大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和57年(わ)534号 判決 1982年9月24日

裁判所書記官

奥山治夫

本店の所在地

兵庫県姫路市飾磨区今在家一、〇七三番地

毛利木材株式会社

右代表者代表取締役

毛利一夫

本籍

岐阜県本巣郡糸貫町郡府九番地

住居

兵庫県姫路市飾磨区英賀清水町三丁目五番地

会社役員

毛利一夫

大正一四年一二月二六日生

右の両名に対する法人税法違反被告事件について当裁判所は検察官馬場康吏出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。

主文

被告毛利木材株式会社を罰金一、四〇〇万円に

被告人毛利一夫を懲役八月に

処する。

被告人毛利一夫に対し本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告毛利木材株式会社は兵庫県姫路市飾磨区今在家一、〇七三番地に本店を置き木材の製造販売業を営むもの、被告人毛利一夫は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人毛利は、被告法人の業務に関し法人税を免れようと企て

第一  昭和五三年七月一日から同五四年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が七、二四四万一、九九八円で、これに対する法人税額が二、七〇五万八、九〇〇円(別紙(一)の修正損益計算書及び同(二)の脱税額計算書参照)であるのに、公表経理上、架空の仕入を計上し、たな卸の一部を除外するなどして所得を秘匿した上、同五四年八月三一日、同市北条二五〇番地所在所轄姫路税務署において、同税務署長に対し右事業年度の所得金額が一、九六〇万四一二円で、これに対する法人税額が五九二万二、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税二、一一三万六、四〇〇円を免れ、

第二  同五四年七月一日から同五五年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が一億二一六万四、一五二円で、これに対する法人税額が三、八七九万一、六〇〇円(別紙(三)の修正損益計算書及び同(四)の脱税額計算書参照)であるのに、前同様の方法により所得を秘匿した上、同五五年八月三〇日、前記姫路税務署において、同税務署長に対し右事業年度の所得金額が四、一五七万二、七七〇円で、これに対する法人税額が一、四五五万四、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税二、四二三万六、八〇〇円を免れ、

第三  同五五年七月一日から同五六年六月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が六、七四三万一、〇七九円で、これに対する法人税額が二、六二三万二、四〇〇円(別紙(五)の修正損益計算書及び同(六)の脱税額計算書参照)であるのに、前同様の方法により所得を秘匿した上、同五六年八月三一日、前記姫路税務署において、同税務署長に対し右事業年度の所得金額が三、八八四万七、〇七五円で、これに対する法人税額が一、四三二万三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一、一九一万二、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告会社代表取締役兼被告人(以下被告人という)の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通及び収税官吏に対する質問てん末書一二通

一  被告人作成の昭和五七年一月一五日付確認書

一  収税官吏作成の脱税額計算書説明資料(自同五三年七月一日至同五六年六月三〇日)

一  恵美子こと毛利エミ子の検察検察官に対する供述調書及び収税官吏(同五六年一〇月二六日付、同年一一月一四日付、同月二三日付、同年二月五日付、同年三月八日付、同年七月二〇日付)に対する質問てん末書

一  塚本十三(二通)、毛利幸寛、掛橋昇(同年一月二一日付)、高橋八郎、難波弘(同月一六日付)の収税官吏に対する各質問てん末書

一  姫路税務署長作成の同年三月三〇日付証明書

一  収税官吏作成の同年二月三日付P/L元帳査察官調査書

一  収税官吏作成の同年一月二二日付架空仕入調査表((株)神崎商店依頼分)査察官調査書

一  収税官吏作成の同月一六日付架空仕入検討表(仮払分)査察官調査書

一  収税官吏作成の同月二七日付たな卸調査表査察官調査書三通

一  収税官吏作成の同月二二日付たな卸調査表(原木預け分)査察官調査書

一  収税官吏作成の同月七日付査察官調査書二通

一  収税官吏作成の同月二二日付仮名預金残高及び受取利息調べ査察官調査書

一  収税官吏作成の同月二五日付未払税金査察官調査書

一  収税官吏作成の同月二八日付簿外経費査察官調査書

一  収税官吏作成の同五六年一〇月二六日付現金預金有価証券等現在高確認書

一  収税官吏作成の同日付たな卸商品等在庫高確認書

一  国税査察官調査報告書類綴(記録第二五号)

