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神戸地方裁判所 昭和50年(行ウ)38号 判決 1977年2月24日

昭和五〇年(行ウ)第三八号事件原告・昭和五一年(行ウ)第二七号事件原告選定当事者) 有年成晃

被告 神戸市北区長

主文

昭和五〇年(行ウ)第三八号事件原告及び昭和五一年(行ウ)第二七号事件原告選定当事者の請求を何れも棄却する。

訴訟費用は昭和五〇年(行ウ)第三八号事件原告及び昭和五一年(行ウ)第二七号事件原告選定当事者の負担とする。

事実

(当事者の求めた裁判)

一  昭和五〇年(行ウ)第三八号事件の請求の趣旨

1  被告が原告有年成晃に対し昭和五〇年五旦三日通知を以てなした、別紙一の(一)記載の土地の昭和四九年度特別土地保有税(保有分)二万〇、七三〇円の決定処分を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  昭和五一年(行ウ)第二七号事件の請求の趣旨

1  被告が原告選定当事者及び選定者らに対し昭和五一年三月二二日通知を以てなした、別紙一の(一)、(二)記載の土地の昭和五〇年度特別土地保有税(保有分)三万九、〇〇〇円の決定処分を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

三  右両事件についての被告の答弁の趣旨

主文と同旨

(当事者の主張)

以下に於ては、昭和五〇年(行ウ)第三八号事件原告、昭和五一年(行ウ)第二七号事件原告選定当事者及び選定者らを単に原告らと云う。

第一、原告ら

一  別紙一の(一)記載の土地は原告成晃が昭和四八年六月買受けて所有権を取得したが、昭和五〇年一月一日当時に於ては、別紙一の(二)記載の土地と共に原告らの共有となつている。

二  被告は昭和五〇年五月一九日、原告成晃に対し別紙一の(一)記載の土地についての昭和四九年度特別土地保有税(保有分)二万〇、七三〇円とする決定処分をなし、同月三一日同原告に通知した。同原告はこれを不服として同年六月一八日神戸市長に対して審査請求をしたが、同市長は同年八月一八日棄却裁決をなし、同月二三日同原告に通知した。

三  被告は昭和五一年三月二二日、原告らに対し、別紙一の(一)、(二)記載の土地についての昭和五〇年度特別土地保有税(保有分)三万九、〇〇〇円とする決定処分をなし、同月二二日原告らに通知した。原告らはこれを不服として同年四月三〇日神戸市長に対して審査請求をしたが、同市長は同年七月八日棄却裁決をなし同月一〇日原告らに通知した。

四  然しながら、地方税法中特別土地保有税に関する規定は憲法一四条に違反する無効のものである。

その理由は次の通りである。

1 右特別土地保有税の規定は、昭和四四年一月一日以後に土地を取得したものにのみ課税され、その前年一二月三一日までに取得された土地はどんなに面積が広くとも、又どんなに高価な土地であつても課税されないこととされている。斯様に取得の時期が異ることにより一方は全く課税されず、他方は土地の所有が続く限り毎年一月一日を基準にして永久に課税されるのは明らかに不合理な不平等である。而も課税開始が昭和四八年七月一日(保有分については実質的には昭和四九年一月一日)であるにも拘らず、課税原四は昭和四四年一月一日の取得にまで遡り、それより前の取得は全く課税されず以後の取得は永久に毎年課税されると云うことは、憲法に違反することは明らかである。

2 特別土地保有税の課税標準は土地の取得価格とされているが、同様な土地について同時に取得しても、高く買つた場合と安く買つた場合とで税額が異ることとなつて不平等である。

又昭和四四年当時に土地を取得するのと今後取得するのとでは、土地の時価が相当異るのに、その取得価格を課税標準として保有税の保有分を課することは不平等である。

3 地方税法五九五条が市町村の形態によつて土地保有税の免税点の面積に相違を設けているのは不合理であり不平等である。即ち、都市計画区域のない市町村でも相当高価な土地もあれば、政令指定都市内でも人畜未踏と云う土地もある。これらの実情を全く考慮しない右規定は明らかに不平等な規定である。

4 特別土地保有税は土地のみに課せられ家屋には課せられない。然し土地と家屋は種類こそ異なるが不動産と云う点では全く同質のものであるにも拘らず、その一方にだけ課税され、他方にはこれに匹敵する税のないことも明らかな不平等である。他の諸税をみても土地家屋の一方のみに課し他方に課さないと云う税は全く見受けられない。

