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神戸地方裁判所 平成10年(ワ)2103号 判決 2002年5月22日

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は,原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  被告A火災保険株式会社は,原告に対し,3250万円及びこれに対する平成10年10月31日(訴状送達の日の翌日)から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。

2  被告B農業共済組合連合会は,原告に対し,750万円及びこれに対する平成10年10月31日(訴状送達の日の翌日)から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

(以下では,被告A火災保険株式会社を「被告A」と,被告B農業共済組合連合会を「被告B」と,別紙建物目録記載の建物を「本件建物」という。)本件は,原告が,火災により本件建物内の家財・骨とう品等が焼失したと主張して,被告Aに対しては同被告と締結していた住宅総合保険契約に基づき家財・骨とう品等の損害保険金3250万円を,被告Bに対しては同被告と締結していた建物火災共済契約に基づき家具類の損害共済金750万円をそれぞれ請求した(ただし,家具類の損害填補金については,その損害額1500万円を被告らに2分の1ずつ案分負担させた額である。)のに対し,被告らが,上記火災は原告が何者かに放火させたことによって生じた自招事故であること(事故招致),原告が損害の申告に当たり虚偽・過大な損害を記載したこと(不実表示)等を主張してこれを争った事案である。

なお,原告は,訴え提起当初は,上記家財・骨とう品等の動産のみならず本件建物についての火災保険金及び共済金も請求していたが,後に動産についてのみの請求に訴えを変更した。

1  当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認定できる事実

(1)  当事者等

ア 原告は,昭和21年12月23日生まれの女性で,本件建物が火災にあった平成8年10月当時はa県b市内でスナックを経営していた。

イ 被告Aは,損害保険業等を目的とする株式会社であり,平成13年10月1日にA火災保険株式会社がC火災保険株式会社(以下,「c」という。)を吸収合併して,商号を変更したものである。

ウ 被告Bは,農業災害補償法に基づいて設立された法人格を有する組合で,a県内の農業共済組合等をその組合員としており,農業災害共済事業に関する保険事業を行うほか,任意共済事業として,自己の組合員である当該所属農業共済組合だけでなく,当該所属農業共済組合に所属する個人組合員等も対象にして住宅等についての損害共済事業も行っている団体である。

(2)  本件建物での居住状況等

ア 原告は,昭和55年ころから,その夫D,長男Eらと一緒に本件建物で暮らしていた。本件建物は,Eの実家であり,同人の所有物件であった。もっとも,本件建物及びその附属建物(便所)並びにその敷地(以下,「本件建物等」という。)には,Eの債務を担保するため,訴外有限会社F(代表者G。以下,「F」という。)を権利者とする極度額700万円の根抵当権が設定されていた。

イ 昭和58年7月8日,Fは,上記根抵当権に基づく競売開始決定を得て本件建物等を差し押さえた。その後,昭和61年9月2日に,原告らが居住したままでF店自ら本件建物等を落札し(c地方裁判所b支部昭和58年(ケ)35号事件〔乙28の資料③〕。以下,「本件競売」という。),同4日には本件競売による売却を原因として,DからFへの本件建物等の所有権移転登記がされた。本件競売後は,登記簿上,本件建物の所有権の変動はない(甲12)。

その後,Fは昭和62年2月16日に本件建物等について不動産引渡命令(c地方裁判所b支部昭和62年(ヲ)第10号〔乙28の資料③〕。以下,「本件引渡命令」という。)を得たが,この時点では,この債務名義に基づく執行手続を申し立てなかった。

ウ 原告らは,本件競売の後も本件建物に居住を続けていたが,本件競売の翌年(昭和62年8月)にはDが死亡し,その後長男も大学進学で家を出たことから,平成元年ころからは,原告が1人で本件建物に居住するようになった。

平成2年7月,原告は本件建物所在地から約20㎞離れたa県b市において家賃1か月10万円で店舗を借り受け,そこでスナック「H」を経営するようになった。そして,平成3年ころには,同市d所在のI2階の居室を借りてこれを利用するようになった(なお,このIが原告の生活の本拠になっていたかどうかについては後記争点4のとおり争いがある。)。

(3)  火災保険契約等の締結の履歴

ア C関係

原告は,平成3年10月25日,Cとの間で,同社の代理店J保険サービスを介して,保険期間を1年間とする火災保険契約(住宅総合保険)を大要次のとおり締結し,以来毎年これを更新していった((ウ)につき乙32)。

(ア) 保険の目的物  ①本件建物(母屋),②別棟建物(離れ),  ③本件建物内の家財,書画,骨とう一式

(イ) 目的物所有者  いずれも原告

(ウ) 保険金額  ①につき3650万円,②につき980万円,③につき4000万円

イ 被告B関係

また,原告は,平成5年ころ,被告Bとの間で次のとおり建物火災共済契約を締結した(丙1,2,4,6)。

(ア) 共済の目的物  ①本件建物,②本件建物内の家具類

(イ) 目的物所有者  いずれも原告

(ウ) 共済金額  ①②につき各1500万円

(エ) 共済期間  平成5年10月20日午後4時から

平成6年3月20日午後4時まで

(オ) 共済掛金  5か月間で1万710円

ウ 訴外K海上保険株式会社関係

さらに,原告は,平成6年11月21日,訴外K海上保険株式会社(以下,「K」という。)との間で,保険期間を1年間とする火災保険契約を大要次のとおり締結した(乙17)。

(ア) 保険の目的物  ①本件建物,②本件建物内の家財

(イ) 目的物所有者  いずれも原告

(ウ) 保険金額  ①につき2000万円,②につき2500万円

(エ) 保険料  9万9750円

このKとの契約は1年後の平成7年11月に期間満了により終了し,契約は継続されなかった。

(4)  店舗家賃及びI家賃の滞納

ア 原告のスナックの経営状態は芳しくなく,平成5年3月15日ころには,スナック店舗の滞納家賃や店舗貸主が立て替えた公共料金の合計額が114万7176円にのぼっており,その後も原告の滞納額は蓄積していったため,同年7月には,原告は,店舗貸主から未払賃料等145万2814円の支払い及び債務不履行に基づく賃貸借契約解除による目的店舗の明渡しを求められた。

イ また,原告はI居室の家賃(月3万円)も数か月分滞納するようになり,平成7年ころからは,Iから退去するよう家主から繰り返し要求されるようになっていた(乙26)。

(5)  Fからの本件建物退去要求

平成6年8月29日,Fは,原告に対しIをあて先として,本件建物からの退去を要求する内容証明郵便を発送し,同日ころ原告はこれを受領した。

同書面には,「本件物件は当社が昭和61年9月2日競売により買受取得しました。当時,裁判所から引き渡せとの命令をもらっていましたが故D氏が必ず買い戻すからとズルズルとそのまま強引に賃料も払わないで居座り,何度も第三者を介したりして立ち退くか早急に買い戻すか実行するよう要求してきましたが,一向に話にならないまま日時が経過し,その後同人は死亡,貴殿がそれを引き継ぐこととなったので,貴殿にも要求して参りましたが,また言を左右にして今日に到りました。特に貴殿は現在本件物件に居住せず空家同然とされており,このまま放念すると建物の損壊が甚だしくなり当社としては甚大な損害を受けることとなります。よってこれ以上貴殿の意向を待つことはできませんので,本件建物内に存する家財一切を直ちに撤去し明渡し返還されるよう強く要求致します。」と記載されている(乙11)。