判示冒頭事実につき

一  登記官作成の商業登記簿謄本

判示第一事実につき

一  恵美子こと毛利エミ子の収税官吏(同五七年一月一九日付)に対する質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(自同五三年七月一日至同五四年六月三〇日)

一  法人税確定申告書謄本(自同五三年七月一日至同五四年六月三〇日)

判事第一、第二事実につき

一  収税官吏作成の同五七年一月一六日付架空仕入査察官調査書

判示第一、第三事実につき

一  難波弘の収税官吏(同年二月二二日付)に対する質問てん末書

判示第二事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(自同五四年七月一日至同五五年六月三〇日)

一  法人税確定申告書謄本(自同五四年七月一日至同五五年六月三〇日)

判示第二、第三事実につき

一  被告人作成の同年三月四日付確認書

一  伊藤勝(三通)、井上政一の収税官吏に対する各質問てん末書

一  金沢国昭作成の同月八日付確認書

一  収税官吏作成の同年一月七日付架空仕入(神崎商店分)査察官調査書

一  収税官吏作成の同年三月一〇日付神崎商店架空売上査察官調査書

判事第三事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(自同五五年七月一日至同五六年六月三〇日)

一  法人税確定申告書謄本(自同五五年七月一日至同五六年六月三〇日)

一  収税官吏作成の同五七年一月一一日付広畑海運(株)に対する売上査察官調査書

(法令の適用)

被告会社及び被告人の判示第一及び第二の各所為はいずれも昭和五六年法律五四号附則五条による改正前の法人税法一五九条(被告会社についてはさらに同法一六四条一項)に、判示第三の各所為はいずれも法人税法一五九条(被告会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人の判示第一ないし第三の各罪につき所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告会社及び被告人につき以上の各罪はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各所定の罰金を合算した金額の範囲内で、被告会社を罰金一、四〇〇万円に処し、被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役八月に処し、被告人に対し情状により同法二五条一項を適用して本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名に連帯して負担させることとする。

(量刑事由)

本件は被告会社の代表取締役をしている被告人が被告会社の業務に関し三年間の事業年度にわたり不正な方法で所得を秘匿して合計五、七二八万余円の法人税をほ脱した事案であって、ほ税額は高額であるとともに、そのほ脱率も高く、この種事案が頻発すると、国民の間に税の不公平をもたらし、かつ納税義務者の納税意欲を損うものであること等を考慮するとき、被告会社及び被告人の刑事責任はまことに重いものといわなければならない。

しかしながら、犯行の動機に製品納入先の関係者等からの高額なリベートの要求に応ずるための資金を捻出せねばならない事情も一因であったことなどの事情も存すること、犯行の態様が比較的単純なものであること、本件査察開始後、本税、重加算税、延滞税、地方税を完納していること及び被告人には罰金刑の前科があるのみで、本件につき反省悔悟していること等の有利な諸事情も認められるので、これらを総合考慮し、被告会社及び被告人に対し各主文のとおり量刑したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予することとした。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 重村和男)

別紙(一)

修正損益計算書

期間

自昭和53年7月1日

至昭和54年6月30日

<省略>

別紙(二)

脱税額計算書

期間

自昭和53年7月1日

至昭和54年6月30日

<省略>

(注)税額の計算については次頁のとおり(編者注、登載省略)

別紙(三)

修正損益計算書

自昭和54年7月1日

至昭和55年6月30日

<省略>

別紙(四)

脱税額計算書

期間

自昭和54年7月1日

至昭和55年6月30日

<省略>

(注)税額の計算については次頁のとおり(編者注 登載省略)

別紙(五)

修正損益計算書

自昭和55年7月1日

至昭和56年6月30日

<省略>

別紙(六)

脱税額計算書

期間

自昭和55年7月1日

至昭和56年6月30日

<省略>

(注)税額の計算については次頁のとおり(編者注 登載省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例