大判例

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神戸地方裁判所 昭和27年(ワ)824号 判決

原告 亀山誉富

被告 霜平三次 外一名

一、主  文

原告に対し、被告霜平三次は神戸市生田区加納町五丁目五八番屋敷の店舗の内別紙図面<省略>表示の(イ)の部分(約一坪)から、被告大森由栄は同店舗の内別紙図面表示(ロ)の部分(約〇、八坪)からそれぞれ退去しなければならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告において被告等に対し各金二万円の担保を供すれば仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項と同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、「原告は昭和二四年一〇月三一日自分が釣具商を営んでいる主文第一項記載の店舗の各一部を、被告等に対し、その営業の場所に使用させ、賃料は使用した日に限り一日金一五〇円とする、期間は向う一年間とし、その後は原告の都合により一方的に解約できる、という約定で賃貸して来たが、営業上右賃貸部分の必要に迫られたので、昭和二六年二月二〇日被告等に対し、右特約に基き解約の申入をしたので、即時本件賃貸借は終了した。

仮にそうでないにしても、被告等は原告の立退の交渉に対し、同年一一月頃に至り、昭和二七年一月一五日限り立退くことを確約した。よつて、原告は被告等に対し、右店舗の内占有部分よりの退去を求めるため本訴に及んだ。」と述べた。<立証省略>

被告等訴訟代理人は、原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、

「被告等が原告からその主張の店舗の各一部を、賃料一日につき金一五〇円と定めて賃借し、占有中であることは認めるが、その余の原告主張事実は否認する。仮に右契約に原告主張のような解約に関する特約があつたとしても、被告等は昭和二二年一〇月以来営業用店舗として権利金各一万円を支払つて賃借しているものであるから本件賃貸借には借家法の適用があり右のような借主に不利な特約は同法により無効である。」

と述べた。<立証省略>

三、理  由

被告等が原告からその主張の店舗の内被告霜平が別紙図面表示の(イ)の部分を、被告大森が同(ロ)の部分を、賃料一日金一五〇円と定めて賃借して来たこと、ならびに現にその各部分を占有使用中であることは、当事者間に争がない。

成立に争のない甲第一ないし第四号証に証人北野春太郎、高見孝三、橋本文雄及び亀山鈴江の各証言ならびに原告本人尋問と検証の結果を綜合すれば、原告は昭和二一年元店舗の焼跡に再建した本件店舗で釣具商を始めたが、当時は経済事情も不安定であり資金もないところから、近い将来の営業拡張可能の時機まで一時他人に店先を賃貸して収入を計るべく、翌二二年から街路に面した北側と東側の北半分(自己使用の南部を除いた)に鈎型に一連の店台を設けて数人に一部宛を貸すことを始め、同年暮から翌年初頃に、被告大森は権利金一万円、被告霜平は同二万円を支払つて、原告が賃貸する右事情を諒解の上で、賃借したのであつて、その賃借の約定は前認定の他、被告等はその店先を使用した日に限り賃料を支払えば足り、期間はその後契約の更新された昭和二四年一〇月三一日から一年間とし、その後は原告の一方的意思表示により何時でも解約できるということであつた。そこで原告は営業拡張の必要上被告等に賃貸している部分の返還を受けたく、昭和二六年二月二〇日頃被告等に対し右特約に基く解約を申入れ、円満に明渡を受けるべく交渉して来たが、被告等は未だに明渡をしないことが認められ、この認定に反する証人花田一男の証言や被告等本人尋問の結果は真実を物語るとは受取れない。

よつて、被告等の右解約に関する特約は借家法により無効であるとの主張につき考えるのに、前記認定の、原告が本件賃貸をなすに至つた事情、賃料が日定めで、使用日に限り支払えば足りる事実と、証人亀山鈴江の証言及び原被告等本人尋問と検証の結果により認めうる次の事実、すなわち、被告大森の借用部分は他人の使用部分との区劃すら判然としない全くの店先の一小部分で原告の店の間を通らねば出入も出来ない有様であり、被告霜平の借用部分も被告大森の部分に比較すれば区劃はやゝ明かではあるが、その東側は仕切というほどのものはなく、北側の出入口も幅一尺八寸に過ぎない仮設のものであつて、全く一店舗の一角に過ぎず両者とも営業時間内に限り出入してその賃借部分の使用を許される実情にあり、右原被告の店舗は全体として原告により管理されており、被告等の賃借部分は独立性の極めて弱い店舗内の一部分に過ぎない事実――とに徴すれば本件賃貸借には借家法の適用はないものと解するのが相当である。けだし、借家法は借主が独立して占有使用する建物の賃借権を引渡のみにより登記なくして第三者に対抗せしめることを主要な目的の一とする立法であつて、本件のように、むしろいわゆるケース貸に近い日々の時限的使用関係でその占有の独立性の不明瞭なものにこれを及ぼすときは却つて法律関係をあいまいにして第三者に不測の損害をかける結果になるからである。このことは被告等が本件賃借権を取得するにつき叙上の権利金を支払つていることを考慮に入れるもその結論を異にしない。

そうだとすれば原告のなした前記解約の申入は有効であつて、少くともその後民法に定める三月の期間が経過した昭和二六年五月二〇日頃には本件賃貸借契約は終了しているから、被告等はいづれも前記賃借部分から退去して原告に直接完全な占有を回復せしめる義務がある。

そこで原告の請求を理由ありとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九三条第一項本文、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 石井末一)

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