五  特別土地保有税に関する規定は昭和四八年七月から施行されているが、その課税原因(土地の取得)を昭和四四年一月一日まで遡つているのは、法律不遡及の原則を無視したものであつて、この点からも右規定はその効力を有しないものである。

六  被告の別紙二の主張に対する原告らの再反論は別紙三昭和五一年一〇月一三日付準備書面記載の通りである。

七  尚本件各特別土地保有税決定処分が、地方税法五八五条乃至六二〇条の規定に従つて適法になされたものであることは争わない。

第二、被告

一  原告主張の一ないし三の各事実は認める。

二  同四、五の主張は争う。

三  原告らの憲法違反の主張及び法律不遡及の原則に違反する旨の主張に対する被告の反論は別紙二昭和五一年八月一六日付準備書面記載の通りである。

(証拠)<省略>

理由

一  請求原因一ないし三の事実は何れも当事者間に争いはない。

二  そこで特別土地保有税に関する地方税法五八五条乃至六二〇条の規定が憲法一四条に違反するとの主張について以下判断する。

1  憲法一四条は法の下の平等の原則を規定しているが、同原則は絶対的な平等を意味するものではなく、合理的な理由に基く差別を禁止するものではない。

2  ところで特別土地保有税に関する制度が創設されるに至つた経緯、立法目的及び右制度の内容は被告主張の別紙二の一項後段記載の通りであつて、要するに昭和四四年度土地税制(同年一月一日から施行)は土地供給の促進をはかるものでありその効果はかなり挙がつたのであるが、同時に起つた金融緩和による投機的土地取得傾向により、土地が一定の者の手許に留保され、一般国民への土地供給を増大せしめると云う効果を充分挙げ得なかつたところから、右制度を補完するために、土地の投機的取得を抑制すると共に昭和四四年一月一日以降に一定規模以上の土地を取得した者に対し、再びこれを放出させ、以て一般国民への土地の供給を促進せしめようと云う目的を以て制定せられたものである。

3  而して右の立法目的からすると、昭和四四年一月一日以降に土地を取得したもの(但し一定規模以上の土地に限る。)に対してのみ特別土地保有税を課することとしたこと、土地の取得価格を課税標準としたこと、地域によつて免税点を異にすること及び家屋を課税対象としていないことは何れも合理的な理由に基くものと云えるのであつて、その理由は被告主張の別紙二の二項の(一)乃至(四)に記載する通りである。従つてこれを以て不合理な差別とは云えないものと考える。

4  原告らは、特別土地保有税を含む一連の土地税制によつても結局土地供給の促進及び地価抑制の効果を挙げ得なかつたことを理由に、行政目的さえあればいかなる不平等立法も合憲であるとするのは誤りであると反論するが、右は立法政策の当否の問題と法律の憲法適否の問題とを混同するものであつて採用の限りではない。

5  よつて特別土地保有税に関する地方税法の規定が憲法一四条に違反するものであるとする原告らの主張は何れも採用することは出来ない。

三  原告らは特別土地保有税に関する規定が施行されたのは昭和四八年七月一日であるのに、昭和四四年一月一日以降取得の土地について同税を課するのは法律不遡及の原則に反する旨主張するが、右主張も又理由のないことは被告主張の別紙二の二項(五)の通りであると考えられる。従つて右主張も又採用出来ない。

四  よつて原告らの本訴請求は何れも失当であるのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 林義一 棚橋健二 佃浩一)

別紙一<省略>

別紙二(被告昭和五一年八月一六日付準備書面)

一 憲法第一四条は、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない旨規定しているが、この法の下の平等は、実質的不合理な差別を禁止したものであると解せられている。租税法規についてみても、その規定の内容が不合理な内容を構成する場合には、憲法第一四条違反の問題が生ずるものと考えられるが、租税制度をいかに定めるかについては、立法者は広範な裁量権を有するものと解され、その政策目的、その目的達成のための措置等において合理的理由が存する場合には、憲法第一四条に違反するものではない。

