神戸地方裁判所 昭和44年(行ウ)33号 判決 1974年12月20日
神戸市長田区西丸山町一丁目五三番地
原告
光観光株式会社
右代表者清算人
松本弘久
神戸市生田区西橘通一丁目八番地
原告
諏訪山観光株式会社
右代表者清算人
福西照夫
神戸市生田区山本通二丁目二七
原告
井原大一
右三名訴訟代理人弁護士池上治
神戸市生田区中山手通三丁目二一の二
被告
神戸税務署長
奥田寛
大阪市東区大手前之町一
被告
大阪国税局長
山内宏
右二名指定代理人
陶山博生
同
筒井英夫
同
福島三郎
同
中川平洋
同
風見幸信
同
河本省三
被告大阪国税局長指定代理人
宮武忠重
同
永井卓男
主文
一 原告光観光株式会社の被告神戸税務署長に対する
(1) 昭和三八年二月一日から同三九年一月三〇日事業年度につき、被告神戸税務署長が昭和四三年三月二九日付でなした法人税額等の更正処分の取消(但し、法人税額につき二八八万七、一八〇円を限度とする)を求める訴を却下し、前同日付無申告加算税賦課決定処分のうち無申告加算税額二二万八、五〇〇円を越える部分の取消を求めるを却下し、その余の部分の取消を求める請求を棄却し、
(2) 昭和三九年二月一日から同四〇年一月三一日事業年度および同四〇年二月一日から同年九月一日事業年度につき、被告神戸税務署長がいずれも昭和四三年三月二九日付でなした各更正処分並びに重加算税賦課決定処分の取消(但し、法人税額は前事業年度につき四〇一万二、九〇〇円後事業年度につき二一四万三、六〇〇円を各限度とする。)を求める訴のうち、昭和四六年五月二一日付各再更正処分並びに重加算税賦課決定処分により減額された部分の取消を求める部分をいずれも却下し、その余の部分の請求をいずれも棄却する。
二 原告諏訪山観光株式会社の被告神戸税務署長に対する
(1) 昭和四〇年一〇月二〇日から同四一年九月三〇日事業年度および同四一年一〇月一日から同四二年九月三〇日事業年度につき、被告神戸税務署長が昭和四三年三月二九日付でなした各更正処分および重加算税賦課決定処分の取消(但し、法人税額は前事業年度につき七一六万九、一六〇円、後事業年度につき八七一万九、二〇〇円を各限度とする。)を求める訴のうち、昭和四六年五月二八日付各再更正処分並びに重加算税賦課決定処分により減額された部分の取消を求める部分をいずれも却下し、
(2) 昭和四〇年一〇月二〇日から同四一年九月三〇日事業年度にかかる、右更正処分(但し、右更正処分により一部減額されたもの)のうち所得金額一、九七九万六、五五九円、法人税額六九三万一、五〇〇円を各越える部分および重加算税賦課決定処分のうち重加算税額二〇七万九、四〇〇円を越える部分をいずれも取消し
(3) その余の請求を全て棄却する。
三(1) 被告大阪国税局長が、いずれも昭和四三年一〇月二九日付でなした原告井原大一に対する各第二次納税義務告知処分のうち、原告光観光株式会社分につき別紙Ⅲ(一)の、同諏訪山観光株式会社分につき別紙Ⅲ(二)の各記載金額を越える部分をいずれも取消す。
(2) 原告井原大一のその余の請求はいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、原告らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら(請求の趣旨)
1 (原告光観光株式会社)
被告神戸税務署長が、昭和四三年三月二九日付法人税額等の更正通知書および加算税の賦課決定通知書をもつて、原告光観光株式会社に対し通知した同原告の
(一) 自昭和三八年二月一日、至同三九年一月三一日事業年度分につき所得金額七八六万一、七三七円、法人税額二八八万七、一八〇円、無申告加算税二四万六、三〇〇円
(二) 自昭和三九年二月一日、至同四〇年一月三一日事業年度分につき所得金額一、〇九五万五、一八三円、法人税額四〇一万二、九〇〇円、重加算税一三三万八、七〇〇円
(三) 自昭和四〇年二月一日、至同年九月一日事業年度分につき所得金額六二八万〇、一四〇円、法人税額二一四万三、六〇〇円、重加算税七〇万九、二〇〇円と更正した各課税処分を取消す。
2 (原告諏訪山観光株式会社)
被告神戸税務署長が、昭和四三年三月二九日付法人税額等の更正通知書および加算税の賦課決定通知書をもつて、原告諏訪山観光株式会社に通知した原告の、
(一) 自昭和四〇年一〇月二〇日、至同四一年九月三〇日事業年度分につき、所得金額二、〇四五万六、二八三円、法人税額七一六万九、一六〇円、重加算税二三四万三、三〇〇円
(二) 自昭和四一年一〇月一日、至同四二年九月三〇日事業年度分につき、所得金額二、五五一万二、五四四円、法人税額八七一万九、二〇〇円、重加算税二六七万九、〇〇〇円と更正した各課税処分を取消す。
3 (原告井原大一)
被告大阪国税局長が、昭和四三年一〇月二九日付納付通知書をもつて、原告井原大一に対し、
(一) 納税者原告光観光株式会社の滞納国税一、〇九四万七、九〇〇円および延滞税(内訳いずれも年度昭和四二年度、法人税納期限昭和三九年三月三一日二四六万三、四〇〇円、法人税納期限右同二四万六、三〇〇円、法人税納期限昭和四〇年三月三一日三八二万五、九〇〇円、加算税一三三万八、七〇〇円、法人税納期限昭和四〇年一一月三〇日二三六万四、四〇〇円、加算税七〇万九、二〇〇円)につき、
(二) 納税者原告諏訪山観光株式会社の滞納国税二、二一四万一、四〇〇円および延滞税(内訳、法人税納期限昭和四三年二月二九日二七万六、〇〇〇円、延滞税五、四〇〇円、法人税納期限昭和四三年四月三〇日八九三万〇、八〇〇円、加算税二六七万九、〇〇〇円、法人税納期限右同七八一万一、九〇〇円、加算税二三四万三、三〇〇円、源泉税納期限右同八万二、四〇〇円、加算税二万四、〇〇〇円)につき
各第二次納税義務者として計三、三〇八万九、三〇〇円を課税する旨の課税処分を取消す。
4 訴訟費用は、被告らの負担とする。
二 被告ら
(被告神戸税務署長の本案前の申立)
1 原告光観光株式会社の本訴のうち、被告神戸税務署長が同告に対してなした自昭和三八年二月一日至同三九年一月三一日事業年度分の所得金額七八六万一、七三七円、法人税額二八八万七、一八〇円とする更正処分の取消を求める部分の訴を却下する。
2 訴訟費用は原告光観光株式会社の負担とする。
(被告らの本案に対する答弁)
1 原告らの請求は、いずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 原告ら
(請求原因)
1(一) 原告光観光株式会社(以下原告光観光という。)は、原告井原大一(以下原告井原という。)から建物および営業設備一切を一か月賃料一三五万円で借受け、トルコ温泉を主たる営業目的としていたものであつたが、右賃料の支払にも窮した結果昭和四〇年九月一日解散決議により営業を廃止し解散登記を了しているものである。
(二) しかるところ、被告神戸税務署長(以下被告税務署長という。)は、請求の趣旨第一項記載の如き課税処分を通知してきた。
そこで原告光観光は昭和四三年四月二八日異議申立をなし、同年七月二六日右異議の申立が棄却されたので、同年八月二四日付で被告大阪国税局長に対し審査請求をしたのであるが、同被告は昭和四四年六月二六日到達の同月二五日付裁決書をもつて自昭和三八年二月一日至同三九年一月三一日事業年度分(以下三八年度分という。)については審査請求を棄却し、自昭和三九年二月一日至同四〇年一月三一日事業年度分(以下三九年度分という。)については、法人税九万七、五四〇円、重加算税三万三、九〇〇円についてのみ取消し、自昭和四〇年二月一日至同四〇年九月三〇日事業年度分(以下四〇年度分という。)については、法人税につき四万五、〇〇〇円、重加算税につき一万三、五〇〇円のみを各取消したにとどまつた。その後、各年度分につき被告主張のごとき再更正処分がなされた。
