスクリューポイント2との問に配され,S45C,SS41等の鋼材からなる複数本の継手ロッド3…とを有し,スクリューポイント2の上部にめねじ部21が設けられ,このスクリューポイント2に結合される継手ロッド3の下部に前記めねじ部21に螺合されるおねじ部31が設けられ,この継手ロッド3の上部には,この継手ロッド3に結合される他の継手ロッド3のめねじ部21に螺合されるめねじ部32が設けられている(作用)。

オ このため,下端に配置されるスクリューポイントの上部にめねじ部が設けられ,このスクリューポイントに結合される継手ロッドの下部に前記めねじ部に螺合されるおねじ部が設けられていることにより,従来,スクリューポイントにおねじ部が設けられていたもののように,おねじ部が折れてスクリューポイントが使用不可能となるようなことがないという効果を奏するものである(考案の効果)。

カ すなわち,引用発明1は,従来おねじを有するスクリューポイント本体部が固い材料であるため,おねじが折れてしまう場合があったので,スクリューポイントにおねじを無くし,連結部をめねじ部として,このめねじ部に継手ロッドのおねじ部を連結するようにして,スクリューポイントの破損を防止したものである。

3  取消事由1(本件訂正発明1の容易想到性の判断の誤り)について

(1)  本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定の誤りについて

ア 本件訂正発明1と引用発明1とを対比すると,前記第2の3(2)エ記載のとおりの相違点1及び同2が認められ,このことは当事者間に争いがない。

イ 原告は,相違点1及び同2以外に,相違点A(本件訂正発明1の「無頭ねじ部品」は「ロッド部材」とは別体であるのに対し,引用発明1の「雄ねじ部31」は「ロッド部材」の一部であって「ロッド部材」と別体の部品でない点。)及び同B(本件訂正発明1の「スクリューポイント」は,「ロッド部材」先端に取り付けられることを前提とするものであって,「本体部」と(「本体部」と「ロッド部材」を連結する)「無頭ねじ部品」を含めたものであるのに対し,引用発明1の「雄ねじ部31」は,既に「ロッド部材」に設けられていて「ロッド部材」先端に取り付けられることを前提としていないのであるから,「スクリューポイント」には含まれない点。)があると主張する。

本件審決は,本件訂正発明1と引用発明1を対比する際に,ねじ部についての結合状態に係る構成「この本体部の基端部にめねじを形成し,このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成した」(特許請求の範囲の請求項1)に着目して相違点1とし,ロッド部材同士の連結構造に係る構成「一端に有底のめねじ,他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ,ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され,」(特許請求の範囲の請求項1)に着目して相違点2としたものであると認められ,この点において誤りはない。

そして,本件訂正発明1の構成である「無頭ねじ部品」と「ロッド部材」とを別体とした点に係る相違点A及び「スクリューポイント」が「本体部」と「無頭ねじ部品」を含む点に係る相違点Bについては,その内容を踏まえると,実質的に前記相違点1に含まれているものと認められ,独立の相違点として取り上げるべきとはいえない。

したがって,本件審決において,本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定に誤りはない。よって,原告の主張は理由がない。

(2)  相違点1についての容易想到性の判断の誤りについて

ア 本件訂正発明1と引用発明1の課題について

(ア) 本件訂正発明1は,従来のスクリューポイントについて,本体部とおねじ部が一体で形成されていたため,本体部に必要な硬さとおねじ部に求められる強度及び靱性という性質の両立が困難であったところ,「ドリル状の本体部に対して無頭ねじ部品をロッド部材の接続部材とすることにより,貫入時に土砂に接する本体部とロッド部材との接続部材である無頭ねじ部品それぞれに必要な性質を確保可能としたもの」であると認められる。

(イ) 一方,引用発明1は,従来おねじを有するスクリューポイント本体部が固い材料であるため,おねじが折れてしまう場合があったので,スクリューポイントにおねじを無くし,連結部をめねじ部として,このめねじ部に継手ロッドのおねじ部を連結するようにして,スクリューポイントの破損を防止したものである。

(ウ) したがって,本件訂正発明1と引用発明1は,スクリューポイントに設けられたおねじ部が破損しやすいので,スクリューポイントに設けられたおねじ部をスクリューポイントとは別部材にするという共通の課題を有している。