ところで特別土地保有税は、次のような背景、目的をもつて創設されたものである。

昭和四四年度の土地税制の改正による個人の長期譲渡所得の分離課税制度は、土地供給に相当の効果があつたと認められる反面、特に昭和四六年以降の金融緩和を背景として、法人等の土地の取得が顕著となり、これが地価高騰に拍車をかけるとともに法人等によつて投機的に利用されるために土地が留保され、有効な土地供給の促進も阻む傾向がみられるに至り、その規制措置を講ずる必要が生じてきた。このため、政府税制調査会において、昭和四四年度の土地税制を補完し土地の投機的利用の抑制とあわせて土地の供給促進を図るための土地税制のあり方が審議され、その答申に基づいて昭和四八年度税制改正において投機的利用の抑制をねらいとして、法人の土地、譲渡益に対しては、一般の法人税とは別に二〇パーセントの税率による課税を上積みする重課制度及び個人の土地の譲渡で事業所得又は雑所得の基因となるものに対する重課制度が設けられ、また土地の供給促進と取得抑制の観点から、土地の保有及び土地の取得に対して課する特別土地保有税が創設されたものである。

このような政策目的から、特別土地保有税の課税対象となる土地の範囲、課税標準、免税点、税率などが定められたものである。

二 以下、原告の憲法違反の主張に対し反論する。

(一) 「昭和四三年一二月三一日以前に取得した土地は課税せず、昭和四四年一月一日以後に取得した土地を課税対象とし、取得の時期によつて異なるのは、不平等で憲法に違反する。」について

昭和四四年度税制改正において土地の供給促進をねらいとして、個人の保有に係る土地の長期譲渡所得に対する分離軽課措置が実施された結果、個人保有の土地が放出されることとなつたが、結局、法人に取得されたまま投機的に利用されるために土地が留保され、有効に利用されないという傾向がみられるに至つた。さらに昭和四六年以降の従来に例をみない金融緩和を背景として、法人の投機的土地取得の傾向は、一層、顕著になつた。そこで昭和四八年度税制改正により、土地の投機的取得の抑制とともに現に保有している土地の供給の促進を図るため、特別土地保有税が設けられたのであるが、以上のような税制改正の経緯、土地保有の実態等にかんがみ、法人の土地譲渡益に対する重課制度及び個人の不動産業者の土地譲渡益に対する重課制度の対象と同様に特別土地保有税においても、昭和四四年一月一日以後に取得した土地を対象としたものであり、合理的理由が認められ、憲法第一四条に違反しない。

(二) 「課税標準を土地の取得価格とするのは、取得価格の高低や取得によつて税額が異なり不平等である。」について

土地に対する租税の課税標準を何に求めるかについては、固定資産税のように土地の価格を評価によつて求める方法もあるが、特別土地保有税の課税標準として、原則として取得価額方式が採用されたのは、特別土地保有税が土地の管理費用を無視した過大な買い値による投機的土地取引を抑制し、土地の供給促進を図ることを目的とした政策税制であることにかんがみ、その課税標準も土地の取得者のその土地に対する取得者なりの評価額ともいうべき実際の取引価額を基礎として課税することが適当である、と考えられたからである。したがつて、取得価額の大小により税額が異なることは当然であり、また、取得価額の大小は担税力の大小を反映しているとも考えられ、何ら不平等取り扱いではなく、憲法第一四条の問題ではない。

(三) 「地域によつて免税点が異なるのは、不平等である。」について

土地の投機的利用の抑制を目的とする特別土地保有税の創設の趣旨にかんがみて投機の対象となるような一定規模以上の土地のみを課税対象とすることとされているが、投機の対象となるような一定規模以上の土地の面積といつても、土地取引の規模又は形態が土地の所在する地域によつて一様ではなく、比較的小面積の宅地等が取引の主要部分を占める大都市地域と、かなり広大な面積の山林原野等が主要な取引の対象となる地方の町村とではその経済価値には、おのずから差異があり、したがつて、免税点となる基準面積に差異を設けることには、合理的理由がある。

免税点をいかに設けるかは、一に立法政策の問題であるが、具体的には、指定都市等の区の区域については、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四七年法律第六六号)第四条の規定により市街化区域内の土地の譲渡について知事への届出義務のある面積が二、〇〇〇平方メートルであるのでこれが基準とされ、その他の一般の市町村の区域については譲渡所得において課税の特例を受ける買い換え資産である土地の限度が原則として五倍であること等を考慮して、一〇、〇〇〇平方メートルとされ、都市計画区域を有する市町村の区域については、その中間程度の水準を適当と考え五、〇〇〇平方メートルとされたものであつて、このような基準が著しく不合理なものであるとは考えられない。