(三) しかしながら、原告光観光の各年度の所得金額は次のとおりである。即ち、三九年度一七〇万九、一三七円、四〇年度一〇八万六、二五七円、四〇年度欠損金三二万三、三五〇円である。
2(一) 原告諏訪山観光株式会社(以下諏訪山観光という。)は前記原告光観光解散後同じ建物、営業設備一切を原告井原から一か月賃料二三五万円で借受けトルコ温泉の経営を主たる営業としてきた。
(二) 被告税務署長は、請求の趣旨2記載の如き課税処分を通知してきた。そこで原告諏訪山観光は昭和四三年四月二七日付をもつて異議申立をしたが同年七月二五日右申立が棄却されたので、同年八月二四日付で大阪国税局長に対し審査請求をしたところ、同局長は昭和四四年六月一〇日付裁決書をもつて審査請求を棄却し、原告は同月二六日右通知を受けた。その後各年度分につき被告主張のごとき再更正処分がなされた。
(三) しかしながら原告諏訪山観光の各年度の所得金額は次のとおりである。即ち、自昭和四〇年一〇月二〇日至同四一年九月三〇日事業年度分(以下昭和四一年度分という。)、欠損金一五万六、六四四円、自昭和四一年一〇月一日至同四二年九月三〇日事業年度分(以下昭和四二年度分という。)、金一九五万〇、一九五円である。
3(一) 原告井原は、昭和四〇年九月一〇日まで神戸市生田区山本通四丁目九七番地上のコンクリートブロツク造および木造陸屋根二階建建物および同建物内のトルコ温泉の営業設備一切を原告光観光に一か月金一三五万円で賃貸し、同四〇年一〇月二五日からは原告諏訪山観光に一か月金二三五万円で賃貸していたものである。
(二) 被告大阪国税局長(以下被告国税局長という。)は右原告光観光、同諏訪山観光が請求の趣旨第1第2項記載の各課税処分を受けたことにより発生した法人税、加算税の各滞納国税の第二次納税義務者として請求の趣旨第3項記載の課税処分を通知してきた。
そこで、原告井原は昭和四三年一〇月三一日被告国税局長に対し異議の申立をしたが、同四四年九月九日に至るも右申立に対しなんらの決定もない。
(三) しかしながら、原告光観光、同諏訪山観光に対する課税処分は不当であるし、そもそも原告井原は第二次納税義務者ではない。
よつて、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。
(被告らの主張に対する認否および反論)
1 被告らは原告光観光は昭和三八年度分につき修正申告をした旨主張するがかかる事実はない。即ち、原告井原が河島滋に対し修正確定申告書の代筆を依頼した事実はなく、右原告井原は原告光観光の法人税問題に関し同原告会社の代理人となつたこともなくまた同原告会社が原告井原に代理権限を与えたこともない。
従つてまた被告税務署長の本案前の申立も理由のないこと明らかである。
2 原告井原が原告光観光および原告諏訪山観光を実質的に支配していたとの被告らの主張事実は否認する。
3 原告光観光および原告諏訪山観光が売上除外をしていたとの被告らの主張事実は全て否認する。
原告光観光は昭和四〇年九月一日をもつて解散し、原告諏訪山観光は同年一〇月二〇設立されているのであるから、右各原告が被告ら主張のごとき売上除外をしていたとすれば、昭和四〇年九月一日から同一〇月一九日の間は右原告らは営業していないのであるから、売上除外のあるはずはない。
二 被告らの主張
(被告税務署長の訴却下を求める理由)
原告光観光の昭和三八年度分に対する被告税務署長の課税処分は、昭和四三年三月二二日に同原告から提出された修正申告(所得金額七八六万一、七三七円、法人税額三〇五万六、二〇〇円)に対し所得金額七八六万一、七三七円、法人税額三〇二万七、四〇〇円に更正し、無申告加算税額二四万六、三〇〇円を賦課決定したものであるから、同原告が取消を求めている所得金額七八六万一、七三七円、法人税額二八八万七、一八〇円の部分については訴の利益は存しない。よつて右部分の訴は却下されるべきである。
(請求原因に対する認否)
1 原告ら主張1の(一)のうち、賃借料が一か月金一三五万円であることは否認し、解散原因は不知、その余の事実は認め、同(二)のうち、昭和三八年度分は原告光観光の修正申告に対し、所得金額七八六万一、七三七円、法人税額三〇二万七、四〇〇円と更正し、無申告加算税二四万六、三〇〇円を賦課決定したものであること前記のとおりであり、同三九年度分の法人税額は四一八万四、四〇〇円、同四〇年度分の法人税額は二三六万四、四〇〇円である。その余の事実は認める。
2 原告主張2の(一)のうち賃料二三五万円であることは否認し、その余の事実は認め、同(二)の課税処分のうち昭和四一年度分の法人税額は七八一万一、九〇〇円、同四二年度分のそれは九四七万六、八〇〇円である。その余の事実は認める。
3 原告主張3のうち、原告光観光に対する賃料が一か月一三五万円であり、原告諏訪山観光に対する賃料が一か月二三五万円であるとの事実は否認し、その余の事実は認める。但し、原告井原の被告国税局長に対する異議申立が棄却されたこと後記のとおりである。
(処分の適法性)
1 原告光観光および原告諏訪山観光の課税経過について
(一) 原告光観光および原告諏訪山観光の設立経過等について
(1) 原告光観光は昭和三七年三月二日神戸市生田区山本通四丁目九六番地上でトルコ温泉等を経営するため設立され(当初の商号は光興産株式会社であつたが、同年一二月二〇日光観光と変更された)、昭和四〇年九月一日解散するまで右事業を営んでいたものである。
同会社は原告井原によつて設立されたものであり、同人は取締役に就任し、代表取締役には松本弘久が就任(その後福西照夫が就任)しているが、同会社を実質的に支配していたのは原告井原である。
(2) その後昭和四〇年一〇月二〇日右の場所で引続き右の事業を目的とする原告諏訪山観光が設立され、昭和四三年五月一五日解散するまで右事業を営んでいたものである。諏訪山観光の代表取締役には福西照夫が就任し、原告井原は役員に就任していないが、同人が実質的に支配していたことは原告光観光の場合と同様である。
(二) 原告光観光の昭和三八年度分について
(1) 原告光観光の当該事業年度の課税の経過は次のとおりである。
(2) 原告光観光は当該事業年度の法定申告期限(昭和三九年三月三一日)までに被告税務署長に確定申告書を提出せず、いわゆる無申告であつた。
(3) そこで被告税務署長が当該事業年度の法人税に関する調査をしたところ、課税標準があり納税義務があると認められたので、国税通則法二五条、六六条の規定に基づいて昭和三九年六月三〇日付で所得金額一七〇万九、一三七円、法人税額五六万四、〇〇〇円と決定し、無申告加算税五万六、四〇〇円の賦課決定をなしたのである。
(4) その後昭和四三年二月頃当該事業年度分の法人税について再調査をした結果、売上除外の事実が判明し、さきに決定処分をなした所得金額を上廻ることが明らかになつたところ、被告税務署長の調査に立会つた前記の原告井原が売上除外の事実および増差所得金額六一五万二、六〇〇円を認め、当該事業年度の修正確定申告書を提出したい旨の申入れがあつたので、昭和四三年三月二二日課税標準七八六万一、七三七円、法人税額三〇五万六、二八〇円とする修正確定申告書を受理したものである。
