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神戸地方裁判所 昭和32年(わ)1168号 判決 1962年2月06日

被告人 松政耕蔵 外三名

主文

被告人松政耕蔵を懲役六年及び判示第六の一の罪につき罰金五、〇〇〇、〇〇〇円、判示第六の二の罪につき罰金七、〇〇〇、〇〇〇円に、被告人井上秋広、同井上英雄をいずれも懲役四年に、被告人今井喜一を懲役一年六月に処する。

未決勾留日数中被告人松政耕蔵につき一〇〇日を右懲役刑に、同井上秋広につき一五〇日、同井上英雄につき一二〇日をそれぞれ右各本刑に算入する。

但し被告人今井喜一に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告人松政耕蔵において右罰金を完納することができないときは、金一二、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

押収してある繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書三〇通(昭和三三年押第二一五号の二六、七六の五、七七の四、七八の五、七九の四、八〇の二、八一の六、八二ないし八五の各四、八六の五、八七の四、八八の五八九の四、九〇の三、九一ないし一〇四の各四)は、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄からこれを没収する。

訴訟費用中証人山戸久夫、同鬼頭正彦、同今西芳信、同末原静彦、同服部秋季、同細井史郎、同仲野良造、同井上秋広に支給した分は被告人松政耕蔵の負担とし、証人竹下正美、同酒井孝太郎に支給した分は被告人松政耕蔵、同井上英雄の連帯負担とし、国選弁護人東谷義人、同疋田郁子に支給した分は被告人今井喜一の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人松政耕蔵は、昭和二四年一二月頃から神戸市生田区海岸通二丁目三番地の一所在合同貿易株式会社に敷物輸出係として勤務し、輸出入業者である同会社の敷物輸出事務全般を担当し、同井上秋広は、同二五年一月頃から同会社に船積係として勤務して輸出品の船積事務及び通商産業省に対する輸出申告書作成事務等を担当していたものであり、同井上英雄は、同二七年八月頃から同市生田区波止場町所在大正運輸株式会社中波止場出張所に輸出入係として勤務し、税関貨物取扱業者である同会社の税関申告ないし船積の輸出事務に関与していたものであるが、被告人三名は、通商産業省が毛製品の輸出許可後、申請により当該輸出関係者に外貨割当のため発給する毛製品輸出証明書(通称リンク券)が、貿易業者間等において高価に売買されていることに着目して、被告人等が輸出事務に関係していることを奇貨とし、右毛製品輸出証明書の発給を受けるに必要な輸出関係書類を偽造して毛製品輸出証明書を入手することを企て、

第一、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄は共謀の上、行使の目的をもつて、昭和三〇年二月一一日頃、前示合同貿易株式会社事務所等において、かねて用意した申告者署名欄に大正運輸株式会社神戸支店鷹羽秀三の署名及び押印のある輸出申告書用紙に、別表(イ)輸出申告書偽造欄番号1記載のとおりほしいままに輸出者名、輸出品名、数量、申告価額をタイプライター等により記入して、右大正運輸株式会社神戸支店鷹羽秀三を作成名義人としその署名と押印のある私文書である輸出申告書一通の偽造を遂げ、更に、行使の目的をもつて、同月一三日頃、同市同区加納町二丁目四六番地の四七にあつた被告人井上英雄方等において、同表輸出許可証偽造欄番号1記載のとおり、右偽造にかかる輸出申告書の余白に、ほしいままに申告年月日、申告番号のほか「上記のとおり輸出を許可する」旨の文言をゴム印(昭和三三年押第二一五号の三五、以下証第三五号の如く記載する)等で記入した上、用意した偽造の神戸税関印(証第三一号)を押捺し、その他神戸税関各係員の認印等を押捺して神戸税関を作成名義人としその押印のある公文書である輸出許可証一通の偽造を遂げ、ついで同月一七日頃、大阪市東区南本町四丁目四〇番地所在日本繊維製品輸出組合大阪事務所事務員中島須美子を介し、同市同区京橋前之町所在通商産業省大阪通商産業局において、別表(ハ)番号1記載のとおり、同局通商部輸出第一課係員に対し毛製品輸出証明書発給申請のため、前示偽造にかかる両文書を真正なものの如く装い他の関係書類と共に一括提出して行使し、これにより右係員をして実際に両文書記載のとおり輸出申告及び輸出許可があつたものと誤信させ、因つて同月二二日頃前示日本繊維製品輸出組合大阪事務所において、前示中島須美子を介し大阪通商産業局輸出第一課係員から、同表同番号記載の毛製品輸出証明書三通の交付を受けてこれを騙取したほか、前同様の方法により、別表(イ)の番号2ないし13記載のとおり同年三月一日頃から七月下旬までの間前後一三回にわたり輸出申告書並びに輸出許可証各一通宛(但し番号9では各二通)合計各一三通の偽造を遂げた上、それぞれ別表(ハ)の各対応番号記載のとおり、その頃前後一二回にわたり偽造の両種文書を真正なものとして各一括行使し、前示大阪通商産業局係員を欺罔して、その都度同表同番号記載の毛製品輸出証明書三通、合計三六通を騙取し、

