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神戸地方裁判所 平成2年(ワ)1019号 判決 1993年3月31日

第一事件原告(第二事件原告)

清水重雄

第一事件被告

井福明人

第二事件被告

池田雄亮

主文

一  第一事件につき

1  反訴被告は、反訴原告に対し、金一九万六八〇〇円及びこれに対する平成元年一一月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  反訴原告のその余の反訴請求を棄却する。

3  訴訟費用は、反訴原告の負担とする。

二  第二事件につき

1  被告は、原告に対し、金二四一万六一二二円及びこれに対する平成元年一一月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、これを一〇分し、その三を原告の、その七を被告の各負担とする。

三  この判決は、第一事件の反訴原告・第二事件の原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

以下、「第一事件反訴原告・第二事件原告清水重雄」を「原告清水」と、「第一事件反訴被告井福明人」を「第一事件被告井福」と、「第二事件被告池田雄亮」を「第二事件被告池田」と、各略称する。

第一請求

一  第一事件

第一事件被告井福は、原告清水に対し、金三四六万四五六六円及びこれに対する平成元年一一月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  第二事件

第二事件被告池田は、原告清水に対して、金三四六万四五六六円及びこれに対する平成元年一一月一九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  第一・第二事件に共通

別紙事故目録記載の交通事故(以下、本件事故という。)の発生。

2  第一事件

(一) 第一事件被告井福の本件責任原因(前方不注視・車間距離不保持の過失=民法七〇九条所定)の存在。

(二) 原告車が本件事故により損傷した。

二  争点

第一事件

1  本件事故の態様及び第一事件被告井福の責任範囲

原告清水の主張

原告車が、本件事故現場付近を走行中、第二事件被告車が原告車前方に割り込んで来たため、原告車は、第二事件被告車との追突を避けるべく急停車しようとした。

そして、原告車がまさに停車しようとしたその瞬間、第一事件被告車が、原告車に追突し、原告車がその衝撃で前方に押し出されて、その前部が第二事件被告車後部に追突した。

本件のように、各車両がほぼ同時に急ブレーキを掛けた状況下の事故においては、原告車前部の損傷が、第二事件被告車との衝突のみによつて発生したと安易に推論するのは妥当でなく、いずれの衝突によるものであるかは明確に断定し難い場合として共同不法行為によつて処理することが妥当である。

第一事件被告井福の主張

原告清水の主張事実中第二事件被告車が本件事故現場付近において原告車の前方に割り込んで来たこと、原告車が第二事件被告車との追突を避けるため急ブレーキを掛けたこと、第一事件被告車が原告車に追突したとは認めるが、その余の主張事実は否認し、その主張は争う。

第一事件被告車が原告車に追突したのは、原告車が第二事件被告車に追突した後であり、それも、原告車後部に僅かに追突したに過ぎない。

したがつて、原告車の前後部には本件事故による損傷があるが、第一事件被告井福が責任を負う同破損箇所は、原告車後部の損傷部分に限られる。

2  原告清水の本件損害の具体的内容

第二事件

1  本件事故の態様及び第二事件被告池田の本件責任原因

原告清水の主張

本件事故の態様は、第一事件被告井福に対する主張と同じ。

したがつて、第二事件被告池田は、車間距離不保持・安全運転義務違反(急な割り込み運転)の一方的過失により本件事故を惹起したというべきである。

第二事件被告池田の主張

原告清水の主張事実中原告車前部が第二事件被告車後部に追突したことは認めるが、その余の主張事実は否認し、その主張は争う。

第二事件被告車は、本件事故以前から前方を走行する車両の後方を適当な車間距離を保持しながら走行していた。

ところが、先行車両が本件事故現場付近において急停車したため、第二事件被告池田も止むを得ず急停車したものである。

原告車が第二事件被告車に追突したのは、原告車の運転者柏木栄児が適切な車間距離を保持しないかあるいは前方不注視で原告車を走行させたためである。

したがつて、本件事故の発生原因は、原告清水側の一方的過失にあり、第二事件被告池田には過失がない。

2  原告清水の本件損害の具体的内容

第三争点に対する判断

一  第一事件

1  本件事故(追突)の態様及び第一事件被告井福の責任範囲

(一) 本件事故(追突)の態様

(1) 原告清水の主張事実中第二事件被告車が本件事故現場付近において原告車の前方へ割り込んで来たこと、原告車が第二事件被告車との追突を避けるため急ブレーキを掛けたこと、第一事件被告車が原告車と追突したことは、当事者間に争いがない。

