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神戸地方裁判所 昭和29年(行)16号 判決 1955年3月15日

原告

谷口義一 外二六七名

被告

兵庫県知事 外六名

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等の請求の趣旨は、

「被告兵庫県知事阪本勝に対する関係では、被告神戸県税事務所長吉本友次郎が別紙第一目録記載の原告等に対し、被告兵庫県税事務所長稲垣幸一が別紙第二目録記載の原告等に対し、被告灘県税事務所長岡崎元次が別紙第三目録記載の原告等に対し、被告長田県税事務所長前田与八郎が別紙第四目録記載の原告に対し、被告尼崎県税事務所長芝田孫太郎が別紙第五目録記載の原告等に対し、被告姫路県税務事務所長野田彌作が別紙第六目録記載の原告等に対し、夫々課した昭和二八年度事業税賦課処分(原告等は事業税決定令書と云うも、事業税賦課処分を指すと解する。以下同じ)は何れも無效であることを確認する。前記各被告県税事務所長に対する関係では、前記各被告県税事務所長が、夫々前記各目録記載の原告等に課した前記各事業税賦課処分は何れもこれを取消す。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求めるに在り、その請求の原因の要旨は、

「兵庫県被告神戸県税事務所長吉本友次郎は、別紙第一目録記載の原告等に対し、被告兵庫県税事務所長稲垣幸一は別紙第二目録記載の原告等に対し、被告灘県税事務所長岡崎元次は別紙第三目録記載の原告等に対し、被告長田県税事務所長前田与八郎は別紙第四目録記載の原告に対し、被告尼崎県税事務所長芝田孫太郎は別紙第五目録記載の原告等に対し、被告姫路県税事務所長野田彌作は別紙第六目録記載の原告等に対し、夫々昭和二八年八月一日付で昭和二八年度事業税を賦課したのであるが、右各賦課は、原告等が先になした申告をもとにした収支調査を行うことなく、原告等に対する昭和二七年度所得税額算定の基準とされた同年度総所得額をそのまま利用し、これより五万円を控除した金額を同年度に於ける原告等の事業所得と認定して課税したものである。然しながら、事業税は地方税法に基く独立税であつて国税たる所得税の附加税ではないのであるから、原告等の申告に基き現実の事業所得が幾何であるかを、所得税の賦課基準たる総所得額とは別個に調査の上賦課すべきものである。仍て斯る調査なく行われた本件賦課処分は地方税法に違反するものであるから請求趣旨記載の判決を求める為本訴に及ぶ。」と云うに在る。

而して、原告等(原告高橋輝人を含む)が訴状に貼用した印紙額は金五〇〇円である。当裁判所は訴訟物の価格(原告高橋輝人の分を含む)を原告等(原告高橋輝人を含む)に対する昭和二八年度事業税課税額(但し原告岡崎勇、同西浜熊吉については、各金五〇、〇〇〇円)の合算額たる金六、三一二、五七〇円とし、之に応ずる印紙額三二、九〇〇円(原告高橋輝人の分を含む)から既貼用額五〇〇円を差引いたものを各原告等の訴額に按分した前記第一乃至第六目録追貼印紙欄記載の各額を、命令書送達の日から二週間以内に追貼する様命じ、右命令書は右第一乃至第六目録の各日に夫々原告等に送達されたが、原告等はその追貼をしない。

理由

原告等(原告高橋輝人を含む)が訴状に金五〇〇円の印紙を貼用していることは記録上明らかである。

然しながら、原告等は本訴に於て被告等(但し兵庫県知事阪本勝を除く)が原告等に課した昭和二八年度事業税の賦課処分の無效確認若はその取消を求めるものであるが、斯る訴訟の目的たる租税に関する行政処分は課税者と被課税者との間に直接に経済的関係を生じ、その処分の無效が確認されるか否か、或は取消されるか否かは、直接に被課税者の経済的利益に関係するのである。つまり右請求が認容されると、原告等が賦課されたと主張する前記事業税の納付義務を免れ、以て経済的利益を享有するわけである。してみれば本件訴訟の目的は財産権上のものに他ならずこれを訴訟物とする本訴は、訴訟法に所謂財産権上の訴として取扱はれるべきは当然である。従つてこれを非財産権上の訴として若くはこれに準ずるものとして民事訴訟用印紙法第三条第一項により訴額を金五〇、〇〇〇円とみなすことは正当ではない。本訴が財産権上の訴であるとすると、次にその訴額が問額となる。ところで、本訴について原告等は斯様な行政訴訟についても共同訴訟が可能であるとして本訴を提起しているのであるから、斯る前提を執る以上、その訴額は民事訴訟法第二三条第一項に則り、各請求の価格、即ち、本訴請求が認容されることによつて直接に原告等の得る各経済的利益の合算額と云うべきである。而して原告等は、本件事業税の各賦課処分は、何れも地方税法所定の調査を経ることなく、原告等の前年度所得税算定の基準とされた同年度総所得額をそのまま利用してなされたもので、当然無效若は取消さるべきものであると主張して、その無效確認若は取消を求めるものであり、右各賦課処分に於ける課税額の当否を争うものでないことは、その主張自体に徴して明白であるから、本訴認容により原告等は右各賦課処分によつて課せられた前記事業税の納付義務を全面的に免れるものである。従つて、本訴請求が認容されることによつて直接に原告等の受ける経済的利益は、右各賦課処分によつて原告等に課せられた事業税額そのものと云わねばならない。そして、当裁判所が職権を以てなした調査嘱託に対する神戸、兵庫、灘、長田、尼崎、姫路、各県税事務所長の回答によれば、原告等の前記事業税額は、別紙第一乃至第六目録記載の如くである。そして原告岡崎勇、同西浜熊吉については、昭和二十八年度の同課税額を明かにすることができず、その訴額は算定することができないが、同原告等も兎に角賦課処分を受けたと主張して、その無效確認若は取消を求める以上、その訴は財産権上の訴であることは、前説明の通りであるから、民事訴訟用印紙法第三条第一項の精神を類推してその請求の価格を夫々金五〇、〇〇〇円と算定すべきである。そして以上の合計額は金六、三一二、五七〇円であることは計算上明らかであるから、本訴(原告高橋輝人の分を含む)の訴額は、まさに右金額と云わねばならない。

仍て原告等は共同訴訟人として本来全員合同して右訴額に基いて算出される相当印紙額から原告等が訴状に貼用した五〇〇円を差引した額全額の追貼義務を負うものと解すべきであるが、少くとも右差額を原告等の前記訴額に按分した別紙各目録追貼印紙額欄記載の額を追貼すべき義務は最少限度免れないと認めその追貼を命じたところ、原告等は事実記載の通りこれに応じないので、本件訴は不適法なものにして、その欠缺が補正し得ない場合であると認めてこれを却下することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 石井末一 朝田孝 林義一)

(別紙目録省略)

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