神戸地方裁判所 平成9年(行ウ)25号 判決 1998年10月21日
原告
西川和男(X)
被告
兵庫県知事 貝原俊民(Y)
右訴訟代理人弁護士
松岡清人
右訴訟復代理人弁護士
松岡清彦
主文
一 本件訴えをいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告が平成八年八月二日付けで原告に対して行った公文書部分公開決定中、公文書を非公開とした部分(但し、相談者の地域コードは除く。)を取り消す。
二 被告が平成九年三月三一日付けで原告に対して行った「異議申立てを棄却する」との決定を取り消す。
第二 事案の概要等
一 事案の概要
本件は、原告が兵庫県の公文書の公開等に関する条例(以下「本件条例」という。)に基づき消費生活相談カード(平成七年度に受け付けた相談のうち資格講座の苦情に関するもの。)の表面の公開を請求した(以下「本件請求」という。)ところ、被告が当該苦情に係る販売行為を行った資格講座の販売業者及び役務提供事業者の名称等を非公開として部分公開し(以下「本件部分公開決定」という。)、さらに原告がなした本件部分公開決定に対する異議申立ても被告により棄却された(以下「本件棄却決定」という。)ため、原告が本件部分公開決定中の本件非公開部分(但し、相談者の地域コードは除く。)及び本件棄却決定の取消しを請求した事案である。
二 争いのない事実等(以下証拠を掲げた部分以外は、当事者間に争いがない。)
1 本件条例について
本件条例のうち本件に関する部分は次のとおりである(〔証拠略〕)。
八条 実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の公開を行わないことができる。
(2) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の財産若しくは生活に重大な影響を及ぼす違法若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)
2 本件請求に係る公文書について
(一) 兵庫県立生活科学センター(以下「生活科学センター」という。)は、事業者等が消費者に供給する商品又は役務に関して、消費者からの苦情の申出を受け付け、当該苦情を解決するために必要な助言やあっせんを行い、当該苦情に係る事業者等に改善を促す等の業務を行っているところ、同センターの職員は、これらの苦情の申出の内容を消費生活相談カードに記録し、この記録に基づいて、事業者等からの事情聴取、事業者等への指導、消費者への助言を行い、これらの苦情の処理経過についても、当該消費生活相談カードに記録している。
(二) 本件請求に係る公文書(消費生活相談カード)は、各種資格の取得講座の受講を提供する事業者等に関して、強引な勧誘、虚偽の説明、契約解除の不当な拒否があったなどの消費者からの苦情の申出に対し、生活科学センターの職員がその内容を記録したものである。
右公文書の表面に記録されている情報は、<1>当該苦情に係る事業者等の名称、住所等又は担当者の氏名、<2>商品又は役務の名称、<3>申出の苦情内容を簡潔にまとめた「件名」及び「相談危害概要」、<4>相談員等が評価として付した「キーワード」、<5>相談者に対して行った助言等の「処理結果の概要」、<6>相談者又は当事者の年齢及び職業、<7>相談者の居住市町を表す「地域コード」等である(〔証拠略〕)。
3 経過
(一) 原告は、被告に対し、平成八年六月二八日、消費生活相談カード(平成七年度に受け付けた相談のうち、資格講座の苦情に関するもの。ただし、表面に限る。)五一九件について、公開請求をした(本件請求)。
(二)(1) 被告は、平成八年八月二日、本件請求に係る公文書五一九件のうち、六三件については公開を決定し、原告にその旨通知し、その余の四五六件(以下「本件公文書」という。)については、本件条例八条一号又は二号に該当する情報が記録されている部分があり、当該部分とそれ以外の部分とが容易に、かつ公文書の公開の趣旨を損なわない程度に分離できると認められたことから、本件条例七条一項に基づき、右の八条に該当するとして、前記<1>及び<2>のうち、法人等又は事業を営む個人が識別できるもので、既に倒産した事業者や摘発され名称が報道された事業者等でないもの、並びに<6>及び<7>のうち、相談者又は当事者が識別できるものの情報部分を除いて、本件公文書の部分公開を行う決定(本件部分公開決定)をし、原告にその旨通知した。
