大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和51年(わ)537号 決定 1981年3月10日

主文

被告人甲野明に対する取調請求書証中、検察官請求証拠目録番号147、148、151、152、155ないし157、161、別表番号1ないし6、12、13、15、17、20の各書証はこれを採用し、検察官請求証拠目録番号149、150、153、160、別表番号9、11、16、18の各書証については同被告人に対する公訴事実第二の事実に関する部分はこれを採用し、同第三の事実に関する部分はこれを却下し、検察官請求証拠目録番号162、163の各書証については同被告人に対する公訴事実第一、第二の各事実に関する部分はこれを採用し、同第三の事実に関する部分はこれを却下し、その余の各書証(検察官請求証拠目録番号154、158、159、別表番号7、8、10、14、19の各書証及び被告人乙山の検察官に対する昭和五一年七月三一日供述調書)の取調請求はこれを却下する。

被告人乙山春夫に対する取調請求書証中、検察官請求証拠目録番号36ないし42、51、54の各書証はこれを採用し、右目録番号43ないし48の各書証については同被告人に対する公訴事実第五の事実に関する部分はこれを採用し、同第六の事実に関する部分はこれを却下し、右目録番号52の書証については同被告人に対する公訴事実第四、第五の事実に関する部分はこれを採用し、同第六の事実に関する部分はこれを却下し、その余の各書証(検察官請求証拠目録番号49、50、53の各書証及び被告人甲野明の検察官に対する昭和五一年六月二日付、同年六月七日付、同年六月二四日付各供述調書)の取調請求はこれを却下する。

理由

第一当事者の主張

一右各書証の証拠能力に関する各被告人両名の弁護人の意見の要旨は、捜査当局は本件「神戸まつり事件」の捜査において、最も重大な西原記者殺害事件の犯人を検挙、起訴することを第一の目的とし、阪急タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反等の嫌疑が判明した被告人甲野及びみなとタクシー、三宮自動車交通タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反等の嫌疑が判明した被告人乙山を、これらの事実(以下別件という)についてはいずれも逮捕、勾留の理由、必要性がないにもかかわらず、専ら右殺人事件(以下本件という)について取調の日時を獲得する目的で、被告人両名を右別件を被疑事実として逮捕、勾留し、その身柄拘束を利用して長期間にわたつて本件についての取調をしたものであり、右はいわゆる違法な別件逮捕、勾留にあたり、また被告人両名に対する勾留は少年法四八条一項にいう「やむを得ない場合」に該らない違法なものであるから、右の如き違法な逮捕勾留中の取調べによつて得られた本件各書証はすべてその証拠能力を否定されるべきであり、然らずとするも、いずれも強制、偽計等による自白をその内容とするものであるから、任意性を欠くものであるというのである。

二これに対し、検察官の意見の要旨は、右各別件はいずれも相当重要な事案であつて、勾留の理由及び必要性は存したものであり、また別件と本件はいわゆる「神戸まつり事件」の一連の騒動の中で発生したもので社会的に密接な関連があるから、別件勾留中に本件の取調をなすことも許されるのであり、また被告人両名に対する各勾留は少年法四八条一項にいう「やむを得ない場合」にあたることも明らかであり、自白の任意性についても欠くるところはないというのである。

第二当裁判所の認定した事実

被告人両名、証人小島直臣、同藤原秋男、同石谷良雄、同毛利昌良の当公判廷における各供述、司法警察員作成の「第六回神戸まつり開催期における暴走事案の概況と警備措置について」と題する書面、新聞切抜き(写)六五枚(第三五回及び第四六回各公判で取調べたもの)及び当裁判所が第四八回公判において検察官に対し提示を命じた本決定の対象たる各書証等本件記録に徴すると以下の事実が認定できる。

一昭和五一年度神戸まつり事件の発生

神戸市においては例年五月に神戸まつりが開催されているが、昭和四九年度の第四回神戸まつり及び昭和五〇年度の第五回神戸まつりでは暴走族車両数十台が暴走行為を繰り返し、見物の群衆がこれに呼応して通行中のタクシーや取締にあたつた警察官に対し投石するなどの騒動がおこつていた。第六回神戸まつりは昭和五一年五月一四日から同年同月一六日までの三日間の日程で開催されたが、兵庫県警察本部では前年度と同様の騒動の発生を予想し、同月一四日暴走族防圧対策本部を設置し、治安の確保にあたることとした。第一日目の同月一四日は、当日夜から約五五台の車両が三宮周辺で暴走行為を行い、約二〇〇人の群衆が蝟集したが、特に目立つた騒動は生ぜず、一応平穏であつた。

ところが、第二日目の翌同月一五日の夜に至り、三宮周辺には暴走族見物を目的とする群衆約六、〇〇〇名が集まつて騒然とした雰囲気に包まれ、同日午後九時半ころ、神戸市役所前交差点で一台のタクシーが転覆、放火されるのを契機として、群衆の一部が暴徒化し、そのころから翌同月一六日午前五時ころまでの間、三宮周辺の各所において、タクシーへの襲撃、機動隊、派出所、警察署への投石などを繰り返したが、その間、同月一五日午後一一時三〇分ころ、同市中央区小野柄通八丁目一番八号付近の神戸市道中央幹線西行車道上において、神戸新聞社カメラマン西原基之が群衆により暴行を受けて路上に昏倒し、更に群衆からの投石等の暴行により同所に立往生していた警察輸送車が群衆に押されて同人を轢過し、同人が死亡するという事件が発生した。結局同日の騒動による被害総計は、一般人の死亡一、軽傷一〇、警察官の軽傷四二、タクシーの全焼七、大破三、損傷をうけたもの一三五、投石等の被害をうけた建物四にのぼつた。

