神戸地方裁判所 昭和39年(ワ)728号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告等は、被告は自賠法にいう本件自動車の「保有者」であり同法第三条にもとづく損害賠償責任を負うと主張するけれども、<証拠>をもつてしては、いまだ被告が本件自動車の保有者であつたことを背認するに足らず、その他本件全証拠によるも右原告主張事実を認めるに足りない。<編注、争いない事実によれば、事故当時本件小型普通乗用車を運転していたのは、訴外廖木水である><証拠>並びに弁論の全趣旨を総合すると、訴外亡廖木水は自動車ブローカーをしていたところ、訴外神戸トヨペツト株式会社から本件自動車を購入するに際し、自己には銀行取引がないため被告に買主名義人になつて貰うことと頭金二〇万円の借入方を懇請し、被告の承諾を得て昭和三五年八月二〇日被告名義で、右神戸トヨペツト株式会社と本件自動車を代金七八万三、七二八円、頭金二〇万円を即時、残金は毎月三万二、四〇〇円の分割払として買受ける旨の月賦販売契約を締結し、同訴外人が訴外会社より所有権留保のまま右自動車の引渡をうけ、自動車の割賦代金を支払つていたこと、自動車税については、所有者を訴外会社、使用者を被告として申告し、実際には同訴外人が使用者としての税を納めていたこと、本件自動車は同訴外人が保管しガソリン代等の経費も同人が負担し専ら自己のために使用していて、被告は自己のために使用しなかつたこと、本件事故後は自動車割賦代金を支払う者がなくなつたため、本件自動車は訴外会社に引き揚げられたことの各事実がそれぞれ認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。
ところで、自賠法により「自動車の保有者」としてその運行上の事故責任を負うべきものは、その自動車の運行を支配し、その運行上の利益を享受している者と解すべきところ、右認定事実からすると、被告は訴外廖が本件自動車を月賦購入するに際し、同訴外人のために名義を貸しただけで、本件自動車について運行支配権運行利益も有しなかつたと認めるほかない(なお被告の主張する金一〇万円を支払つたとの事実も、弁論の全趣旨に徴し、被告の保有者責任を裏づける事実とは認めがたい)ので、被告に同法の保有者責任を肯認することはできない。(原田久太郎 保沢末良 河上元康)