神戸地方裁判所 平成4年(わ)281号 判決 1992年9月25日
本籍
神戸市垂水区向陽二丁目一番
住居
神戸市垂水区向陽二丁目一番一三号
葬祭業
小林賢久
昭和二六年五月一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官巌文隆出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、兵庫県西宮市甲子園口六丁目三番一号に事務所を置き、「イースター式典社」の屋号でキリスト教専門の葬祭業を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 昭和六三年分の総所得金額は一九〇六万九三八三円で、これに対する所得税額は四八五万七六〇〇円であるにもかかわらず、ことさら過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成するなどの行為により、総所得金額のうち、一六二六万九三八三円を秘匿したうえ、平成元年三月一三日、神戸市長田区御船通一丁目四所在の長田税務署において、同税務署長を介し、神戸市須磨区衣掛町五丁目二番一八号所在の所轄須磨税務署長に対し、同年分の総所得金額は二八〇万円で、これに対する所得税額が五万七〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四八五万七六〇〇円との差額四八〇万〇六〇〇円を免れ、
第二 平成元年分の総所得金額は二六六八万三八一七円で、これに対する所得税額は八五〇万三五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、総所得金額のうち、一九七九万〇一一七円を秘匿したうえ、平成二年三月一三日、前記長田税務署において、同税務署長を介し、前記所轄須磨税務署長に対し、同年分の総所得金額は六八九万三七〇〇円で、これに対する所得税額が七〇万三四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額八五〇万三五〇〇円との差額七八〇万〇一〇〇円を免れ、
第三 平成二年分の総所得金額は三九一六万五一八一円で、これに対する所得税額は、一四五八万七五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、総所得金額のうち、三二六六万五一八一円を秘匿したうえ、平成三年三月一三日、前記所轄須磨税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額は六五〇万円で、これに対する所得税額が五七万九六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一四五八万七五〇〇円との差額一四〇〇万七九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一三通
一 小林幸子の検察官に対する供述調書
一 玉村和彦(二通)、松井はるみ、松井宣彦、向井瞳、板垣克雄、大西史朗、前田由喜男、藤本政二、村上徳男、後藤寿和、早川澄子、田中萬里子、武井良雄、小笠原一久、小笠原恵子、石井博子、沼田清子(三通)、小林幸子(四通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面
一 大蔵事務官作成の査察官調査書三五通
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書」と題する書面(自昭和六三年一月一日・至昭和六三年一二月三一日分)
一 大蔵事務官作成の「証明書」と題する書面(含昭和六三年分所得税確定申告書謄本)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書」と題する書面(自昭和六四年一月一日・至平成元年一二月三一日分)
一 大蔵事務官作成の「証明書」と題する書面(含平成元年分所得税確定申告書謄本)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書」と題する書面(自平成二年一月一日・至平成二年一二月三一日分)
一 大蔵事務官作成の「証明書」と題する書面(含平成二年分所得税確定申告書謄本)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、情状によりいずれも所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一〇月及び罰金六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 小川育央)