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神戸地方裁判所 昭和45年(ワ)1034号 判決

原告

木寅運送株式会社

被告

朴原建設株式会社

主文

一  被告は原告に対し、金一、九一六、六二八円およびこれに対する昭和四五年八月二八日以降右金員完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は全部被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

「被告は、原告に対し金一、九六一、七二八円およびこれに対する本件訴状送達の日の翌日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言。

二  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決。

第二原告の請求原因

一  本件事故の発生

昭和四五年三月二九日午後一一時頃、岐阜県加茂郡白川町河岐一、二九二の二付近国道四一号線道路上において、被告会社の従業員である訴外福田相こと金相(以下単に訴外金という。)の運転する小型貨物自動車神戸四り三七三七号(以下単に被告車という。)が、原告会社の従業員である訴外谷邦雄(以下単に訴外谷という。)が運転する大型貨物自動車泉一あ二六六一号(以下単に原告車という。)に衝突し、よつて原告車を破損せしめた。

二  被告会社の責任

(一)  原告会社はトラツク運送を業とする会社であり、被告会社は土木建築工事を業とする会社である。

(二)  被告会社は、被告車を保有し自己のために日ごろ運行の用に供していたものであるところ、訴外金は前記日時に被告車を運転して本件事故現場である国道四一号線道路上を南から北進していたものであるが、かかる場合自動車の運転者たる者はハンドル・ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ道路・交通および当該車両等の状況に応じ他人に危害を及ぼさないような方法で運転し、もつて危険の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにかかわらず、右注意義務を怠たり漫然進行した過失により、被告車の運転を誤り同車の進行方向左側に設置されたガードレールに被告車を接触せしめ、あわててハンドルを右に切つて進行し、折から対向車線上を南進してきた原告車に被告車を衝突させて本件事故を惹起せしめたものである。そうすると、右事故は訴外金が被告会社の業務執行につき過失に基づいて惹起せしめたものであるから、被告会社は民法七一五条により原告会社が右事故によつて被つた三記載の損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

(一)  原告車修理代金一、二五七、〇三〇円

(二)  休車による逸失利益

原告会社は、原告車を運転して運送業を営み、昭和四四年九月分金九六七、四一九円・同年一〇月分金六八一、三四一円・同年一一月分金九八六、〇五三円・同年一二月分金六二一、八六三円・昭和四五年一月分金七八四、三九八円・同年二月分金六六六、五一三円の各水揚を得右期間一ケ月の平均水揚高は金七八四、五九八円であるところ、本件事故による原告車の破損箇所修理期間である同年三月二九日から同年四月二九日まで一ケ月の期間原告車による稼働をすることができず、その間の得べかりし純利益金七〇四、六九八円(前記水揚金額からガソリン代を控除した金額。)を喪失した。

四  よつて原告は、被告に対し三記載の損害合計金一、九六一、七二八円およびこれに対する本件訴状が被告に送達された日の翌日以降完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三被告の答弁および抗弁

一  原告主張の請求原因一および二の(一)記載事実ならびに同二の(二)中被告車が被告会社の運行の用に供していた自動車であることは認める。

二  同二の(二)記載事実中訴外金が運転を誤つてガードレールに被告車を接触させ、ハンドルを右に切つたとの事実は不知、その余の事実および同三記載事実はすべて争う。

三  被告会社は本件事故による原告会社の被つた損害について左の理由により民法七一五条の責任を負わない。

(一)  被告会社は、被告車の専属運転者として訴外佐藤金助を雇傭しており、同人以外の従業員には自動車を運転させていない。従つて訴外金は昭和四五年三月頃に被告会社に雇傭して以来自動車の運転に従事させたことはない。

(二)  訴外金が水道配管の手許として勤務していた工事現場には、同人のほか六名位の従業員が勤務し、被告車のキイは従業員の頭的存在でありかつ同車の専属運転者である訴外佐藤が自己の部屋に保管しており、被告会社は従業員らに対し、「佐藤以外の者は自動車を運転してはならない。」旨常に注意していた。

(三)  訴外佐藤は、本件事故当日の夕方、被告車のキイを自分の部屋(訴外佐藤とその家族との独立部屋。)のボストンバツクに保管して外出したが、訴外金はその際に訴外佐藤の個室に侵入し、右ボストンバツクの中から被告車のキイを持ち出して、恣意に被告車を運転して本件事故を惹起したものである。

よつて、本件事故は被告会社の事業の執行につき発生したものではなく、又被告会社には訴外金の選任および監督について注意を怠つたものではないから、本件事故につき使用者責任は発生しない。

第四証拠〔略〕

理由

一  本件事故の発生

昭和四五年三月二九日午後一一時頃、岐阜県加茂郡白川町河岐一、二九二の二付近国道四一号線道路上において、訴外金の運転する被告車が、訴外谷運転の原告車に衝突し、その結果原告車を破損せしめたことは当事者間に争いがない。