(6)  原告に対する動産執行(1回目)

平成7年5月30日には,債権者L株式会社申立てにかかる動産執行事件(c地方裁判所b支部平成7年(執イ)第61号事件)において,Iの原告居室内の動産が差し押さえられた。この事件の執行債権のうち請求債権元本額は30万7300円であった。

(7)  本件保険契約の締結

平成7年11月1日,原告は,Cとの従前からの火災保険契約について4度目の更新を行い,保険の目的物から別棟建物(離れ)を除外するなど契約内容を一部変更した上で,前記J保険サービスを介して次のとおり火災保険契約(以下,「本件保険契約」という。)を締結した(エ,オにつき乙21の1・2)。

ア 保険の目的物  ①本件建物,②本件建物内の家財,書画,骨とう一式(和服,洋服,掛け軸2本,ついたて2本,タンス(大)3竿,タンス(小)1竿,紫檀手彫り屏風,古文書,木彫り置物,有田焼香炉,古銭・紙幣(額入り),九谷焼5点ほか)

イ 目的物所有者  いずれも原告

ウ 保険金額  ①につき3850万円

② につき4000万円

エ 保険期間  平成7年11月1日午前9時から

平成8年11月1日午後4時まで

オ 保険料  毎月1万4630円(①及び②の合計)

カ 保険金支払い  保険契約者が所定の保険金請求手続をした日から30日以内(ただし,この期間内に必要な調査を終えることができないときは,その終了から遅滞ない時期)に支払う。

キ 約款の内容

(ア) 保険契約者の故意又は重大な過失によって生じた損害については保険金を支払わない(事故招致による免責)。

(イ) 保険契約者が,正当な理由がないのに損害発生に

関する所定の提出書類に,知っている事実を表示せず又は不実の表示をしたときは保険金を支払わない(不実表示による免責)。

(8)  原告に対する動産執行(2回目)

平成8年3月1日には,債権者M株式会社によって,原告に対し,再びIの原告居室内の動産を目的物とする動産執行が申し立てられた(c地方裁判所b支部平成8年(執イ)第49号事件。執行債権の請求債権元本額は2万1663円。)。この事件は,目的物の不存在を理由として差押え不能で終了した(乙5の2)。

(9)  本件共済契約の締結

原告は,平成8年5月24日,被告Bとの間で,次のとおり建物火災共済契約(以下,「本件共済契約」という。)を締結した(エ,オにつき丙1,4)。

ア 共済の目的物  ①本件建物,②本件建物内の家具類(「家具類」とは,日常生活に必要な用具を指し,骨とう品,貴金属又は旅館若しくは飲食店などで業務用として使用されている備品などは含まない。)

イ 目的物所有者  いずれも原告

ウ 共済金額  ①②につき各1500万円

エ 共済期間  平成8年5月20日午後4時から

平成9年3月20日午後4時まで

オ 共済掛金  10か月間で1万8990円(①及び②の合計)

カ 共済金支払い  共済契約者が所定の共済金請求手続をした日から30日以内(ただし,この期間内に共済金額の確定に必要な調査を終えることができないときは,その終了から速やかな時期)に支払う。

キ 約款の内容

(ア) 加入者の故意又は重大な過失によって生じた損害に対しては共済金を支払わない(事故招致による免責)。

(イ) 加入者が損害発生に関する所定の提出書類に,故

意に不実のことを表示したときは共済金を支払わない(不実表示による免責)。

(ウ) 共済目的物である建物を引き続き30日以上空き

家とする場合には,加入者はその事実の発生が加入者の責に帰すべき事由によるときは,あらかじめその旨を被告Bに通知し,共済証券に承認の裏書をするよう請求しなければならない。

加入者がこの通知を怠った場合には,被告Bは,通知すべき事実が発生したときから被告Bが承認裏書請求書を受け取るまでの間に生じた損害については,共済金を支払わない(通知義務違反による免責)。

(10)  本件建物の強制執行手続と買戻し交渉

平成8年8月半ば,Fは,昭和62年に取得していた本件引渡命令に基づいて本件建物等引渡しの強制執行をするための準備を開始し,平成8年8月16日,承継執行文とともに上記債務名義が原告を含む承継人らへ送達された。同年9月3日,Fは本件建物等引渡しの強制執行を申し立てることにした。

原告は,Fの強制執行への動きを知ったことから,同年9月10日ころ,長女NとともにFを訪れて,代表者Gに強制執行をやめるように求めた。これに対して同人は,原告が本件建物等を1200万円で買い戻すこと,1週間以内に手付金として50万円を支払うことを条件に強制執行はしない旨を申し出た。原告はその申出を了承し,本件建物等を買い戻すことにした。

ところが,原告はその後1週間たっても手付金の支払いをしなかった。そこで,Fは,同年9月19日にc地方裁判所b支部で本件建物等引渡しの強制執行を求めた(c地方裁判所b支部平成8年(執ロ)第9号事件)。

同年9月20日,Fの申立てに基づいて,本件建物等の引渡執行が着手された。しかしながら,当日は債務者不在であったことから,執行官は断行期日を同年10月15日午前9時30分に指定し,断行期日までに引渡しを履行をするよう勧告した通知書を屋内に残して当該期日を終了した。

他方で,同じく9月20日,原告は50万円をFあてに振込送金していた。Fは既に強制執行に着手していたことから,この受領を拒否し,上記50万円を原告に現金書留で送金して返金した。しかし,原告が受領を拒否したため,上記50万円はFに返送されてきた。

(11)  新たな重複保険契約の締結

前記(3)のとおり,原告とKとの間の本件建物についての火災保険契約は平成7年11月に期間満了により終了していたが,原告は,上記強制執行着手の5日後の平成8年9月25日になって,再びKとの間で次のとおり火災保険契約(住宅総合保険)を締結した。この際,原告は既にCとの本件保険契約及び被告Bとの本件共済契約を締結していることをKに告知しなかった。保険料9万9750円は即日一括して支払われた(乙3)。

(ア) 保険の目的物  ①本件建物,②本件建物内収容家財一式(明記物件なし。)

(イ) 目的物所有者  いずれも原告

(ウ) 保険金額  ①につき2000万円,②につき2500万円

(エ) 保険期間  平成8年9月25日から平成9年9月25日まで

(オ) 保険料  9万9750円の一括払い(①及び②の合計)

(12)  本件建物の火災の発生(放火)等

上記Kとの間の重複保険締結から約2週間後の平成8年10月9日午前0時30分ころ,本件建物に火災が発生した(以下,「本件火災」という。)。このころ,原告はスナックで接客中であったが,親せきのOから電話で本件火災発生の連絡を受けたことから,本件建物のもとへ向かった。

その後,本件火災は,消防署等による消火活動の末,本件建物を半焼し,本件建物内の動産を焼損するなどして同日午前1時3分ころ鎮火された。

本件火災の原因は,放火であり,何者かが本件建物内にポリ容器に入ったガソリンと灯油を持ち込み,これらを利用して本件建物1階寝室内のステレオのおかれたローボード付近に着火して一気に燃え上がらせ,その直上の天井板等に延焼拡大させて,本件建物を焼損させたものであった。