(2) 本件部分公開決定のあった四五六件のうち、前記<1>事業者等の名称等、すなわち、「製造者」、「購入先・契約先」及び「信販」ないし「信販会社」の各欄に記載された事業者等の名称等又は担当者氏名(以下「事業者名等」という。)の全部又は一部が公開されたのは、六件であった(実際に原告に開示されたのは七件であったが、うち一件については、「購入先・契約先」及び「信販会社」欄の塗沫を看過した作業ミスがあったために開示されたに過ぎない(〔証拠略〕)。)。なお、本件公文書のなかには、そもそも右各欄に事業者名等の記載がないものもある。
(三) 被告は、原告に対し、平成八年八月九日、本件請求に係る公文書について、公開決定に係るものの(全部)公開とともに、本件公文書の部分公開を行った。
(四) 原告は、被告に対し、平成八年八月二七日、本件部分公開決定につき、事業者名を非公開とするのは異議があるとして、異議申立てを行った。
(五) 被告は、平成九年三月三一日、本件異議申立てを棄却する旨の決定をし(本件棄却決定)、原告にその旨通知した。
三 争点
本件請求に係る公文書に記載されている事業者名等(以下「本件情報」という。)が、本件条例八条二号に該当するか。
四 争点に関する当事者の主張
(被告)
1 本件公文書に記録されている情報内容について
(一) 一般に、生活科学センターの相談員等が消費者から苦情相談を受けた場合には、相談員等は、問題を解決するため、消費者に助言を行い、必要があれば事業者等への仲介・あっせんを行うのであるが、苦情相談の内容によっては、苦情の申出の内容が事実(真実)であるかどうかの確認が不可能ないし著しく困難である場合や、事実関係を確認するまでもなく、消費者への助言のみで相談の処理が終了する場合も多く存在する。
(二) 本件公文書に記載されている資格講座の販売に関する苦情相談については、販売業者等の勧誘方法や契約の過程に違法・不当な点があったことを確認し、販売業者等を説得したうえで、既払代金の返還やクレジット契約の解除を求める仲介・あっせんの手続に至ることはほとんどなく、本件公文書に係る苦情の申出に対する生活科学センターの処理としては、相談員等が消費者に対して解決方法を助言することや、当該販売業者等に対して口頭で苦情内容を伝え、改善を指導することによって終了しているのが通常であり、苦情に係る事実関係が真実であるかどうかの確認がなされることはほとんどない。
(三) また、苦情の申出内容が具体的に記録されている本件公文書の「件名」及び「相談危害概要」欄には、苦情相談の受付時点での消費者からの申出の内容を記録することとされており、受付情報として一旦記録された情報は、相談処理の過程で新たな事実が判明しても、訂正又は修正されることはない。
さらに、本件公文書に記録され、公開されている「キーワード」欄には、消費者から苦情の申出のあった時点で、相談員等がその内容の要点を示すために、「サギ」、「キョウハク」、「キョギセツメイ」、「フトウセイキュウ」等のキーワードを記入するのであるが、これは、申出内容に係る事実関係が真実であるかどうかの確認をしたうえで記録するものではなく、違法であることを評価したうえで記入したものでもない。
2 本件情報を公開した場合の影響(結果)について
本件公文書の「件名」、「相談危害概要」、「キーワード」等の欄に記録されている情報の内容が右1で述べたようなものであり、苦情相談に係る内容の真実性の確認が通常なされないという状態にあるにもかかわらず、本件情報がこれらの情報と併せて公開されることとなると、当該販売業者等が、あたかも違法又は不当な事業活動を行っており、これを条例二条一項に規定する実施機関たる被告が認定したものであるとの誤解を生じさせるとともに、これが、当該販売業者等の一般的評価となることは容易に推察される。したがって、右公開により、販売業者等は、正当な社会的評価を受けるという利益を損なわれることとなるし、これが悪用されることにより、事業活動において公正な競争を行うという正当な利益が損われることとなるのである。