二捜査の開始

兵庫県警察本部では、同月一六日葺合警察署に「神戸まつり殺人放火合同捜査本部」を設置し、捜査を開始した。

右西原の遺体は同月一七日神戸大学医学部助教授龍野嘉紹の手で司法解剖に付され、その結果死因は頸部圧迫による窒息並びに轢過による内臓破裂と断定された。

捜査本部では右解剖結果及び目撃者の証言等から、同年五月一八日ころまでには右西原は群衆から袋叩きの暴行を受けたうえ、瀕死の状態で道路上に倒れているときに警察輸送車に轢過されたものと考え、右西原に暴行を加えた者及び輸送車を押した者のいずれについても殺人罪が成立する可能性があるものと判断して捜査を進めた。

一方そのころ、群衆が輸送車を押した際、運転手の松本浩之巡査はエンジンをかけつ放しのまま、サイドブレーキもひかず運転席後方の荷台に逃げ込んでいたことが判明し、マスコミは西原記者殺害事件に関し、警察の右措置に手落ちがあつたとして報道し、同月二五日に開催された兵庫県会警察委員会では、県警の責任の追及がなされ、県警では全力をあげて殺人犯の検挙にとりくんだ。

三被告人甲野に対する逮捕、勾留、取調の状況

1  被告人甲野の逮捕に至る経緯

捜査本部では、捜査開始後、直ちに各新聞社カメラマンが撮影した報道写真に写つている人物の割り出し作業にとりかかつたところ、西原記者殺害事件の直前に、その犯行場所と近接した道路上で発生した阪急タクシー株式会社所有タクシーが大破された事件(同被告人に対する公訴事実第一の事実以下阪急タクシー事件という)を撮影した写真に写つていた白帽子、白鉛管服という目立つた服装の少年が被告人甲野であるとの情報を掴み、同被告人が西原記者の殺害に係つている可能性もあるとみて、同人を取調べることとした。

上司の命をうけた県警刑事部捜査第一課警部補小島直臣は、同月二三日午前一〇時すぎころ同被告人宅を訪れ、同被告人に県警本部まで任意同行を求め、同被告人はこれに応じた。

県警本部における取調において、右小島は同月一五日夜から翌一六日早朝にかけての同被告人の行動の概略を尋ねたところ、同被告人は、阪急タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反の事実、警察輸送車に対する投石等の事実(同被告人に対する公訴事実第二の事実以下警察輸送車事件という)、その他数台のタクシー、バス、警察署、派出所に対する投石等の事実を供述するとともに、警察輸送車を押した事実も供述した。

右小島は同日午後四時ころから阪急タクシー事件についての簡単な供述調書(別表番号1の供述調書)を作成し、右事実を被疑事実として直ちに逮捕状の請求手続を執つたところ、同日午後八時ころ神戸地方裁判所裁判官から逮捕状が発布され、右逮捕状は同日午後八時二五分執行された。(以下第一次逮捕という)

2  被告人甲野の第一次逮捕から本件起訴にいたる経緯

同被告人は、同月二六日阪急タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反の被疑事実(阪急タクシー事件)により神戸地方裁判所裁判官が刑事訴訟法六〇条一項二、三号に該当するとして発した勾留状により県警本部附属代用監獄に勾留され、右勾留は同年六月四日に同月九日まで延長され、更に同月九日には同月一四日まで再延長された。(以下第一次勾留という)同月一四日午後七時四〇分、同被告人は警察輸送車に対する暴力行為等処罰に関する法律違反(同被告人に対する公訴事実第二の事実)、西原記者に対する殺人(同第三の事実)、葺合警察署小野柄派出所の窓ガラス等に対する暴力行為等処罰に関する法律違反(同第四の事実以下小野柄派出所事件という)、栄タクシー株式会社所有タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反(同第五の事実以下栄タクシー事件という)、宝交通株式会社所有タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反(同第六の事実以下宝交通タクシー事件という)及び扶桑タクシー株式会社管理にかかるタクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反(同第八の事実以下扶桑タクシー事件という)を被疑事実として再逮捕され(以下第二次逮捕という)、同月一七日同じ被疑事実につき、刑事訴訟法六〇条一項二、三号に該当するとして、県警本部附属代用監獄に勾留されると共に、接見を禁止された(以下第二次勾留という)。