(13)  本件建物の周辺状況等

ア 本件建物は住宅密集地にあり,その北側は,普通車1台がようやく通ることのできる狭い道路に接している。南側には広大な駐車場と荒れ地,西側には3.1m隔てて別棟建物(離れ)がある。また,本件建物1階東側には玄関とその南に並ぶガラス戸付き縁側があり,その前には幅4~5mほどのスペースがある。このスペースが上記北側道路から駐車場への入り口の役目も果たしており,そのさらに東側には側溝を隔てて隣家や水田がある。

本件建物の外周には塀,壁,門構え等はなく(北側に1mほどのブロック塀があるが,本件建物自体が北側道路から約1m高い場所に位置している。),周辺からの見通しは良い状態であるが,夜間に点灯する街灯などは見あたらない(乙9)。

本件火災の第1発見者であるP(上記駐車場を隔てて本件建物の南南西方向の家屋に居住する人物)は,上記縁側のガラス戸越しに客間で火が燃えているのを発見したと供述している(甲11,18)。

イ 本件建物は,もともと昭和14年ころに建築された木造瓦葺きの2階建て住宅であったが,そこに原告や亡Dらが居住するようになった後,その西側部分に応接間,物置,子供部屋,トイレ,ベランダなどが増改築されて現在の構造となった(なお,この増改築の時期が本件競売の前であったか後であったかについては争いがある。)。

火が放たれた1階寝室は,このうち昭和14年から建っていた建物部分に当たり,本件火災当時で築年数は55年を超えていた(乙33の一部)。

ウ 本件建物の出入口は,1階東側の玄関と1階西側の土間から本件建物内応接室に通じる出入口(以下,「本件裏口」という。)の2か所であり(なお,外部から土間に通じる出入口は二つあったが,そのひとつには鍵が設置されていなかったため,土間への出入りは事実上自由にできる構造になっていた。),そのほか人が出入り可能な1階部分の窓としては,本件建物1階東側の縁側の6枚のガラス戸,同南西側の応接間及び廊下の7枚のガラス窓,同北側の台所の窓等がある。これらのうち,外部から開錠できる構造になっていたのは本件裏口のみであった。本件建物内への出入りに通常使用されていたのは,この本件裏口であり,普段は施錠してあった。本件裏口の鍵1本が上記土間内の木製ロッカー内に常時保管されており,用のある者はその鍵を使って本件建物に出入りできるようになっていたが,本件火災直後には,この鍵がなくなっていた。この鍵の上記保管場所については,少なくとも原告,長女N,長男Eが知っていた。

なお,本件裏口の鍵は合計2本あり,もう1本は原告がIで保管していた。

本件火災の消火活動中に消防隊員が確認したところでは,縁側の6枚のガラス戸のうち北から4枚目の戸(以下,「本件縁側ガラス戸」という。)が施錠されていなかったが,玄関及び本件裏口は施錠されており,また,鎮火後の実況見分時には,応接間及び廊下の7枚のガラス窓も,ガラスの破損はあったものの窓枠は施錠されていた(乙4の3・4)。

なお,本件建物西側の別棟建物(離れ)の玄関内には,紙や雑誌類を燃やした跡が残っていた。

エ 本件裏口のある土間には,灯油用ボイラーが設置されており,土間内には灯油用ポリ容器が5個ほど並べておいてあったが,鎮火後の実況見分時には空であった(乙4の4・5)。また,もともと本件建物内にはガソリンは存在しなかった。

(14)  本件火災の発生の通知等

ア 平成8年10月9日午前9時から午後2時まで,原告の立会いのもと,本件火災について消防署の実況見分が実施され,この際,原告は,「現在この住宅に住んでいる者はなく,空家状態である」旨を説明していた(乙4の4)。

他方,被告Bは,本件火災を認知したことから,本件建物に職員を派遣し,警察や消防の許可を得て,同日午前9時30分ころから午後12時ころまで,本件火災現場の写真撮影等を行った(丙5の1ないし98)。

その後,警察署や消防署の実況見分等が終了すると,原告は,近所の人たちとともに本件建物内の焼残物を片づけ始めた。

同日午後6時になって,Cの代理店J保険サービスに対して,原告側から本件火災の発生について連絡が入った(乙13)。

翌10月10日に,J保険サービスが写真撮影等のために本件火災現場に臨むと,原告らは焼残物の片づけをしていた。

また,同日原告は,消防署の質問に回答するに際し,自分の住所としてIの所在地を申告した(乙4の9)。

同年10月15日には,本件建物等の引渡執行が予定どおり行われ,Fに対し本件建物の引渡しが終了した。

なお,原告が本件火災について連絡をしたのは,Cに対してのみであり,被告BやKに対しては連絡をしなかった。

イ 同年11月7日,Cは本件火災で罹災した動産を原告から引き取った。

ウ 同年11月13日,原告はCの調査の際に作成された2通の確認書の住所欄にI所在地を自署しているほか,そのうち「罹災建物使用管理の状況確認書」(以下,「本件確認書」という。)には,原告の供述内容として,「昭和50年頃,同義父が死亡したため,昭和54年5月30日に,私の夫・Dが相続いたしました。当時,同建物には,義母が1人暮らしでしたから,昭和55~56年頃,私達夫婦と娘・N,息子・Eの4人が同居し,この時に建物の内外を増改築して,現在の造りになったのです。」,「昭和62年8月26日には,夫・Dも死亡,平成元年頃には息子も大学生になって家から出て行き,以後,私が1人で入居しておりましたが,その頃私は,b市内にてスナックを経営し,自宅から通うのは,大変だったものですから,平成3年にb市内にアパートを借り,平素はそのアパートで生活,自宅へは時々帰るという状態でした。」,「金銭の貸借がらみで当火災の土地・建物が競売され,昭和61年9月に㈲Fが競落,同社へ所有権が移ってしまいました。」との記載がある(乙33)。

(15)  保険金及び共済金の支払い請求等

ア 原告はCに対し,平成8年12月11日,本件保険契約に基づいて本件火災の損害保険金を請求し,平成9年1月17日には,本件火災で原告が被った動産の損害について明細書を提出して申告した(乙8の1・2,18)が,Cは損害保険金を支払わなかった。

また,原告は被告Bに対し,平成9年ころに,本件共済契約に基づく損害共済金の支払いについて問い合わせるなどしていたところ,被告Bは,平成10年2月25日ころになってその支払いを拒絶した(丙7)。

なお,Kは,原告から本件火災の報告を受けたが,原告がCとの間で締結している保険契約の存在について告知していなかったこと,本件建物が原告所有ではなかったこと等が判明したとして,告知義務違反による免責及び被保険利益の不存在による契約無効等を理由に保険金の支払いを拒絶した(乙3)ところ,その後,原告からの保険金の請求はされなかった。

イ 原告は,平成10年10月7日,C及び被告Bに対して本件訴訟を提起し,Cに対しては本件建物につき3800万円,本件罹災動産につき4000万円の各保険金を,被告Bに対しては本件建物につき1500万円,家具類につき1500万円の各共済金をそれぞれ請求した。