二  被告会社の責任

被告会社が訴外金を雇傭していたことおよび被告会社が土木建築工事を業とする会社で被告車の運行供用者であることは当事者間に争いがない。

(一)  〔証拠略〕総合すると、本件事故現場は被告車進行方向から見て右に大きくカーブしている飛弾川添いの山間を走るアスフアルト舗装道路で、南進車線・北進車線共にその幅員約三・四メートルであるところ、訴外金は被告車を運転して本件事故現場に差しかかつたのであるが、そのハンドル操作を誤まり、道路左側に設置された高さ四〇センチメートルのコンクリート塀に被告車を接触させた後、被告車首を斜め右方に変更して進行し、コンクリート塀接触地点から約一六メートル進行した対向車線上で、折から対向車線を進行中の原告車前部に被告車前部を衝突せしめたことを認めることができ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右認定事実によると、訴外金は被告車を運転するに際して、ハンドル等の装置を確実に操作し安全を保つ方法で運転しなかつたものと推認することができるから、本件事故発生は訴外金の過失によるものというべきである。

(二)  〔証拠略〕を総合すると、訴外金は本件事故の約一ケ月前から被告会社に雇傭されて、配管の手伝(雑工)に従事し、本件事故現場近くに所在する被告会社の飯場の大部屋に居住していたものであるところ、訴外金は昭和四五年三月二九日午後一〇時五〇分頃、飲酒の上被告車を無断で引き出して運転し、本件事故を惹起したものであること、訴外金を雇傭するに際し被告会社は現場の責任者である訴外金村豊太に一任して直接面接はしていないこと、被告車について被告会社は日ごろ右飯場に妻子と共に住み込んで稼働している訴外佐藤に専属的に運転させ、その鍵の保管については右金村に一任し、本件事故当日は前記佐藤がこれを鍵のかからない自己の個室に保管し、被告車は右飯場前の空地に置いていたこと、被告会社代表者は前記訴外金村に「被告車は仕事以外には使つてはいけない。」と注意していたにもかかわらず、運転免許を有しない被告会社の従業員が被告車を運転することが度々あつたこと、本件事故当日は前記訴外佐藤が外出した留守中に、訴外金が訴外佐藤の部屋から被告車の鍵を持ち出して被告車を運転し、本件事故を惹起したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

そこで右の如く被告会社に運転手として雇われたものでない訴外金がその仕事終了後に勝手に被告車を運転中に惹起した本件事故を被告会社の事業の執行につきなした事故と言い得るかについて考えるに、就業時間外に且つ自動車運転を担当業務としない従業員が無断で被告車を運転していても、外形上は被告車を被告会社の従業員が運転している事実のみが認められ、その限りにおいて被告会社の従業員が被告会社の業務として自動車を運転しているのと少しも異ならないのであるから、かかる場合に他人に加えた不法行為による損害は、訴外金が被告会社の事業の執行につき加えた損害として使用主である被告会社において、民法七一五条によりその賠償の責任があるものとするのが相当である。

三  損害

(一)  修理代金

〔証拠略〕によれば、本件事故のため原告車前部が大破し、原告会社はその修理を依頼し修理代金等として金一、二五七、〇三〇円を訴外大阪日野自動車株式会社に支払つたことが認められる。

(二)  休車による損害

〔証拠略〕によると、原告会社は原告車を運行して昭和四四年九月分金九六七、四一九円・同年一〇月分金六八一、三四一円・同年一一月分金九八六、〇五三円・同年一二月分金六二一、八六三円・昭和四五年一月分金七八四、三九八円・同年二月分金六六六、五一三円の各収益を得ており、右期間の一ケ月平均収益額は約金七八四、五九八円であるところ、本件事故による原告車破損箇所修理のため昭和四五年三月三〇日から一ケ月間原告車による稼働が不可能で、その間の得べかりし利益金七八四、五九八円を得ることができなかつたこと、原告車の一ケ月ガソリン消費代金は平均金八〇、〇〇〇円であることをそれぞれ認めることができるけれども、右収益を得るに要する経費については右ガソリン代の他に人件費(本件については、原告車の休車中も運転者に対し平均賃料が支払われているのでこの点を除く。)・タイヤおよび車体等の消耗ならびに修理費・車の減価償却費(休車中も生ずるので除く。)を要するものと解されるところ右必要経費の金額について充分心証を得るに足りる資料はない。従つて原告車の一ケ月当りの純利益を原告主張のとおりには肯認し得ないのであるが、自動車保険の査定実務に一般的資料として使用されていることが当裁判所に職務上顕著である保険毎日新聞社発行のノンマリン査定ガイド(自動車保険編。)掲載の東京都内(地域的な多少の差異が存することとは解されるが、何れも大都市である東京都のそれと兵庫県神戸市・大阪府守口市におけるそれとの間に大差はないと解される。)各車種別休車損害算定参考資料によれば一一トン積載貨物自動車の修理費・損耗費は金四五、〇〇〇円とされるから、前記一ケ月の収益額金七八四、五九八円からオイル代金八〇、〇〇〇円・修理損耗費金四五、〇〇〇円を控除した残額金六五九、五九八円の休車損害を被つたものと推認することができる。

四  よつて、原告の本訴請求のうち右損害額合計金一、九一六、六二八円およびこれに対する本件訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな昭和四五年八月二八日以降右金員完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限りにおいてその理由があるからこれを認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条・九二条但書を、仮執行宣言について同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木清子)

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