なお本件修正確定申告書は当時神戸税務署の係官であつた河島滋に対し原告井原から「私は申告書記載要領がわからないので代筆願いたい」との依頼があつたので、河島滋が修正申告書を代筆し、原告井原が原告光観光代表者印を押印して被告税務署長に提出したものである。
(5) 被告税務署長は原告光観光から提出された修正確定申告書が国税通則法六六条一項二号に該当するので、昭和四三年三月三一日付で無申告加算税二四万六、三〇〇円を賦課決定し、それに伴う留保所得の減算によつて法人税額を二万八、八八〇円減額更正したものである。
(6) 以上述べたところから窺えるように右の修正申告は原告井原が原告光観光の代理人としてなしたものであるから適法であり、これに対してなした法人税額の減額更正は原告光観光に対する不利益処分ではなく、従つて訴の利益はないものと認められるので原告の訴は却下されるべきである。
(7) なお、原告光観光が売上除外をなして得た利益相当額は当該事業年度中に原告井原に贈与していた事実が判明したので、これに該当する部分の金額については同原告の寄付金であると認定し、昭和四六年五月二一日付で再更正処分をなした。
(8) 以上の課税経緯を表で示すと次のとおりである。
<省略>
(注 △印は欠損金額を示す。以下同じ)
なお、再更正処分の内訳は、寄付金の損金算入認容額九万八、八九六円および寄付金の認定に伴う留保所得金額の全額取消しによつて法人税額を一七万七、九〇〇円、無申告加算税額を一万七、八〇〇円夫々減額したものである。
(三) 原告光観光の昭和三九年度および同四〇年度、原告諏訪山観光の昭和四一年度および同四二年度について、
昭和四三年二月ころ被告神戸税務署長が調査したところ、各事業年度において売上除外の事実が判明したので、同被告において調査したところに基づいて昭和四三年三月三一日更正処分をしたものであるが、更にその後原告光観光、同諏訪山観光が売上除外をなして得た利益相当額はそれぞれの事業年度中に原告井原に贈与していた事実が判明したので、これに該当する部分は右両原告会社の寄付金であると認定し、原告光観光に対し昭和四六年五月二一日付で、原告諏訪山観光に対し同年五月二八日でそれぞれ減額再更正処分をしたものである。再更正処分における所得の計算内容は次表のとおりである。
なお、原告光観光の昭和三九年度分については無申告(法定申告期限昭和四〇年三月三一日)であつたので、被告税務署長の調査により昭和四〇年六月二六日課税標準一〇八万六、二五六円、法人税額三五万八、四四〇円とする決定処分をなし、これに対し前記の如く更正および再更正処分をしたものである。
(1) 原告光観光分
(イ) 昭和三九年度(自三九、二、一至四〇、一、三一事業年度)
<省略>
(注)1 <5>寄付金一、〇三一万三、五一六円は<1>の売上除外一、〇五五万三、五一六円から<3>家賃二四万円を控除した額である。
(注)2 <2>寄付金の損金不算入額の計算。
<省略>
なお、再更正処分により法人税額は三八七万四、九〇〇円、重加算税額は一二三万〇、六〇〇円となり、夫々二一万一、九〇〇円および七万四、二〇〇円減額したものである。
(ロ) 昭和四〇年度(自四〇・二・一至四〇・九・一事業年度)
<省略>
<省略>
(注)1 <5>寄附金七、六四万三、一〇〇円は<1>の売上除外七、七八万三、一〇〇円から<3>家賃一四万円を控除した額である。
(注)2 <2>寄附金の損金不算入額の計算
<省略>
なお、再更正処分により法人税額は二一三万九、二〇〇円、重加算税額は六四万一、七〇〇円となり、夫々一八万〇、二〇〇円および五万四、〇〇〇円減額したものである。
(2) 原告諏訪山観光分
(イ) 昭和四一年度(自四〇・一〇・二〇至四一・九・三〇事業年度)
<省略>
(注)1. <3>寄附金二、〇六一万二、九二七円は<1>の売上除外と同額である。
(注)2. <2>寄附金の損金不算入額の計算。
<省略>
なお、再更正処分により、法人税額七〇七万七、〇〇円、重加算税額二一二万三、一〇〇円となり、夫々七三万四、九〇〇円および二二万〇、二〇〇円減額したものである。
(ロ) 昭和四二年度(自四一・一〇・一至四二・九・三〇事業年度)
<省略>
(注)1. <5>寄附金二、五六七万六、一七五円は、<1>の売上除外と同額である。
(注)2. <2>繰越欠損金の控除否認額は前事業年度以降青色申告書承認の取消しによるもの。
(注)3. <3>寄附金の損金不算入額の計算。
<省略>
なお、更正処分により、法人税額八六〇万〇、九〇〇円、重加算税額二四一万六、二〇〇円となり、夫々八七万五、九〇〇円および二六万二、八〇〇円減額したものである。
(四) 加算税の賦課決定について
原告光観光の昭和三九年度分については国税通則法六八条二項、原告光観光の昭和四〇年度分および原告諏訪山観光の昭和四一年度、昭和四二年度分については国税通則法六八条一項に該当するとして重加算税を賦課決定したものである。
2 原告光観光、同諏訪山観光の本件各事業年度の売上除外、寄付金および支払家賃の認定根拠ならびに未納事業税の計算は、次のとおりである。
(一) 売上除外の認定根拠および明細について
(1) 原告光観光、同諏訪山観光は、本件各事業年度を通じて、その営業にかかる売上金について、毎日その一部を、三和銀行神戸支店、原告井原の二女井原千恵子名義預金に入金した。
(2) 右井原千恵子名義預金の入金額は、原告光観光および同諏訪山観光の本勘定に計上されていない事実から、被告税務署長は同預金の入金額のうち、預金相互の振替え等、売上の入金と認められない金額を控除した金額(付表一、同二、同三の(一)、(二)、同四の(一)、(二)の売上除外欄の金額)を原告光観光、同諏訪山観光の各事業年度の売上除外と認定した。
なお、付表記載の売上除外金額は、前記1で主張した両原告会社の各事業年度の当該金額をそれぞれ上回つているが、付表売上除外金額の範囲内でなされた再更正処分には何等の違法は存しない。
(二) 寄付金認定の根拠について
(1) 原告井原は、原告光観光の取締役であり、同諏訪山観光については表見上、株主役員等の何らの地位を有していないが、両者の実質経営者として、自己の意思で原告諏訪山観光の売上除外を指示し、当該売上除外金を三和銀行神戸支店井原千恵子名義預金に入金せしめていた。
なお、右預金は原告諏訪山観光設立以前の原告光観光営業時から存在し、日々入金がなされている事実から、原告光観光についても右の事実が推認できた。
(2) 原告諏訪山観光の代表取締役松本弘久は、実質経営者原告井原の命を受け代表取締役になつてはいたが、すべて原告井原の指示に従つていたわら人形にすぎなかつたため、会社の経理、金銭管理には全く関与せず、これらは監査役内藤幸子が原告井原の指示を受け売上除外金を前記井原千恵子名義預金に入金していた。
代表者松本弘久は右の事実を知りながら、これを黙認せざるを得なかつたものである。
なお、原告光観光についても右と同様事実が推認される。
(3) 右預金が両原告会社の資金に使用された事実は存在せず、直接の行為者である監査役の内藤幸子、代表取締役松本弘久は右預金が法人に帰属する等の認識はなかつた。
(4) 原告井原は、右預金が自己の所有に属するとの認識のもとに、福徳相互銀行神戸支店の自己名義の定期積金等の払込資金に使用したり、銀行借入金および同利息の支払に充てる等、自己の意思で右預金を自由に処分していた。
