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神戸地方裁判所 昭和53年(ワ)1264号 判決 1982年12月21日

原告 オールスタイル株式会社

被告 会田貿易株式会社

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

一  原告

1  被告は、別紙標章目録記載の標章を付した、別紙商品目録記載の商品を輸入し、譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引渡のために展示し、又は製造したり、右商品に関する包装、容器、広告、定価表、又は取引書類を展示し、又は頒布してはならない。

2  被告は原告に対し、金二五〇〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告は読売新聞及び東京都において発行される繊研新聞に各三回宛、別紙謝罪広告目録記載の文案により、標題及び原被告名には四号活字、本文には六号活字を使用した謝罪広告を掲載せよ。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

5  2につき仮執行宣言

二  被告

主文同旨

第二主張

一  請求原因

1  (原被告の業務等)

原告は各種衣料品の製造販売等を目的とし、肩書住所地に本店を、東京都内に支店を有する資本金一億円の会社であり、被告は婦人服地、婦人既製服の輸入販売等を目的とし、肩書住所地に本店を、大阪市内に支店を、海外に連絡所を有する資本金四五〇〇万円の会社であり、原被告は互いに競業関係に立つものである。

2  (原告の商標権)

原告は左の登録商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。

登録番号 第一〇〇六一四〇号

登録商標 別紙商標目録のとおり

指定商品 第一七類 被服(運動用特殊被服を除く。)、布製身回品(他の類に属するものを除く。)、寝具類(寝台を除く。)

出願日  昭和四五年一〇月二八日

公告日  昭和四七年八月二一日

登録日  昭和四八年三月二九日

3  (本件商標の周知性等)

(一) 原告は昭和四七年五月一七日、フランス共和国法人「ソシエテ・イデ」(通称ドロテビス、以下「ド社」という。)との間に、原告が同社によつて生産された衣料品等のオリジナルモデルの提供を受け、これを我国において再生産した上、「dorothé及び同ジヤクリーヌ・ジヤコブソン(以下両者併わせて「ジヤコブソン夫妻」という。)との間に、略同様の契約(以下右契約をその本質如何に拘らず、便宜「本件合弁契約」という。)を締結した。

(二) ところが、我国において、訴外株式会社甲陽が本件商標の商標権者であつたため、原告は昭和四八年一月、右会社から本件商標を譲り受け、同年三月二九日登録の上、その製造売販する衣料品等に本件商標を付するなどの商業活動の結果、本件商標は昭和五〇年秋頃から同五一年秋頃までに、我国内において広く認識されるに至つた。

4  (被告の標章)

被告は昭和五三年六月一二日、東京都下の品川プリンスホテルにおいて、ド社から輸入した別紙標章目録記載の標章(以下「イ号標章」という。)を付した、衣料品等のコレクシヨン展示会を開催したのをはじめとして、別紙商品目録記載の商品を輸入し、譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引渡のために展示し、又は製造し、右商品に関する包装、容器、広告、定価表及び取引書類を展示し、又は頒布している。

5  (被告の商標権侵害)

イ号標章は本件商標と文字・形態・称呼共に同一ないしは極度に類似するから、被告がイ号標章を右4の態様で使用することは、本件商標を故意又は少くとも過失により侵害するものであり、将来にわたつても侵害する虞れがある。

6  (被告の不正競争)

被告は、原告が本件商標の商標権者であり、かつ、右商標を付した衣料品を製造販売していることを認識しながら、不正競争の目的でイ号標章を右4の態様で使用しているから、業界及び一般大衆・需要者に対し、被告の商品及びその営業を、原告のそれと誤認混同を生じさせている。従つて、被告のイ号標章の使用は不正競争行為にも該当するものであり、将来においても同様の所為を繰り返す虞れがある。

7  (損害賠償等)

(一) 本件商標の使用料は、本件合弁契約代金及び本件商標権取得代金等を考慮すると、昭和五二年度分は金二五一〇万円、同五三年以降本件商標権の存続見込期間である昭和六一年までは毎年右金額から一割宛逓減した額が相当であるので、その期間内における使用料の総額は金一億六二八三万一〇〇〇円となり、原告は同額の損害を被つたことになるから、被告に対し、この内金二五〇〇万円を限度として賠償を求める。なお、原告は、被告の商標権侵害ないし不正競争行為により、昭和五三年七月までに、金七六九万円相当の商品の返品を受け、同額の損害が発生しており、その一〇年間分が金七六九〇万円となることからしても、右損害額の算定は相当である。

(二) 原告は、被告の商標権侵害ないし不正競争行為によつて著しくその信用を害され、金銭賠償のみによつては補填し得ない損害を被つたので、被告に対し、その信用回復措置として別紙謝罪広告目録記載の文案により謝罪広告することを求める。