ところが,本件訴訟の第3回弁論準備期日(平成11年4月23日)において,原告は,本件建物が本件火災当時にFの所有名義となっていたため原告が所有者であったかどうかに疑問が生じたとの理由で,本件請求を変更し,請求を本件罹災動産の損害填補分に限定して保険金及び共済金を請求した。そして,原告はこの段階において初めて被告らの独立責任額に応じた案分額に基づく請求を行った。

(16)  Fの保険金受領

Fは,平成2年ころから,Q保険相互会社との間で,本件建物について保険金額2000万円,保険期間1年間,保険料1年間4万220円の約定で火災保険契約(住宅総合保険契約)を締結し,これを毎年継続していたが,本件火災により,平成9年2月25日,Fは1705万5634円の損害保険金を受領した。

(17)  陳述書の署名拒否

平成11年になって,Fの代表者Gは,原告側から,あらかじめ「登記名義こそ私の会社名義になりましたが,私が,Dさんらに本件建物を売る約束があったことや競落前と同様Dさんの家族が本件建物に住み続けていたことから,私は本件建物の所有者になったつもりはありませんでした。DさんやRさんも私と同じ考えだったと思います。」,「私は,法律のことはよく分かりませんが,Dさんたちが本件建物を買い戻すまで本件建物を預かってっているつもりでしたし,DさんやRさんも本件建物を所有していると思っていたはずです。」等の記載のある「陳述書」と題する書面への署名・押印を求められたが,Gは,上記の記述部分に自分の気持ちや認識と全然違ったことが書かれていたことから,同書面に署名・押印をしなかった(乙10,40)。

2  本訴訟における争点

(被告らに共通する争点)

(1) 本件建物の放火に原告が関与したか否か-事故招致の有無(争点1)

(2) 原告に生じた家財・骨とう品等の損害の内容及び額(争点2)

(3) 原告の損害申告は不実表示に当たるか否か-不実表示の有無(争点3)

(被告Bだけに関係する争点)

(1) 本件共済契約に被共済利益があるか否か-被共済利益の有無(争点4)

(2) 本件建物は「引き続き30日以上空家又は無人」となっていたか否か-通知義務違反の有無(争点5)

(3) 共済金を支払うべき場合の遅延損害金の利率は年5分か6分か(争点6)

3  争点に対する当事者の主張

(1)  争点1(事故招致の有無)について

(被告らの主張)

本件建物に放火した者が誰であるかは具体的に特定できないが,原告が本件建物の放火に関与しており,何者かに放火を依頼するなどして,原告が意図的に本件火災を発生させたことは間違いない。

よって,本件火災は原告が故意に発生させた火災であるから,被告らは原告が被った損害について保険金又は共済金の支払い義務を負わない。

なお,損害保険制度は,偶然の事故により生じた損害を填補するための制度であるから,事故の偶然性については保険金請求者がまず立証すべきである。また,不慮の事故のリスクを分散するという点で損害保険と同じ機能を持つ損害共済についても,同様に原告に事故の偶然性について立証責任があるというべきである。

(原告の反論)

原告は放火の被害者であって,原告が本件建物に意図的に放火させたとの主張は強く否認する。

また,火災保険において保険金等を請求する側に事故の偶然性についての立証責任があるとの見解は被告Aの独自の見解である。むしろ,事故招致を免責事由とする約款からすれば,請求を受ける被告らの方に,原告の故意による事故招致を立証すべき責任があるというべきである。共済契約についても同様である。

(2)  争点2(原告の損害内容及び額)について

(原告の主張)

原告は,本件火災当時,別紙罹災動産目録記載の各動産(以下,「本件罹災動産」という。)を本件建物内に収容していたところ,それらは本件火災により焼失,焼損等の損害を被った。

そして,本件罹災動産の時価総額は4000万円を下らない。そのうち家具類だけでも少なくとも1500万円の価値がある。

よって,本件罹災動産のうち家具類で1500万円,骨とう品など家具類以外の罹災動産で2500万円というのが原告の請求する損害額である。

また,被告らが,自ら本件建物内の動産につき保険価額を検討した上で,その保険金額を4000万円あるいは共済掛金を1500万円に設定し,それに対応する保険料あるいは共済掛金を受け取っておきながら,火災が発生するやそれより低い損害額を主張するのは信義則に反する。

(被告らの反論)

住友海上が本件火災後に原告から引き取った動産,すなわち,別紙罹災動産目録記載1の各動産のうち番号2,4,5,15,16,18,19,24,111,114,122,155,174(ただし,111,114,122,155は各数量の一部に限る。)及び同目録記載2の各動産のうち番号1ないし31については,本件火災当時に本件建物内に収容されていた動産である。

しかしながら,その他の動産については,その一部はともかく,それらの動産すべてが本件建物内に収容されていたとは到底考えられない。また仮に収容されていたとしてもそれらに損害が生じたかどうかについては極めて疑問である。

(3)  争点3(不実表示の有無)について

(被告らの主張)

原告が別紙罹災動産目録において申告する損害の内容には,争点2で主張したとおり罹災したかどうかに疑問のある動産が申告されているだけでなく,各動産の取得時期,取得価格,購入先等においても真実と異なる記載が多々あり,明らかに不実の表示に当たる。

したがって,不実表示を理由とする免責により,被告らは保険金又は共済金の支払い義務を負わない。

(原告の反論)

原告は,可能な限り記憶に基づいて本件罹災動産を特定したものであるが,購入先や取得時期等については不明なものもあったため推測に基づいて記入したものもある。また,原告は損害の申告方法についてCの担当者から適切な説明を受けておらず,むしろ担当者は「適当に」記載すればよいと述べていたのである。

このような経過からすれば,一部に不正確な記載があるにしても,それをもって不実表示として被告らが支払い義務を免れるというのは不当である。

(4)  争点4(被共済利益の有無)について

(被告Bの主張)

被告Bの扱う建物火災共済契約においては,建物が不可欠の共済目的物とされているので,そこに収容される家具類を,それ単独で独立に共済目的物とすることはできず,ただ建物の共済に付随して共済目的物に付加することができるにすぎない。したがって,同建物火災共済契約のうち家具類を共済目的物とする部分は,それを収容する建物の共済契約に不可分に従属していることになる。

ところで,本件共済契約のうち本件建物を共済目的物とする部分は,原告が本件建物の所有者であることを前提とするものであって,被共済利益は本件建物に関する原告の所有者利益である。にもかかわらず,原告は本件共済契約締結当時,本件建物の所有権を有していなかったのであるから,本件共済契約のうち本件建物を共済目的物とする部分は被共済利益を欠き無効である。

とすると,これと不可分一体でこれに従属する本件建物内の家具類の共済契約部分も無効となるから,たとえ家具類に限ってであっても,被告Bは原告に損害共済金の支払い義務を負わない。

(原告の反論)

本件競売後といえども実質的には原告が本件建物の所有者であったので,原告に被共済利益は存在しており,本件共済契約は有効である。

(5)  争点5(通知義務違反の有無)について

(被告Bの主張)