(5) 被告税務署長は右(1)ないし(4)の事実から、三和銀行神戸支店井原千恵子名義預金は、原告井原の個人預金と認め、同預金に入金された売上除外金(原告光観光の昭和三九年度は当該金額から二四万円を控除し、昭和四〇年度は一四万円を控除した金額)は、原告光観光、同諏訪山観光が、それぞれ原告井原に贈与したものと認定し、法人税法第三七条第二項、第五項を適用した。
(三) 支払家賃算定の根拠について
(1) 原告光観光は、昭和三九年度分の確定申告書を提出せず、昭和四〇年度分の確定決算に基づく確定申告書は提出したが、右確定決算には原告井原に対する支払家賃が計上されていなかつた。
(2) 原告光観光が井原から営業用の建物を借り受けている事実および本件係争事業年度の直前の事業年度である、自昭和三七年三月二日至昭和三八年一月三一日事業年度の確定決算において、原告光観光が原告井原に対する支払家賃月額二万円を計上していた事実が認められた。
(3) 被告税務署長は右の事実から、原告光観光の昭和三九年度、昭和四〇年度においても、家賃として右金額が継続して原告井原に支払われるべきものと認め、月額二万円に各事業年度の月数を乗じて、前1(三)(1)(イ)の<3>および(ロ)の<3>の金額を算定し、所得金額の計算上当該金額を控除した。
(四) 未納事業税の計算について
(1) 原告光観光 昭和三九年度
<省略>
(2) 原告光観光 昭和四〇年度
<省略>
(3) 原告諏訪山観光 昭和四二年度
<省略>
(五) 重加算税の賦課決定の基礎となる事実について
前1の(四)で述べた重加算税の賦課決定の基礎となる事実は、前記(一)で主張した両原告会社が売上を隠ぺいした事実であり、被告税務署長はその隠ぺい部分に対応する重加算税を賦課決定した。
その算出の根拠は次のとおりである。
(1) 原告光観光 昭和三九年度
当初決定所得金額一〇八万六、二五七円に対する法人税額三五万八、四四〇円と再更正所得金額一、〇五九万二、三四〇円に対する法人税額三八七万四、九〇〇円との増差税額三五一万六、四六〇円(国税通則法一一八条三項の規定により一、〇〇〇円未満の端数切捨。以下各事業年度につき同じ。)に対し、重加算税率三五%を乗じて一二三万〇、六〇〇円を算出したものである。
(2) 原告光観光 昭和四〇年度
申告税額零につき、再更正所得金額六一〇万六、〇二〇円に対する法人税額二一三万九、二〇〇円に対し、重加算税率三〇%を乗じて六四万一、七〇〇円を算出したものである。
(3) 原告諏訪山観光 昭和四一年度
申告税額零につき、再更正所得金額二、〇二〇万〇、〇〇七円に対する法人税額七〇七万七、〇〇〇円に対し、重加算税率三〇%を乗じて二一二万三、一〇〇円を算出したものである。
(4) 原告諏訪山観光 昭和四二年度
申告所得税金額一九五万〇、一九五円に対する法人税額五四万六、〇〇〇円と再更正所得金額二、五一七万四、七一四円に対する法人税額八六〇万〇、九〇〇円との増差税額八〇五万四、九〇〇円に対し、重加算税率三〇%を乗じて二四一万六、二〇〇円を算出したものである。
3 原告井原に対する第二次納税義務告知処分について
(一) 原告光観光は昭和四三年一〇月二九日において別紙Ⅰに記載している国税を滞納し、昭和四〇年九月一日に解散し、同登記を同月一〇日に了し、
原告諏訪山観光は昭和四三年一〇月二九日において別紙Ⅱに記載している国税を滞納し、昭和四三年五月二五日解散し、同登記を同月二九日に了し、
共に、滞納処分を執行できる財産がなく、徴収すべき別紙Ⅱの国税に不足すると認められた。
(二)(1) 光観光は昭和三八年六月から昭和四〇年八月までの間において現金二、四一〇万九、二一六円を原告井原に贈与した。
右贈与は別紙Ⅰの法人税A・Bの法定納期限である昭和三九年三月三一日の一年前である昭和三八年三月三一日以後に二、四一〇万九、二一六円、法人税Cの法定納期限である昭和四〇年三月一日の一年前である昭和三九年三月三一日以後に一、六三七万二、五一六円、法人税Dの法定納期限昭和四〇年一一月一日の一年前である昭和三九年一一月一日以後に一、〇五七万二、一〇〇円についてそれぞれ行なわれたものであり、この金銭の贈与によつて当該国税の徴収不足が生じたものである。
(2) 原告諏訪山観光は昭和四〇年九月から昭和四二年九月までの間において、現金四、六二八万九、一〇二円を原告井原に贈与した。
右贈与は別紙Ⅱの源泉所得税Eの法定納期限昭和四一年二月一〇日の一年前である昭和四〇年二月一〇日以後に四、六二八万九、一〇二円、法人税Fの法定納期限昭和四一年一一月三〇日の一年前である昭和四〇年一一月三〇日以後に四、二五六万〇、〇六七円、法人税G・Hの法定納期限昭和四二年一一月三〇日の一年前である昭和四一年一一月三〇日以後に二、二一〇万一、七〇〇円の金員についてそれぞれ行なわれたものであつて、この金銭の贈与によつて当該国税に徹収不足が生じたものである。
(三) 右贈与は国税徹収法第三九条に該当する無償譲渡であるので、この処分により権利を取得し原告井原に対し、受けた利益が金銭であるから、受けた金額を限度として、昭和四三年一〇月二九日国税徹収法第三二条第一項の規定によりそれぞれの納付通知書を発し、第二次納税義務を告知したものである。
(四)(1) これに対し原告井原は、昭和四三年一〇月三一日付異議申立書をもつて、「原告光観光より譲り受けた二、四四八万九、二一六円および原告諏訪山観光より譲り受けた四、六二八万九、一〇二円については、無償で譲り受けたのではなく、右両原告会社からの受取家賃である。」旨の異議申立てをした。
被告国税局長は、同申立てに対し、昭和四四年一〇月一六日付決定書(乙第六号証)をもつて、「原告光観光の第二次納税義務については、原処分の一部を取り消す。原告諏訪山観光の第二次納税義務については、申立てを棄却する。」旨の決定をなした。
(2) 右のとおり、被告国税局長が原告光観光の第二次納税義務についての一部を取り消したのは、同原告にかかる法人税更正処分についての審査請求に対する裁決(甲第六、第七号証)において、昭和三九年二月から同四〇年八月までの受取家賃、月額二万円、計三八万円が認容されたことに伴い、第二次納税義務限度額のうち同金額を取り消したことによるものである。
(3) 右の結果、原告光観光にかかる第二次納税義務額として、原告井原が同光観光から贈与を受けた金額は、原処分の二、四四八万九、二一六円から受取家賃三八万円を控除した二、四一〇万九、二一六円である。
(五) 前記2の(二)(1)ないし(4)の主張事実から、三和銀行神戸支店の井原千恵子名義預金に入金されている金額のうち付表一、同二、同三の(一)、(二)、同四の(一)、(二)ならびに付表五の売上除外の金額は原告光観光、同諏訪山観光がそれぞれ原告井原に贈与したものと認められる。
(六) したがつて、別紙Ⅰ、Ⅱ・滞納税額明細表記載の滞納国税を徴収するため、原告光観光からの現金受贈額二、四一〇万九、二一六円(その明細は付表六のとおり)および原告諏訪山観光からの現金受贈額四、六二八万九、一〇二円(その明細は付表七のとおり)を限度としてなされた本件告知処分は、なんら違法ではない。
4 原告らは、昭和四〇年九月一日から同年一〇月一九日の間は、双方原告(光観光、諏訪山観光)が営業していないのであるから、売上金および売上除外は存在せず、したがつて井原千恵子名義の預金の入金額を原告会社らの売上除外金の入金とする被告らの主張は全くその根拠を欠く旨主張する。