イ 引用例2及び引用例4の副引用例としての適格性について

(ア) 引用例2(甲4)には,以下のとおり記載されている。

a 104~107頁には,「土の標準貫入試験方法」について記載されている。

b 105頁の「標準貫入試験装置」の図には,「標準貫入試験用サンプラ」と「ボーリングロッド」とが連結されていることが図示されている。

c 106頁の「(a)スピリットパレルサンプラ」の図(別紙3参照)には,「コネクターヘッド」と「ロッド」とを「ロッドカップリング」で連結していることが図示されている。

d 107頁の「ノッキングヘッド」の図(別紙3参照)には,「ロッドカップリング」が図示されている。

(イ) 引用例4(甲10)には,以下のとおり記載されている。

a 「土壌などの棒入度試験装置」に関する発明が開示されている。

b 図5(別紙4参照)はおねじを螺刻した結合部33を示し,この結合部33は,ロッド32がめねじ結合部を設けていればこのロッド32が連結するために,または,遭遇する様々なロッドおよび構成部品に必要なその他のあらゆる連結に使用できる(第7欄1~5行)。

(ウ) 原告は,引用例2は,標準貫入試験に係るものであり,引用例4は,いかなるサウンディング試験に分類されるか不明であり,いずれも本件訂正発明1のスウェーデン式サウンディング試験に係るものでないので,引用例として適格性を欠く旨主張する。

証拠(甲4~6,16,27の1~3,28の1~3,29の1~3,30の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,地質調査のための試験には種々の試験方式があり,JIS規格化がなされていく中で,調査対象の地盤の状況,試験装置の操作性や長所短所等を勘案して,所望の試験方式が選択されてきたものと認められる。

したがって,地質調査のための試験装置に係る分野の当業者であれば,スウェーデン式サウンディング試験のみならず,その他の試験方式を含め各試験方式の特色,各試験装置に使用される構成部材及びその特徴や性質等に精通しているものと認められ,引用例2及び引用例4は,ともに地質調査のための試験装置に係るものである点で,本件訂正発明1と技術分野が共通する。したがって,引用例2及び引用例4が,本件訂正発明1の対象であるスウェーデン式サウンディング試験と試験方式が相違するとしても,このことをもって引用例2及び引用例4が,本件訂正発明1における副引用例として適格性を欠くものとは認められない。

ウ 無頭ねじ部品について

原告は,引用例2,引用例4及び周知例2ないし4においては,両端のねじの間の外径がねじ部分より大きく実質的に頭部になっているので,無頭ねじ部品は開示されていない旨主張する。

引用例2,引用例4及び周知例2ないし4に係るものは,ねじの間に拡巾部を有するものではあるが,軸の終端に頭部を設けたものではなく,めねじを有する2部材の連結に用いられ,めねじ部分の連結を図るものであるから,証拠(乙1,2)に照らしても,本件訂正発明1における「無頭ねじ部品」に相当するというべきである。また,引用例2におけるロッドカップリング,引用例4における部材33は,地質試験装置に係る継手において,めねじを有する2部材の連結を図り,一方のめねじを有する部材から他方のめねじ部品を有する部材へ動力を伝達する部材であるという点で,本件訂正発明1における「無頭ねじ部品」と同様の作用効果を奏するものと認められる。さらに,周知例1ないし5によれば,継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは,周知技術であると認められる。

エ 引用発明1を主引例とする容易想到性について

(ア) 本件訂正発明1は,前記1(2)のとおり,ドリル状の本体部に対して無頭ねじ部品をロッド部材の接続部材とすることにより,貫入時に土砂に接する本体部とロッド部材との接続部材である無頭ねじ部品それぞれに必要な性質を確保可能として,「スクリューポイント本体部」-「無頭ねじ部品」-「ロッド」による連結構造とした点に技術的意義がある。

そして,引用例2又は引用例4には,地質試験装置に係る継手において,めねじを有する2部材の連結を図り,一方のめねじを有する部材からねじ部品を介して他方のめねじ部品を有する部材へ動力を伝達可能とした点が開示されている。また,周知例1ないし5によれば,一般に継手手段において,「無頭ねじ部品」(両端にねじがあり軸の終端に頭部のないねじ部品)を用いることは周知である。