右勾留に対し、同日、同被告人の弁護人矢野弦次郎及び中東孝は神戸地方裁判所に対し、違法な別件逮捕、勾留に引き続く本件勾留であること等を理由として準抗告を申立てたところ、同月一九日、同裁判所は違法な別件逮捕、勾留であるとの主張は退けたものの、第一次逮捕、勾留中の相当部分は警察輸送車に対する暴力行為等処罰に関する法律違反及び西原記者殺害事件についての取調にあてられていて、第一次勾留は実質的には右各事実についての勾留でもあつたと評価しうるから、更に右各事実で逮捕、勾留することは、逮捕、勾留のむし返しとなり許されない、として、右警察輸送車事件及び西原記者殺害事件の各事実についての勾留を取り消したが、その余の右各被疑事実に関する勾留については原裁判を維持した。

同被告人は同月二六日、第一次逮捕、勾留、第二次逮捕、勾留の各被疑事実(但し、阪急タクシー事件、栄タクシー事件、宝交通タクシー事件、扶桑タクシー事件についてはいずれも威力業務妨害が、警察輸送車事件については公務執行妨害、傷害が罪名に加わり、また小野柄派出所事件は罪名が器物損壊に変更された。)及び琴参タクシー株式会社所有の大型バスに対する暴力行為等処罰に関する法律違反、傷害、威力業務妨害の事実(同被告人に対する公訴事実第七の事実、以下琴参タクシーバス事件という)で神戸家庭裁判所に送致され、同裁判所裁判官は同日同被告人に観護措置(少年鑑別所送致)をとつた。

同年七月六日、同被告人は右各事実について刑事処分相当として神戸地方検察庁検察官に送致された。

同月一〇日、同被告人は更に葺合警察署窓ガラスに対する暴力行為等処罰に関する法律違反の事実(同被告人に対する公訴事実第九の事実、以下葺合警察署事件という)で神戸家庭裁判所に送致され、同月一三日右事実についても刑事処分相当として神戸地方検察庁検察官に送致された。

同月一三日、同被告人は右の送致された各事実につき、神戸地方裁判所に勾留中のまま起訴された。

なお、同被告人は第一次逮捕当時、一八才一一ケ月の少年であつた。

3  被告人甲野に対する第一次逮捕、勾留期間中の取調の状況

同被告人に対する警察での取調には、前記小島直臣があたつた。同年五月二四日、同人は同被告人の身上経歴に関する調書(別表番号2)を作成し、更に阪急タクシー事件についての取調を行つたが、同被告人は素直な供述態度であつたため、取調は順調に進み、同日中に右事件に関する詳細な供述調書の作成を終え(別表番号3)、右事件についての警察での取調は同日中にほぼ完了した。

翌同月二五日、右小島は同被告人の神戸まつり騒動における阪急タクシー事件以外の余罪の捜査のため、同被告人に対し、同月一五日夜から同月一六日早朝にかけての同被告人の行動についての手記を作成させた。

同被告人は、右手記において、西原記者殺害事件について「群衆が『押せ』と叫んだので警察輸送車を押したが、前方に人が倒れているのを発見し、手を離した」旨書いた。

なお、この時点で捜査当局が同被告人の西原記者殺害事件について収集しえていた証拠資料は同被告人の右手記のみであり、右殺人事件について逮捕状の発布を求めることは極めて困難であつたものと思料される。

同月二六日から、同被告人に対する取調は、西原記者殺害事件、特に同被告人が右手記の内容のように、輸送車を押すのを途中で止めたかどうかの点が中心となつた。

このころ作成された調書は、司法警察員に対するものは同月二七日付の五月一五日の行動全般についての供述調書(別表番号5)及び同日付の神戸中央タクシー大破事件(以下神戸中央タクシー事件という、この事件については被告人は起訴されていない)についての供述調書(別表番号4)の二通だけであるが、右はその枚数が前者は二枚、後者は四枚という極めて簡単なものであり、また検察官に対するものとしては、同月二九日付の身上、経歴及び神戸まつりに出かけた状況についての調書のみであつて、これらはその内容に照らしいずれも比較的短時間で作成しえたと推認され、それ以外の時間は、連日西原記者殺害事件についての取調が行われたものと推認される。

同月一三日、同被告人は初めて西原記者殺害の被疑事実を認める旨、即ち輸送車を押しはじめたところ、前方に人が倒れているのに気付き、このまま押し続ければその人を轢き殺すかもしれないと思つたが、倒れている人は機動隊員だろうと思い、そのまま押し続けた、旨の自白をなした。同日の右小島の取調態度は、前日までのやさしい態度とはうつて変わつた厳しいものであり、大声で追及したため、同被告人が涙を流す場面もあつた。同日神戸中央タクシー事件についての簡単な二枚綴の供述調書(別表番号6)及び西原記者殺害事件についての簡単な自供調書(別表番号7)が作成された。