(四) 「同一の不動産であるにもかかわらず、土地のみを対象とし、家屋を除外しているのは、法の下の平等に反する。」について

土地も家屋もともに不動産ではあるが、土地と家屋は同一の不動産ではない。原告の主張は、この点混同したものであり、土地についてのみ課税対象とすることは何ら憲法第一四条に違反するものではない。

(五) 「課税対象となる土地の範囲を法律施行日の昭和四八年七月一日前である昭和四四年一月一日以後取得のものまで遡つているのは、法律不遡及の原則に反する。」について

行政法規の不遡及の原則というのは、行政法規の効力発生前の事実について当該法規を活用しないという原則である。

特別土地保有税は、過去の現存しない事物の状態を租税賦課の標準とするものではなく、賦課期日現在所有する土地に対して課税するものであるから、法律不遡及の原則に反するものではない。

別紙三(原告昭和五一年一〇月一三日付準備書面)

右事件につき被告が昭和五一年八月一六日付で提出した準備書面に対し原告は左の通り主張する憲法第一四条に規定する法の下平等原則は租税関係法令に於てもそれが正当な理由のない不平等内容のものであれば憲法違反の問題が生ずるという事については原告被告共に争いのない所である。

蓋しこの法の下平等原則は完全なる平等を指しているのではなく法令、処分等に関しそれが行政上、立法上の必要性、合理性のある差別、不平等であればその範囲に於ては憲法違反の問題は生じないと原告は判断をする。

本件の特別土地保有税保有分課税についてその根拠となる地方税法の規定そのものが差別をした不平等なものであるという事についても原被告間に争いがない。

ただ本件不平等は土地の投機的取得の抑制と国民に対し土地の安定供給促進という行政目的があるから合理性があり憲法違反とならないと被告は主張している。

行政目的さえあればどの様な不平等法令制定も合理性があり違憲とはならないと判断する被告の主張は妥当性を欠く。

ここでいう合理性があるというのは<1>立法技術的にみて法令を施行した時にそれが完全なる平等を期待する事が不可能な場合、可能な限り平等に近い立法を施行した上で生じた不平等<2>立法当初から故意に法令を不平等な内容にする事に関し矛盾がなくその不平等にする事について一般社会通念上公正なる理由ありと容認出来る内容のものであれば合理性のある不平等と言える。

前述の土地対策の行政目的があると言う丈で本件の様に極端な不平等規定も合憲であるとする被告の主張は明らかに間違いである。

所得税、地方税は右土地対策のため昭和四三年末以前に取得した土地及び建物(借地権のある建物)の長期保有(五年間以上所有)譲渡所得についてはその所得の二〇%を所得税、六%を地方税として賦課し、それ以外の土地、建物の譲渡所得は右の倍額即ち所得税はその所得金額の四〇%地方税は一二%を現在迄賦課して来たが、その成果は如何なるものであつたろうか。

そもそもこの様に土地建物の譲渡所得税の重課制度は土地の安定供給のため早い時期に地主に土地を放出させ今後の投機的不動産の取得を抑え地価を安定させるというのが目的であつた。

所が地主は増税分を浮かすため昭和四四年頃から地価はどんどん上げられる一方で国民一家族一戸の持家をし一人一部屋を確保すると提唱していた政府が日の経過と共に持家制度は永久的に不可能であると言明した。

更に昭和四九年から本件の特別土地保有税保有分が賦課される様になり出してからこれ等の税に耐え切れず全国各地で不動産業者の倒産が続出、住宅の需要は非常に高いが地価とか建物の高騰で一般人はこれに手が出ない。住宅は欲しいが値が上りすぎ資金的に買えないと多くの人が不自由な思いをして生活をしている一方では新築建売住宅が乱立しているが買手がないため空家のまま何年後に入居の主が来るともわからずだんだん古ボケて来ている。

こんな不経済で馬鹿げた事があつてよいものか、正に土地建物の需給に関する異常現象でありこの事に関する限りパニック状態である。

不動産の安定供給、投機的購入の抑制、地価の安定といつた行政目的のために設置した譲渡所得の重課制度とか特別土地保有税は寧ろこれ等の行政目的を阻害するという結果になつてしまつた。