第二、同年八月初旬頃、被告人井上英雄は、当時神戸市生田区海岸通二丁目二六番地所在東和海運株式会社の船貨課員であつた被告人今井喜一が、税関貨物取扱業者である同会社の通関事務をも担当していることから、同被告人に対し輸出申告書及び輸出許可証偽造につき協力を依頼し、かくて被告人四名は順次共謀を遂げた上、行使の目的をもつて、前示第一記載と同様の方法により、別表(イ)番号14ないし21記載のとおり同年八月二〇日頃から一二月下旬頃までの間前後八回にわたり、輸出申告書並びに輸出許可証各一通宛、合計各八通の偽造を遂げ、ついで被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄は共謀して、別表(ハ)の各対応番号記載のとおり、右偽造にかかる両種文書をその頃前後八回にわたり前示第一同様真正なものと装い各一括行使し、前示通商産業局係員を欺罔して、その都度同表各対応番号記載の毛製品輸出証明書三通、合計二四通を騙取し、

第三、被告人四名は順次共謀の上、行使の目的をもつて、前示第一記載と同様の方法により、別表(イ)番号22ないし26記載のとおり同三一年一月二四日頃から三月上旬までの間前後五回にわたり輸出申告書並びに輸出許可証各一通宛、合計各五通の偽造を遂げ、更に被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄は共謀して、当時毛製品輸出証明書発給申請書に添付しなければならないことになつていた財団法人輸出敷物検査協会発行の繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書を偽造することを企て、行使の目的をもつて、同三一年一月二七日頃、前示合同貿易株式会社事務所において、同会社備付の検査証明書用紙に、別表(ロ)番号22記載のとおり、ほしいままに証明年月日、番号、品名、数量、羊毛混率、同協会堺検査所検査人福富衛の署名をタイプライター及びゴム印で記入した上、いずれも偽造にかかる同検査所印及び福富衛の印を押捺して、右福富衛を作成名義人としその署名と押印のある私文書である右検査証明書一通(証第七六号の五)の偽造を遂げたほか、前同様の方法により、同表番号23ないし26記載のとおり、同年二月四日頃から三月三日頃までの間前後四回にわたり同種検査証明書一通宛、合計四通の偽造を遂げた上、それぞれ別表(ハ)の各対応番号記載のとおり、その頃前後五回にわたり、別表(イ)、(ロ)の各同一番号記載の偽造文書三種を、前示第一記載と同様の方法により真正なものと装い各一括行使し、前示通商産業局係員を欺罔して、その都度別表(ハ)各対応番号記載の毛製品輸出証明書三通宛、(但し番号24では六通)、合計一八通を騙取し、