六月一日以降同月一四日の再逮捕までの間、警察における同被告人に対する取調は、その大部分が西原記者殺害事件及びこれと密接に関連する警察輸送庫事件について行なわれた。即ち捜査官は同月一日には右殺人事件についての簡単な供述調書(別表番号8)を作成し、同月三日、四日の両日をかけて同被告人に対し右両事件についての詳細な手記を作成させたうえ、同月四日に一通(別表番号9)、同月五日に二通(別表番号10、11)の各供述調書を作成し、同月七日には被告人を同行して右警察輸送車の実況見分を行つたうえ、その旨の供述調書を一通作成し(別表番号14)、同月九日には右両事件についての供述調書を一通(別表番号16)、犯行後友人に西原記者殺害事件について話した内容についての供述調書一通(別表番号17)、同月一二日には右両事件についての供述調書一通(別表番号18)をそれぞれ作成し、同月一三日に再度被告人を右両事件の犯行現場に同行して指示説明を求め、同月一四日その旨の供述調書を作成した(別表番号19)。この間、右以外に作成された調書は同月五日付の小野柄派出所事件についてのもの、同月六日付の栄タクシー事件、宝交通タクシー事件、琴参タクシーバス事件及び扶桑タクシー事件についてのもの、及び同月八日付の神戸中央タクシー事件についてのものの三通にすぎない。

なお、右小島は第一次逮捕勾留期間中、同被告人は阪急タクシー事件のみならず、神戸まつり騒動における一連の被疑事実についてはすべて取調受忍義務があると考えていたため、同被告人に対し、阪急タクシー事件以外の余罪の取調に際しても出頭拒否及び退去の自由がある旨告知したことはなかつた。

一方、検察官もその間、西原記者殺害事件についての同被告人の供述調書を一通(同月一四日付)、右事件及び警察輸送車事件についてのものを三通(同月二日付、同月七日付及び同月一四日付)作成している。右以外に作成された同被告人の供述調書は阪急タクシー事件についてのもの二通(同月一日付及び同月一三日付)、小野柄派出所事件についてのもの一通(同月八日付)だけであるから、西原記者殺害事件は検事の取調においても相当の比重を占めていたことが認められる。

なお、阪急タクシー事件についての捜査は、警察官の取調は逮捕の翌日である五月二四日にはほぼ終了し、検察官も六月一日に一応の取調をなしているが、その後も被害者、共犯者の取調、実況見分等がなされたうえ、同月一三日に検察官による同被告人の再取調がなされたところ、同被告人は従来の供述の一部を変更し、その旨の同日付の供述調書一通が作成されている。

4  被告人甲野に対する第二次逮捕勾留期間中の取調の状況

同被告人に対する警察官の取調は第一次逮捕勾留期間中にすべて終了しており、第二次逮捕期間中に作成された同被告人の供述調書は、六月一六日付の身上、経歴についてのものだけである。この期間は主に検察官の取調が行なわれ、六月一九日に栄タクシー事件、宝交通タクシー事件、琴参タクシーバス事件についての供述調書一通、同月二二日に右各事件及び扶桑タクシー事件についての供述調書一通、同月二三日に葺合警察署事件についての供述調書一通、同月二四日に西原記者殺害事件についての供述調書二通がそれぞれ作成されている。

更に、家庭裁判所から検察官へ送致後の同年七月一四日、警察輸送車事件及び西原記者殺害事件についての供述調書、葺合警察署事件についての供述調書が各一通、同月一五日には阪急タクシー事件、警察輸送車事件及び西原記者殺害事件についての供述調書二通がそれぞれ作成されている。

四被告人乙山に対する逮捕、勾留、取調の状況

1  被告人乙山の逮捕に至る経緯

捜査本部では、報道写真及び民間人から提出された写真に写つている人物の割り出しに務めた結果、被告人乙山が機動隊に投石していたとの事実を掴み、同年七月一九日の夕方ころ、同被告人に対し電話で翌日県警本部に出頭するよう依頼した。同被告人は翌同月二〇日午前九時四〇分ころ県警本部に出頭し、県警本部刑事部捜査第三課巡査部長藤原秋男から取調をうけ、同年五月一五日夜の行動について供述を求められ、みなとタクシー、三宮自動車交通タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反、威力業務妨害の事実(同被告人に対する公訴事実第一及び第三の各事実、以下みなとタクシー事件、三宮自動車交通タクシー事件という)の他、警察輸送車に対する投石及び警察輸送車を押した事実についても供述した。

右藤原は直ちにみなとタクシー事件及び三宮自動車交通タクシー事件についての供述調書を作成し、右両事実を被疑事実として逮捕状請求手続を執つたところ、神戸地方裁判所裁判官から直ちに逮捕状が発布され、右逮捕状は同日午後五時四〇分に執行された。

2  被告人乙山の逮捕後本件起訴にいたる経緯

同被告人は、同月二二日、右逮捕状と同一の被疑事実により神戸地方裁判所裁判官が、刑事訴訟法六〇条一項二、三号に該当するとして発した勾留状により県警本部附属代用監獄に勾留された。次いで同月三一日右両被疑事実について神戸家庭裁判所に送致され、同日観護措置(少年鑑別所送致)がとられ、右観護措置は同年八月一四日更新された。同被告人は同月一六日更にみなとタクシーの売上金三六〇円の窃盗(同被告人に対する公訴事実第二の事実、以下タクシー売上金窃盗事件という)、機動隊員に対する公務執行妨害(同第四の事実、以下機動隊への投石事件という)、警察輸送車に対する暴力行為等処罰に関する法律違反、公務執行妨害、傷害(同第五の事実)及び西原記者に対する殺人(同第六の事実)についても同裁判所に送致され、同月二四日、以上の各事実について刑事処分相当として神戸地方検察庁検察官に送致された。なお同日、同被告人に対する観護措置は取消された。同年九月二七日、同被告人は右各事実につき、神戸地方裁判所に在宅起訴された。

