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神戸地方裁判所 昭和63年(ワ)979号 判決 1990年9月06日

原告

鯉田孝

被告

木下義弘

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金四三四万三八九一円及びこれに対する昭和六〇年六月二八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その三を被告らの負担とし、その余は原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自金五七八万九四五七円及びこれに対する昭和六〇年六月二八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 発生日時 昭和六〇年六月二八日午前一〇時三五分ころ

(二) 発生場所 神戸市中央区若菜通六丁目五番先交差点(市道山手線幹線上)

(以下「本件交差点」という。)

(三) 加害車両 普通乗用自動車(以下「加害車」という。)

右運転者 被告木下義弘(以下「被告木下」という。)

(四) 被害車両 普通乗用自動車(以下「被害車」という。)

右運転車 原告

(五) 事故態様

東行き三車線車道の第一車線を東進していた加害車が、本件交差点を信号に従い右折進行したところ、折から西行き三車線車道の第三車線を対向西進してきた被害車をして加害車の左側面前部に衝突させるとともに、右衝突の反動で被害車をその左前方に約三メートル移動させ、折から右西行き車道の第二車線を対向西進して本件交差点に進入してきた大北和樹運転の普通乗用自動車(以下「大北車」という。)をして、その前部を被害車左側面後部に衝突するのを余儀無くさせたもの。

2  責任原因

(一) 被告木下は、加害車を運転して東行き三車線車道の第一車線を東進し、本件交差点を信号に従い右折進行するに当たり、同交差点東側の中央分離帯には植え込みが植栽されていて、西行き車道を対向西進してくる車両の有無を見通すことができなかつたのであるから、右西行き車道に進出する直前で一時停止し、対向西進車両の有無とその安全を確認して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、右西行き車道の直前で一時停止せず、対向西進車両の有無を確認しないまま漫然と時速約一五キロメートルで右折進行した過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条により、原告の被つた後記損害を賠償すべき責任がある。

(二) 被告神栄タクシー株式会社(以下「被告会社」という。)は、加害車を所有し、かつ、被告木下は、被告会社の従業員であり、本件事故当時、被告会社のタクシー営業として加害車を運転していたものであるところ、本件事故は、被告木下が被告会社の事業を執行するに当たり、被告木下の不法行為によつて惹起されたものであるから、被告会社は、自賠法三条及び民法七一五条により、原告の被つた後記損害を賠償すべき責任がある。

3  原告の受傷、治療経過及び後遺障害

(一) 傷病名

頭部外傷Ⅰ型、腰部挫傷、頸部捻挫、左膝打撲挫傷

(二) 治療期間及び医院

(1) 入院 春日記念病院

昭和六〇年六月二八日から同年八月二日まで(三六日間)

(2) 通院 同病院

昭和六〇年八月三日から昭和六一年一〇月二一日まで(実通院日数一三七日)

(3) なお、鞭打ち症による調整衰弱の治療のため林眼科医院に通院した。

(三) 後遺障害

(1) 症状固定日 昭和六一年一〇月二一日

(2) 自賠責保険後遺障害等級一四級の認定を受けた。

4  損害

(一) 治療費 金一八四万七二八〇円

春日記念病院における治療実費である。

(二) 付添費 金七万円

付添看護についての医師の証明はないが、入院当初の一四日間の安静期間については、どうしても添付人が必要であつたので、妻と妹に付き添つてもらつたものであり、右付添費として一日当たり金五〇〇〇円が相当である。

(三) 入院雑費 金四万三二〇〇円

入院期間中の三六日につき一日当たり金一二〇〇円が相当である。

(四) 通院交通費 金四万六五八〇円

春日記念病院への実通院日数一三七日間につき、一日当たり金三四〇円の交通費(神戸市営地下鉄上沢・新神戸駅間の往復料金)を要した。

(五) 休業損害 金四八一万一〇六八円

原告は、大学卒の一級建築士で、昭和五三年九月から鯉田一級建築士事務所を経営しており、本件事故前の収入は年間金五七二万円を下回らないところ、本件事故により、事故発生日から昭和六一年三月末日までの二七七日間はほとんど稼働することができず、その後症状固定までの実通院日数は三〇日であるから、本件事故による原告の休業損害は、合計三〇七日間につき右年収額を基礎にこれを算出すると金四八一万一〇六八円となる。

(六) 逸失利益 金七八万一〇七六円

原告の後遺障害は自賠責保険後遺障害等級一四級に該当するので、その労働能力喪失率を五パーセント、右喪失期間を三年間とすると、原告の後遺障害による逸失利益は金七八万一〇七六円(五七二万円×〇・〇五×二・七三一〇=七八万一〇七六円)となる。