3 本件条例八条二号括弧書について
本件条例八条二号括弧書に該当するか否かの判断が右の事実確認を行わずになし得ないことは、同規定の趣旨からも明らかである。
4 本件棄却決定について
行政事件訴訟法一〇条二項は、審査請求(異議申立て)を棄却した裁決の取消しを求める訴訟においては、原処分の違法を理由として裁決の取消しを求めることができない旨を規定しているところ、原告は本件棄却決定に固有の違法事由(瑕疵)については何らの主張もしていない。
(原告)
1 情報公開について
そもそも情報の公開は、県民の県政への信頼を確保し、生活の向上をめざす基礎的な条件であり、民主主義の活性化のためには不可欠なものである。
今回開示を求めた県情報は、公務員が公務所において公務執行中に県民から得て作成した消費者相談カードであり、公共の財産である。県は、この財産(情報)や県民と共有することによって、県民の生活と人権を守り、豊かな地域社会の形成に役立てるべきものである。
このような精神のもとに、県は個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護しつつ、その持つ情報は積極的に公開すべきである。このことが、県民の「知る権利」の保障と個人の尊厳を守ることになり、ひいては地方自治の健全な発展に寄与するものである。
2 消費者が賢くなり、自立するためには情報の開示が不可欠であり、情報の開示が行政・企業共に必要なことは論をまたない。「正しい情報を正しく」開示していくのであれば、確認もしていない行為を以て、あたかも違法又は不当な事業活動を行っているかのごとく「ワースト○○」と表示するのではなく、「苦情の多い商品・役務」と表示すべきである。事実は事実として、善悪の判断ができないのなら「ワースト」などの表示は止めて、受付件数の多い商品・役務と表示し、消費者の判断に任せるべきである。
被告が、公表することによって失われる企業等の利益と、県民の財産若しくは生活に重大な及ぼす被害とを比較衝量し、後者が大と判断のうえ、自信をもって「ワースト○○」と公表したのならば、躊躇することなく企業名を公表すべきである。
3 消費者啓発、特に消費者被害発生の防止には悪質事例と悪質業者名を公表してこそ被害予防効果が発揮できるところ、悪質事例のみの紹介では予防効果は半減する。また、業者名を公表することは悪質業者に対する悪質商法実行の抑止力になる。
県民の福祉の向上を願う、県民一人一人の生活重視、福祉向上を施策とする県生活文化部行政として、県民の福祉よりも苦情申出をされるような商法を営む企業の利益を重視することは、到底納得できるものではない。
4 なお、原告が情報公開を求めたのは、資格講座の苦情五一九件であって、相談件数を含めた資格講座の企業名ではない。本件公文書の中には内容が単なる相談であって、苦情ではないものも含まれている。敢えて苦情件数に算入していることは、被告において企業名が相談員の頭に記憶されており、「またこの会社か!」という思いがあって、苦情件数に計上したものと思われる。したがって原告としてはよけいに事業者名が知りたく、また、県民に公表し、被害を未然に防止したいのである。
5 本件情報を公表した場合の影響について
(一)<1> 被告は、本件条例が未制定であった昭和四九年度より、「消費生活相談の概要」において、不良商品一覧表として、苦情申出のあった商品の製造元・販売元等を、機種名、苦情内容、原因、対策とともに公表し続け、現在に至るも、公開の場所において一般県民の閲覧に供している。にもかかわらず、今さら「販売業者等は、正当な社会的評価を受けるという利益を損なわれることとなるし、これが悪用されることにより、事業活動において公正な競争を行うという正当な利益が損なわれることになるのである」という被告の主張は到底納得しがたい。
<2> 通産省も、平成九年九月に発行した「事故情報収集制度報告書」において、企業名等(製造業者名・品名・型番など)を公表している。
<3> 東京都も、東京都消費生活総合センターが毎月発行している「今月の消費者相談」において、商品・役務名、販売会社名、信販会社名を公表している。