8  よつて、原告は被告に対し、商標法三六条、三八条、三九条、特許法一〇六条、不正競争防止法一条一項一、二号、一条の二に基き、イ号標章使用の差止と、損害賠償金二五〇〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払並びに謝罪広告を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3(一)の事実中、ド社の商号は否認し、その余の事実は認め、本件合弁契約の本質がジヨイントベンチユアーであることは争う。ド社の正式商号は「イデ・ドロテビス」であり、本件合弁契約の本質は技術導入ないしはライセンス契約である。

同3(二)の事実中、原告が本件商標を訴外株式会社甲陽から譲り受けたことは認め、その余の事実は否認する。原告は本件商標を使用したことはなく、原告が本件合弁契約に基いて製造販売した衣料品等に付した商標は、「dorothé

3  同4の事実中、被告が婦人用洋服、セーター、コート及び布製身回品(以下「本件商品」という。)以外の別紙商品目録記載の商品並びに定価表、取引書類にイ号標章を付したこと、本件商品を製造したこと、昭和五六年四月一日以降もイ号標章を使用していることは否認し、その余の事実は認める。被告は同五四年一〇月輸入分以降、後述のド社との輸入販売総代理店契約を合意解除し、同五六年三月中に本社商品の在庫処分を終え、それ以降本件商品を輸入販売等しておらず、イ号標章も使用していないし、将来にわたつて使用する意図もない。

4  同5の事実中、被告がイ号標章を右3の態様及び方法で使用したことは認め、本件商標との同一性ないし類似性に関する主張は争う。被告はイ号標章を単独ではなく、「e et j, jacobson」との結合標章として使用しているから、本件商標と類似しない。

5  同6、7の事実は否認し、その主張は争う。

三  抗弁(権利の濫用)

仮に、被告のイ号標章の使用が本件商標権を侵害し、或いは不正競争行為に該当するとしても、

1  原告は、本件合弁契約に基き、ド社及びジヤコブソン夫妻から提供されるオリジナルモデルをもとに、そのコピーないしライセンス物を我国で製造し、「dorothéの意思もなく、右商標に代えて「ヴイルビル」の標章により衣料品等の製造販売を行うことを一般に公表している。

2  ところで、「dorothéであるE・ジヤコブソンが一九六五年六月一日、フランス共和国において登録した商標であり、本件商標出願当時には既にジヤコブソン夫妻の創作する婦人服のパリモードフアツシヨンを表象するものとして世界的に著名なものであつた。しかるに、右商標が未だ我国において登録されていないことを奇貨として、訴外株式会社甲陽が本件商標として出願し、これを原告が・ジヤコブソンの承諾もなく譲り受けて登録したものである。かかる所為は国際的信義に悖るものである。

3  被告は、原告の本件合弁契約が昭和五三年三月三一日をもつて終了したのを機会に、ド社の製造した真正商品を我国で独占的に輸入販売することを目的として、同年四月一日、同社との間に輸入販売総代理店契約(以下「本件代理店契約」という。)を締結し、同年九月からイ号標章を表示した襟ネーム、下げ札付きの本件商品を輸入販売し、同社の指示によつて被告が製作した包装袋にイ号標章を表示し、広告に使用したものである。

4  原告は、本件合弁契約が更新できないまま終了したことの腹いせに、国際的信義に悖り、かつ、一度も使用したこともなく、使用する意図もない本件商標権に基き、原告の真正商品の輸入販売等を妨害するため本訴請求に及んだものであり、かかる請求は権利の濫用である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実中、原告が本件合弁契約に基き、ド社らの提供したオリジナルモデルをもとに「dorothé原告が右契約終了後には右商標を使用し得ない旨の主張は争う。

2  同2の事実中、原告が被告主張のとおり本件商標を譲り受けて登録したことは認め、その余の事実は否認する。仮に、E・ジヤコブソンがフランス共和国において「dorothé件商標を出願したことは当然の権利行使であり、何ら国際的信義に悖る点も存しない。更に、原告が本件商標を右訴外会社から譲り受けたのは、「dorothé

3  同3の事実中、被告がド社との間に、本件代理店契約を締結し、同社から輸入した商品にイ号標章を付して使用していたことは認める。

4  同4の事実は否認し、その主張は争う。原告の本訴請求は、本件商標権に基く正当な権利行使であるのに対し、被告は本件合弁契約存続中から、あらゆる不正手段を構じて原告とジヤコブソン夫妻の関係を疎外し、原告が右契約を更新することを不可能ならしめた上、ド社との本件代理店契約の締結に成功し、イ号標章を不法に使用しているものであるから、その違法性・反社会性は顕著であり、本訴請求が権利の濫用にわたることはない。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因1(原被告の業務等)の事実は当事者間に争いがない。