なお、同被告人は逮捕当時一九才四ケ月の少年であつた。

3  被告人乙山に対する逮捕、勾留期間中の取調の状況

同被告人に対する逮捕、勾留中の警察における取調は、前記藤原が担当した。取調は通常は午前九時ころから午後六時ころまで行なわれ、午後一〇時ころまで及ぶことも二、三回あつた。

同被告人は逮捕の翌日である七月二一日に身上経歴についての調書を作成され、その翌日の同月二二日に警察輸送車事件及び西原記者殺害事件について本格的な取調をうけた。なおこの時点で、捜査当局が同被告人の西原記者殺害事件について収集しえていた証拠資料は、同被告人の供述のみであると推認され、右殺人事件について逮捕状の発布をうけることは極めて困難であつたと思料される。同被告人は警察輸送車を最後まで押したことを認めたものの、輸送車の進行方向前方に人が倒れていることは全く知らなかつた旨供述したところ、右藤原から、群衆の一部から「人が倒れているぞ」という趣旨の叫び声があがつたのを聞いたであろうとの厳しい追及をうけ、四、五時間にわたり押問答を続けた。その時右藤原は「お前はつんぼか、お前の横の者もみな聞いたと言うとる、お前が聞いてないことはない」等と言つて同被告人を追及すると共に、供述調書冒頭の被疑事件名に「暴力行為等処罰に関する法律違反、威力業務妨害」と記載されているのを示して、真実は同被告人に対し殺人罪の嫌疑を抱いており、同日の取調も主として殺人罪につきなされていたにもかかわらず、同被告人に対し「殺人なんかつけへんから心配するな」と申し向けて同被告人から供述を得ようとした。(なお、右藤原は当公判廷において右事実を否定するが、実際に同日付の供述調書の冒頭被疑事件欄には「殺人」との記載がないこと、右認定に沿う内容の被告人乙山の当公判廷における供述の具体性、供述態度等に照らし、右の如く認定するに十分である。)同被告人は押問答の末、「人や人や、人が倒れとるぞ」との叫び声を聞いたことを認め、同日右内容の供述調書が作成された。同日の取調は午後一〇時ころまで行なわれた。

同月二三日以降の取調は、同被告人が素直な供述態度であつたため順調に進み、勾留期間の満了する同月三一日までに後に起訴される各事実の取調はほぼ終了した。この間に作成された西原記者殺害事件についての供述調書は、右藤原に対する同月二七日付、同月二八日付、同月二九日付、同月三〇日付のものが各一通、検察官に対する同月三一日付のものが一通あるが、いずれもその冒頭の被疑事件名記載欄に「殺人」とは記載されていない。(なお、右検察官に対する供述調書には被疑事件名として、殺人という明記はされていないが、暴力行為等処罰に関する法律違反等と記載されている。)

なお同被告人は神戸少年鑑別所に送致されていた同年八月一一日、同月一二日の二度にわたり、県警捜査第一課巡査部長三木兼三から、はじめて殺人が被疑事実であることを示されて取調をうけ、供述調書二通が作成された。

第三当裁判所の判断

一被告人両名に対する身柄拘束の許否

一般に、未だ令状の発布されていない甲事件(以下本件という)について捜査中の被疑者を取調べる目的で、嫌疑を認めるに足りる資料が揃つた別の乙事件(以下別件という)について逮捕、勾留し、その身柄拘束中に本件を取調べる、いわゆる別件逮捕勾留と呼ばれる事例において、その身柄拘束の許否は、捜査官がそれを専ら本件の捜査に利用する意図であつて、ただ別件に藉口したに過ぎない場合は格別、捜査官において別件についても捜査する意図のある以上、別件についての逮捕、勾留の要件の有無によつて決せられるべきであつて、捜査官が本件についても取調の意図を有しているからといつて、右逮捕、勾留が直ちに違法となるものではない、というべきである。

本件においてこれをみるに、被告人甲野に対する第一次逮捕、勾留の被疑事実である阪急タクシーに対する暴力行為等処罰に関する法律違反の事実は、決して軽微な事案ではなく、捜査官において右事実についても捜査をする意図であつたことは明らかであり、また右事実には多数の共犯者が存在すること、同被告人の右犯行を目撃した者もいると考えられること、同被告人は少年とはいえ、当時一八才で就職稼働していて、身軽な独身者であつたこと等に照らし、勾留の理由、必要性にも欠けるところはなく、また警察における右事実に対する取調は逮捕の翌日にはほぼ終了しているものの、その後も被害者の取調、共犯者の取調等の裏付捜査が続けられていて、右勾留の延長期間の満了の前日である昭和五一年六月一三日の検察官が同被告人を再取調したところ、同被告人は従来の供述の一部を変更するに至つているのであるから、第一次勾留期間中(延長も含む)、勾留の理由、必要性が途中で消滅したともいいえない。

