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神戸地方裁判所 昭和56年(ワ)1410号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原告は、主文一・二項同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として左のとおり主張し、<証拠>を援用した。

1 原告は「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基づく許可を受けた我国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽著作物につき各著作権者より著作権乃至その支分権(演奏権、複製権等)の移転を受けてこれを管理し、我国内における放送事業者をはじめレコード、映画、出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽著作物使用に対して使用許諾を与え、音楽著作物の適法な利用を円滑簡易ならしめると共に、右許諾の対価として著作物使用料規程に定める使用料をこれらの使用者から徴収し、これを内外の著作権者に分配することを主たる業となしている。そして原告は、現に別添楽曲リスト、同Ⅱおよび同Ⅲ各記載の音楽著作物(以下これらを「管理著作物」という。)について、それぞれ著作権者より著作権の信託的譲渡を受けてこれを管理している。

2 被告株式会社蕗(以下被告会社という。)はカフェー及び飲食店営業を目的として設立された会社であるが、その設立日の昭和四八年一月一七日頃神戸市生田区下山手通二丁目三番地において「クラブ蕗」を開業し、爾来引続き昭和五四年九月末に至るまでの間、毎日右店内でその営業時間中、原告の許諾を受けないで管理著作物である音楽を演奏しこれを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害した。更に被告会社は、その後右店舗を同市中央区下山手通二丁目一一番一号KSMビル六階に移転し、店名を「メンバーズクラブ蕗」と変え昭和五四年一〇月二九日から営業を再開し、爾来引続き今日に至るまでの間、毎日右店内でその営業時間中、原告の許諾を受けないで管理著作物である音楽を演奏しこれを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害している。

3 被告会社の前記各店舗においては、店内の設備によつて客に音楽の演奏を聞かせているものであり、その際使用する音楽は、クラブ等社交場特有の雰囲気や客の好み、その時々の世間の流行によつて選ばれる歌謡曲、ジャズ、シャンソンなどの軽音楽なので殆んどすべての曲目は管理著作物に属している。しかして、被告は営利を目的としてこれらの軽音楽を営業時間中随時演奏して店内に顧客を誘引するにふさわしい快適な雰囲気を構成しその営業を維持してきたものであつて、音楽著作物の利用は営業の不可欠的要素である。それ故右事業の経営者たる被告会社としては、音楽著作物の利用に際し他人の著作権を侵害することがないよう相当の調査をなすべき義務があり、管理著作物を使用するについては原告の使用許諾を受け且つ原告が著作物使用料規程によつて決定した相当の使用料を支払う義務があるにもかかわらず、その開業以来今日に至るまで何らの相当な措置をとることなく無断で管理著作物を使用していたものである。従つて、被告会社は故意又は過失により、前記各店舗において営業した全期間を通じ、すなわち「クラブ蕗」において昭和四八年一月から昭和五四年九月までの八〇か月間及び「メンバーズクラブ蕗」において昭和五四年一〇月から今日までの二六か月間にわたり、継続して原告の著作権を侵害したものである。

4  原告は、被告会社の右各著作権侵害行為により、管理著作物の使用許諾の対価として徴収し得る使用料に相当する得べかりし利益を喪失し、これと同額の損害を蒙つたのであるが、その損害額の算定は次のとおりである。

(一)  原告は「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」第三条第一項に基づき、昭和一五年二月二九日主務大臣の認可を受けて「著作物使用料規程」を定め、その内容はその後数次の変更を経たが、同規程のうち演奏の使用料の規定に関しては、昭和三五年五月三一日の認可により料率が変更され、更に演奏の内、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、ダンスホール、喫茶店、ホテル等の社交場における演奏については演奏の使用料を減額する規定が新設され、これらの規定の内容はその後昭和四六年四月一日の認可による表現整理のための変更を経て現行の規程に踏襲されている。現行使用料規程によると、管理著作物の演奏の内、軽音楽一曲一回の演奏会形式による演奏の使用料は、定員、平均入場料、使用時間によつて類別区分された料金表により別表(一)のとおり定められており、これをクラブ等の社交場において使用する場合は、右演奏会形式による演奏の使用料の一〇〇分の五〇すなわち五割の範囲内で使用状況等を参酌して具体的な使用料を決定することとされている。そして原告においては、使用状況等の参酌の方法として、①定員五〇〇名未満のものを更に一〇〇名単位で段階的に区分し、各社交場の客席場に応じて逓減することとしているほか、②平均入場料については、入場料金を明示しないクラブ等の場合は、当該社交場の遊興飲食料金中の一セット料金(飲食税、サービス料を含む)又は同相当額に三〇%を乗じた金額(テーブルチャージ、席料がある場合は更にその料金を加算した額)を入場料とし、③使用時間については、一曲一回の演奏が五分以上一〇分未満の場合でも原則としてこれを五分未満として取扱うこととしている。