前記争いのない事実のとおり,本件共済契約においては,共済目的物である建物を引き続き30日以上空き家とする場合には,加入者は,その事実の発生が加入者の責に帰すべき事由によるときは,あらかじめその旨を被告Bに通知し,共済証券に承認の裏書をするよう請求しなければならない旨の約款がある。

ところが,原告は平成3年ころからb市のIに部屋を借りてそこを生活の本拠としていたし,また原告の長男が仏壇に線香を上げにきた平成8年8月26日以降は誰も本件建物に入っておらず,遅くとも同日以降は空き家となっていたのに,原告は空き家になる前にその旨を被告兵庫農済連に対して通知しなかったばかりか,空き家となった後も本件火災が発生するまで一切通知しなかった。

よって,被告Bは原告の通知義務違反により共済金の支払い義務を免れる。

(原告の反論)

原告がIの部屋を借りたのは,雪などで原告が経営するスナックの出勤等に支障がでないようにするためであり,原告はあくまで本件建物を生活の本拠として本件建物に住んでいたのである。

また,原告は,本件建物の離れを知人のSに無償で貸していたが,同人に対しては本件建物の鍵を預けており,原告が本件建物を留守にしている際の管理を頼んであったから,原告は本件建物を空き家にはしていなかった。

また,仮に空き家であったとしても,建物火災共済契約において加入者が空き家に関する通知義務を負担する趣旨は,共済目的物たる建物が空き家となった場合には火災発生の危険に対する監視がなくなるため共済事故発生の危険が増加することに鑑み,共済事業者に共済契約の解除又は変更の機会を与えることにある。

とすると,本件のように留守宅の管理を他人に依頼して火災発生の危険に対する監視を行っているような場合には,共済事故発生の危険の増加が生じないのであるから,このような場合にまで通知をする義務はないというべきである。

(6)  争点6(遅延損害金の利率)について

(原告の主張)

被告Bは商法所定の年6分の割合による遅延損害金を支払うべきである。

(被告Bの反論)

被告Bは商人たる地位を有しないから,仮に共済金の支払い義務があるとしても,その遅延損害金の利率は民法所定の年5分の割合である。

第3争点に対する裁判所の判断

1  争点1(事故招致の有無)について

(1)  認定事実

ア 本件火災時の状況

(ア) 放火の態様等における特徴

前記争いのない事実のとおり,本件放火には,灯油及びガソリンが用いられているが,本件建物内にはもともとガソリンはおかれていなかったのであるから,少なくともガソリンについては,放火犯人が本件建物内に持ち込んだと考えられる。

放火犯人の侵入経路としては,本件建物の出入口の構造や施錠状況等からすれば,本件裏口から鍵を開錠して侵入したか,無施錠の本件縁側ガラス戸を開けて侵入したかのいずれかが考えられるところ,木製ロッカーに保管してあった本件裏口の鍵が本件火災後になくなっていること,本件裏口のある土間に通じる出入口には鍵がないから侵入が容易であり,しかもいったん土間に入ってしまえば人目に付きにくくなること,夜間で周囲に街灯がないとはいえ,本件縁側ガラス戸は駐車場への入り口部分に面しているので,車が入ってくればライトに照らされる危険がある上,本件建物北側道路や隣家などからも目に付きやすい場所にあること等に鑑みると,放火犯人は本件裏口から侵入した可能性が高く,またその際には保管してあった鍵を用いて本件裏口を開錠した可能性が高いといえる。

次に,本件で放火された箇所は,本件建物のうちでも築55年以上と築年数がかなり古い木造部分であり,増改築部分と比べると燃えやすい部分であったといえる。このような建物の特徴は,放火犯人がたまたま本件建物を選んで放火したような場合には,夜間であることも手伝って認識困難な事情である。そして,放火犯人は,本件建物の外部から放火したのではなく,あえて本件建物内に侵入し,外部との出入口や窓から離れた1階寝室に放火している。これは,直ちには火災が発見されにくく,本件建物の焼損を大きくしやすい反面,通常であれば家人に発見される危険が高いし,予想以上に火の回りが速かったりした場合等には,放火犯人自身の逃亡等にも支障が生じ得る箇所である。単にいたずらや出来心で放火をしようと考えてたまたま本件建物を選んだだけの放火犯人であれば,そこまでのリスクを冒すとは通常考えにくい。

以上からすると,本件の放火犯人は,たまたま本件建物に放火したというよりも,本件建物が空き家であることや外部との出入口も含めた本件建物の構造をあらかじめよく認識していた可能性が高く,人目に付きやすいガソリン入りのポリタンクを自ら持ち込んだと考えられることも併せて考慮すると,単なるいたずらや出来心というよりも,本件建物を焼損させようとの強い意図を持って計画的に放火したことがうかがわれる。

(イ) 怨恨関係の不存在

原告やその家族,所有者であるF等に対する怨恨関係について具体的な主張はなく,また,本件全証拠によっても,そのような事情は認められない。

したがって,本件放火が怨恨関係を背景にするものとは認められない。

(ウ) 原告の周辺人物の火災歴

証拠(甲11,21,22の各1部,乙9,36,38,原告本人の一部)によると,原告自身には火災歴は認められないが,原告の親せき,知人には次のような火災歴があったことが認められる。

a O

同人は,原告の夫である亡Dのいとこである。同人の自宅は本件建物から二,三百メートル南方にあり,また,本件建物と同一敷地内(本件建物から見て西側方面,駐車場の奥の家屋)には,その親の家がある。同人は,亡Dの生前から原告らと親せき付き合いがあって,本件建物に何度も訪れており,原告がIの居室を借りた後も,正月などには本件建物で会うなどして原告と行き来があった。

本件裏口の鍵が土間内の木製ロッカー内に保管されていることも知っていた。

そして同人は,本件建物から二,三百メートル離れた所に住んでいるにもかかわらず,本件建物の隣家の人間などが原告に本件火災発生の連絡をするよりも早い段階で,本件火災発生の第一報を原告に知らせた人物である。

その居住家屋は,平成5年4月26日午後2時37分ころ,火災に遭っており,部分焼で鎮火している。

原告は,この火災については知らないと供述するが,Oとのつきあいの程度など上記の事情に鑑みれば,その供述はそのままには信用し難く,かえって,原告はOの火災について知っていたことが推認できる。

b T

同人は,亡Dが組長を務めていたD(やくざ)の元配下で,亡Dに原告を紹介した人物である。同人は,Gとも懇意であったことから,原告とFとの間の本件建物の買取り交渉を仲介するなど,原告と親しく,本件裏口の鍵の保管場所も知っていた。

同人も本件火災の日より前に火災にあった経験を持っている。

c U

同人は,原告経営のスナックに客として来ていた人物であり,平成8年4,5月ころにも同スナックに来ており,原告と会話しているところが目撃されている。

同人は,平成3年ころ,保険会社からの勧誘を待たずに自ら進んで自己の経営する工場に火災保険を付けたが(いわゆる飛び込み契約),その4,5か月後にその工場で火災が発生した経験を持っている。その火災の際には,合計5社との間で重複して保険契約を締結しており,また保険会社への火災の報告が遅く,保険会社の調査が行われた時点では,既に火災現場は片づけられていた。