しかして、原告清水において、原告車は、本件事故直前急停車するかしないかの時、第一事件被告車から追突され、そのため前方に押し出されて第二事件被告車に追突した旨主張する。

しかして、原告清水の右主張事実にそう証拠(乙四の一部、証人柏木栄児の一部。)があるが、同文書の記載内容部分や同証人の供述部分は、後掲各証拠及びそれに基づく後記認定各事実と対比してにわかに信用することができず、他に右主張事実を肯認するに足りる証拠はない。

(2) かえつて、証拠(甲一、五、証人中原輝史、同柏木栄児の一部、第一事件被告井福本人、弁論の全趣旨。)を総合すると、次の各事実が認められる。

(a) 第一事件被告井福は、本件事故前、第一事件被告車を運転し県道高速西宮線上り路上を大阪方面へ向け進行していたが、生田川ランプ出口付近で同道路の追越し斜線に入り原告車の後方を走行し始めた。

原告車と第一事件被告車との車間距離は、普通乗用自動車が一台ないし一台半入る程度あつた。

同人は、本件事故現場付近に至つた時、第二事件被告車が隣接する走行車線を走行するのを認めたが、同車両は、その直後、同走行車線から同追越し車線に車線変更をし、原告車の前方に入り込んだ。そして、同人は、その直後、原告車に急ブレーキが掛けられ同車両のブレーキランプ赤色が点灯したのを認め、とつさに自車にも急ブレーキを掛けた。

第一事件被告車は、急ブレーキを掛けたままの状態でずるずると進行し、完全に停車する直前の段階で原告車の後部に追突して、その場に停止した。

しかし、第一事件被告井福は、右追突時、少し前に行くような感じを受けたものの、追突の衝撃を全く感じなかつたし、自車が原告車を前方に押し出す感じもなかつた。

(b) 柏木栄児は、本件事故当時、原告車を運転し第一事件被告車の前方を大阪方面に向け進行していたが、その際、原告車と先行車両との間隔は、約二〇メートルあつた。

同人は、本件事故直前、原告車のバツクミラーで自車左後方(左右は、当該車両の運転席に着席し前方を見た姿勢を基準とする。以下同じ。)からかなりの高速で追越しをかけようとしている第二事件被告車を認めていたが、同車両は、本件事故現場付近において、原告車の前方へ無理矢理入る形で割り込んで来た。

同人は、その直後、第二事件被告車のブレーキランプ赤色が点灯したのを認め、原告車に急ブレーキを掛けた。

(c) 本件追突に関する自動車工学的考察は、次のとおりである。

イ 原告車と第一事件被告車の形状

第一事件被告車

長さ三一九センチメートル 幅一三九センチメートル 高さ一四〇センチメートル

車両重量五九〇キログラム

定員二(四)名

本件事故当時大人一名乗車していたから、車両総重量は、六四五キログラムとなる(大人一名の体重は後記のとおりとする。)。

原告車

長さ五一六センチメートル 幅一八二センチメートル 高さ一四四センチメートル

車両重量一七八〇キログラム

定員五名

本件事故当時少なくとも大人三名乗車していたから、車両総重量は、一九四五キログラムとなる(大人一名の体重を平均五五キログラムとし、同三名の総体重を一六五キログラムとする。)。

ロ 本件関係車両の各損傷状況

第一事件被告車

主な損傷

前部

フロントバンパー(特に、その上方。)が約四センチメートル後方へ押されて歪曲及びフロントバンパー左右端が後方へ押されやや開き気味に歪曲した状態・フロントバンパーの中央よりやや右側に各独立した擦過痕二箇所・ボンネツト中央よりやや左側部分に凹損。

原告車

主な損傷

前部

左側ヘツドライトレンズ破損・フロントバンパー中央よりやや左側の擦過痕・ラジエーター粋上部左側の凹損・ラジエーターグリル前面の損傷・エンジンルーム内ラジエーター左側が右側に対して後方へ押された状態・ファン羽根に接触損傷。

後部

リヤバンパー右後方に軽度の接触擦過痕。

右擦過痕以外にリヤバンパー後面に損傷痕はないし、リヤバンパー左右端等に衝突による前方移動はない。

結局、原告車後部には、極めて軽微な損傷しか存在しない。

第二事件被告車

主な損傷

前部

フロントバンパー前面がほぼ均等に約五センチメートル後方へ押されて歪曲し、特に、フロントバンパー右端は、左端に比較して大きく歪曲。

後部

リヤバンパー右端は、前方へ押されて歪曲し、リヤフエンダーに接触、それに対し、同左端は、殆ど前方へ移動していない。リヤバンパー後面中央より右寄りに接触擦過痕・その上方テールレンズの亀裂。