しかしながら、原告光観光の解散および同諏訪山観光の設立は、もともと営業活動上の嗟跌等の理由に基づくものではなく、全く税金対策に起因するものであつて、昭和四〇年九月一日から同年一〇月一九日の期間においても、トルコ風呂営業は休止されることなく継続して営なまれていたのである。
したがつて、前記井原千恵子名義の預金に、右期間中に入金の記載があり、かつ、昭和四〇年八月三一日以前および同年一〇月二〇日以後の入金状況と比較してなんらの変化も見られないことはむしろ当然である。
第三証拠
一 原告らは甲第一ないし第一六号証、第一七号証の一・二、第一八号証の一ないし三、第一九号証の一ないし八、第二〇号証の一・二、第二号証の一ないし三、第二二、第二三号証を提出し、
証人内藤幸子の証言および原告井原大一本人尋問の結果を各援用し、
乙第一号証は、清算人名下の印影は不知、その余は否認、乙第八号証は不知、その余の乙号各証の成立は認める(但し、乙第三号証は原本の存在も認める)と述べ、
二 被告らは、乙第一号証、第二号証の一ないし二五、第三号証、第四号証の一・二、第五、第六号証、第七号証の一・二、第八号証、第九ないし第一一号証の各一・二、第一二号証を提出し、証人河島滋の証言を援用し、
甲第一五、第一六号証、第一九号証の一ないし八の各成立は不知、その余の甲号各証の成立は認めると述べた。
理由
一 被告税務署長は、原告光観光に対し同原告の請求の趣旨記載の更正処分および無申告加算税ないし重加算税の賦課決定処分(但し、いずれも法人税を除く)を、原告諏訪山観光に対し同原告の請求の趣旨記載の更正処分および重加算税賦課決定処分(但しいずれも法人税を除く)をしたこと、これに対し右両原告会社は請求原因1の(二)、2の(二)記載のとおり、被告税務署長に対し異議申立をなし、これが棄却されるや被告国税局長に対し審査請求したが原告光観光の昭和三九・四〇年度分についてのみ一部取消がなされたがその余は全て棄却されたこと、その後原告光観光の昭和三八年度分につき被告ら主張1の(二)の(7)(8)記載の、同原告の昭和三九・四〇年度分および原告諏訪山観光の昭和四一・四二年度分につき同主張1の(三)記載のとおりの再更正処分がなきれたこと、以上の事実は当事者間に争いがなく、いずれも成立に争いがない甲第一ないし第四号証によると右更正処分にかかる法人税額は原告光観光の昭和三八年度分が三〇二万七、四〇〇円、同三九年度分四一八万四、四〇〇円、同四〇年度分二三六万四、四〇〇円であり、原告諏訪山観光の右更正処分にかかる法人税額は昭和四一年度分は七八一万一、九〇〇円、同四一年度分九四七万六、八〇〇円であるこが認められ、反証はない。
二 ところで、本訴の争点は原告会社らの売上除外事実の存否および原告井原の第二次納税義務の存否にあるから右の点につき検討する。(なお、原告会社らが主張する法人税額は課税留保金額に対する税額を控除したものであるが、原告らにおいて原告会社らが法人税法上同族会社とされたことを争うものとは解されない。)
そこで、まず原告光観光、同諏訪山観光の設立経緯、右両原告会社と原告井原の関係等について考察する。
原告光観光は、原告井原から建物、営業設備一切を借受け、トルコ温泉と称する特殊浴場を主たる営業目的としていたが、昭和四〇年九月一日解散し、その旨の登記を了し、原告諏訪山観光は右原告光観光解散後前同様原告井原から建物、営業設備一切を借受けトルコ温泉と称する特殊浴場を主として営業してきたものであることは当事者間に争いがない。
右争いのない事実に、成立に争いのない甲第二〇号証の一・二、同第二一号証の一ないし三、いずれも成立に争いのない乙第二号証の一、同号証の四ないし六、同号証の一〇ないし一四、同号証の一七、同号証の一九、同号証の二一、同号証の二五、証人内藤幸子、同河島滋の各証言、原告井原本人尋問の結果および弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。すなわち
(1) 原告光観光、同諏訪山観光(以下原告会社らともいう。)が原告井原から借受けていた建物は、原告井原繁美から買受け所有していたものであり、原告井原は原告光観光設立以前から右建物において諏訪山国際観光トルコとしてトルコ温泉を経営していたのであるが、これを会社組織に改め、昭和三七年三月二日原告光観光(当初の商号は光興産株式会社)を設立し自らは取締役に就任し、代表取締役には松本弘久が就任し(のち、原告井原の離婚した妻((先妻という))小田ちよ子の兄である福西照夫が就任し)諏訪山観光トルコ時代の建物および営業備品一切を引継ぎ、トルコ温泉を経営していた。なお監査役には原告井原の先妻との間の子である小田朝子らが就任した旨登記されていたが、右は原告井原が小田朝子にはかることなく一存で就任登記を了したものであつた。しかるところ、原告光観光は昭和四〇年ころ滞納のため銀行預金等が差押られるに及び、同年九月一日解散し、同月一〇日その旨の登記を了した。
そこで原告井原は松本弘久らと相談のうえ同年一〇月二〇日原告諏訪山観光を設立し、再び従前同様トルコ温泉を営業していた。右原告諏訪山観光の代表取締役には松本弘久が、監査役には昭和三六年四月ころ当時の諏訪山国際観光トルコ時代に原告井原に雇われた内藤幸子が原告井原の指示により就任していた。(なお、昭和四三年三月七日には代表取締役として福西照夫、取締役として梅谷朝子(同女は旧性小田朝子であり前記のとおり原告井原の子である。)、監査役には右梅谷朝子の夫である梅谷卓甫が就任した旨登記されている。)そして、昭和四三年五月二五日解散し、同月二九日にその旨の登記を了している。
(2) 前記松本弘久は原告井原がかつて小田組の組長であつた当時からのいわば子飼の人物であり、原告井原の指示の下に行動していたものであるが、原告諏訪山観光においては所謂トルコ嬢の雇人、従業員の監督、建物の管理を担当していたものの、経理面には一切関与せず、内藤幸子は当初は単なる事務員として雇われたものであつたが、原告光観光が設立されたころからは経理面を担当し、帳簿類の記帳、従業員の給料計算、その他原告諏訪山観光の代表者印あるいは原告井原個人の銀行帳簿を保管し、同原告の求めに応じて右原告井原個人の通帳にも記入していたものである。一方原告井原は毎日のように原告諏訪山観光の事務所に顔を出し、松本らと経営の打合せあるいは右内藤から日々の売上げ状況の報告を受け帳簿類を検査していた。
(3) 内藤幸子、松本弘久らの給料はいずれも原告井原の指示により決められていたし、本件更正処分の契機となつた神戸税務署員河島滋の調査に対しても専ら原告井原が応待していた。
(4) 原告井原は、昭和三八年八月ころ、同四二年六月ころの二度に亘り本件建物の増改築を行つているが、右は直ちに原告会社らの営業規模の拡大を招くものであつたし、また右四二年の増改築は法規制上トルコ営業の継続が将来不可能になることを考慮しホテル営業に転進する布石の意味をも有していたにも拘らず、原告井原は右増改築にあたり松本らの意見は徴したものの専ら自らの意思でこれを実行した。
以上の事実を認めることができ、右事実によると原告会社らは原告井原が従前個人で経営していたトルコ温泉にかかる建物、営業用備品一切引き継いだもので右個人企業の法人成りというべきであり、その役員らは原告井原の親族あるいはその指示の下に名目的に就任し、また内藤、松本ら給料あるいは基本的経営方針(事業規模)等は原告井原に決められていたということができるのであつて、原告井原は原告会社らの実質的経営者であつたということができる。成立に争いのない乙第二号証の一八、前掲原告井原本人尋問の結果中前認定に反する部分は措信できず、他に前認定を左右するに足りる証拠はない。