また被告人乙山に対する逮捕、勾留の被疑事実であるみなとタクシー及び三宮自動車交通タクシーに対する各暴力行為等処罰に関する法律違反、威力業務妨害の事実も、決して軽微な事案ではなく、捜査官において右事実についても捜査をする意図を有しており、その勾留期間中、勾留の理由、必要性に欠けるところがなかつたことは被告人甲野の場合と同様である。

よつて、本件における被告人両名に対する身柄拘束が別件逮捕勾留として違法であるとはいえず、また、被告人両名は各逮捕時、一八才一一ケ月及び一九才四ケ月という年長少年であること、被疑事実につき現場へ同行させ、あるいは多数の共犯者、目撃者等に面通しさせる等の捜査上の必要があつたこと等を考慮すると、少年法四八条一項にいう「やむを得ない場合」にあたるとしても不当とは言えないから、結局本件の被告人両名に対する逮捕勾留が違法であるとの各弁護人の主張は、いずれも当を得ないものといわなければならない。

二被告人両名に対する余罪取調の許否

刑事訴訟法一九八条一項は、ある被疑事実で逮捕勾留中の被疑者に対し、右事実(以下逮捕勾留事実という)の取調に限つてそれを受忍する義務を課したものと解せられる。

ところで、逮捕勾留中の被疑者に対し逮捕勾留事実以外の余罪について取調べることは通常行なわれている捜査方法であり、捜査の流動的、発展的性格、また被疑者にとつても余罪毎に逮捕勾留を繰り返されるよりは身柄拘束が短期間に終わりうるし、同時審判を受けうる等利益な点があること等を考慮すれば、右の如き捜査方法を一概に非難することはできない。しかしながら余罪の取調は被疑者に取調受忍義務のない任意捜査であるからとの理由で、ある被疑事実で逮捕勾留すれば、いかなる余罪であろうと無制限に取調べることができるものと解することは許されないというべきである。そして通常身柄拘束中の被疑者が余罪の取調にあたり、取調受忍義務がないことを知つているとは期待し難いし取調官が被疑者に対し取調受忍義務がないことを必らず告知するという取調方法をとつているとも言い難いものと思料され、また逮捕勾留中の被疑者は心理的圧迫を感じて不安感を抱く心理状態になることも多く、右の訴訟法上の保障を法が予定しているところに従つて行使することは困難ではないかと思料されることに徴すると、右の余罪の取調については、取調官が被疑者に対し、取調のための出頭要求に対して出頭を拒み、また出頭後いつでも退去できるとの保障があることを十分理解させ、実際に被疑者がいつでも右保障を行使しうる雰囲気のもとに取調を行い、被疑者も右保障を十分理解したうえで、あえて取調に応じたと認められる場合、あるいは被疑者から積極的、自発的に取調を求めた場合のみを任意捜査と認め、右の場合に該当しないと認められる余罪の取調は、むしろ被疑者に取調受忍義務を課した状態で行なわれているもの、即ち強制捜査であるというべきである。そして右のことを基盤として、強制捜査における、いわゆる事件単位の原則に一定の修正を加え、一定の範囲、程度の取調は強制捜査としても許容されると解するとともに、右の範囲、程度を超えた余罪の取調は令状主義、事件単位の原則を逸脱した違法があるというべきものと思料される。

そして、右の許容範囲、程度を如何に解するかは困難な問題であるが、不当な強制捜査を排除するため厳格な司法的抑制を要求する令状主義の建前や、右抑制を徹底させ、裁判官には被疑事実を基準として逮捕勾留についての司法的抑制を働かせ、被疑者には自己が身柄を拘束される原因、防禦すべき対象を知ることによつてその防禦権を実質的に保障する、いわゆる事件単位の原則の見地から、個々の事例毎に、当該余罪と逮捕勾留事実との社会的関連性、事案の軽重、取調態様等を総合的に考察して慎重に判断されるべきものである。

以上の観点にたつて本件における余罪の取調を考究してみるのに、右取調に際し、取調官が被告人らに対し、取調受忍義務がないことを告知した事実あるいは被告人らから積極的、自発的に余罪取調を求めた事実は窺われないから、右取調は強制捜査であつたというべきである。したがつて以下それが許容される範囲、程度のものであるか否かを検討することとする。

被告人両名の逮捕勾留事実及び余罪はいずれも昭和五一年五月一五日午後九時半ころから翌一六日午前五時ころまでの間、神戸市の三宮周辺において、暴走族及び群衆の一部によつておこされた暴動状態の中で、時間的、場所的に近接して敢行された一連の犯行であり、社会的事実として関連するものである。ところで余罪が逮捕勾留事実と社会的事実として一連の密接な関連があり、逮捕勾留事実について当然しなければならない取調が余罪についての取調にもなる場合には、その取調は許容されるものと解される(参照最高裁昭和五二年八月九日二小法廷決定 刑集三一巻五号八二一頁)が、本件における各逮捕勾留事実と各余罪はそれぞれ別個独立の、個々の各事実毎に完結する犯罪であつて、逮捕勾留事実についての取調が余罪についての取調ともなるほど有機的に密接な相互の関連性があるとは認められないから、右場合にあたらないことは明らかである。そこで右の関連性以外の事情についてなお検討することとする。

