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神戸地方裁判所 昭和41年(ワ)187号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、損害額

(イ)亡徐広守の喪失利益

<証拠>を総合すると、亡徐広守は本件事故当時四七才の健康体で三友企業株式会社に日雇人夫として雇われるかたわら、大工の技術をもつていたところから、三宅工務店などに日雇大工として働き、一ケ月平均四万円を下らない収入をあげていたこと、同人の一ケ月の生活経費は二万円を超えなかつたことが認められるので、右労働が肉体労働に当ることを考慮しても同人は少くとも将来一〇年間は右割合による労働収益をあげることができたに拘らず本件事故の結果右の利益を喪失したものと推認すべく、右逸失利益をホフマン式計算により年五分の割合による中間利息を控除して本件事故発生時の一時払額に換算すると原告らの主張額に近い金一、九〇六、七八七円となる

(4−2)×12×7,94494948)。

(ロ)原告らの慰藉料

原告崔恵子が右亡徐広守の妻であること、その他の原告らが右徐広守の子であることは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、同原告は右広守の事故死により三五才で未亡人となり、その子である原告助雄、幸啓、幸敏はいずれも未成年で、ことに幸啓、幸敏は事故当時中学生であつたことが認められるので、原告らはそれぞれ右徐広守の死亡により家庭的精神的にも多大の打撃と苦痛を蒙つたことが推認される。しかしながら後記認定のとおり、右徐広守の事故死については同人を同乗させ単車を運転していた長男助雄にも大きな過失があるので、問題はあるけれども、右苦痛に対する家族の慰藉料額算定上は同人の過失を被害者側の受認すべき減額事情として斟酌して然るべきものと解する。よつて以上の諸般の事情を考慮し、被告らが賠償すべき原告らの右精神的苦痛に対する慰藉料額は、原告恵子に対し金三〇〇、〇〇〇円、原告助雄に対し金五〇、〇〇〇円、原告幸啓、同幸敏に対しそれぞれ金一五〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

(ハ)原告助雄の負傷に対する慰藉料

原告助雄が本件事故によりその主張のような身体傷害を受けたことは当事者間に争いがなく、同原告本人尋問の結果によると、同原告は右傷害のため約一ケ月間入院治療を受け精神的苦痛を蒙つたことが認められる。そこで右苦痛に対する被告らの賠償すべき慰藉料額は原告の主張額<編注、一〇万円>と後記認定の同原告の過失を斟酌し金三〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

四、原告助雄及び亡徐広守の過失

本件事故現場の東西の道路すなわち元町本通が南北道路に対し優先道路であること、南北を通行する車は十字路の手前で一旦停車して東西道路の交通の安全を確認すべき義務のあることは当事者間に争いがない。そして<証拠>を総合すると、単車を運転して北進し右事故現場に差しかかつた原告助雄は十字路の手前で一旦停車せず、かつ西方道路の交通の安全を十分に確認しないまま一五キロないし二〇キロの速力で十字路を通過しようとした過失のあること、そして右の過失は本件事故の発生に重大な原因を与えていることが認められる。従つて本件事故により発生した亡徐広守の被告らに対する賠償請求権の内原告助雄の相続額については同原告の右過失を斟酌して減殺し、その債権額は相続額の三割とみるのが相当である<編注、相手方の過失は制限速度違反、減速不履行および警音器を鳴らさなかつたこと>。被告らは、原告助雄の運転していた単車には後部に乗用装置がないので二人乗を禁じられた車であり、また二輪自動車の乗用者はヘルメツトを着用しなければならないのに徐広守はこれを着用せずして二人乗りしたのであるから、同人にも本件の事故発生につき過失がある旨主張するけれども、<証拠>によると原告助雄運転の単車には後部に荷物台及び足掛装置の存することが認められるので乗用装置のある車と解して妨げないのであるし、また<証拠>によると右単車は第二種原動機付自転車であつて二輪自動車でないことが認められるので、本件事故当時右単車の乗用者がヘルメツトを着用すべき法的義務はなかつたものというべく、身体保護上ヘルメツトの着用が望ましいことは勿論であるけれども、右の不着用をもつて法的な注意義務違反とみることはできないので、被告らの右主張は採用できない。<中略>なお、本件事故の発生には前認定のとおり原告助雄にも重大な過失があるので本件事故は原告助雄と被告吉崎の各過失が共同の原因となつて発生したものというべく、従つて右両名は徐広守に対する関係では共同の(不法行為)責任者というを妨げない。ところで原告助雄は未成年者として右同人の親権に服していたのではあるけれども、事故当時満一八年を超え原動機付自転車の運転資格を有しており、これに反し徐広守はこれらの運転技術も運転法規も知らない全くの素人であつたことが認められるので徐広守に運行上の監督義務ないし注意義務を課することはできないものというべく、さらにまた、原告助雄と徐広守との間に民法第七一五条を類推することも相当でないと認められるので、被告らの賠償すべき徐広守に対する損害につき、原告助雄以外の相続人に対して右助雄の過失との過失相殺は許されないものと解する。(もつとも被告らが右の賠償義務を履行した上で原告助雄に対して同人の責任―過失の度合―に応じ求償権を行使し得ることは別論である。)なお徐広守自身にヘルメツト不着用等の過失責任を問いがたいことは前に判断したとおりである。

五、損益相殺

原告恵子は亡徐広守の妻として前記三(イ)の損害賠償債権の三分の一にあたる金六三五、五九六円を相続取得し、原告助雄は亡徐広守の子として右損害賠償債権の九分の二にあたる金四二三、七三〇円を相続取得したのであるが、同原告の過失を相殺すると同原告の債権額は金一二七、一一九円となり、原告幸敏、同幸啓は亡徐広守の子として右損害賠償債権の九分の二にあたる金四二三、七三〇円を相続取得したこととなるのであるが、右各金額から当事者間に争いのない保険給付金を右債権額に按分して控除すると原告恵子の残債権額は金二四〇、八五九円、原告助雄の残債権額は金四八、一七二円、原告幸敏、同幸啓の残債権額はそれぞれ金一六〇、五七二円となる。(原田久太郎)

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