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神戸地方裁判所 平成8年(ワ)1645号 判決 1997年10月28日

原告

北野修三

ほか三名

被告

山下光広

主文

一  被告は、原告北野修三に対して二八万九二五五円、原告株式会社菊水ゴルフクラブに対して一五万四九八九円及び原告北神株式会社に対して四万二五八〇円並びに右各金員(但し、原告北野修三につき内二三万九二五五円)に対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告北野修三、原告株式会社菊水ゴルフクラブ、原告北神株式会社のその余の各請求及び原告サンスリー商事株式会社の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告北野修三(以下「原告北野」という。)に対して四三万九二二五円、原告株式会社菊水ゴルフクラブ(以下「原告菊水」という。)に対して一五八万三六六六円、原告北神株式会社(以下「原告北神」という。)に対して三四万一六六六円及び原告サンスリー商事株式会社(以下「原告サンスリー」という。)に対して六万八三三三円並びに原告北野につき内三三万九二二五円、その余の原告らにつき右各金員に対する平成八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告運転、所有の普通乗用自動車に追突されて損害を受けたとして、原告自身及び原告が代表取締役をしている会社が、被告に対して民法七〇九条及び自賠法三条によりそれぞれ損害賠償を求めた事案である。

なお、付帯請求は、訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。

一  争いのない事実等

1  本件事故の発生

(一) 日時 平成八年二月六日午後一〇時四五分頃

(二) 場所 神戸市北区山田町小部字向イ谷二三番地の一先道路

(三) 加害車 被告運転、所有の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)

(四) 被害車 原告運転の普通乗用自動車(以下「原告車」という。)

(五) 態様 雪が降り、緩い下り坂であったため、原告は、最徐行で運転していたところ、後方より進行してきた被告が、雪のため全くブレーキが効かない状況になり、被告車が原告車に追突した。

2  責任

被告は、前方注視し、最徐行で運転し、ブレーキ操作を適切にすべき注意義務があるのに、前方注視を怠り、相当の速度で運転し、ブレーキ操作を適切にしなかったため、本件事故を発生させたものであるから民法七〇九条に基づき、また被告車の保有者であるから自賠法三条に基づき、本件事故により原告らが受けた損害を賠償する責任がある。

3  原告の傷害及び治療経過

原告は、本件事故により、頸部捻挫の傷害を受け、平成八年二月七日から同月二一日までの間、神戸中央病院に通院し(実通院日数三日)、同月二八日から同年四月二二日まで豊田胃腸科外科医院に通院し(実通院日数七日)、それぞれ治療を受けた。

二  争点

原告らの損害額

第三争点に対する判断

一  争点について

1  原告北野

(一) 治療費等(請求及び認容額・三万九二五五円)

証拠(甲四、六の一ないし三、九の一ないし四、原告北野兼原告各会社代表者〔以下単に「原告北野」と省略する。〕、弁論の全趣旨)によると、原告北野は、本件事故により頸部捻挫の傷害を受け、神戸中央病院及び豊田胃腸科外科医院で治療を受け、その治療費及びその診断書並びに交通事故証明書手数料等として三万九二五五円程度を支払ったことが認められる。右認定によると、右金員は相当な損害と認めることができる。

(二) 慰謝料(請求額・三〇万円) 二〇万円

原告の傷害の内容、程度及び通院期間その他本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると、原告が本件事故によって受けた精神的慰謝料は二〇万円をもって相当とする。

(三) 弁護士費用(請求額・一〇万円) 五万円

本件事案の内容、審理経過及び認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、五万円が相当である。

(四) 合計 二八万九二五五円

2  原告菊水

(一) 休業損害(請求額・一二四万三六六六円) 一五万四九八九円

(1) 証拠(甲一〇ないし一二の各一・二、二一ないし二七、原告北野、弁論の全趣旨)によると、次の事実が認められる。

ア 原告北野は、本件事故により、本件事故の翌日である平成八年二月七日から同年四月二二日までの間のうち二〇・五日間休業した。

イ 原告北野は、本件事故当時、四七歳であり、原告菊水、原告北神及び原告サンスリーの各代表取締役社長に就任しており、自ら右各会社に常勤し、それらの営業その他の業務を統括していた。

ウ 原告菊水はゴルフ練習場を、原告北神は九ホールのゴルフコースをそれぞれ経営し、原告サンスリーは食堂経営及びゴルフ関連用品の販売業をしている。原告北野は、本件事故当時、報酬ないしは給与(以下「給与等」と略称する。)として原告菊水から月額一八二万円、原告北神から月額五〇万円、原告サンスリーから月額一〇万円の各支給を受けていた。原告北野は、社長自ら率先垂範を示し、役員としての仕事だけではなく、ゴルフの練習場及びコースの草取り、水撒き、芝生の管理作業、掃除やゴミ拾い等の清掃などをしてきた。

エ 原告菊水、原告北神及び原告サンスリーは、原告北野の右休業期間中分に対して通常どおりの額になるよう給与等の代払をした。

(2) 右認定によると、原告北野は、原告サンスリーについては、いわゆる労働者としての仕事をしているとはいえないが、原告菊水及び原告北神については役員としての仕事だけではなく、労働者としての仕事をしており、その時間的な配分については必ずしも明確ではないが、諸般の事情も考慮すると、半々とみるのが相当である。

原告北野の本件事故による受傷の内容、程度等から、同原告の休業期間における原告各会社の役員としての仕事部分については相当な損害として認めることはできないが、原告北野の労働者としての休業部分につき休業損害として認めるのが相当である。

そして、労働の対価的部分については、役員としての報酬を基準とするのではなく、原告北野と同年齢の男性の賃金センサスを基準とするのが相当である。

すると、原告北野の右休業時における原告菊水及び原告北神での労働対価的部分は次のとおり一九万七五六九円(円未満切捨て)となる。

7,035,400×20.5÷2÷365=197,569

そして、原告菊水と原告北神につき、原告北野の給与等を対比すると、原告菊水における労働対価的部分は一五万四九八九円で、原告北神のそれは四万二五八〇円となる。

従って、原告菊水が原告北野の休業損害分を代払したことによる損害は、一五万四九八九円となる。

(二) 原告車の評価損(請求額・三四万円) 〇円

証拠(甲一六ないし一八、原告北野、弁論の全趣旨)によると、原告車は、本件事故により相当破損し、修理をしたが、その費用が一〇〇万円程度であったこと、原告車は、本件事故当時、初度登録後六年を経過していたこと、その後、原告菊水は、原告車を買換えたところ、本件事故にあった車ということでその下取価格が低く評価されたことがうかがわれる。

ところで、評価損は、修理としても完全に修理できなかった場合とか、初度登録後一年程度以内に事故により損傷を受けた場合に認められるところ、右認定によると、原告車は、本件事故後、修理がなされているうえ、初度登録後六年を経過しているから、原告車につき、評価損を認めることはできない。

3  原告北神(請求額・三四万一六六六円)及び原告サンスリー(請求額・六万八三三三円)の各損害

前記2(一)の認定によると、原告北神が原告北野の休業損害分を代払したことによる損害は、四万二五八〇円となるが、原告サンスリーについては、原告北野の労働者としての仕事部分を認めることができないから、損害はないといわざるをえない。

二  結論

以上によると、原告北野、原告菊水及び原告北神の各請求は主文一項の限度で理由があるからこれを認容し、同原告らのその余の各請求及び原告サンスリーの請求はいずれも理由がないから棄却することとする。

(裁判官 横田勝年)

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