ところで本件におけるいわゆる各余罪のうち、被告人甲野が第一次逮捕勾留中に取調をうけた警察輸送車事件、小野柄派出所事件、栄タクシー事件、宝交通タクシー事件、琴参タクシーバス事件、扶桑タクシー事件、第二次逮捕勾留中に取調をうけた琴参タクシーバス事件、葺合警察署事件、阪急タクシー事件、警察輸送車事件、被告人乙山が逮捕勾留中に取調をうけた機動隊への投石事件、警察輸送車事件は、いずれもその逮捕勾留事実と罪質、態様ともに同種の事案で犯罪としての軽重も同程度であり、また被告人乙山が逮捕勾留中に取調をうけたタクシー売上金窃盗事件は逮捕勾留事実と罪質は異なるものの、窃取金額三六〇円というかなり軽微な犯罪であり、これらの事実は両被告人とも当初から任意に認めていたものであつて、また取調に要した時間もわずかであるから、これらの取調は特に令状主義、事件単位の原則を逸脱するほどのことはなく、むしろ被告人両名の身柄拘束期間はこれら取調によつて短縮され、被告人らに有利になつているのであるから余罪の強制取調として許容される範囲、程度内のものであるというべきである。

しかしながら、西原記者殺害事件についての取調については事情は異なる。同事件もなるほど他の余罪と同様前記のように被告人甲野の第一次逮捕勾留事実である阪急タクシー事件、第二次逮捕勾留の被疑事実である小野柄派出所事件等、被告人乙山の逮捕勾留事実であるみなとタクシー事件、三宮自動車交通タクシー事件との間に社会的関連性が認められるものではあるが、逮捕勾留事実及び他の一連の余罪と比較してもはるかに重大な犯罪であり、罪質も全く異なるものである他、以下のような問題点を指摘することができる。

(1)  被告人甲野に対する西原記者殺害事件についての取調について

捜査当局は、同被告人が警察輸送車を押した事実を供述するや、前方に倒れている人を発見して手を離したとの同被告人の弁解にもかかわらず、同被告人を西原記者殺害事件の有力容疑者と考え、当時同被告人の右殺人事件についての証拠資料は同被告人の右供述しかなく、右殺人事件について逮捕状の発布を求めることは極めて困難であつたにもかかわらず同被告人の自白を得る目的で、阪急タクシー事件についての身柄拘束を利用して、昭和五一年五月二六日ころから連日ほとんど専ら右殺人事件についての取調を行ない、同月三一日に至り、同被告人から、前方に人が倒れていることに気付きこのまま押し続ければその人を轢き殺すかもしれないと思つたが、押し続けた旨の自白を得、その後同年六月一四日までの第一次逮捕勾留期間中の大部分を右殺人事件についての取調にあて、(それ故にこそ、第二次勾留に対する準抗告において準抗告裁判所は、第一次勾留は実質的には右殺人事件についての勾留でもあつたと評価して、右殺人事件についての勾留を取り消したものである。)、さらに右準抗告により右殺人事件についての勾留が取り消された後も、同事件についての取調を続けたものである。

(2)  被告人乙山に対する西原記者殺害事件についての取調について

捜査当局は、同被告人が警察輸送車を押した事実を供述するや、前方に人が倒れていたことは全く知らなかつたとの同被告人の弁解にもかかわらず、同被告人を西原記者殺害事件の有力容疑者と考え、当時被告人の右殺人事件についての証拠資料は同被告人の右供述しかなく、右殺人事件について逮捕状の発布を求めることは極めて困難であつたにもかかわらず、同被告人の自白を得る目的で、みなとタクシー事件、三宮自動車交通タクシー事件についての身柄拘束を利用して、同年七月二二日右殺人事件についての取調を行い、同被告人の自白を得たものである。また右取調において、取調官は、主として右殺人事件について取調をなしていたにもかかわらずその意図を秘し、「暴力行為等処罰に関する法律違反、威力業務妨害」と記載された供述調書冒頭の被疑事実欄を示して「殺人なんかつけへんから心配するな。」と申し向けておきながら、右殺人事件の取調を行うという手段を用いたものである。

以上の事実に照らして、被告人両名に対する西原記者殺人事件についての取調が、余罪の強制取調として許容される場合にあたるか否かを考察してみるのに、逮捕勾留事実と余罪の事実とが時間的、場所的に近接し、その意味で社会的事実としての関連が認められる事案であつても、相互に罪種、罪質を全く異にする別個独立の犯罪であり、余罪のほうが犯罪としてはるかに重大な事案で、しかも被疑者がその余罪を否認している場合に、右余罪については未だ適法に逮捕状の発布を求めることが困難であるのに、余罪について自白を得る目的で、逮捕勾留事実についての身柄拘束を利用して強制取調に及ぶことは、あたかも余罪についても令状が発布されているのと同様の状態で被疑者を取調べるものであつて、到底許容することはできず、令状主義、事件単位の原則を逸脱した違法があるものというべきである。