第四、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄は共謀の上、行使の目的をもつて、同年三月一二日頃、前示第一記載と同様の方法により、別表(イ)番号27記載のとおり輸出申告書並びに輸出許可証各一通の偽造を遂げ、更に行使の目的をもつて前示第三記載と同様の方法により別表(ロ)同番号記載の繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書一通(証第二六号)の偽造を遂げた上、別表(ハ)番号27記載のとおり、その頃右偽造にかかる三文書を前示第一記載と同様の方法により真正なものと装い各一括行使し、前示通商産業局係員を欺罔して、同表同番号記載の毛製品輸出証明書三通を騙取し、

第五、被告人四名は順次共謀の上、行使の目的をもつて、別表(イ)番号28ないし51記載のとおり、同年三月二六日頃から一二月下旬頃までの間前後二四回にわたり、前示第一記載と同様の方法により輸出申告書並びに輸出許可証各一通宛、合計各二四通の偽造を遂げ、更に行使の目的をもつて、別表(ロ)番号28ないし51記載のとおり、その頃前後二四回にわたり前示第三記載と同様の方法により繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書一通宛、合計二四通の偽造を遂げた上、それぞれ別表(ハ)の各対応番号記載のとおり、その頃前後二四回にわたり、別表(イ)、(ロ)の各同一番号記載の偽造文書三種を、前記第一記載と同様の方法により真正なものと装い各一括行使し、前示通商産業局係員を欺罔して、その都度別表(ハ)各対応番号記載の毛製品輸出証明書三通(但し番号28では九通)、合計八一通を騙取し、

第六、被告人松政耕蔵は、冒頭説示のように合同貿易株式会社に勤務して給料の支給を受けていたほか、前示第一ないし第五の所為により入手した毛製品輸出証明書を他に売却して利益を得、その一部を株式投資に充て配当金をも受領していたものであるが、その間の所得税を免れることを企て、

一、昭和三〇年分の所得税に関し、同年中の課税総所得金額は別表(ニ)の一に説示するように二七、八五三、六〇〇円であり、その税額は一七、二三二、七三〇円であるのに拘らず、毛製品輸出証明書売却代金等の所得を架空人名義の銀行預金或いは有価証券にする者の方法で秘匿した上、同三一年三月一五日頃、大阪府茨木市所在茨木税務署に対し同三〇年分の課税総所得金額を一六六、一六三円、還付税額を一七、四八九円とした給与所得及び配当所得の一部についてのみの確定申告書を提出し、もつて同年分の所得税一七、二五〇、二一〇円を逋脱し、

二、同三一年分の所得税に関し、同年中の課税総所得金額は別表(ニ)の二に説示するように三八、八一八、六〇〇円であり、その税額は二三、五一四、三六〇円であるのに拘らず、前示一と同様の方法によりその所得の一部を秘匿した上、同三二年三月一四日頃、前示茨木税務署に対し、同三一年分の課税総所得金額を一一一、三二〇円、還付税額を八、七一四円とした給与所得及び配当所得の一部のみの確定申告書を提出し、もつて同年分の所得税二三、五二三、〇七〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(弁護人等の主張に対する判断)

先ず、被告人松政耕蔵の弁護人岡本薫一、同中井一夫は、同被告人に対する所得税法違反被告事件について収税官吏の告発書が提出せられていないので、告発はなかつたものと考えざるを得ないが、直接国税においても告発は訴訟条件と解すべきであるから、告発のない右事件については公訴を棄却さるべきであると主張するので、その当否につき検討するのに、昭和二三年法律第一〇七号を以つて、間接国税犯則者処分法(明治三三年法律第六七号)が国税犯則取締法と題名が改められ、第一二条ノ二として「収税官吏ニ間接国税以外ノ国税ニ関スル犯則事件ノ調査ニ依リ犯則アリト思料スルトキハ告発ヲ為スベシ」との一条が加えられた後において、所論のように右告発を以つて訴訟条件と解すべしとする判例、(たとえば昭和二四年一二月一二日東京高等裁判所判決における判断)を生じたこともあるけれども、最高裁判所第一小法廷は昭和二八年九月二四日の判決(刑事判例集第七巻一八二五頁以下)において、間接国税の犯則についての収税官吏等の告発は公訴提起の訴訟条件であるが、間接国税以外の国税に関する犯則事件については間接国税におけるが如き通告、任意履行等の規定が存しないから収税官吏の告発を以つて公訴提起の訴訟条件と解することができないので、前示東京高等裁判所の判例を変更する旨を判示しているのであつて、爾来前示国税犯則取締法の規定は改廃せられていないのみならず、右最高裁判所の判例も変更せられていないのである。当裁判所も亦間接国税以外の国税に関する犯則事件については、収税官吏の告発をもつて公訴提起の訴訟条件ではないと解するので、告発書の有無の取調をなすまでもなく、弁護人等の右公訴棄却の主張はその前提を缺くものとして排斥を免れない。