三 以上を前提として本件更正処分(再更正処分)の適否につき検討する。
1 原告光観光の昭和三八年度分(自昭和三八年二月一日至同三九年一月三一日事業年度)について
まず、乙第一号証についてみるに、証人河島滋の証言、原告井原本人尋問の結果に前二認定のごとく原告井原は原告光観光の実質的経営者であつた事実を総合すると、神戸税務署の係管であつた河島滋は昭和四三年二月に税務調査のため原告諏訪山観光を訪れたところ、右原告諏訪山観光の代表取締役であり且つ原告光観光の清算人でもあつた松本弘久、経理担当の内藤幸子のほか原告井原が居合せたが、河島は原告井原が原告会社らの実質的経営者であると聞いており、また松本らは税金については原告井原が交渉するとのことであつた。そこで河島は以後は原告井原と接渉を続けれが、その後の調査により原告光観光の昭和三八年度分についても過少申告であるとの事実を確信したため、原告井原を税務署に呼び出し、その旨を告げ右年度が既に三年前のものであることから慣行上納税者に有利な修正申告書の提出を促した(なお、右当該年度は無申告であつた)。しかるところ、原告井原は修正申告書はむつかしいので書けぬからとして河島に代筆を依頼したので、河島は修正申告書に法人税額等の必要事項および清算人松本弘久と記入し、原告井原が持参した代表者印を押印した。原告井原は右押印に立合つていたことが認められ、原告井原本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できず、その他右認定を左右するに足りる証拠はない。右によると原告井原は原告光観光の清算人松本弘久から税金について税務署との交渉を全面的に委任され、税務署に赴き河島に対し修正申告書の作成松本弘久の署名押印の代行を委ねたものということができ、従つて乙第一号証は真正に成立したということができる。
右乙第一号証および証人河島滋の証言によると原告光観光は昭和三八年度分につき昭和四三年三月二二日所得金額七八六万一、七三七円、法人税額三〇五万六、二八〇円とする修正申告書を被告税務署長に対し提出したことが認められ、これを左右するに足りる証拠はない。
ところで、原告光観光が本訴において取消を求める当該事業年度の更正処分は所得金額七八六万一、七三七円、法人税額三〇二万七、四〇〇円とするもので所謂減額更正であるから、右処分の取消を求める訴の利益はないというべきである。(なお、右更正処分は昭和四六年五月二一日付再更正処分により更に減額されており、その限度で効力を有しているものである。)
次に、無申告加算税の賦課決定処分についてみるに、当該年度については無申告であつたことは原告光観光において明らかに争わないから、これを自白したものと看做すべく、従つて、被告税務署長が国税通則法六六条一項二号に該当するものとして無申告加算税を賦課決定したことに違法はなく、減額再更正処分にかかる法人税額二八四万九、五〇〇円に対し無申告加算税額二二万八、五〇〇円(当初決定にかかる無申告加算税額五万六、四〇〇円)を賦課決定したことも適法である。ところで原告光観光が取消を求める当該年度の無申告加算税額二四万六、三〇〇円の賦課決定処分は右のごとく二二万八、五〇〇円に減額されているのであるから、右金額を越える部分の取消を求める部分の訴はその利益を欠き不適法であり、その余の部分の請求は理由がなく失当である。
2 原告光観光の昭和三九年度分、同四〇年度分、原告諏訪山観光の同四一年度分、同四二年度分について。
(一)(1) 前記二認定の事実にいずれも成立に争いのない乙第一号証、第二号証の六および八、同号証の一三、同号証の二三および二四、原本の存在および成立とも争いのない乙第三号証、成立に争いのない乙第四号証、証人内藤幸子、同河島滋の各証言、原告井原本人尋問の結果(一部)および弁論の全趣旨を総合すると、(1)原告諏訪山観光の日々の売上金はその翌日経理係の内藤幸子のもとに集められ、内藤は当日出社してきた原告井原の指示により同原告に交付すべき全員を除外し、残金のみを右原告会社の帳簿に記入していた(内藤は、同原告会社の倉庫内に原告井原の銀行勘定帳も伴せ保管していたので、原告井原の要請により時折右勘定帳にも記入していた。)。右原告会社の帳簿に記載された金員は銀行廻りを担当していた福西照夫が同原告会社の三和銀行神戸支店の当座預金に振込んでいたが、右福西は原告井原から依頼され時折同原告の金員も右銀行に持参振込んでいた。(2)右三和銀行神戸支店には原告諏訪山観光の当座預金のほかに井原千恵子名義の当座預金および普通預金があつたが、右井原千恵子は原告井原と先妻小田ちよ子との間の子であり、昭和四〇年当時短大生であり、右はいずれも原告井原の個人預金であつた。右当座預金口座は原告光観光が設立(昭和三七年三月二日設立)された翌年の昭和三八年六月二一日に開設され、原告会社ら存続中昭和四二年一一月二五日まで毎日のようにほぼ四万円から一〇万円の金員が入金されていた。また普通預金口座は少なくとも昭和四〇年九月一日から右当座預金の最終入金日とほぼ同じ昭和四二年一一月二二日まで継続して開設されていた、ことの各事実を認めることができ、これと前二認定事実から認められる原告井原が原告会社らの実質的経営者であつたこと、原告会社らは実体においてほぼ同一であり、名称に差異があるにすぎないことの各事実および成立に争いのない乙第六号証および弁論の全趣旨によつて認め得るところの原告井原は原告会社らの滞納国税徴収にかかる第二次納税義務告知処分に対し、右原告会社らから金員を譲り受けたこと自体は争わず右金員は家賃として受領したものである旨主張して被告国税局長に異議申立をしているにすぎないこと、原告井原に前記井原千恵子名義の各預金に入金すべき収益があつたと認むべき証拠のないこと、さらには乙第二号証の八、成立に争いのない乙第二号証の一六、同第二号証の二〇ないし二三、同第二号証の二五、証人河島滋、同内藤幸子の各証言および弁論の全趣旨を綜合すると、原告光観光は昭和三九事業年度中にその収益金のなかから付表一のとおり総額一、〇六五万〇、五一六円を三和銀行神戸支店の井原千恵子名義の当座預金に、同四〇事業年度中に付表二のとおり総額八九四万八、六〇〇円を同じく井原千恵子名義の当座預金に(なお、同原告会社は昭和三八年六月から同三九年一月までの間に付表五のとおり総額六一五万二、六〇〇円を右当座預金に入金している。)原告諏訪山観光は昭和四一事業年度中に付表三の(三)(四)のとおり総額二、〇二〇万四、三七二円(昭和四〇年九月分および同年一〇月一九日以前の一〇月分入金については、原告諏訪山観光の設立以前であり、前二認定の事実関係の下では原告井原の個人収益((所得))と目すべきものである。)を同じく井原千恵子名義の当座および普通預金に(内訳当座預金一、七三六万五、〇〇〇円、普通預金二八三万九、三七二円)、同四二事業年度中に付表四の(一)(二)のとおり総額二、八九一万〇、四六七円を同じく井原千恵子名義の当座および普通預金に(内訳当座預金二、一六四万九、〇〇〇円、普通預金七二六万一、四六七円)を各入金していたものであり、右各金員はいずれも原告会社らの本勘定に計上されていないのみならず、右各預金は原告井原の預金であり、右金員は原告井原において同人の福徳相互銀行に対する借入金等の弁済に使用していたもので、原告会社らにおいても右金員が自社に帰属するものとは考えていなかつたこと、従つて原告会社らが売上除外した右金員(但し、原告光観光については、後記認定の各事業年度に原告井原に支払うべき賃料相当額を除く)は原告会社らから原告井原に贈与されたものであることを認めることができる。(なお、乙第三号証中各月末の合計金額の記載中前記付表記載と異なる部分はいずれも誤記であると認める。)
