大判例

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神戸地方裁判所 平成4年(行ウ)47号 判決

原告

松永義輝

被告

芦屋市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長

天王寺谷又之助

右訴訟代理人弁護士

俵正市

小川洋一

右指定代理人

松本明

西嘉成

事実及び理由

第三 争点についての判断

一  原告は、本件処分が本件流し台の評価額を本件家屋の評価額に含めていることをとらえて、本件処分は本件家屋に加えて本件流し台に対しても固定資産税の評価額を決定したものであるから違法である旨主張する。

しかし、右争いのない事実によれば、本件流し台の評価額が本件家屋の評価額に含まれているといっても、それはあくまでも本件家屋の評価の方法に過ぎず、本件処分の評価の対象自体は本件家屋であると認められる。原告の主張は、本件流し台の評価額を家屋の評価額に「含める」ということの意味を曲解したものといわざるを得ない。

二  地方税法三八八条及び四〇三条一項は、市町村長が家屋の評価額を決定するに当たっては、自治大臣が定めた固定資産評価基準によってその価格を決定しなければならないと定めている。この趣旨は、固定資産税が固定資産という物の価値に担税力を見出すものであり、課税の前提として固定資産の価格評価の適正及び均衡が重要であることから、いずれの地方公共団体も右課税標準によることにより、適正かつ均衡のとれた評価を実現しようとするものであると解される。

したがって、右評価基準中の個々の規定の解釈に当たっても、固定資産の価格評価の適正及び均衡という観点が常に念頭におかれなければならない。

そして、右評価基準第二章第一節七では、「家屋の所有者が所有する電気設備(中略)、ガス設備、衛生設備、給排水設備、空気調和設備、消火設備、避雷設備、運搬設備、塵芥処理設備等の建築設備で、当該家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっているものについては、家屋に含めて評価するものとする。」とされている(以下「本条項」という。)。固定資産の価格評価の適正及び均衡という観点から考察すると、本条項の趣旨は、このような建築設備は、家屋と一体となることで初めてその機能を発揮し、かつ、それにより家屋の効用をより高めるもの(つまり家屋自体の価値を高めるもの)であるから、その評価額も家屋の評価額に含めるべきだという考えに基づくものと解される。

したがって、ある建築設備が本条項にいう「当該家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体」といえるか否かについては、家屋と設備の単なる物理的な接着の程度に止まらず、当該設備が、右に述べたような性質を有するものであるかという観点も含めて判断すべきである。

三  ところで、原告は、本条項中の「構造上一体」というのは不明確であると主張し、これに当たるか否か困難な例として種々のものを挙げる。

確かに、家屋と設備の接着程度には段階があるから、形式的な接着程度のみから「構造上一体」かどうかを判断するとすれば、必ずしも明確とは言い難い。しかし、<1>既に判示したとおり、「構造上一体」かどうかも立法趣旨を踏まえて行うべきものであり、そこからある程度の限界付けは可能となると思われること、<2>家屋に取り付けられる建築設備は多種多様であり、それらすべてを家屋の評価額に含めるべきものとそうでないものとに網羅的に区分することは困難であること、<3>本条項には電気設備を始めとする多数の例示があることを考えると、このような用語が使われているからといって本条項が課税要件明確主義に反する程不明確であるとは言い難いというべきである。

四  本件流し台は、〔証拠略〕によれば、流し台の他に、ガステーブル、換気口、オーブン等が備え付けられており、それらは家屋の給排水設備、給湯設備、ガス設備、電気設備と連結されて、家屋での湯水の利用や調理等を可能とするものであるから、それのみ単独で存在しても意味がなく、本件家屋と一体となってその機能を発揮し、家屋の効用を高めるものであるといえる。

また、甲第四号証によれば、本件流し台の購入費は八六七万円、その設置費用は一六九万円であることが認められるから、本件流し台は、本件家屋の経済的価値を相当程度高めるものであるということができる。

他方、前掲各証拠によれば、本件家屋の一階、二階及び三階に備え付けられている本件流し台は、床や壁面にコーキング等によって固定されており、物理的な接着の程度もかなり高い(移動は、物理的に不可能ではないにせよ、かなり困難であり、事実上特定の場所に恒久的に固定されているといってよい。)と認められる。

以上を総合すると、本件流し台は、本条項にいう「家屋の所有者が所有する(中略)建築設備で、当該家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっているもの」に該当し、本件流し台が右に該当するとの見解のもとにその評価額を含めて家屋の評価額を決定している本件処分は適法であり、したがって、本件決定も適法であると解すべきである。

五  よって、原告の本訴請求は理由がない。

(裁判長裁判官 辻忠雄 裁判官 吉野孝義 伊東浩子)

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