神戸地方裁判所 昭和59年(ヨ)731号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
本件は、西宮市浜甲子園付近の住民と甲子園浜でウインドサーフィンを行なうサーファーらとの間で海浜の利用等をめぐつて紛争が生じていたが、右浜に通ずる、通称甲子園浜防潮堤空地(国有)の管理者である兵庫県尼崎港管理事務所が緑化工事の一環として、右土地の周辺部に防護柵を張り廻らし、内部への侵入通行を禁止する計画を樹立し、その実施方を準備した。
これに対し、右土地に隣接した個所にある建物で、ウインドサーフィン関係の営業等を営んでいる債権者らは、国を債務者として、右土地について通行使用借権、通行地役権があり、又は国有地に対する自由使用権を有するから、これらの権利に基づき妨害排除請求権があるとして、右柵を設置して債権者らの右土地への通行を妨害することを禁止するとの仮処分を申請したものである。
【判旨】
三更に、債権者らは、国有地に対する自由使用に基づき債務者に対して本件土地の妨害排除をする請求権がある、と主張している。
疎明によると、(一)本件土地は、甲子園浜の防潮堤自体ではなく、その後方の山側に位置する幅員約五メートルの細長い帯状の未舗装平坦低地であつて、防潮堤の後背地を成し、後方には民家が立ち並び、格別の道路指定はないものの、従前から特に人車の進入通行を禁止・制限する措置(施設の設営など。但し、後記の勧告は除く。)を講じたわけではなく、空地として、一般人が自由に出入りし、車両の駐車等にも利用されてきたこと、(二)また、本件土地は、海岸法所定の海岸保全地域に属し、海水の侵入及び海水による侵食等による海岸の損傷を防止するため利用されることを目的とする土地であり、本来は海岸保全施設を設置して海岸の保全に活用すべきであるが、平常は前記防潮堤だけでも、海岸保全の使命を充分果せ得るので、所轄の尼崎港事務所は、本件土地を前記のとおり空地のままで管理して来たこと、(三)しかし、近年、本件土地を無断で花壇等に利用し、更には、ウインド・サーフィンによる海浜の利用者が多くなつて、サーフィン用ボード等の保管業者が増加し、本件土地に保管庫を勝手に設置し、更には、前記防潮堤法面に無断で梯子を仮設し、本件土地への不法駐車も多くなる等、環境の保全が十全でなくなつて来たので、前記尼崎港管理事務所は、本件土地の保存管理を適正にするため、将来は緑地帯にする予定で、取り敢えず前記防潮堤法肩及び山側民家敷地からそれぞれ約0.6メートル離して本件土地上に高さ約1.5メートルの防護柵を二条の線状に長く張り廻らし、その内部への立入りを禁じ、もつて、管理を厳重にする計画を樹立し、目下早急に実施方を準備中であること、(四)なお、前記尼崎港管理事務所は、かねて前記の不法工作物の撤去及び不法駐車の除去をしばしば勧告してきたが、その効全くなく、一方、地元住民からも環境整備のため厳正な管理を実行するよう強く要請されていたこと、以上の事実が明らかである。
右事実によれば、本件土地は、海岸保全地域内にあつて、海岸防護のため所轄の尼崎港管理事務所の管理下にある用地であるが、当面は海岸保全施設を設営して管理する要はなかつたので、右管理事務所は、空地のまま管理して来たものであり、その限りで一般人の通行等も可能であつたというにすぎず、右土地が道路等特別の用益に充て一般人の自由通行を明確に排他的に承認されていたものでは全くなく、もちろん、そのようなことは、本件土地本来の利用目的からいつても制度上到底あり得ないところである。
従つて、債権者らを含む一般人が現在行つている右土地の利用は、その適否・当否を別として、土地管理の現況からくる単純な反射的利益の享受にすぎないものというべく、自由使用権を認めたものということはできないから、これと前提を異にする債権者らの前記主張は、採用することができない。
四すると、債権者らには本件仮処分を求める被保全権利はないというべきであるから、債権者らの本件申立は、保全の必要性について判断するまでもなく、理由がないので却下す<る。>
(砂山一郎)