二  まず、原告の商標権侵害の主張について判断する。

1  原告が指定商品を第一七類とする本件商標の商標権者であること、被告がイ号標章を付した本件商品をド社から輸入した上、昭和五三年六月、東京都下の品川プリンスホテルにおいてコレクシヨン展示会を開催したのをはじめ、以降同五六年三月末まで国内で譲渡し、引き渡し、これらのため展示したこと(以下「販売等」という。)、本件商品の包装袋、広告にも右標章を表示したことは当事者間に争いがない。

原告は、被告が、イ号標章を本件商品以外の別紙商品目録記載の商品及び定価表、取引書類にも使用したこと、本件商品を製造したこと、昭和五六年四月一日以降もイ号標章を使用していることを主張するが、これを認めるに足る証拠はない。却つて、被告代表者本人尋問の結果によると、被告は後示のド社との本件代理店契約を昭和五四年一〇月輸入分以降合意解除し、同五六年三月末までに在庫商品も販売し尽し、それ以降ド社からイ号標章を付した本件商品を輸入していないし、今後も輸入する予定はなく、従つて、本件商品、包装袋、広告にイ号標章を使用する虞れもないことが認められる。

2  そこで、イ号標章を本件商標と対比すると、外観において、アルフアベツトの大文字と小文字の差異があるほか、第一文字と第二文字との間に「o」が入り、揚音符が第二番目ではなく、第一番目の「e」に付されている以外同一であるから類似するものというべきであり、称呼においても両者共に「ドロテビス」の称呼が生ずるから同一のものであり、従つて、両者が全体として類似することは明らかである。そして、本件商品はいずれも第一七類の指定商品に属することが明らかである。

3  ところで、被告はイ号標章の使用を自認しながらも、イ号標章を単独で使用することはなく、「e et j, jacobson」との結合標章として使用しているから、本件商標と類似しないと主張する。

成立に争いのない甲第四号証の一・二、同第一六号証、原告本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる甲第六号証の二、同第一七号証の一・二、被告代表者本人尋問の結果によると、被告は本件商品をド社によつて襟札と下げ札にイ号標章のみを表示した状態で同社から輸入し、これを顧客に販売等していたこと、被告は右商品を顧客に引き渡すに際し、同社の指示により、赤地に白抜きで大きく「e et j, jacobson」とジヤコブソン夫妻の名の頭文字と姓を横書し、その下に約四分の一の大きさでイ号標章を表示した合成樹脂製の包装袋を使用し、また同様の仕様による広告を行つていることが認められ、右認定に反する証拠はない。

右認定事実からすると、本件商品にはイ号標章のみが単独で表示されているとみるのが相当であり、しかも、イ号標章と「e et j, jacobson」とが一連のものとして使用される場合においても、後者は人名、前者は後示の意味を持つ造語で、上下に分離して横書されており、外観、発音、観念も分離しており、不可分一体に表示された結合標章とみることは困難である。従つて、これらは別個に本件商標との類似性が判断されるべきであり、ジヤコブソン夫妻の姓名が表示されていることの故をもつて、本件商標との類似性を否定することはできず、被告がイ号標章と「e et j, jacobson」とを一連のものとして表示する場合においても、イ号標章部分は本件商標と類似する。

三  次に、原告の不正競争の主張について判断する。

本件商標が、不正競争防止法施行の地域内において広く認識された商標であると認めるに足る証拠はなく、かえつて、後示の如く、原告はもとより何人も本件商標を一度も使用したことすらなく、従つて、右地域内において全く認識される余地はなかつたものであるから、同法一条一項一、二号の周知性の要件を欠き、その余の点を判断するまでもなく、この点に関する原告の主張については理由がないものといわなければならない。

四  そこで、被告の権利濫用の主張について判断する。

1  我国の商標権者は、外国においてその商標と同一又は類似する標章につき商標権を有する者から発出した該標章を付した商品が、我国内に輸入された場合、我国の商標権を侵害するものとして、その使用の差止等を求めうることは属地主義及び商標権独立の原則(工業所有権保護に関するパリ条約六条三項)から明らかである。

2  ところで、本件では以下に判示する特別の事情が存在する。

(一)  「dorothé

成立に争いのない乙第七、八号証、被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、ジヤコブソン夫妻はフランス共和国パリ市を活動の本拠とする服飾デザイナーであり、一九五八年から同市において「dorothé九六二年に同夫妻が創作する婦人服飾関係品を製造販売することを目的とするド社を設立し、自ら代表者に就任したが、右会社の商号を「イデ・ドロテビス」としたこと(従つて、ドロテビスは右会社の正式商号であつて、原告主張の如き通称ではない。)更に、E・ジヤコブソンは一九六五年(昭和四〇年)六月一四日、同国(フランス)において、婦人衣類、身回品、宝石、香水等の商品につき「dorothé目の入口を意味するフランス語の「bis」を後尾に付けたものであり、それ自体殊更の意味を持つものではない造語的商標であることがそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  本件商標について