<4> 神奈川県も、昭和五八年にすでに「訪問販売で相談の多い企業名」として、一四社の企業名を公表している。
<5> 大阪市でも企業名が公表されている。
<6> 神戸市も、財団法人神戸市婦人文化協会・神戸市婦人団体協議会の発行する「婦人神戸」において、「過大包装ワースト商品」として、メーカー及び販売店を公表している。
以上の点に鑑みれば、被告が本件情報の公表を拒否する理由はないといえ、消費者の知識不足・自衛不足を補うためにも、本件情報は公表すべきである。
(二) 被告は、他の自治体や神戸市婦人文化協会・神戸市婦人団体協議会の企業名公表について、本件部分公開決定とは関係ないと主張しているが、情報公開条例制定の趣旨は、より積極的に情報公開していくというものであり、八条の例外規定により非公開にしていこうという趣旨ではない。他の自治体等のよいところは見習うべきである。
6 本件条例の解釈について
本件条例八条は例外事由に該当する情報を「公開しないことができる」旨定めているが、これは逆にいえば、例外事由に該当する情報であっても公開を妨げられない、と解すべきである。
また、同条二号が「当該法人等又は個人の正当な利益を害すると認められるもの」と規定し、「利益を害するおそれがあると認められるもの」と規定していないことからするならば、右例外規定はより狭義に解すべきである。
7 本件公文書裏面には、聞き取り内容、継続処理の経過等を、必要に応じて何枚にもわたり記録し、契約書等の資料を添付しているはずであり、また、生活科学センターは各販売業者にあっせんをしたり、事業者と交渉する場合があることから考えると、被告は公表に際し、画一的に事業者名を秘匿するのではなく、本件公文書の裏面を検討し、本件条例八条二号括弧書に配意しつつ、県民の被る被害の蓋然性の高い事業者名は公表すべきである。
第三 当裁判所の判断
一1 前記争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(一) 生活科学センターにおける消費者苦情相談処理の概要
生活科学センターは消費者からの相談業務等を行っており、同センターの相談員等は、消費者からの苦情相談を受けて、問題を解決するために相談者に助言をし、相談者が事業者等と交渉しても解決しないような場合には、事業者等に相談者の苦情内容を伝え、解約の交渉をするなどあっせんを行っている。苦情相談一般についていえば、助言のみで相談処理が終了する場合が約九〇パーセント、事業者等と交渉するなどあっせんを行う場合が約一〇パーセントという比率となっている。苦情相談が助言のみで終了する場合は、相談員が事業者等に連絡をとることはない。
(二) 資格講座に関する苦情相談処理の特徴
資格講座に関する苦情相談の場合、一般の消費者苦情相談に比べて次のような特徴がみられる。
<1> 資格講座に関する苦情相談の場合、クレジット契約の成立前あるいは代金の支払前に相談がなされ、相談員等の助言を受けた相談者が、契約の不成立や契約の無効等を主張することで解決する場合が多いことから、一般の消費者苦情相談に比べても助言で終了する場合がさらに多く、ほとんどの苦情相談が助言で終了している。
<2> 苦情相談が助言で終了せず、相談員等が事業者等に対して相談内容に係る事実関係の確認に及んだ場合であっても、資格講座の販売は電話勧誘によるものがほとんどであり、取引内容があいまいであることもあり、事業者等はほとんどの場合右事実関係を認めず、言った言わないの水掛け論になってしまい、事実確認が不可能ないし著しく困難である。
(三) 本件公文書に記録された相談事例の処理について
本件公文書に記録されている相談事例のほとんどは、資格講座の販売を目的とした電話勧誘販売に関するものである。
本件公文書における苦情の申出に対する生活科学センターの処理も、相談者への助言若しくは類似事例の情報提供、又は事業者等に対し苦情内容を伝え改善を指導することにより終了しており、苦情内容の事実確認は行われていない。
(四) 消費生活相談カードの記載要領等