したがって,スウェーデン式サウンディング試験装置において,モータからロッド部材を経てスクリューポイントへ至る動力伝達経路中に,無頭ねじ部品を設けることは当業者が必要に応じて容易に想到し得るので,引用発明1において,めねじ部21に継手ロッド3のおねじ部31が螺合して連結する構成(スクリューポイントと継手ロッドとの直接連結構成)に代えて,めねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結する構成(無頭ねじ部品を介する連結構成)とすることは容易に想到することができると認められる。その際に,無頭ねじは,継手ロッドとスクリューポイントとを,ねじを用いて連結できればその機能を果たすものであるから,拡巾部を有することは必ずしも必要な構成ではなく,拡巾部を有さない周知の無頭ねじを採用することは設計事項にすぎないと認められる。

(イ) また,スクリューポイント2への接続を継手ロッド3の直接連結構成に代えて無頭ねじを介して連結する構成とすれば,スクリューポイントに連結される無頭ねじを,継手ロッド3のおねじ部31と同様に,従来のスクリューポイントのおねじにかかっていた回転力に耐え得る強度を有する材質のものとすることは,当然になし得る。

したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は容易に想到することができる。

(ウ) 原告の主張について

a 原告は,周知例1ないし5に記載の技術の引用発明1への適用の困難性を主張する。

しかし,周知例1ないし5は,引用例1に対する副引用例ではなく,あくまで一般の継手手段において「無頭ねじ部品」を用いる点が周知であることを示す証拠であり,本件訂正発明1は「スクリューポイント本体部」-「無頭ねじ部品」-「ロッド」による連結構造であり,当該周知技術に照らして「無頭ねじ部品」を使用する連結構造が格別なものではない。

よって,原告の上記主張は理由がない。

b 原告は,引用発明1は,スクリューポイントからおねじ部を無くすという解決手段を採用しているのであって,スクリューポイントからおねじ部を実質的に無くさない解決手段を採用する本件訂正発明1の構成を採用することには阻害要因があると主張する。

しかし,前記アのとおり,引用発明1と本件訂正発明1とはスクリューポイントに設けられたおねじ部をスクリューポイントとは別部材にするという共通の課題を有するのであって,前記ウのとおり,継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは,周知技術であるから,上記課題のもと,連結部材として周知技術の適用を試みることは,当業者が適宜なし得ることであり,阻害要因があるとは認め難い。

よって,原告の上記主張は理由がない。

(3)  相違点2についての容易想到性の判断の誤りについて

ア 前記(2)で述べたとおり,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は,容易に想到することができ,スクリューポイントへの接続を継手ロッドの直接連結構成に代えて無頭ねじを介して連結する構成とすれば,おのずと無頭ねじに接続される継手ロッドの接続部分はめねじとなり,他端部分はおねじとなり,そのおねじに接続される他のロッド部材の接続部分は,めねじとなるものと認められる。すなわち,相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採用すると,引用発明1における継手ロッドのおねじとめねじの配置が逆になることは自明である。よって,相違点2に係る本件訂正発明1の構成,「他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」るという構成に至る。

イ 原告は,引用発明1の目的(課題)は,「スクリューポイントに従来設けられていたおねじ部を無くして,代わりにスクリューポイントにめねじ部を設けるとともに,継手ロッドにおねじ部を設けてこれらスクリューポイントと継手ロッドとを結合するように構成したものである」から,スクリューポイントの連結対象をロッドのめねじ部に変更することは上記目的に反し,阻害事由があると主張する。

しかし,前記(2)アのとおり,引用発明1の課題は,スクリューポイントに設けられたおねじ部が破損しやすいので,スクリューポイントに設けられたおねじ部をスクリューポイントとは別部材にするというものであるから,継手ロッドのおねじ部をめねじ部に変更することが上記目的に反するとはいえず,阻害事由があるとの原告の主張は理由がない。

(4)  効果について

ア 原告は,本件訂正発明1の顕著な効果として,本件訂正発明2のように無頭ねじ部品の素材やその特性の限定をしていない本件訂正発明1においても,破損の問題を解決することができる旨主張する。