(2) ところで、原告らは売上除外の事実を否認するのでこの点につき更に検討する。成立に争のない乙第七号証の一・二、同乙第八号証の一・二、証人内藤幸子の証言、原告井原本人尋問の結果および弁論の全趣旨によると、原告井原は昭和三八年から同四二年ころには金融業あるいは不動産の賃貸による収益を得ていたことが認められるのであるが、右各証拠によると、前記金融業においては多い時で月に一〇〇万円の収益をあげていたが全体としてはむしろ赤字であつたこと、右金融業による収益は時々同原告の三菱銀行の預金に入金していたこと、また同原告は灘区城内通に吉田はぎゑ名義および小田ちよ子名義の共同住宅を有していたが、右吉田はぎゑは同原告と肉体関係のあつた女性であつて、右共同住宅からの賃料は同女が受取り生活費にあてているものであり、小田ちよ子名義(同女は同原告の先妻)の共同住宅からの賃料は原告井原が取得していたがこれは同原告の福徳相互銀行に対する借入金の弁済に充てており銀行に預金はしていなかつたこと、また生田区中山手通の貸店舗からの収入は税金の支払に充て、生田区加納町の貸店舗からの収入は一か月四ないし五万円にすぎず、専ら小使銭として費消していた、ことが認められ、これを左右するに足りる証拠はなく、従つて右各収益金が、前記三和銀行神戸支店の井原千恵子名義の各預金に入金されていたことは認められず、その他原告井原において、右井原千恵子名義の各預金に入金すべき収入があつたと認めるに足りる証拠はない。次に、原告光観光の解散が昭和四〇年九月一日であり、原告諏訪山観光の設立が同四〇年一〇月二〇日であることは当事者間に争いがなく、乙第三号証、同第四号証の一・二によると前記井原千恵子名義の各預金には右の原告会社らが法律上存在しない期間中(昭和四〇年九月二日以降同年一〇月一九日までの間)も、その前後と同様に入金されていることが認められるところ、原告らは右期間中は両原告会社とも営業をしていないのであるから右入金にかかる金員が売上除外であることはあり得ず従つて右預金の入金は売上除外金ではない旨主張する。なるほど証人内藤幸子、原告井原本人は右期間中に営業していなかつた旨供述するのであるが、成立に争いのない乙第七号証の一・二、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第八号証によれば、右期間中の本件建物における水道使用料および重油、灯油の使用料はその前後の使用料と比較して断絶をなしてはおらず、むしろ前後同一の状況であると認められるのであつて、前記各供述は措信できず、右乙号各証によれば右期間中も営業は継続されていたと認めるのが相当であるが、その営業の主体は、原告会社らではなく、原告井原個人であると認めるのが相当であるから、右期間中原告会社らの売上除外金は発生するに由ないものというべく、右期間中に前記井原千恵子名義の預金に入金された金員は原告会社らの売上除外金とは認め難い。
しかし、そうであるからといつて、右期間を除くその余の期間における井原千恵子名義の預金への入金が、原告会社らの売上除外金でないといえないことはいうまでもない。
(3) 以上考察したところによれば、乙第二号証の一八、原告井原本人尋問の結果中前(1)認定に反する部分は措信できず、他に認定を左右するに足りる証拠はない。
(二) 次に原告会社らの原告井原に対する支払賃料について検討する。
いずれも成立に争いのない乙第五号証、乙第九ないし第一一号証の各一・二および弁論の全趣旨によると、原告光観光は自昭和三七年三月二日至同三八年一月三一日事業年度の法人税確定申告において賃料を二二万円として申告していること、従つて右年度においては一か月の賃料は二万円であつたこと、原告諏訪山観光は昭和四一年度分につき地代家賃として一九八万円を計上していること、従つて右年度における一か月の賃料は一八万円であつたこと、同四二年度分につき地代家賃として二三三万円を計上していること、および翌期である自昭和四二年一〇月一日至同四三年五月二五日事業年度につき地代家賃二八五万六、〇〇〇円を計上していること従つて右昭和四二年度においては同年八月までが一か月一八万円、同年九月分が三五万円であつたこと(18万円×11+35万円=233万円、285.6万円÷8=35.7万円)を認めることができる。ところで、証人内藤幸子は昭和四二年六月ころに本件建物が三階建に増築される以前は一か月六〇万円、増築以後は一か月九〇万円であつた旨証言し、原告井原本人も同旨の供述をするのであるが、右内藤は本件税務事件が生じるまでは右金員の性質を全く知らず、右事件後に家賃である旨聞いたというのであるし、原告井原本人の供述も前掲乙第五号証、同第九、第一〇号証の各一・二、および乙第一一号証の一・二、成立に争いのない乙第一二号証および弁論の全趣旨により認められる「原告諏訪山観光の自昭和四二年一〇月一日至同四三年五月二五日事業年度の決算は、売上除外事実を認定してなされた同原告に対する本件更正処分に対する異議申立さらには審査請求(昭和四三年八月二四日)あるいは原告井原に対する賃料が一か月二三五万円であること等を内容とする被告税務署長に対する審査請求(昭和四三年四月二七日付)がなされたのちである。昭和四三年一一月二五日に確定したものであるにも拘らず、右年度の確定申告においては地代家賃二八五万六、〇〇〇円と計上しており、右は月額にしてほぼ三五万円であること」の事実に照し措信できないし、甲第一五、第一六号証は原告井原本人尋問の結果によりその成立を推認することができるが、右各証の記載の賃料額は契約の一方当事者である原告井原自身が同本人尋問において明確に否定するところであり更には前記括弧内の事実と照し前認定を左右するものではあり得ず、その他前認定を左右するに足りる証拠はない。
そこで原告光観光の昭和三九年度分、同四〇年度分にかかる賃料についてみるに、前認定のごとく昭和三七年三月二日から同三八年一月三一日までは月額二万円であつた事実に既に検討したように賃料額にかかる原告らの態度は一定しておらず信用し難いことを総合勘案すると右各年度においても月額二万円であつたと推認するのが合理的でありこれを左右するに足りる証拠はない。
以上によれば、原告光観光の原告井原に支払うべき賃料は昭和三九年度分、同四〇年度分については月額二万円の割合で計算した二四万円および一四万円であり、原告諏訪山観光については昭和四一年度分は月額一八万円の割合で計算した一九八万円、同四二年度分は二三三万円(但し、昭和四二年九月分のみ三五万円、その余は一八万円で計算)であると認めることができる。
