神戸地方裁判所 昭和47年(わ)1341号 判決 1974年5月13日
本店所在地
尼崎市水堂町二丁目一二番一五号
岡本工業株式会社
右代表者代表取締役
岡本治郎
本籍
岡山県赤磐郡吉井町黒本一七四三番地
住居
芦屋市奥山一番二八〇号
会社役員
岡本治郎
大正四年三月二七日生
右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官鶴田政純出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人岡本工業株式会社を罰金一、五〇〇万円に被告人岡本治郎を懲役一年に、各処する。
被告人岡本治郎に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人両名の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人岡本工業株式会社(以下被告会社という)は、土木建築の請負などを営業目的とする会社であつて昭和四七年九月三〇日までは本店を西宮市本町一番三号に置いていたものであり、被告人岡本治郎は被告会社の代表取締役社長でその業務全般を掌理しているものであるが、被告人岡本治郎は、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て
第一、昭和四三年八月一日から昭和四四年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は金一億六〇九四万九五二五円で、これに対する法人税額は金五五〇三万二五〇〇円であつたのにかかわらず、架空の工賃を計上するなどして簿外の金員をつくりこれを架空人名義で定期預金するなどの不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、同年九月三〇日、所轄の西宮税務署において、同署長に対し、同事業年度における被告会社の所得金額が金一億七七八万四一六円でこれに対する法人税額が金三六四二万六三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、偽りその他不正の行為により同事業年度の法人税一八六〇万六二〇〇円を免れ
第二、昭和四四年八月一日から昭和四五年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は金一億三五四八万三〇二七円で、これに対する法人税額は金四八一七万七九〇〇円であつたのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、同年九月三〇日、前記西宮税務署において、同署長に対し、同事業年度における被告会社の所得金額が金一億二一一万八九五七円でこれに対する法人税額が金三五九一万九三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、偽りその他不正の行為により同事業年度の法人税一二二五万八六〇〇円を免れ
第三、昭和四五年八月一日から昭和四六年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は金二億七六八〇万七八二二円で、これに対する法人税額は金九九九一万一四〇〇円であつたのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、同年九月三〇日、前記西宮税務署において、同署長に対し、同事業年度における被告会社の所得金額が金一億一六〇七万三九八〇円でこれに対する法人税額が金四〇八四万七一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、偽りその他不正の行為により同事業年度の法人税五九〇六万四三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一、被告会社代表者兼被告人岡本治郎の当公判廷における供述
一、被告会社代表者兼被告人岡本治郎の大蔵事務官に対する質問てん末書四通
一、被告会社代表者兼被告人岡本治郎の検察官に対する供述調書
一、岡本モトヱの大蔵事務官に対する質問てん末書
一、岡本モトヱの検察官に対する供述調書
一、藤井昇の大蔵事務官に対する昭和四七年四月二五日付、同年五月二〇日付、同年六月二〇日付、同月三〇日付、同年七月三日付、同月二五日付、各質問てん末書
一、藤井昇の検察官に対する供述調書
一、円戸義正の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、藤井昇(昭和四七年五月二〇日付、同年六月三〇日付)、岡本モトヱ、山本清郎(二通)、川瀬滋夫、細川治男(二通)、滝川真一、秀平幹雄、堤剛、三田部治、高須尚王、野田実(二通)山本芳雄作成の各確認書