しかし,本件訂正明細書には,「無頭ねじ部品4は靱性が高いため,このような曲げモーメント,引っ張り応力などに耐え得る。」(【0009】),「無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント,引っ張り応力などによる折損を防止するとともに,」(【0010】)と記載されているのであって,あくまで「無頭ねじ部品」が高い靱性を有しているとの理由で折損を防止する態様しか記載されていないのであるから,上記主張は本件訂正明細書の記載に基づかないものである。

また,甲34(スクリューポイント応力解析シミュレーション結果報告)は,実際のスクリューポイントの使用条件下における応力を示したものでなく,本件訂正発明1とJIS品及び引用発明1との差異(応力差)が顕著であるとはいい難く,本件訂正発明1の構成のみで顕著な効果が生じるとは認め難い。

イ 原告は,おねじ部を継手ロッド側に設ける引用発明1では,継手ロッドに設けたおねじ部が折れてしまうおそれがあるので,引用発明1と比較して本件訂正発明1は顕著な効果を奏すると主張する。

しかし,当業者であれば,前記(2)アの課題に鑑みて,引用発明1における継手ロッド3のおねじ部31が,従来のスクリューポイントのおねじのように折れてしまわないように材質等を配慮することは当然であり,現に,おねじ部31は,従来のスクリューポイントのおねじにかかっていた回転力に耐え得る強度を有する材質(S45C,SS41等の鋼材:甲2の6頁11~12行)であると推認される。

したがって,原告の上記主張は理由がない。

(5)  発明の困難性及び商業的成功について

原告は,従来のおねじ一体型のスクリューポイントではおねじ部が折れやすいという問題点が長年解決されなかったこと,及び本件特許の出願人であり権利者の商業的成功が,本件訂正発明1に進歩性があることを肯定する要素になる旨主張する。

しかし,本件訂正発明1が進歩性を有するかどうかは,先行技術との比較で決まるのであって,課題が長年解決されなかったことや商業的成功があるからといって,進歩性が認められるものではなく,原告の上記主張は理由がない。

(6)  小括

したがって,本件訂正発明1は,引用発明1,引用発明2又は引用発明4及び周知例1ないし5によって認められる周知技術を組み合わせることによって,容易に想到することができたものである。よって,取消事由1は,理由がない。

4  取消事由2(本件訂正発明2の容易想到性の判断の誤り)について

(1)  本件訂正発明2と引用発明1の2の相違点の認定の誤り

引用発明1の2は,「スクリューポイント2は,クロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料からなり,継手ロッド3は,S45C,SS41等の鋼材からなること」であり,引用発明1において上記材質に係る技術事項を特定した発明である。材質に着目して,本件訂正発明2と引用発明1の2を対比すると,本件訂正発明2は,「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した」のに対し,引用発明1の2は,スクリューポイント2は「クロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料」からなり,「継手ロッド3は,S45C,SS41等の鋼材からなる」点で相違していると認められる(相違点3)。

すなわち,本件審決は,スクリューポイント本体部に接続される部材が,本件訂正発明2は,無頭ねじ部品であり,引用発明1の2は,継手ロッドであるので,スクリューポイント本体部の材質とそれに接続される部材の材質に着目して,本件訂正発明2と引用発明1の2の対比を行い,かかる観点に基づき,相違点3を認定したものと認められ,この点に誤りはないというべきである。無頭ねじ部品の有無は相違点1で認定済みであり,相違点3は,本体部の材質とそれに接続される部材の材質に着目したものであるから,相違点3の認定に誤りがある旨の原告主張は理由がない。

(2)  相違点3についての容易想到性の判断の誤りについて

ア 引用発明1の2について

引用発明1の2は,引用発明1において材質に係る技術事項を特定した発明である。

引用例1には,「この土質貫入試験杆は,ハンドル1と,クロムゼリブデン鋼,セラミック等の固い材料からなる捩り角錐形状のスクリュウーポイント2と,前記ハンドル1と振り角錐形状のスクリュウーポイント2との間に配され,S45C,SS41等の鋼材からなる複数本の継手ロッド3…と,…とからなるものである。」(6頁7~15行)と記載されている(「クロムゼリブデン鋼」は,「クロムモリブデン鋼」の誤記であると認められる。)。

したがって,スクリュウーポイント2(本体部)にクロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料,接続される継手ロッド3にS45C,SS41等の鋼材を用いているので,スクリューポイント本体部が接続部材に対して硬度が高くなるよう構成した点が記載されているものと認められる。