次に、同被告人の弁護人宮内勉、同中井一夫は、判示第一ないし第五の犯罪行為により利得した同被告人がその所得を税務署に申告すれば、右犯罪行為が発覚することは明らかであるから、同被告人に右の申告を要求することは期待可能性を缺き、本件所得税法違反事件は無罪たるべきものであると主張する。よつてこの点について審案するに現行所得税法はいわゆる申告納税制度を採用し、一定の所得を有する個人は、同法及び同法施行規則の規定に基き、自主的に所得とこれに対する税額を計算し、その所得金額と所得税額計算の基礎等を確定申告書に記載して所轄税務署長に提出すると共に税金を納付することを建前としているのであつて、右確定申告書の受付に際して、どのような原因に基き、或いはどのような経緯によつて所得が発生したかの具体的事実について詳細な説明を求められるようなことはない。ただ申告者中には過失によつて所得の一部の記載を脱漏し、又は故意に所得を秘匿して申告書に記載しないものがあることが予想されるので、所得税法は第四四条において右申告書受理後所轄税務署長が調査したところと異るときは、申告に係る金額及び税額を更正すべきものとし、右の調査のため、第六三条において収税官吏に質問並びに検査の権限を認めて居り、更に右の調査の結果逋脱犯罪等いわゆる犯則事件の嫌疑があるに到つたときは、国税犯則取締法による調査がなされることとなるが、収税官吏は一般的な司法警察権を与えられていないのであるから、申告された所得金額及び所得税額が適正妥当であるか、又は犯則事件があるかどうかを決するに必要な範囲内においてのみ調査すべきであり、所得発生の原因が反則事件以外の犯罪に基くものであるかどうかにつき捜査をする権限を有しないものといわなければならない。ところで本件につき被告人松政耕蔵において秘匿し確定申告書に記載しなかつたのは、リンク券の売却による収入並びに割戻手数料の収入とその一部を資金として購入した株式の配当金の所得とであるが、これらの所得を申告するため、本件公私文書偽造行使詐欺の事実を具体的に確定申告書に記載し、且つ収税官吏の質問に応じなければならないことを要求している法令上の根拠は存しないのみならず、所得調査が行われても、収税官吏は右刑法上の犯罪を追及することはないこと前段説示のとおりである。してみると本件所得を申告することによつて、直ちに前示刑法上の犯罪が発覚する虞がある旨の所論はすでにこの点において失当というべきであるから爾余の主張に対する判断をなすまでもなく採用し難い。

よつて主文のとおり判決する。

(法令の適用)

