神戸地方裁判所 昭和31年(わ)84号・昭31年(わ)650号・昭31年(わ)185号・昭31年(わ)149号・昭31年(わ)371号 判決
右の安部賢、友原美智子に対する業務上横領各被告事件(昭和三一年(わ)第八四号、同年(わ)第六五〇号)、松下芳雄、内藤信夫に対する収賄被告事件(昭和三一年(わ)第一八五号)、原弘、安部賢に対する贈賄被告事件(昭和三一年(わ)第一四九号)、松下芳雄、内藤信夫に対する受託収賄、単純収賄、原弘に対する贈賄及び横領、内藤信夫に対する詐欺各被告事件(昭和三一年(わ)第三七一号)、富士装備株式会社、杉山保吉、安部賢に対する法人税法違反被告事件(昭和三二年(わ)七五三号)を併合の上、検察官某公判に出席のもとに審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人安部賢を懲役壱年六月に
被告人友原美智子を懲役六月に
被告人松下芳雄を懲役拾月に
被告人内藤信夫を懲役壱年に
被告人原弘を懲役拾月に
被告人杉山保吉を懲役六月に
被告会社富士装備株式会社を第六の一の罪につき罰金五拾万円に、第六の二の罪につき罰金弐百万円に
各処する。
この裁判確定の日から被告人内藤信夫、同松下芳雄に対し四年間、被告人原弘、同安部賢に対し参年間、被告人友原美智子、同杉山保吉に対し弐年間何れも右懲役刑の執行を猶予する。
被告人松下芳雄より金七万弐千四百四拾円、被告人内藤信夫より金五万千百六拾円を各追微する。
訴訟費用中、証人前川寅男に支給した分は被告人友原美智子の負担とし、証人高橋左門、同土居正雄、同葛原武夫、同金谷確也、同三宅人、同桑原武志に支給した分は被告人安部賢、同友原美智子の連帯負担とし、証人竹川広保に支給した分は被告人杉山保吉、同安部賢、被告会社富士装備株式会社の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
第一の事実乃至第五の事実について(省略)
第六、被告会社富士装備株式会社は、神戸市葺合区八幡通五丁目六番地に本店を有し、外航船の船艙艤装修理を営業としているもの被告人杉山保吉は同会社の代表取締役社長として同会社全般の業務を統轄しているもの、被告人安部賢は創立当初より昭和三十年十二月下旬頃までの間、同会社の取締役として同会社の経理事務一切を担当していたものであるところ、被告人杉山保吉、同安部賢は同会社の会計係友原美智子と共謀の上、同会社の法人税を免れようと企て被告会社の業務に関し
一、昭和二十八年十月一日より同二十九年九月三十日までの間の事業年度において右会社の所得額は四百五十五万六千七百六十二円(この法人税額百九十一万三千八百十円)であつたのに拘らず神戸市生田区海岸通五番地の当時の営業所に於て工事収入の一部を正規帳簿より除外し或は架空仕入乃至架空経費を計上する等の方法によりその所得を秘匿し、昭和二十九年十一月三十日情を知らない中村久一を介し所轄神戸税務署に対し右事業年度の所得金額を六十五万六千九百十五円(この法人税額二十七万五千八百九十円)であるとした虚偽の法人税申告書を提出し以て右事業年度の法人税百六十三万七千九百二十円を不正に逋脱した。
二、昭和二十九年十月一日より同三十年九月三十日までの間の事業年度において、右会社の所得額は千三百六十六万七千六百七十七円(この法人税額五百四十六万七千四十円)であるのに拘らず、前記営業所に於て前同様の方法によりその所得を秘匿し、昭和三十年十一月三十日情を知らない中村久一を介して所轄税務署に対し右事業年度の所得金額を十八万九千九百九十五円(この法人税額七万五千九百六十円)であるとして虚偽の法人税申告書を提出し以て右事業年度の法人税五百三十九万千八十円を不正に逋脱した。
(証拠の標目)
第一の事実乃至第五の事実について(省略)
第六の事実は
一 被告人杉山保吉、同安部賢の当公廷での供述
一 被告人安部賢の検察官に対する法人税法違反被疑事件についての各供述調書(三通)
一 大蔵事務官の同被告人に対する各質問顛末書(四通)
一 被告人杉山保吉の検察官に対する法人税法違反被疑事件についての各供述調書(四通)
一 大蔵事務官の同被告人に対する昭和三十一年七月二十日附質問顛末書