自治省並びに各地方自治体もこの様な実態はよく理解しており、又特別土地保有税保有分課税は不公正なものであり違憲である事を知りつつも兎角財源確保のため手放したくないというのが真情である。

この様な面から見てこの保有分課税の実態は行政目的が遂行出来ないばかりか寧ろこれを逆行させるものであり本件に関する限り「行政目的がある」という被告の主張は単に名を語るに過ぎず、実際何の効果もないものである。

而うして「行政目的があるから本件の不平等は合理性があり違憲とならない」との被告の主張は失当である。

更に本件の保有分課税は昭和四三年一二月末日以前の取得土地であれば永久に賦課されないのに昭和四四年一月一日以降の取得であれば同じ状態で所有している限り毎年毎年永久に一〇〇%の保有分課税される(単に取得時期が異る事により一方は永久全面非課税、又他方は継続的に毎年永久一〇〇%課税される)事は極端なる不平等でありその差別をする事について全く合理性はなくこの様な保有分課税は憲法に違反する事は明白である。

これが不動産取得税の如く取得した際に一回丈賦課する様な性格のものであれば違憲性が比較的薄くなるが保有分は毎年同一の土地へ継続的に賦課するのであるから保有分課税は違憲のそしりは免れない。

従来からの最高裁判所の判例は社会道徳的な見地からみて容認される多少の不平等は違憲とはならないが公正明白なる理由のない極端な不平等法令、同行政処分、同決定等は憲法違反となりこれは当然排斥されるべきであるという事であり多くの学説もこれを支持している。

更に保有分課税は土地の実態とか価値等に関係なく一定の面積を以つて免税点としている事は明らかに憲法違反である。

これについて被告は「市街化区域内の土地の譲渡について知事への届出義務のある面積が政令指定都市では二〇〇〇m2であるからこれを免税点とした」とか「譲渡所得の課税の特例をうける買替の土地限度が五倍であるから一〇、〇〇〇m2とした」としているが届出義務面積とか土地買替は特別土地保有税を課する事と何等関係がない。例えば神戸市の中心街である三ノ宮駅附近の土地でも一九九九m2迄なら永久に非課税、北区の六甲山中などは家を建てることは勿論人が立入る事も不可能な所でも二〇〇〇m2以上なら永久に課税される、この二つの場所の地価を比較すると何百倍の差があるのにも拘らずこの様な事は全く考慮に入れず面積丈を基準として双方を全く同じ扱いにしている事は明らかに不合理であり被告の主張は不当である。合理的な免税点を設けるなら評価額に基づく一定の金額でなければならない。

「課税標準を取得価格としてもその大小は取得者の評価の差であり担税力の差であるからそれによつて税額に差異が生じても違憲とはならない」と被告は主張しているが同じ時期に同じ土地を一人は高く買い他の人が安く買つた場合高く買つた人はそれ丈高く評価したからとか担税力があるから多額の税を毎年課し安く買つた人は毎年安い税しか課さないという事についてどこに合理性があるであろうか。

土地を時価より高く買うというには色々なケースが考えられる<1>時価を知らず買つた場合<2>資金的には余裕はないがその必要性に迫られ借金をして買つた場合<3>錯誤又は詐欺に近い状態で買わされたとき等については評価が大であるとか担税力があると言つた事は一切当てはまらない。又地価そのものが年の経過と共に値上りしているが地価が上つてからその高くなつた金額で買つたとしてもそれ丈貨幣価値が下つたので、そうなつた丈であり名目的には金額が多くなつても実質的には金額が増えたものではない。にも拘らず名目的金額を以つて課税しようとするからそこに不合理が生じて当然の事である。

土地と家屋は同一の不動産でないから土地丈を課税対象としても違憲とはならないと被告は主張するが不動産に関する諸税(固定資産、都市計画税譲渡所得税、不動産取得税、登録免許税等)に於て土地、建物のいづれかに課していずれかに課さないという税は何一つない。結局土地、建物は共に不動産であり表裏一体の関係にありそれを区別して土地丈に特別土地保有税を課す事はやはり合理性がなく違憲であると原告は主張する。

原告が主張する理由はすべて憲法違反につながりこれに対する被告の反論はすべて正当な理由がなくひいては被告が原告に賦課した保有分課税決定処分は当然に無効であり速やかに取消されるべき性格のものである。

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