ハ 原告車後部損傷の発生原因

原告車後部損傷の発生原因は、原告車後部及び第一事件被告車前部の前期各損傷の状態から、次のとおり推認される。

第一事件被告車のフロントバンパーが、本件事故時、原告車リヤバンパー上部に接触し、その後第一事件被告車にブレーキが掛かり、その前部が低下したことにより同フロントバンパーが下方へ擦過した。

そのため、原告車リヤバンパーに前記接触擦過痕が発生した。

ニ 第一事件被告車前部と原告車後部の塑性変形量と有効衝突速度との関係

Ⅰ 一般的考察

ⅰ 所謂「玉突き衝突」とは、一般的に、信号待ちによつて順次停止しているB車、C車、D車…等に対し、何らかの原因によつてA車がB車に追突し、そのため前方へ押し出された「B車がC車へ」「C車がD車へ」…と順次前車へ追突する衝突をいう。

ⅱ 右事例において、仮に各車両が同種(形状・質量等)のものであろうとすると、物理学上の法則である運動量不変の法則により、A車の運動量の二分の一がB車へ、B車の運動量の二分の一がC車へ…と順次二分の一ずつが前車へ分与される。

したがつて、A車のB車への追突速度の二分の一がB車へ、B車のC車への追突速度の二分の一がC車へ…、即ち、B車の速度は、A車の二分の一、C車の速度は、A車の四分の一となる。

ⅲ 右同衝突による塑性変形量は、原則的には、A車前面とB車後面は同量となり、その有効衝突速度は、それに見合つたものとなる。

なお、質量の異なる車両の場合は、質量の逆比の関係となる。

このA車前面の有効衝突速度とB車後面の有効衝突速度の合計が、A車のB車への衝突速度に等しい。

ⅳ 玉突き衝突の場合において、関係車両の塑性変形量及び有効衝突速度は、後車から前車にかけて順次二分の一、四分の一、八分の一…となる。

Ⅱ 一般的考察の本件事故への適用

ⅰ 第一事件被告車前部及び原告車後部の各損傷状況は、前記認定のとおりであるが、同認定事実を基礎として、同関係車両の同関係部分における塑性変形量及び有効衝突速度を自動車工学上の公式を用いて算定すると、次のとおりとなる。

第一事件被告車前面

塑性変形量 〇・〇四メートル

有効衝突速度 時速四・二キロメートル

原告車後面

塑性変形量 〇・〇一三メートル

有効衝突速度 時速一・四キロメートル

(ただし、原告車と第一事件被告車の質量の差から逆比となる。)

第一事件被告車の原告車への追突速度

時速五・六キロメートル

第一事件被告車が原告車に追突後、原告車が第二事件被告車に与える速度

時速一・四キロメートル

原告車後面の塑性変形量は、同車両リヤバンパーの擦過痕等に見合つたものである。

原告車前部及び後部の塑性変形量を比較すると、前部の方が後部よりも遥かに大きい状態である。

ⅱ 考察

<1> 原告車の本件損傷が玉突き衝突によるものとすれば、同車両前部の塑性変形量及び有効衝突速度が、同車両後部のそれよりも大となることは有り得ない。

<2> 原告車前部の損傷状態、第一事件被告車が原告車に追突後、原告車が第二事件被告車に与える速度は、時速一・四キロメートルであることは、前記認定のとおりであるところ、原告車が同速度で第二事件被告車後部に追突しても 原告車前部に同認定のような損傷が生じない。

<3> 原告車のリヤバンパーは、そのバンパーシステムにより時速八キロメートル程度までの衝突(追突)時エネルギーを適度吸収するようになつており、時速五キロメートル前後の衝突によつて生じた凹痕程度は、殆どの場合時間の経過とともに復元する。

ⅲ 結論

本件事故の態様としては、次のとおり結論される。

即ち、原告車が、第一事件被告車の追突によつて前方へ押し出されたのではなく、原告車が、急ブレーキを掛け第二事件被告車に追突した後、第一事件被告車が原告車に追突したものである。

(d) 右認定各事実に照らしても、原告清水の前記主張事実は、これを肯認し得ない。

むしろ、右認定各事実を総合すると、争点である本件追突の態様としては、右自動車工学的考察の結論と同一と認めるのが相当である。

(二) 第一事件被告井福の本件責任範囲

(1) 原告清水において、第一事件被告井福は原告車前後部全体の損傷につき本件責任を負うべきである旨主張するが、これを肯認するに足りる証拠がない。

(2) かえつて、原告車後部の損傷状態、本件争点である本件追突の態様等は、前記認定のとおりであるところ、同認定に基づけば、右被告井福は、原告車後部損傷の範囲内で、その責任を負うと認めるのが相当である。