一 友原美智子の検察官に対する昭和三十二年七月十日、十一日、十二日、十三日、十五日、十九日、三十日及び八月三日附各供述調書
一 大蔵事務官の同人に対する各質問顛末書(五通)
一 中村久一の検察官に対する供述調書
一 被告会社の会社登記簿謄本
一 裏a/c金銭出納簿、裏a/c銀行簿(二冊のうち表紙に記録六十五号とあるもの)、裏a/c工事台帳(何れも写真)、
一 表a/c金銭出納簿、表a/c銀行簿
一 大蔵事務官作成の調査顛末書九通(神和信用金庫外八銀行と被告会社との取引を調査したもの)、神和信用金庫作成の残高証明書六通及び現金予金証明書一通、神戸銀行平野支店作成の残高通知書四通
一 大蔵事務官の清水格、林吉、杉山まちこに対する各質問顛末書
一、協栄海運株式会社作成の書信及び手形取立預り証
一 清水木材株式会社、大同海運株式会社、日立造船株式会社本社、同向島工場、同桜島工場からの大阪国税局宛の被告会社との取引関係についての各回答書
一、国税査察官作成の別口a/c調査書類五冊(表裏帳簿照合並に整理の経過及び結果)
のほかなお
第六の一につき
一 佐世保船舶工業株式会社、まつや塗料株式会社、東邦海運株式会社、第一汽船株式会社、ドットエル、エンド、カンパニー、リミテッド、シ、エフ、シャープ商会からの大阪国税局宛の被告会社との取引関係についての各回答書
一 押収(昭和三二年領置第五四七号)にかゝる証第二同、第二十四号の各総勘定元帳
一 神戸税務署長作成の法人税確定申告書証明書(自昭和二十八年十月一日至昭和二十九年九月三十日)
一 国税査察官上坂住一作成の昭和三十一年十二月十一日附脱税額計算書(自昭和二十八年十月一日至昭和二十九年九月三十日)
同二につき
一 東京船舶株式会社、同神戸支店、新名古屋工作所、三菱海運株式会社、同神戸支店、大橋製作所、旭川木材東京営業所、安田造船株式会社からの大阪国税局宛の被告会社との取引関係についての各回答書
一 押収(前同号)にかゝる証第六号の総勘定元張
一 神戸税務署長作成の法人税確定申告書証明書(自昭和二十九年十月一日至昭和三十年九月三十日)
一 国査税察官上坂住一作成の昭和三十二年七月十九日附脱税額計算書(自昭和二十九年十月一日至昭和三十年九月三十日)を綜合してこれを認める。
(法令の適用)
被告人内藤信夫、同松下芳雄の第一の各単純収賄の行為につき
刑法第百九十七条第一項前段(共犯にかゝるものについてはなお刑法第六十条)
同被告人両名の第一の各受託収賄(第一の一、(四)、(六)乃至(九)、第一の二、(一)(六)、第一の三、(三))の行為につき
刑法第百九十七条第一項後段(共犯にかゝるものについてはなお刑法第六十条)
被告人安部賢、同原弘の第一の各贈賄の行為につき
刑法第百九十八条、罰金等臨時措置法第二条第三条(共犯にかゝるものについてはなお、刑法第六十条、各懲役刑を選択)
被告人内藤信夫の第二の各詐欺の行為につき
刑法第二百四十六条第一項
被告人原弘の第三の横領の行為につき
刑法第二百五十二条第一項
同被告人の第四の詐欺の行為につき
刑法第二百四十六条第一項
被告人安部賢、同友原美智子の第五の各業務上横領の行為につき
刑法第二百五十三条(共犯にかゝるものについてはなお刑法第六十条)
被告人安部賢、同杉山保吉の第六の法人税法違反の行為につき
刑法第六十条、法人税法第四十八条第一項(いずれも懲役刑を選択)
被告会社の法人税法違反の点につき
法人税法第五十一条、第四十八条
被告会社を除くその余の被告人等の併合罪関係につき
刑法第四十五条前段、第四十七条、第十条(被告人安部、同杉山につきなお法人税法第五十二条但書、被告人松下につき第一の一、(四)の受託収賄罪の刑に、被告人内藤につき第二の四の詐欺罪の刑に、被告人原につき第四の詐欺罪の刑に、被告人安部につき第五の二の業務上横領罪の刑に、被告人友原につき第五の一、(二)の業務上横領罪の刑に、被告人杉山につき第六の二の法人税法違反罪の刑に各法定の加重をする)
被告会社の併合罪関係につき
法人税法第五十一条本文(各罰金を併科する)
被告会社を除くその余の被告人等に対する刑の執務猶予につき
刑法第二十五条第一項
被告人内藤信夫、同松下芳雄に対する追徴につき
刑法第百九十七条ノ五
訴訟費用の負担につき
刑事訴訟法第百八十一条第一項本文、第百八十二条