同人は,平成11年に多額の火災保険が付けられていたビルへの放火の疑いで逮捕されている。

イ 本件火災前の状況

(ア) 原告の経済的困窮

前記争いのない事実等のとおり,原告の経営するスナックの経営状態は芳しくなく,原告は,少なくとも平成5年ころにはスナックの店舗の未払賃料・公共料金等を150万円近く滞納して退去を要求され,同7年にはIの月3万円の家賃を滞納して退去を要求され,その上,同年7月に請求債権元本額約30万円の動産執行でI内の動産を差し押さえられ,本件火災の発生する半年ほど前にも,請求債権元本額約2万円の動産執行を申し立てられているなど,少なくとも平成5年ころから原告が経済的に困窮状態にあったことがうかがわれる。

さらに,証拠(乙25,26,原告本人の一部)によると,本件火災直前ころのスナック店舗に関する債務は原告が認める分だけでも300万円以上になっていたこと,本件火災当時,スナック店舗の内装工事費の残債務もあったこと,本件火災後にIの家主から家賃支払いの督促を受けた際には,保険が入ったら滞納家賃をすべて支払う旨を述べるなどして,保険金をあてにしなければならない経済状態であったこと,そのほか本件火災当時複数の金融業者に借金があったことが認められるのであって,本件火災当時もなお原告は経済的に困窮状態にあったというべきである。

この点,原告は,各債務の支払いをしなかった理由を種々弁解し,経済的困窮を否定する趣旨の供述をしているが,他方でスナック店舗の滞納賃料等が200万から300万円ほどあったことは原告も認めるところであり,そのような状況からすれば,原告の弁解はそのままには信用し難い。

(イ) 本件建物などの重要性の低下

a 証拠(乙4の4・9,乙33)によると,原告は平成3年にIの居室を借りてからは,普段はIで生活し,本件建物には時々帰るくらいの状態であったこと,原告は平成3年から5年の間,本件建物を知人に貸し,平成7年の阪神大震災後には被災した知人に3か月ほど貸し,その後は原告の長男及びその知人が居住していたこと,平成7年10月ころに長男等が出ていった後は本件建物は空き家状態となり,原告や長男が時々出入りする程度であったこと,少なくとも平成8年8月26日(亡Dの命日)に長男が1時間ほど立ち寄ってからは,本件建物には誰も居住していなかったことが認められる。そして以上からすれば,原告の生活の本拠は,平成3年ころに本件建物からIの居室に移っていたというべきである。

また,前記争いのない事実等及び証拠(乙10)によれば,本件競売により本件建物の所有権がFに移転したことは原告も認識していたこと,原告は本件建物の強制執行をやめてもらうために本件建物を買い戻すことにしたこと,その買戻しの手付金としてFに50万円を送金した際,その代表者Gに電話したが,同人からは,既に強制執行に着手しているので今更送金されても困るとして,買戻しを拒否されたこと,したがって原告は,本件火災の直前ころには,いよいよ強制執行を止めることができない事態になったことを認識していたことが認められる。

b これに対し,原告は,Iを借りた後も,本件建物が原告の生活の本拠であったと主張する。しかしながら,本件確認書の原告供述のうち,上記認定事実についての原告供述部分は,本件火災直後で未だ本件建物の管理状況が争点となっていない段階の供述であって,本件訴訟でそれが争点となってからされた原告の主張や供述に比べ信用性があるし,そもそも前記争いのない事実等のとおり,原告自身が,本件火災直後の消防署の実況見分において本件建物は「空家」であると説明し,また消防署や保険会社に対し,I所在地を自己の住所として申告するなどしていることからしても,本件建物が原告の生活の本拠であったとはいい難い。

また,原告は,本件競売により本件建物の所有権がFに移転したことは知らなかったし,昭和61年12月ころ(本件競売後)から亡Dが本件建物の増改築を行ったり,亡Dの死後にFから本件建物の明渡しを請求されたことはなかったから,原告は,本件建物が亡Dの相続人である自分の所有であるとずっと思っていたのであって,だからこそ,平成6年にFから本件建物の買戻しの話があったときも,亡Dの借金についてFから納得のいく説明がない限りは原告が本件建物の所有者だと考えていたと供述する。

しかしながら,①前記争いのない事実等のとおり,本件火災の約2年前にFが原告に送った内容証明郵便には,亡Dや原告に対して従前から明渡し請求をしてきた経緯が明確に記載してあること(原告は,同郵便を無視して見なかったと供述するが,仮にそうだとしても,記載された従前の経緯に影響があるものではないし,また原告が見なかったこと自体,内容に見当が付いていたことを示す事実ともいえる。),②本件建物の増改築の時期については,増改築の理由を単に「使い勝手が悪かったから」というにとどまる本件訴訟の原告供述よりも,義母が一人暮らしをしていた本件建物に原告ら家族4人が同居するようになった昭和55~56年ころ(本件競売前)に行われたとする本件確認書の原告供述内容の方が,増改築の規模や必要性などからみて合理的であって信用できること,③同じく本件確認書において本件競売による所有権移転を原告が認識していたことを供述していること,④原告は,平成8年10月11日にCの調査担当者に本件建物の所有権について尋ねられた際,手付金を払って買い戻しているので問題ない旨を回答して,所有権がないという認識を持っていたことを示す発言をしていること(乙31),⑤原告が本件建物を真実自己所有だと考えていたのであれば,代金1200万円という買戻しの要求に応じるとは到底考えられないこと等からすると,ずっと原告所有と考えていた旨の原告供述はそのままには信用できない。

さらに,原告は,本件建物の強制執行の前には,Fには何度電話しても連絡がつかず,したがって,Fから買戻しを拒否されたことはない,原告としては,手付金50万円を送金したのだから,本件建物は確実に自分の所有になったと考えていた,Fからの返金の受け取りを拒否して再送金した後は,連絡しようと思いつつ何となく過ごしているうちに本件火災となったとも供述する。しかしながら,強制執行をやめてもらうために買い戻すことにしておきながら,原告も認めるとおり50万円の送金の支払期限を守れず,しかもそれがFからいったんは返金されてきたのであるから,それだけでもFの買戻し拒否の意思は明らかというべきであり,たとえ再送金したとしても,Fと真実連絡が取れなかったのであれば,強制執行が本当に取り下げられたのかを何とかして真剣に確認するのが通常であって,このような行動もしていない原告の上記供述もにわかに信用し難い。

c 以上のとおり,原告は,本件建物は原告の生活の本拠であったし,また原告所有であると考えていたとして,本件建物が原告にとって少なくとも主観的には重要な財産であったことを強調するが,上記に述べたところからすれば,少なくとも強制執行が回避不可能となったころには,本件建物は原告にとって重要性が低下してきていたものといえる。なお,原告が本件建物の買戻しを求めたことは,通常であれば原告にとっての本件建物の必要性を現す事情とも考え得るが,本件においては,前記の原告の経済的困窮状況からして1200万円の買戻し代金を実際に支払える見込みはほとんどなかったことからすると,原告が,真実1200万円を支払って本件建物を買い戻せたとは考え難いから,買戻しを求めたことが上記推認を左右する事情とはいえない。

d さらに,本件建物内の動産についていえば,これらをどこかに搬出したり,保管する場所を探したりしなければならない手間を考えると,これらが燃えてなくなり,しかも保険金等を入手できれば,原告にとって大いに有利である。