2  原告清水の本件損害の具体的内容

(一) 修理費用(請求 金二五三万六〇六六円) 金一九万六八〇〇円

(1) 原告車後部の損傷状態、第一事件被告井福の本件責任の範囲等は、前記認定のとおりである。

(2) 証拠〔甲四、五、乙三の3、丙一、証人野田旭(第一回)。〕によれば、原告車後部の修理は、リヤバンパーASSYの取り替え及び同バンパーが押した両フエダー部分(極めて軽微な復元後におけるリヤバンパー内部の移動痕跡)の板金修理であつたこと、同バンパー取り替え費用は、金一九万六八〇〇円(部品価格 金一八万八八〇〇円・工賃 金八〇〇〇円の合計額。)であつたことが認められる。

しかし、右板金修理費用の確定額については、これを認めるに足りる証拠がない。

(3) 右認定各事を総合すると、本件事故と相当因果関係に立つ損害(以下、本件損害という。)としての修理費用は、金一九万六八〇〇円と認める。

(二) 代車料(請求 金九二万八五〇〇円)

第一事件被告井福の本件責任の範囲、原告車後部の損傷状態、同損傷に対する修理費用等は、前記認定のとおりであるところ、同認定各事実に相応する、本件損害としての適正な代車料額は、これを確定し得る証拠がない。

よつて、原告清水が主張請求する代車料は、その全額については勿論、その一部についても、未だこれを肯認するに至らない。

(三) 原告清水の本件損害額 金一九万六八〇〇円

二  第二事件

1  本件事故(追突)の態様及び第二事件被告池田の本件責任の存在及びその範囲

(一) 本件事故(追突)の態様

本件追突の態様については、第一事件において認定説示したとおりであるから、同認定説示を引用する。

(二) 第二事件被告池田の本件責任の存在及びその範囲

前記引用にかかる認定説示に基づくと、

(1) 第二事件被告池田は、車間距離不保持・安全運転義務違反(急な割り込み運転)の過失により第二事件被告車と原告車との本件追突を惹起し、したがつて、民法七〇九条に基づき、原告清水の本件損害に対し賠償責任を負うと認めるのが相当である。

(2) しかして、右被告池田の右責任は、原告車前部の全損傷に及ぶと認めるのが相当である。

(3) 右認定説示に反する、右被告池田の主張は、理由がなく採用できない。

2  原告清水の本件損害の具体的内容

(一) 修理費用(請求 金二五三万六〇六六円) 金一八七万五一〇〇円

(1) 証拠〔乙一の1ないし4、九の1、丙一、証人市川敏昭の一部、同野田旭(第一、第二回。)、弁論の全趣旨〕によれば、次の各事実が認められる。

(a) パーツ(部品)代金

見積り金額 金一四一万二二〇〇円

イ 右見積り中実際に修理しなかつた部品とその金額

左リヤフエンダー 金七万一一〇〇円

右リヤフエンダー 金八万〇一〇〇円

右ガーニツシユ 金二万一〇〇〇円

字光式ナンバープレート台 金一万八一〇〇円

合計 金一九万〇三〇〇円

ロ 原告車後部損傷部品

(リヤバンパーASSY) 金一八万八八〇〇円

修理実費 金一〇三万三一〇〇円

141万2200円-(19万0300円+18万8800円)=103万3100円

なお、原告清水は、コンビネーシヨンランプASSY(ヘツドライト。単価金四万二七〇〇円。)につき、現実に修理された左右側分全部を本件修理代金中に含ましめるべきである旨主張する。

しかしながら、前掲各証拠によれば、原告車のヘツドライト中本件事故によつて損傷したのは左側分であるところ、証人野田旭(第一回)によれば、同野田が勤務する中田モータスでは、同車両のヘツドライトの左右側分とも修理したこと、ただ、同右側分については、、原告清水からのヘツドライトの焦点に基づく要望で、特に取り替えたことが認められ、右認定各事実に照らすと、原告清水の右主張分、即ち、右側ヘツドライト分は、所謂特別損害に該当するというべきである。

したがつて、同人の右主張分についても第二事件被告池田にその責任を負わしめるためには、別途、そのための要件の主張を要するところ、同要件事実の主張がない。

よつて、原告清水の右主張は、理由がなく採用できない。

(b) 工賃及び塗装費用

工賃 金四五万円

控除すべき工賃 金八〇〇〇円

(ただし、原告車後部の修理に関する前記金八〇〇〇円。)