イ(ア) 「スウェーデン式サウンディング試験方法 JIS A 1221-1995」(財団法人日本規格協会,平成7年6月30日発行。甲16。以下「甲16文献」という。)には,次のとおり記載されている。

3.1スウェーデン式サウンディング試験機…

(1)  スクリューポイント スクリューポイントは,摩耗しにくい特殊鋼製で,…

(2)  ロッド ロッドは,鋼製で,…(142頁)

4.規格の解説…

(2.1)スクリューポイント…強さが大きく,摩耗しにくい材質であることが必要である。したがって,材質は焼入れが可能なもので,S-50-C以上の高炭素鋼,又はSK-2以上の炭素工具鋼などを使用すればよい。…

(2.3)ロッド…材質は機械構造用炭素鋼を使用する。…また,連結部に強じん特殊鋼を用いたり,…連結部の強さを増加させる試みがなされている(147頁)。

(イ) 甲16文献には,前記(ア)のとおり,スクリューポイントを摩耗しにくい特殊鋼製,ロッドを鋼製とすること(142頁),スクリューポイントは強さが大きく,摩耗しにくい材質であることが必要であること,焼入れが可能なもので,S-50-C以上の高炭素鋼,又はSK-2以上の炭素工具鋼などが適切であること,ロッドは材質を機械構造用炭素鋼とすること,連結部に強じん特殊鋼を用いて連結部の強さを増加させる試みがなされていること(147頁)が記載されている。

したがって,甲16文献には,スクリューポイント本体部が接続部材に対して硬度が高くなるよう,接続部材がスクリューポイント本体部に対して高い靱性を有するように構成した点が記載されているものと認められる。

ウ 引用例3について

(ア) 証拠(甲5)によれば,引用例3には次のとおり記載されている。

2.2 ロッド …スクリューポイントに連結する径19mm,長さ0.8mの鋼製ロッド1本で,…

2.3 スクリューポイント 耐摩耗性の大きな特殊鋼製で…(23頁)

JIS原案

スウェーデン式サウンディング試験法解説

2.2ロッド

材質は機械構造用炭素鋼を使用するのが一般である。…また連結部に強ジン特殊鋼を用いたり,テーパーネジとすることにより,連結部の強さを増加させる試みがなされている。

2.3スクリューポイント

…これはロッドの先端に連結して土中に貫入するものであるから,強さが大きくなければならないことはもちろん,摩耗しにくいものであることが必要である。したがって,材質としては,焼入れが可能なものを使用し,すくなくともS-50-C以上の高炭素鋼,あるいはSK-2以上の炭素工具鋼などを使用すればよいと思われる。…(26~27頁)

(イ) 引用例3には,前記(ア)のとおり,スクリューポイントを耐摩耗性の大きな特殊鋼製,ロッドを鋼製とすること(23頁),スクリューポイントは,摩耗しにくいものであることが必要であること,材質としては,焼入れが可能なものを使用し,すくなくともS-50-C以上の高炭素鋼,あるいはSK-2以上の炭素工具鋼などが適切であること(27頁),ロッドは,材質を機械構造用炭素鋼とすること,連結部に強じん特殊鋼を用いて連結部の強さを増加させる試みがなされていること(26頁)が記載されている。

したがって,引用例3には,スクリューポイント本体部が接続部材に対して硬度が高くなるよう,接続部材がスクリューポイント本体部に対して高い靱性を有するように構成した点が記載されているものと認められる。

エ 相違点3の容易想到性について

前記3で述べたとおり,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は,容易に想到することができ,無頭ねじをスクリューポイント本体部とロッド部材の間に介して連結する構成とすれば,無頭ねじがスクリューポイント本体部の接続部材となり,接続部材に必要な力学的性質(硬度及び靱性)を有するものとすることは自明である。したがって,当業者であれば,前記アないしウ記載の事項を踏まえ,相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは容易に想到することができる。

オ 小括

したがって,本件訂正発明2は,引用発明1の2,甲16文献記載の事項及び引用例3記載の事項を組み合わせることによって,容易に想到することができたものである。よって,取消事由2は,理由がない。

5  結論

以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 髙部眞規子 裁判官 古河謙一 裁判官 鈴木わかな)

file_2.jpg別紙

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例