しかも被告人乙山の取調においては、取調官が前記の如く取調の対象とする被疑事実について欺罔的な方法を用いていると認められるところ、一般に被疑者の取調に際し、取調官が被疑事実を告知することは必ずしも法の要求するところではないが、法が事件単位の原則を採用し、刑事訴訟法二〇三条、二〇四条、六一条で逮捕時及び勾留質問時において被疑事実の告知を要求している趣旨に鑑みると、余罪についての強制取調が許容されるためには、少くともその余罪である被疑事実の告知がなされ、被疑者に防禦すべき対象を明らかにし、その防禦権の行使を保障することが必要不可欠であり、右の告知のない強制取調は被疑者の防禦権に対する重大な侵害であつて、令状主義、事件単位の原則を逸脱する違法、不当なものである。

本件においては、右の不告知に止まらず、取調官が、あえて、少年であつた同被告人に対し、殺人の事実については被疑事実の対象としていない旨申し向けるという欺罔的手段を用いて取調をしたものであつて、かような取調が不当、違法なものであることは明白である。

三本件各書証の証拠能力

以上説示したとおり、被告人甲野の第一次、第二次各逮捕勾留中の、及び被告人乙山の逮捕勾留中の西原記者殺害事件についての取調はいずれも違法であり、右違法は憲法三三条、三四条に違背する重大なものであるから、これによつて獲得された被告人両名の右事件に関する供述は、憲法三一条、刑事訴訟法一条の趣旨にてらし、これを事案解明のための資料として用いることは許されないというべきである。また被告人乙山の観護措置中に作成された右殺人事件についての供述調書二通は、右殺人の被疑事実に対する自白をその内容とするが、右供述は同被告人が逮捕勾留中の違法な取調によつてなした供述が大きく影響していることは明らかであるから、右供述調書二通もまた証拠として用いることは許されないと解すべきである。

一方、その余の事実の取調については前示のとおり何ら違法の点はなく、その取調により作成された調書に任意性を疑う事情は認められないから、これらの調書は証拠能力があると認めるのが相当である。

第四結論

以上の次第であるから、被告人甲野に対する取調請求書証中、西原記者殺害事件以外の事実をその内容とする検察官請求目録番号147、148、151、152、155ないし157、161、別表番号1ないし6、12、13、15、17、20の同被告人の各供述調書は証拠能力があるものと認めてこれを採用し、西原記者殺害事件及び警察輸送車事件をその内容とする検察官請求証拠目録番号149、150、153、160、別表番号9、11、16、18の同被告人の各供述調書については、警察輸送車事件に関する部分は証拠能力があるものと認めてこれを採用し、西原記者殺害事件に関する部分は証拠能力がないからその請求を却下し、西原記者殺害事件、警察輸送車事件、阪急タクシー事件をその内容とする検察官請求証拠目録番号162、163の同被告人の各供述調書については、西原記者殺害事件に関する部分は証拠能力がないからその請求を却下し、その余の部分は証拠能力があるものと認めてこれを採用し、その余の西原記者殺害事件をその内容とする同被告人の各供述調書及び被告人乙山の検察官に対する昭和五一年七月三一日付供述調書は、いずれも証拠能力がないからその請求を却下することとし、被告人乙山に対する取調請求書証中、西原記者殺害事件以外の事実をその内容とする検察官請求目録36ないし42、51、54の同被告人の各供述調書は証拠能力があるものと認めてこれを採用し、西原記者殺害事件及び警察輸送車事件をその内容とする右目録番号43ないし48の同被告人の各供述調書については、警察輸送車事件に関する部分は証拠能力があるものと認めてこれを採用し、西原記者殺害事件に関する部分は証拠能力がないからその請求を却下し、西原記者殺害事件、警察輸送車事件及び機動隊への投石事件をその内容とする右目録番号52の同被告人の供述調書については、西原記者殺害事件に関する部分は証拠能力がないからその請求を却下し、その余の部分は証拠能力があるものと認めてこれを採用し、その余の西原記者殺害事件を内容とする同被告人の各供述調書及び被告人甲野の検察官に対する主文掲記の供述調書三通(なおこの三通のうち昭和五一年六月二日付、同年同月七日付の二通は警察輸送車事件をもその内容とするが、検察官はいずれも西原記者殺害事件のみについての証拠として請求しているものと解される)は、いずれも証拠能力がないからその請求を却下することとして、主文のとおり決定する。

(梨岡輝彦 阿部功 井戸謙一)

別表

第四七回公判において被告人甲野に対し証拠調請求のあった、

同被告人の司法警察員に対する供述調書一覧表

番号

日付

(年・月・日)

枚数

立証趣旨、内容(漢数字は対応する公訴事実番号を表わす)

1

五一・五・二三

2

五・二四

身上、経歴

3

五・二四

二二

4

五・二七

神戸中央タクシー襲撃状況等本件各犯行前後の行動

5

五・二七

神戸まつりにおける行動の概括的説明

6

五・三一

神戸中央タクシー襲撃状況等本件各犯行前後の行動

7

五・三一

8

六・一

9

六・四

一三

二、三

10

五一・六・五

11

六・五

二、三

12

六・五

13

六・六

二六

四、五、六、七、八

14

六・七

15

六・八

神戸中央タクシーの襲撃状況等本件各犯行前後の行動

16

六・九

二、三

17

六・九

神戸まつりにおける自分の行動を友人に話した状況

18

六・一二

一八

二、三

19

六・一四

20

六・一六

身上、経歴

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例