本件商標は、訴外株式会社甲陽が昭和四五年一〇月二八日出願し、同四七年八月二一日公告され、原告が同四八年一月右訴外会社から譲り受け、同年三月二九日登録されたものであることは当事者間に争いがない。

ところで、前示の「dorothéれが造語的商標であり、偶々日本人がこれと類似の本件商標を独自に考案する可能性を認めることは極めて困難であること(これを認める証拠もない。)、しかも、本件商標出願当時既に「dorothé認せざるを得ない。

(三)  原告の本件商標及び「dorothé

(1) 原告が昭和四七年五月一七日、ド社との間に、原告が同社によつて生産された衣料品等のオリジナルモデルの提供を受け、これを日本国内において再生産した上、「dorothé同様の本件合弁契約を締結したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一九、二〇号証によると本件合弁契約は、更に、原告はド社或いはジヤコブソン夫妻から提供を受けたオリジナルモデルが持つているスタイル、仕上、色等の特性を留めるよう努力すること(但し、日本市場に適合させるため若干の修正・変形は可能。)、原告はオリジナルモデルの再生産権に加えて「dorothé

(2) 前掲甲第一九、二〇号証、成立に争いのない甲第一八号証、乙第四号証、原、被告各代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、原告は本件合弁契約締結の前後頃、株式会社甲陽が本件商標を出願していることを知り、右契約に基き生産した商品につき、「dorothéが本件商標を譲り受けたのは、専ら本件合弁契約に基き「dorothé和五三年三月三一日に本件合弁契約は期間満了により終了したこと、その後原告はそれまでに生産した在庫品を整理のため販売したのみで、間もなく同年六月には右商標に代えて「ヴイルビル」標章を使用することを取引先等に文書で伝えたり、その頃右標章を付した商品のコレクシヨン展示会を開催するなどして、右以降も本件商標を使用する意図は全くなかつたことがそれぞれ認められ、右認定に反する原告代表者本人の供述部分は措信し難く、これを左右する証拠はない。

(四)  被告のイ号標章(「dorothé

被告が本件合弁契約の終了を契機として、昭和五三年四月一日、ド社との間に、同社の製造した本件商品を国内で独占的に輸入販売等するため、本件代理店契約を締結したことは当事者間に争いがなく、同年六月以降イ号標章を使用していることは前示のとおりである。

従つて、被告のイ号標章は、E・ジヤコブソンがフランス共和国において商標登録し、ド社が使用権を有する世界的に著名な「dorothé

3  右2で認定した各事実から以下検討する。

世界的に著名な「dorothéて登録されていないことを奇貨として、これを剽窃的に出願して登録された以上、その登録商標、即ち本件商標が権利として有効に存続すること自体は、前示の属地主義及び商標権独立の原則からしてやむを得ないところであるが、国際的な商標秩序維持の公正な理念からすると決して好ましいものではなく、就中、本件商標権者が、「dorothé適合性を判断し、場合によつてはこれを制限することもなんら属地主義及び商標権独立の原則に反するものではないと解する。

ところで、原告は本件商標権を自ら出願したものではなく、本件合弁契約に基き、「dorothéないものである。従つて、原告が本件合弁契約に基き、「dorothéいしオリジナル商品の優先的輸入販売に関する諸権利や「dorothé bis」商標がジヤコブソン夫妻の創作するパリモードフアツシヨンを表象するものとして世界的に著名なものであり、我国内においても好評を博していたのであるからして、我国で広く認識されている「dorothé

4  なお、原告は、被告が不正手段を構じて原告とジヤコブソン夫妻の関係を疎外し、本件合弁契約の更新を不可能ならしめた上、ド社との間の本件代理店契約を締結したと主張するが、これを裏付ける的確な証拠はない。

5  以上検討した諸点及び本件に表れた諸事情を総合するならば、被告の使用するイ号標章は本件商標と類似し、外形的には本件商標権を侵害するといい得るものの、原告が被告に対し、本件商標権に基き、イ号標章の使用の差止、損害賠償及び謝罪広告を求める本訴請求は、権利の社会性に反する濫用行為というべきである。

五  以上の次第であるから、原告の本訴請求はいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 永岡正毅 渡部雄策 大西嘉彦)

商品目録、謝罪広告目録<省略>

商標目録

標章目録

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