生活科学センターの相談員等は、相談を受けると、その申出内容に基づいて全国共通の様式の消費生活相談カードを作成することになる。その際、右カードの「件名」及び「相談危害概要」の欄に苦情内容が簡潔にまとめられる。相談者の申出が苦情か問い合わせのいずれかであるかは、相談者の申出内容で判断され、相談者が問い合わせとして相談してきても、その背景が苦情である場合には、苦情に分類されて記載される。
消費生活相談カードには、苦情相談の受付時点の相談者からの申出内容を記録することとされており、単純ミスの場合には修正することもあるが、原則として、相談処理をしている過程で、当初に受け付けた相談の原因が相談者の勘違い等であることが分かっても、受付情報が、訂正・修正されることはない。
また、消費生活相談カードの「キーワード」欄には、相談員等が相談内容の要点を示すために、「フトウセイキュウ」、「キョギセツメイ」、「サギ」、「キョウハク」等のキーワードを記入するが、これは、申出内容に係る事実の真実性の確認をしたうえで記載するものではない。
(五) 公開された事業者名等について
本件請求に係る公文書のうち、事業者名等が公開されたのは、警察に摘発され新聞紙上で名称が報道された事業者、既に倒産していることが確認された事業者、官庁及び国家試験を実施している団体についてのものである。
2 右認定事実に基づき検討するに、非公開とされた本件情報は、事業活動を行っている事業者名等であるところ、本杵情報が公文書の公開という形で、公的機関の情報として説明、解説抜きに具体的な苦情内容とともに公開されると、本件情報と具体的な苦情の内容が結びついて理解され、当該事業者について苦情の申出があったとの文書に記載された情報の客観的な意味内容を超えて、実際には申出内容の事実確認ができていないにもかかわらず、本件公文書の「件名」、「相談危害概要」、「キーワード」等の各欄に記載された行為や違法、不当な事業活動を当該事業者が行っていると理解され、加えて、苦情の申出内容や、相談員等が後の検索のために評価、記載したサギ、キョウハクなどの「キーワード」の記載が、公的機関の認定した客観的事実情報と誤解されて取り扱われる可能性があると推察できる。そうすると、本件情報が公開されると、苦情内容の真偽の如何にかかわらず、当該事業者の社会的評価の低下を招くことになるということができる。
なお、違法若しくは著しく不当な事業活動を行っている事業者であれば、本件条例八条二号括弧書によって非公開情報には該当しない。しかし、苦情申出があったことから何らかの問題がある可能性は推測できるものの、本件においては相談内容の真実性の確認がなされていないのであるから、当該事業者が違法若しくは著しく不当な事業活動を行っていると認定することはできず、本件条例八条二号括弧書には該当しない。
よって、本件情報は本件条例八条二号に該当すると認められ、被告の本件部分公開決定は適法である。
3 なお、原告は、被告、通産省、東京都消費生活総合センター、神戸市婦人文化協会・神戸市婦人団体協議会が企業名等を公表している旨主張するが、〔証拠略〕によれば、右は製品事故について、事故原因が製品に起因することの事実関係等の確認をしたうえで公表をしているものであり、製品事故情報ではなく、かつ、事実確認がなされていない本件とは事情を異にする。
原告は、また、大阪市や神奈川県でも企業名等が公表された旨主張するが、大阪市については、これを認めるべき証拠はなく、神奈川県については、〔証拠略〕によれば「訪問販売の苦情の多い品名と企業名」が公表されたものであり、具体的な苦情・相談内容等の記載のある本件公文書の公開とは事情を異にする。さらに原告は、事実関係を把握していない場合でも苦情のあった事実だけを企業名とともに公表すべきである(原告の主張2)とか、消費者被害発生防止等のために悪質事例と悪質業者名を公表すべきである(同3)等と主張するが、本件情報の公開の影響は前記認定判断のとおりであるから、原告の前記主張は独自の見解であって採用することができない。
二 原告は、本件棄却決定の取消しを求めているが、右訴訟においては、原処分の違法を理由として取消しを求めることができない(行政事件訴訟法一〇条二項)ところ、本件棄却決定の固有の瑕疵については何ら主張立証がない。
三 まとめ
以上のとおりであり、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 田口直樹 大竹貴)