塗装費用 金四〇万円(ただし、全塗装。)

合計 金八四万二〇〇〇円

(45万円-8000円)+40万円=84万2000円

右塗装費用については、証人野田旭(第一、第二回)によれば、原告車の本件塗装は全塗装が相当であること、前記中田モータスが、原告車の全塗装費用として、同車両の本件塗装に当たつた下請業者に金四〇万円を支払つたことが認められるので、同支払い金額をもつて、本件損害と認める。

修理費用の総額 金一八七万五一〇〇円

(二) 代車料(請求 金九二万八五〇〇円。

ただし、平成元年一一月二〇日から同年一二月二三日分までの分 金三七万三五〇〇円。

平成元年一二月二四日から平成二年一月三〇日までの分

金五五万五〇〇〇円。)

金五四万一〇二二円

(1) 確かに、証拠〔乙一の4、二、三、証人市川敏昭、同野田旭(第一回)。〕によれば、原告清水が原告車の修理中代車料としてその主張期間に主張金額を支払つたことが認められる。

(2) (a)他方、証拠〔証人野田旭(第一、第二回)、弁論の全趣旨。〕によれば、原告車は、本件事故後の平成元年一一月二〇日、修理のため、前記中田モータスに搬入されたが、同車両の修理は、原告清水と保険会社間の折衝のため、二週間差し止められたこと、原告車と同種車両の修理期間は、通常、塗装関係を除く修理(部品発注を含む。)に一七日、塗装関係に二一日、仕上げに四日の合計四二日であること、本件において原告車の修理が同通常期間より遅れたのは、原告清水が原告車の塗装過程において塗装色等につき細かい注文を出して手直しをさせたためであることが認められる。

しかして、右認定各事実に照らすと、原告清水主張の本件代車期間中平成元年一一月二〇日から同年一二月三日までの一四日間、平成二年一月一五日から同月三〇日までの一六日間については、本件事故との間の相当因果関係の存在を認め難い。

したがつて、同期間内における代車料も、本件損害とは認め得ず、同代車料は所謂特別損害というほかなく、これをも第二事件被告池田に責任を負わすためには、別途、そのための要件の主張を必要とするところ、同要件事実の主張がない。

(b) 右認定説示に基づくと、原告清水の本件損害としての代車料は、平成元年一二月四日から平成二年一月一四日までの四二日間(以下、本件相当代車期間という。)分と認めるのが相当である。

(3) そこで、前記(1)掲記の各証拠に基づき、本件相当代車期間内における代車料を算定すると、次のとおりとなる。(円未満四捨五入。)。

平成二年一二月四日から同月二三日までの分 金二一万九七〇六円

(37万3500円÷34)×20≒21万9706円

平成二年一二月二四日から平成三年一月一四日までの分 金三二万一三一六円

(55万5000円÷38)×22≒32万1316円

合計 金五四万一〇二二円

(三) 原告清水の本件損害の合計額 金二四一万六一二二円

第四全体の結論

以上の全認定に基づき、原告清水は、

一  第一事件被告井福に対し、本件損害合計金一九万六八〇〇円

二  第二事件被告池田に対し、本件損害合計金二四一万六一二二円

三  右各金員に対する本件事故の日の翌日であることが当事者間に争いのない平成元年一一月一九日からいずれも支払ずみまで民法所定年五分の割合による各金員の各支払いを求める各権利を有するというべきである。

よつて、原告清水の反訴請求(第一事件)・本訴請求(第二事件)は、いずれも右認定の限度で理由があるから、それぞれその範囲内でこれらを認容し、その余は、いずれも理由がないからこれを棄却する。

(裁判官 鳥飼英助)

事故目録

一 日時 平成元年一一月一八日午後八時三〇分頃

二 場所 神戸市灘区日ノ出町四丁目・県道高速神戸西宮線上り二七・八KP先路上

三 加害(被告)車 第一事件被告井福運転の軽四貨物自動車(以下、第一事件被告車という。)

第二事件被告池田運転の普通乗用自動車(以下、第二事件被告車という。)

四 被害(原告)車 原告清水所有・柏木栄児運転の普通乗用自動車(西独製メルセデスベンツ五六〇SEL。以下、原告車という。)

五 事故の態様 原告車前部が、本件事故現場において、第二事件被告車後部に、同じく、原告車後部に第一事件被告車前部が、それぞれ追突した。

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