被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄の判示第一ないし第五の所為中各輸出申告書偽造の点(別表(イ)番号1ないし26、28ないし51)、判示第三ないし第五の所為中各繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書偽造の点(別表(ロ)番号22ないし51)、同今井喜一の判示第二、第三、第五の所為中各輸出申告書偽造の点(別表(イ)番号14ないし26、28ないし51)は刑法第一五九条第一項、第六〇条に、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄の判示第一ないし第五の所為中各輸出許可証偽造の点(別表(イ)番号1ないし51)、同今井喜一の判示第二、第三、第五の所為中各輸出許可証偽造の点(別表(イ)番号14ないし51)は同法第一五五条第一項、第六〇条に、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄の判示第一ないし第五の所為中各輸出申告書行使の点(別表(ハ)番号1ないし26、28ないし51)、判示第三ないし第五の所為中各繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書行使の点(同表番号22ないし51)は同法第一六一条第一項、第一五九条第一項、第六〇条に、判示第一ないし第五の所為中各輸出許可証行使の点(同表番号1ないし51)は同法第一五八条第一項、第一五五条第一項、第六〇条に、各毛製品輸出証明書騙取の点(同表番号1ないし51)は同法第二四六条第一項、第六〇条に、被告人松政耕蔵の判示第六の一、二の各所為は所得税法第六九条、第二六条第三項第三号に該当するが、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄につき判示第一ないし第五の所為中別表(イ)、(ロ)、(ハ)の各同一番号の各有印私文書偽造、同行使と詐欺、並びに同じく各同一番号の有印公文書偽造、同行使と詐欺とは、それぞれ順次手段結果の関係にあり、右各表同一番号記載の偽造文書数通の一括行使は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、別表(イ)、(ロ)、(ハ)の各同一番号の各偽造、同行使と詐欺とは、刑法第五四条第一項前段、後段、第一〇条により、それぞれ結局一罪として最も重い偽造有印公文書行使罪の刑に従い処断し、被告人松政耕蔵に対する判示第六の一、二の各所得税法違反罪につき同法第六九条第一項により所定刑中懲役刑及び罰金刑を併科することとし、同被告人につき以上の各偽造、同行使、詐欺罪と各所得税法違反罪、同井上秋広、同井上英雄につき以上の各偽造、同行使、詐欺罪、同今井喜一につき以上の各偽造罪は、それぞれ刑法第四五条前段の併合罪であるから、その懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により、被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄につき犯情最も重いと認める判示第三中別表(ハ)番号31の偽造有印公文書行使罪の刑、同今井喜一につき犯情最も重いと認める判示第三中別表(イ)番号31の有印公文書偽造罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、なお被告人松政耕蔵に対する罰金刑につき所得税法第七三条により判示第六の一、二の罪について各別に処断すべきところ、右第六の一の罪につき所定罰金額の範囲内で、第六の二の罪につき情状に従い同法第六九条第二項を適用し判示所得税逋脱金額に相当する罰金額の範囲内で、被告人松政耕蔵を懲役六年及び判示第六の一の罪につき罰金五、〇〇〇、〇〇〇円、判示第六の二の罪につき罰金七、〇〇〇、〇〇〇円に、同井上秋広、同井上英雄をいずれも懲役四年に、同今井喜一を懲役一年六月に処する。なお、刑法第二一条により未決勾留日数中被告人松政耕蔵につき一〇〇日を右懲役刑に、同井上秋広につき一五〇日、同井上英雄につき一二〇日をそれぞれ右各本刑に算入し、同今井喜一については犯情憫諒すべきものがあるので同法第二五条第一項第一号を適用して本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、同松政耕蔵において右罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金一二、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、押収してある繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書三〇通(昭和三三年押第二一五号の二六、七六の五、七七の四、七八の五、七九の四、八〇の二、八一の六、八二ないし八五の各四、八六の五、八七の四、八八の五、八九の四、九〇の三、九一ないし一〇四の各四)は、判示第三ないし第五の各罪中各偽造繊維二次製品輸出実績確認用検査証明書行使行為(別表(ハ)番号22ないし51)を組成した偽造文書であつて何人の所有をも許さないものであるから、同法第一九条によりこれを被告人松政耕蔵、同井上秋広、同井上英雄から没収し、刑事訴訟法第一八一条本文、第一八二条により訴訟費用中証人山戸久夫、同鬼頭正彦、同今西芳信、同末原静彦、同服部秋季、同細井史郎、同仲野良造、同井上秋広に支給した分は被告人松政耕蔵の負担とし、証人竹下正美、同酒井孝太郎に支給した分は被告人松政耕蔵、同井上英雄の連帯負担とし、国選弁護人東谷義人、同疋田郁子に支給した分は被告人今井喜一の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 石丸弘衛 重富純和 加藤光康)

(別紙略)

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