(ウ) 不合理な重複保険飛び込み契約

a 前記争いのない事実等のとおり,原告は,平成6年11月にKとの間で火災保険契約を締結し,これは平成7年11月に更新されずに終了していたが,その約1年後,すなわち平成8年9月20日に本件建物の不動産引渡の強制執行が着手され,同日に断行期日も同年10月15日と指定されていた状況下で,原告は,再びKとの間で10万円近い保険料1年分を一括払いで支払って,本件建物等に火災保険を付けている。

そして,証拠(乙17,原告本人の一部)及び弁論の全趣旨によると,原告の保険を取り扱っていたK代理店のVは,自動車販売・修理業を営む傍ら代理店業を行っていたこと,平成6年11月に原告がKとの間で締結した火災保険契約は,1年後の満期時に,原告に保険料を支払う余裕がなかったために更新されなかったこと,ところが,その後1年近くたって,再び原告の方から火災保険締結の希望があったこと,その再契約時には,原告にはVに対する1年以上前の車検代金として2万4000円の未払債務があったのに,火災保険料の支払いの方が優先されて,車検代金の支払いは先延ばしにされたことが認められる。

b 以上の経過からすれば,本件火災の直前に締結されたKとの間の火災保険契約は,実質的に新規の飛び込み契約と同視し得るものといわねばならない。そして,原告は,本件建物の買戻しが不可能となって本件建物の所有権が取得できないこと,その上まさに本件建物の引渡しの強制執行が目前に迫っていることを認識していたのであるから,少なくとも本件建物について,上記のように自ら進んで新たに火災保険を付ける合理的必要性があったとは認め難い。また,本件建物内の原告所有動産についても,他所への搬出が切迫した状況において,あえてその搬出前に本件建物内に所在する動産として,月払いではなく1年間一括払いで火災保険を付ける必然性はないはずである。かえって,このような切迫した状況下で,経済的にも困窮していた原告が,約1年間も放置していた火災保険契約を未払の車検代金の支払いを差し置いてまで再締結し,飛び込み契約をするということは,何か純粋な保険目的とは異なる別個の目的があったと疑われてもやむを得ないといわなければならない。

c これに対し,原告は本訴において,当初の契約の満期終了後もVからの執拗な勧誘があったところ,たまたまVと道路上であった際,息子の結婚祝いのためにたまたま持っていた10万円があったので,未払の車検代金があることを知りつつも,Vの勧誘に乗ってその10万円で保険に入ったと供述しているが,同供述は原告の経済的困窮状態に照らしても不自然であって信用できない。

(エ) 保険金額・共済金額についての誤解

a 前記争いのない事実等のとおり,本件火災当時,本件建物についての保険金額と共済金額(以下,「保険金額等」という。)の合計は7350万円,本件建物内の家財等については8000万円で,総額1億5350万円にものぼっていた。

そして,原告がKとの間で上記のような不合理な重複保険契約を締結していること,原告は本訴の当初請求では,本件建物について独立責任額で案分せず,住友海上に対しては3800万円,被告Bに対しては1500万円を請求していたこと(いずれも当初原告が各契約における保険金額等として認識していた額であるが,本件建物は本件火災当時において被増改築部分で築55年以上,増改築部分でさえ築15年以上であったから,原告が本件建物の保険価額を5300万円以上と評価していたとは考え難い。)からすると,原告は,上記保険金額等総額が増えれば増えるほど多くの保険金が得られると考えていた可能性が高い。

b この点,原告は本訴の供述において,Cや被告Bに加えてKと保険契約を締結した理由として,①手元にお金があるときとないときがあるので,月払方式の住友海上との保険契約では保険料の支払いができないことがあって困ることとなるが,だからといってCの支払いを年払方式にすると一度に高額な保険料が必要になって支払いがきつくなることから,新たに年払方式で安価な保険に加入しようと思ったこと,また,②保険金の支払い時にはすごく値切られることがあるから,保険契約を「3つ合わせて1つぐらい」の効果であると思っていたことを挙げている。

しかしながら,上記①については,建物火災共済契約は年度単位(終期3月20日)で更新されることになっていたことが認められるところ(当事者間に争いのない事実等,乙34,証人W),仮に原告が従前から同共済契約を継続して締結してきたものだとしても,原告は,本件のように年払方式で掛金も相当安価であった共済契約でさえ継続的に更新できていないこと(平成5年は10月,平成8年は5月に更新したことになる。),また,原告自身,平成7年11月にKとの保険を継続できなかった理由を「お金がなかったから」と供述しており,年払方式にしたからといって確実に支払えるものでもなかったことからすると,上記①の理由は採用し難い。

また,②については,その趣旨が独立責任額の制度をいうところにあるのかは明確でないが,本件建物の保険金額等について「3つ合わせて1つ」(すなわち,3つに入って初めて保険価額に相当する填補が得られる。)という認識であったとしながら,Cとの間の保険契約をやめようと思いつつもやめなかった理由としては,「集金,集金というて来られるから」というにとどまり,最も懸念するはずの保険価額に対する見込み填補額の減少に言及がないのも不自然というほかない。

ウ 本件火災後の状況

(ア) 本件火災後の現場片づけ等

a 前記争いのない事実等のとおり,原告は,消防等の現場検証が終了した後,Cの代理店であるJ保険サービスに本件火災の発生を連絡する前に本件建物内の片づけを開始しており,連絡したのは,本件火災発生からは約16時間後の午後6時ころのことであった。また,証拠(乙10,28,原告本人の一部)及び弁論の全趣旨によると,原告は,被告Bが本件火災後の当日朝に調査のため本件建物等を訪れていたこと認識していなかったこと,原告は本件火災の後,Fに対して,費用は原告が出すので本件建物をすぐに取り壊してもらえないかとの依頼をしたことが認められる。

b これに対し,原告は,本件火災により「パニック状態」であったので,誰かに教えられて初めて保険会社に連絡しなければならないことに気が付いた,それから何度もJ保険サービスに連絡を取ろうとしたが,すぐには連絡先が分からなかったこともあって,なかなか連絡がつかなかったと弁解する。

なるほど原告も供述するように,自己所有だと思っている家屋に全く心当たりのない放火が行われ,建物や高価で大切にしていた骨とう類が燃えてしまうなどの事態に遭遇すれば,大きなショックを受けるのが通常の反応であるといえる。しかしながら,原告側提出の長女,長男,親せき等の各陳述書によっても,原告が現実に「パニック状態」にあったことをうかがわせるような事情は一切見あたらない。かえって,空き家であった本件建物について,警察や消防の現場検証が終わったとたんに本件建物内の焼残物を片づけなければならない理由は見出し難いにもかかわらず,本件火災の当日から片づけを開始している原告の行動には,冷静ささえうかがわれ,突然の火災に遭った者の行動とは認め難いものがある。

