大判例

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神戸地方裁判所 昭和40年(わ)771号・昭40年(わ)368号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)

被告人は、

第一、常時自動車を運転し以て自動車運転の業務に従事していたものであるが、昭和三九年五月三一日午前〇時一五分頃普通乗用自動車(兵五に一九五七号)に安本修、秋吉秀保らを載せて運転し、神戸市長田区東尻池町二丁目四八番地附近を時速約四〇キロメートルで東進してきた際先行車を追抜くため市電軌道敷内を進行した。

ところで自動車運転者としては絶えず前方及びその左右を注視し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるにも拘らず、被告人はこれを怠り、追抜いて行く車の列に注意を奪われて前方の注視を欠いたまま進行した過失により、折から右道路を北から南に横断すべく市電軌道敷中央部附近で立止まり東から西に向かう車の通過を待つていた清水喜代司(当四五年)の発見が遅れ、その前方約一一メートルに至つて発見し、ハンドルを左に切るとともに急停車の処置をとつたが及ばず、同人に車体右前照灯附近を衝突させてはねとばし転倒させ、よつて同人に対し全治に約二月半を要する脳震盪症、後頭部挫創、右前腕顔面打撲擦過傷、左示中指擦過傷、右腓骨骨折の傷害を負わせ

第二、

(一) 右交通事故により路上に転倒した右清水を一旦は車内に運びこんだものの、清水が負傷していることを認識しながら直ちにもよりの病院に収容する等してこれを救護する措置を講ぜずそのまま運転を継続して現場を立去り

(二) また右事故発生の日時場所、事故の内容等法令に定める事項を直ちにもよりの警察署の警察官に報告せず

第三、右のように清水を車内に運びこんだが、損害賠償責任等を追求されるのを恐れたため、右事故現場から車を発進させて東尻池二丁目交差点を左折北上し同市同区菅原通五丁目附近を再び左折西進して同市同区神楽町二丁目附近に至つて更に左折南進して同市同区西尻池町二丁目二九番地附近に至つた同日午前〇時二五分頃同乗者安本修、秋吉秀保と共謀し、右のような救護義務があるにもかかわらず、清水が負傷し他人の力を借りなくては自ら正常な起居動作を行なうことができない状況にあることを認識しながら、清水を薄暗い路上に車内から運び降しその場に放置して立ち去り、以て保護を要すべきものを遺棄し

たものである。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は刑法二一一条前段に、第二(一)の所為は道路交通法の一部を改正する法律昭和四〇年法九六号)附則六条同法の一部を改正する法律(昭和三九年法九一号)附則一項、一七項、改正前の同法一一七条に、第二(二)の所為は前同様改正前の同法一一九条一項一〇号に、第三の所為は刑法二一八条一項に各該当するので、各所定刑中第一の点につき禁錮刑を、第二の点につき各懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪の関係にあるから同法四七条本文、一〇条に従い最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、被告人を懲役六月に処し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文に従い被告人に負担させる。

本件救護義務違反の罪と要保護者遺棄罪との関係については、若しいわゆる「轢き逃げ」として交通事故現場に負傷被害者を置き去りにして逃走した場合であるならば、なるほど両者の罪は想像的競合の関係にあると言えるかも知れないが、本件事案においては、被告人は直ちに負傷被害者の救護の措置を終り且つ警察官に報告し、その指示を受けてからでなければ立去ることのできない現場を、直ちに救護措置を護じないで被害者を連れたまま立去り、もよりの病院等に収容する意思もないままに暫く進行した後被害者を路上に置き去りにして遺棄したのであるから、両者の罪はむしろ併合罪の関係にあると考える。

よつて主文のとおり判決する。(原田直郎)

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