(二)  そして一方、被告会社の前記「クラブ蕗」及び「メンバーズクラブ蕗」における各著作権侵害行為が開始された時期以降今日に至るまでの期間を通じ使用料算定上の参酌基準となる著作物使用状況は、右各店舗とも定員五〇〇名未満、客席数一〇〇名未満、平均入場料金三五〇〇円以上金四〇〇〇円未満であり、管理著作物の一日平均の演奏曲数三二曲、一か月平均の営業日数は二五日である。

(三)  そこで、前記使用料規程を被告会社の右条件下における管理著作物の使用の場合に適用してその使用料を算出すると、別表(二)の計算表に記載するとおりであり、すなわち、一曲当りの使用料は金一一〇円、一日三二曲の使用料は金三五二〇円、一か月(平均二五日)の使用料は金八万八〇〇〇円となる。したがつて、被告会社の前記各著作権侵害に基づく損害額は、右の著作物使用料額を基準とし、一か月当りの使用料額に営業期間の月数を乗じて算定すべきものであり、それによれば、「クラブ蕗」の前示一か月の使用料金八万八〇〇〇円に同店で営業した月数八〇か月を乗じた金七〇四万円と、「メンバーズクラブ蕗」の前示一か月の使用料金八万八〇〇〇円に同店で営業した月数二六か月を乗じた金二二八万八〇〇〇円との合計金九三二万八〇〇〇円が使用料相当額の損害金である。それ故被告会社は原告に対し右損害金額を賠償する義務がある。

(四) しかして、被告清水よし子および被告清水静子は、いずれも右被告会社の取締役および代表取締役としてその業務執行に関与し、被告会社の前記著作権侵害行為を遂行した者であるから、被告会社と連帯して、原告の蒙つた前示損害を賠償すべき責任がある。

5 よつて、原告は被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償として、或いは不当利得金として連帯して金九三二万八〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二被告らはいずれも公示送達による呼出を受けたが、不出頭・無答弁である。

三<証拠>によると、請求原因事実をすべて認めることができる。右事実によると原告の不法行為に基く損害賠償を求める本訴請求は正当であるからこれを認容し、民事訴訟法八九条、九三条一項本文、一九六条を適用して主文のとおり判決する。(渡部雄策)

別表(一)

類別

定員

使用時間

5分未満

5分以上10分未満

10分以上10分迄

を超える毎に

平均

入場料

第1類

500名

未満

100円未満

200円

400円

400円

200円〃

300円

600円

600円

500円〃

400円

800円

800円

1,000円〃

500円

1,000円

1,000円

1,500円〃

600円

1,200円

1,200円

2,000円〃

700円

1,400円

1,400円

2,500円〃

800円

1,600円

1,600円

3,000円〃

900円

1,800円

1,800円

3,500円〃

1,000円

2,000円

2,000円

4,000円〃

1,100円

2,200円

2,200円

4,500円〃

1,200円

2,400円

2,400円

5,000円〃

1,300円

2,600円

2,600円

5,500円〃

1,400円

2,800円

2,800円

6,000円〃

1,500円

3,000円

3,000円

6,500円〃

1,600円

3,200円

3,200円

7,000円〃

1,700円

3,400円

3,400円

7,500円〃

1,800円

3,600円

3,600円

8,000円〃

1,900円

3,800円

3,800円

第2類

1,000名未満

第3類

2,000名未満

第4類

2,000名以上

(註) 平均入場料とは各等級別入場料(入場税を含む。)の算術平均をいう。

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