加えて,何度もJ保険サービスに連絡を取ることを試みるほどであれば,被告Bや本件火災のわずか2週間前に契約をしたKに対しても連絡すべきであることは当然念頭に浮かぶはずと思われるが(被告Bは,実際には独自に本件火災を認知して本件火災後の当日朝に本件建物を訪れているが,上記認定のとおり原告はその事実を認識していないから,原告の主観において連絡の必要が生じるべき点では異ならない。),原告は,被告Bらに本件火災の連絡をしようとさえしておらず,そのことについて合理的な説明はされていない。

また,原告は,本件建物の取壊しを依頼したことはないとも供述するが,本件建物の明渡し請求に関するF代表者Gと原告の供述の信用性からみて,取壊し依頼についての原告の供述は信用し難い。

c 以上からすれば,原告には,保険会社等に対して真剣に連絡を取ろうとする気持ちは薄く,また,できるだけ早急に本件火災現場の状況を改変しようとしていたと認めるのが相当である。

(イ) 放火犯人追及への関心の薄さ

証拠(原告本人の一部)によると,本件火災後,原告は近所の人たちに不審な人物や車を目撃していないかなどを聞いたと供述しているが,それ以上に何かを調べたかについては,「調べるというのは,警察の人に尋ねないと。」,「(福下などの原告の相談相手と)何でやろうなというようなことは話をしましたけど。警察の人が一番いいんだろうなと思って。」などと供述しており,原告は,放火の被害者であればもっとも関心を抱くべき放火犯人像について,近所の人たちに聞く以上のことはしなかったことが認められる。

(ウ) 原告の損害申告内容の虚偽性

a 前記争いのない事実等,証拠(甲10,乙4の4・5,8の1・2,22,29の10・12ないし14,30の26,31,35,丙5の94及び原告本人の一部)及び弁論の全趣旨によると,原告の本件罹災動産の損害申告に関し,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。

(a) 被害品の確認状況

平成8年10月11日午後2時すぎころ,Cが現場調査を行った際には,本件建物内はほとんど片づけられており,本件保険契約の明記物件のうち,和服,洋服,ついたて2本,紫檀手彫り屏風,古文書,有田焼香炉,九谷焼5点の存在が確認できなかったため,調査担当者は,原告に上記各動産が未確認であることを告げ,その所在確認をしようとした。しかし,原告から具体的な説明がなかったため,上記未確認動産のリストを書いた紙片を原告に交付しておいた。結局この日,原告が上記未確認動産の罹災状況を示すことはなかった。

(b) 和服について

和服が罹災動産としてCに示されたのは,平成8年11月7日の罹災動産の引取りのときが初めてであった。Cの調査担当者が見たところでは,焼けた跡などは特に見あたらず,多少のシミ等は見られたが,クリーニングですむ程度のものであると判断して,引取りをしなかった。また,原告は,本件訴訟において,和服の具体的損害内容を立証すべき証拠を何ら提出していない。

(c) 衣類(洋服)について

原告は,本件訴訟前損害申告において,別紙罹災動産目録記載1の番号79ないし81,85ないし89,91,93,96,98,102の衣類を,本件建物1階寝室における罹災動産として申告した。また,本件訴訟においては,原告第8準備書面(平成12年2月4日陳述)で,番号93を除く上記衣類の収納場所をより具体的に同寝室内の「クローゼット」と特定した。これに対し,Cが,火災直後の本件クローゼットの状況からは原告主張の上記多量の衣類が収納されていたとは思われないと反論したところ,原告は,原告第13準備書面(平成12年7月19日陳述)で,別紙罹災動産目録記載1の番号79ないし93,96ないし98,102の衣類の収納場所を「1階クローゼット他」と特定した(衣類の量としては,番号84の「セーター・夏,冬」合計100枚なども含めたため,結果的にはむしろ増加している。)。

他方,原告が本件建物の片づけを始める前に行われた消防署の実況見分で,焼損状態の確認等のために倒壊していた本件クローゼットの扉(いずれも上端付近が一部焼損しているが,そのほかの部分は焼け焦げているものの,ほぼ原形をとどめている。)は立てられた状態に復元されたが,その際,クローゼットの内部は上段及び下段ハンガーも脇の収納段もほとんど空の状態であった(乙4の5の№24及び25)。そして,本件火災の翌日の本件クローゼットの内部の状況は,上部4分の1が黒く焦げているが,その他の部分は多少すすけているかどうかという程度であり,内部で物が燃えた形跡はなかった(乙29の12ないし14)。

そして,原告は,この実況見分の後,このほとんど空の状態のクローゼット内を自ら片づけた。

b これに対し,原告は,和服について,平成8年10月11日の調査の際,本件建物の2階で和だんす内に収納されているところをCの調査担当者に示したと供述するが,乙30の26及び丙5の94によると,既に同日Cが調査をした際には,当該和だんすは2階から搬出されていたことが認められるから,上記原告供述は客観的状況に反するし,原告提出にかかる「保険金請求必要書類のご案内」(平成8年10月24日C作成。甲11)には,和服及び洋服が未確認であることが明記されており,原告がこれに対して何らかの不満を述べたことなどの事情がうかがわれないことからすると,上記原告供述はそのままには信用できない。

また,原告は,クローゼットの中には洋服がつり下げられるなどしてびっしりと入っていたが,本件火災後には,「ちょっと不思議やな思っていたのは,洋服が少なくなっていたというか,ちょっとあれっと思った時期はありました。」,「焼けて落ちたのかなと思っただけのことで。」などと供述する。しかしながら,上記認定のクローゼットの状況からすると,本件火災前にびっしりと入っていた洋服が本件火災でほとんど焼け落ちてしまったとは認められないのであって,洋服がびっしり入っていたとの原告供述は信用し難い。

c よって,以上の認定事実からすると,原告が本件火災で損害を被ったと申告する和服,衣類(洋服)の一部はともかく,すべてが本件火災時において本件建物内に存在し,かつ罹災したとまでは認められず,また,この点に関し,原告は自己の申告が客観的事実に反することを認識していたと認められるから,原告は虚偽の申告をしたというべきである。

(2)  判断

以上のとおり,本件火災当時,原告は経済的に困窮していたこと,本件火災が起きたのは,通告されていた本件建物の明渡し期限の直前であること,火災直前に少なくない保険料を支払って重複保険契約を締結していること,加入している保険金額等の総額が保険価額に比べ過大であること,本件火災そのものも本件建物内部の状況を知る者が関与していると推認されること,本件火災後において原告が本件火災現場の状況を早急に改変しようとしたり,損害額を過大に請求したりしていることなどを総合的に考慮すると,本件放火は原告と意思を通じた何者かによって惹起された放火であると推認するのが相当である。

そうであれば,本件火災は原告の故意によって生じたといえるから,被告らは,原告に対して本件火災による損害について損害保険金ないし損害共済金を支払う責任を免れる。

2  以上のとおりであるから,その余の争点について判断するまでもなく,原告の被告らに対する請求は棄却を免れない。

第4結論

よって,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古川行男 裁判官 西村欣也 裁判官 竹村昭彦)

別紙建物目録

所在  a県e郡e町f字突出し1104番地の1

家屋番号  165番

種類  居宅

構造  木造瓦葺2階建

床面積  1階 74.38m2

2階 46.28m2

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