一、辻俊雄作成の確認書(但し枚数が二四二枚の分)
一、大蔵事務官作成の同年六月三〇日付査察官調査書三通(記録第二四-一、二、三号)
一、大蔵事務官作成の同年七月一日付査察官調査書四通
一、国税査察官作成の同年五月一六日付、同年六月一九日付、各調査報告書
一、登記官作成の被告会社の登記簿謄本二通
一、被告会社代表者岡本治郎作成の証明書(被告会社の定款写添付)
一、押収してある領収書等一綴(昭和四八年押第一九二号の一九)。手形記入帳一綴(同号の三五)注文書見積書綴一〇綴(同号の三九)、手当金明細書一綴(同号の四九)給料明細書二綴(同号の五〇)定期預金利息計算書(同号の五八)定期預金等利息計算書(同号の五九)
判示第一事実につき
一、藤井昇の大蔵事務官に対する昭和四七年六月二九日付質問てん末書
一、大蔵事務官作成の証明書(西宮税務署昭和四四年九月三〇日受理の被告会社の確定申告書写添付)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和四三年八月一日至昭和四四年七月三一日)
一、押収してある総勘定元帳(自昭和四三年八月一日、至昭和四四年七月三一日)一綴(昭和四八年押第一九二号の八)、売上帳一綴(同号の一一)、工事売上帳一綴(同号の一二)、注文書見積書一三綴(同号の二三)、仕入台帳一綴(同号の二六)、外註工賃台帳一綴(同号の三二の二)、注文書見積書綴五二綴(同号の三八、四一)、給料台帳一綴(同号の四六)
判示第一、第二事実につき
一、押収してある売掛金関係書類一綴(昭和四八年押第一九二号の五)見積書注文書綴一六綴(同号の二四、四〇)
判示第二事実につき
一、大蔵事務官作成の証明書(西宮税務署昭和四五年九月三〇日受理の被告会社の確定申告書写添付)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和四四年八月一日至昭和四五年七月三一日)
一、押収してある総勘定元帳(自昭和四四年八月一日至昭和四五年七月三一日)一綴(昭和四八年押第一九二号の九)売上帳一綴(同号の一三)、税務署関係書類一綴(同号の一八)、外註工賃台帳二綴(同号の三二の三、四)、注文書見積書綴一三綴(同号の三七、四二)、決算関係資料一綴(同号の六一)
判示第二、第三事実につき
一、藤井昇の大蔵事務官に対する昭和四七年六月六日付質問てん末書
一、藤井昇(昭和四七年七月二五日付)、川上冬樹、佐藤龍雄、大戸三千雄、中島欣一(二通)作成の各確認書
一、大蔵事務官作成の同年六月三〇日付査察官調査書(記録第二四-五号)
一、国税査察官作成の同年五月二五日付調査報告書
一、押収してある見積書控二八綴(昭和四八年押第一九二号の一五、一六)仕入帳一綴(同号の二七)、出勤表一綴(同号の四七)、領収書請求書綴一綴(同号の五三)、工事台帳二綴(同号の五五の一、二)
判示第三事実につき
一、藤井昇の大蔵事務官に対する昭和四七年六月二一日付質問てん末書
一、藤井昇(昭和四七年七月八日付)、玄藤秋幸、松下昌弘作成の各確認書
一、大蔵事務官作成の同年六月三〇日付査察官調査書(記録第二四四号)
一、大蔵事務官作成の査察官調査書類
一、大蔵事務官作成の証明書(四宮税務署昭和四六年九月三〇日受理の被告会社の確定申告書写添付)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和四五年八月一日至昭和四六年七月三一日)
一、押収してある領収書綴一綴(昭和四八年押第一九二号の一)、金銭出納帳一綴(同号の二)、外注工賃台帳一綴(同号の四)、総勘定元帳(自昭和四五年八月一日至昭和四六年七月三一日)一綴(同号の一〇)、売上帳一綴(同号の一四)、見積書綴二〇綴(同号の二〇)、見積書控綴三〇綴(同号の二一、二二)、仕入帳二綴(同号の二八、二〇)、未成工事支出金明細一綴(同号の三三の一)、外註工賃台帳二綴(同号の三四、五七)、領収書綴二六綴(同号の四四、四五)、作業日報一綴(同号の四八)、支払手形帳一綴(同号の五一)、受取手形記入帳(同号の五二)、請求書一枚(同号の五四)、四六年七月期売上帳一綴(同号の五六)、記帳メモ一綴(同号の六二)
(法令の適用)
被告会社に対し、
法人税法第一五九条第一項、第一六四条第一項、刑法第四五条前段、第四八条第二項
被告人岡本治郎に対し、
法人税法第一五九条第一項(懲役刑選択)刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情の最も重いと認める判示第三の罪の刑に加重)、第二五条第一項
被告人両名に対し
刑事訴訟法第一八一条第一項本文
(裁判官 藤原寛)
右は謄本である。
昭和四九年五月三一日
神戸地方裁判所第十四刑事係乙
裁判所書記官 唐鎌宗二