(三) 以上考察してきたところによると、原告光観光は昭和三九年事業年度中に一、〇六五万〇、五一六円から家賃相当金二四万円を控除した一、〇三二万〇、五一六円を、同四〇事業年度中に八九四万八、六〇〇円から家賃相当金一四万円を控除した八八〇万八、六〇〇円を、原告諏訪山観光は昭和四一事業年度中に二、〇二〇万四、三七二円を、同四二事業年度中に二、八九一万〇、四六七円を各原告井原に贈与したものであり、右はいずれも原告会社らの寄付金であるということができる。してみると、原告諏訪山観光の昭和四一年度分所得金額は、売上除外金額が二、〇二〇万四、三七二円であるところ、右は原告井原に対する寄付金であるから所定の計算(被告ら主張の処分の適法性1(三)の(2)の(イ)原告諏訪山観光昭和四一年度分所得金額算出表の注(2)寄付金の損金不算入額の計算のうち寄付金支出前所得金額二、〇四五万六、二八三円とあるを二、〇〇四万七、七二八円と読み替えて援用する。)により算出した一、九九五万三、二〇三円に申告所得金額一五万六、六四四円(欠損金額)を加算した一、九七九万六、五五九円であり、法人税額は、右所得金額につき、三〇〇万円超の金額につき三六パーセント、三〇〇万円以下につき二九・五パーセントを各乗じれ合計額六九三万一、五〇〇円(一〇〇円未満切捨)であり、これに対する重加算税は二〇七万九、四〇〇円であるが、右原告光観光の昭和四一年度分を除くその余の原告会社らの各事業年度にかかる本件再更正処分ならびに重加算税賦課決定処分は全て適法であるということができる。(なお、乙第九、第一〇号証によると、原告諏訪山観光の昭和四一・四二年度分の原告井原に対する支払賃料は確定申告において控除済であることが認められ、また原告光観光光の昭和三九年度分が無申告であつたことについては原告において明らかに争わないところである。)
(四) 以上によると、原告会社らが本訴において取消を求める更正処分は再更正処分により一部減額されたものであり、減額された範囲内で効力を有するにすぎないものであるから、原告会社らの本件訴のうち右再更正処分により認容された税額およびこれに伴う重加算税賦課決定処分にかかる税額を越える部分の取消を求める訴は、その利益を欠きいずれも不適法であり、原告諏訪山観光の昭和四一年度分については、本計更正処分のうち所得金額一、九七九万六、五五九円法人税額六九三万一、五〇〇円重加算税賦課決定処分のうち重加算税額二〇七万九、四〇〇円を各越える部分の取消を求める限度で理由があり正当であるが、その余の原告会社らの各請求はいずれも理由がなく失当である。
四 原告井原に対する第二次納税義務告知処分について
1 請求原因3の(一)のうち賃料額を除くその余の事実については当事者間に争いがなく、前三の2の(二)で検討したところによれば、右賃料額は原告光観光については月額二万円、同諏訪山観光については昭和四二年八月分までは月額一八万円、同年九月分は月額三五万円であつたことが認められ、同3の(二)の事実については当事者間に争いがなく、乙第六号証によれば、原告井原の異議申立については、被告国税局長は昭和四四年一〇月一六日付で原告光観光にかかを第二次納税義務については同原告に対する更正処分の審査請求にかかる裁決による一部取消に従い第二次納税義務の限度額のうち三八万円を取消しその余を棄却し、原告諏訪山観光にかかる第二次納税義務については異議申立を棄却したことが認められる。ところで、第三で検討したところによれば原告会社らの売上除外金員は原告井原に贈与されたものである(但し、原告光観光については支払賃料を除く)ところ、弁論の全趣旨によると右贈与により原告会社らの国税徴収不足が生じたことが認められる。そうすると、右贈与は国税徴収法三九条に該当する無償譲渡であるから右処分により権利を取得した原告井原は右処分により受けた利益を限度として第二次納税義務を負うものというべきである。
2 そして、前三で検討したところに、甲第一ないし第五号証、いずれも成立に争いのない甲第一三、第一四号証および弁論の全趣旨を総合すると原告会社らの滞納国税は別紙Ⅲのとおりであると認められ、従つて原告井原は原告会社らから贈与を受けた範囲内(原告光観光につき昭和三八年六月から同四〇年八月までの合計二、五七五万一、七一六円、原告諏訪山観光につき昭和四〇年一〇月二〇日から同四二年八月までの合計四、九一一万四、八三九円)で別紙Ⅲ記載のとおりの合計税額および延滞税の納税義務があるというべきである。
3 よつて原告井原の本訴各請求は別紙Ⅲ記載金額を越える部分の取消を求める限度で理由があるが、その余は理由がなくいずれも失当である。(なお、本件各処分の第二次納税義務限度額はいずれも正当である。)
五 結論
以上検討したところによれば、原告光観光の本件訴のうち、昭和三八年度分の更正処分の取消を求める訴および同年度の無申告加算税額賦課決定処分のうち無申告加算税額二二万八、五〇〇円を越える部分の取消を求める訴はいずれも不適法であるからこれを却下し、右賦課決定処分の右部分以外の取消を求める請求は失当であるからこれを棄却し、その余の原告会社らの各事業年度にかかる更正処分(いずれも重加算税賦課決定処分を含む、以下同じ)の取消を求める訴のうち原告光観光につき昭和四六年五月二一日付再更正処分、同諏訪山観光につき同年同月二八日付再更正処分ににより減額された部分の取消を求める部分は不適法であるからいずれも却下し、原告諏訪山観光の昭和四一事業年度法人税にかかる本件更正処分(ただし、前記再更正処分により一部減額されたもの)のうち、所得金額一、九七九万六、五五九円、法人税額六九三万一、五〇〇円、重加算税額二〇七万九、四〇〇円を各越える部分の取消を求める限度で認容し、その余の請求を棄却し原告会社らのその余の請求額は全て失当であるから棄却することとし、原告井原の各請求は別紙Ⅲ(一)(二)記載の限度を越える部分の取消を求める限度で認容し、その余の請求を棄却する。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条但書、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 乾達彦 裁判官 武田多喜子 裁判官 宗宮英俊)
別紙Ⅰ 滞納税額明細表
(滞納者) 神戸市生田区山本通四丁目九七
光観光株式会社
(昭和四三年一〇月二九日現在)
<省略>
別紙Ⅱ
滞納税額明細表
(滞納者) 神戸市生田区山本通四丁目九七
諏訪山観光株式会社
(昭和四三年一〇月二九日現在)
<省略>
別紙Ⅲ 滞納税額明細書
(一) 滞納者 原告 光観光
<省略>
(注1) 2,849,500-564,000=2,285,500
(注2) 3,874,900-358,440=3,516,460(100円未満切捨)
(注3) 被告らは納期限は四〇年一一月一日であると主張するが、甲第一三号証により同月三〇日であると認める。
(二) 滞納者 原告 諏訪山観光
<省略>
(注1) 甲第一四号証により認める
(注2) 8,600,900-546,000=8,054,900
付表一 原告光観光 昭和三九年度
三和銀行神戸支店 井原千恵子 当座預金
<省略>
付表二 原告 光観光 昭和四〇年度
三和銀行神戸支店 井原千恵子 当座預金
<省略>
付表三 原告 諏訪山観光 昭和四一年度
(一) 三和銀行神戸支店 井原千恵子 当座預金
<省略>
(二) 三和銀行神戸支店 井原千恵子 普通預金
<省略>
付表三 原告 諏訪山観光 (昭和四一年度)
(三) 三和銀行神戸支店 井原千恵子 当座預金
<省略>
付表四 原告 諏訪山観光 昭和四二年度
(一) 三和銀行神戸支店 井原千恵子 当座預金
<省略>
(四) 三和銀行神戸支店 井原千恵子 普通預金
<省略>
(二) 三和銀行神戸支店 井原千恵子 普通預金
<省略>
付表五
三和銀行神戸支店 井原千恵子 当座預金
<省略>
付表六
光観光にかかる贈与額明細表
<省略>
付表七
諏訪山観光にかかる贈与額明細表
<省略>