(七) 物損 金三九万三〇〇〇円

被害車は、本件事故により破損(全損)して使用不能となつたところ、被害車は、昭和五六年二月初年度登録の小型乗用自動車(ホンダシビック、カーステレオ及びクーラー装備)であり、本件事故当時における価格は金三九万三〇〇〇円を下回らない。

(八) 過失相殺一割

右(一)ないし(七)の合計額金一〇二七万二二〇四円から一割を減ずると金九二四万四九八三円となる。

(九) 損害のてん補 金三九〇万円

原告は、自賠責保険から金三九〇万円の支払いを受けたので、これを右(八)から控除すると、その残額は金五三四万四九八三円となる。

(十) 弁護士費用 金五〇万円

以上合計金五八四万四九八三円

5  よつて、原告は、被告ら各自に対し、右損害金五八四万四九八三円の内金五七八万九四五七円及びこれに対する本件事故発生日である昭和六〇年六月二八日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する被告らの認否及び反論

1  請求原因1及び2の事実はいずれも認める。

2  同3の事実はいずれも争う。

3(一)  同4(一)は争う。

(二)  同4(二)は争う。付添の必要はまつたく存しないものであり、損害とは認められない。

(三)  同4(三)は争う。認められるとしても、一日当たり金八〇〇円が相当である。

(四)  同4(四)は争う。

(五)  同4(五)は争う。原告の主張する基礎収入額は、その金額自体のみならず、必要経費を控除していない点で疑問であり、むしろ、確定申告書添付の昭和五九年分収支内訳書記載の所得金額である金二四五万〇一六二円を基礎収入とすべきである。

(六)  同4(六)は争う。原告は、症状固定以前から仕事に復帰しており、相当程度の収入を得ていくことは明らかであつて、少なくとも本件事故前よりも現実に収入が減少したものとは認められないから、後遺障害による逸失利益は損害として認め難い。

(七)  同4(七)ないし(十)はいずれも争う。

三  被告らの抗弁(過失相殺)

1  原告は、本件事故現場である本件交差点及びその周辺において道路工事がなされているのを十分に知つており、また知り得べきであつたから、本件交差点に接近するに当たつては、東行き車道から交差点を右折してくる車両が、通常とは異なり、東行き車道の最も北側の車線から右折してくることを予想し、十分に前方の安全を確認して進行すべきであつたのに、これを怠つた。

2  さらに、原告は、右折や追越しの必要がなかつたのに、西行き三車線車道のうち最も危険な右側の第三車線を、時速五五キロメートル以上の速度で走行したものであり、原告が、制限速度を遵守し、より安全な第二車線もしくは第一車線を走行していれば、本件事故は回避可能であつた。

3  以上のとおり、原告には本件事故発生につき重大な過失が存し、その過失割合は少なくとも四割を相当とする。

四  抗弁に対する認否及び原告の反論

抗弁事実はすべて争う。本件事故発生時、原告は、青色信号に従つて本件交差点を直進しており、仮に原告に過失があるとしても、せいぜい一割程度にすぎない。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1(交通事故の発生)及び2(被告らの責任原因)の事実については、当事者間に争いがないから、被告木下は民法七〇九条により、被告会社は自賠法三条及び民法七一五条により、原告が被つた損害を賠償すべき責任がある。

二  次に、いずれも成立に争いのない甲第三、四号証、第七号証、原告本人尋問の結果によると、原告は、本件事故によつて頭部外傷Ⅰ型、腰部挫傷、頸部捻挫、左膝打撲挫傷の傷害を負い、その治療のため、春日記念病院に昭和六〇年六月二八日から同年八月二日まで三六日間入院し、さらに昭和六〇年八月三日から昭和六一年一〇月二一日まで同病院に通院した(実通院日数一三七日)ほか、鞭打ち症による調整衰弱の治療のため林眼科医院に通院したこと、原告の症状は、昭和六一年一〇月二一日、自賠責保険後遺障害等級一四級に該当する後遺障害を残して固定したこと、

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

三  そこで、原告の被つた損害について判断する。

1  治療費 金一八四万七二八〇円

前掲甲第七号証、いずれも成立に争いのない甲第六号証、第九号証の一ないし三、原告本人尋問の結果により成立を認めうる甲第五号証によると、春日記念病院における治療実費は金一八四万七二八〇円であつたことが認められる。

2  付添費 金六万三〇〇〇円

原告本人尋問の結果によると、原告は、本件事故後、救急車で春日記念病院に搬送され、そのまま入院したが、当初の二週間はベッドに寝たきりの安静期間であり、その間近親者の付添を必要としたところから、妻と妹に付添看護をして貰つたことが認められる。したがつて、右近親者の付添費は本件事故と相当因果関係のある損害というべく、一日当たり金四五〇〇円、合計金六万三〇〇〇円(四五〇〇円×一四日)をもつて相当と認める。

3  入院雑費 金四万三二〇〇円

入院期間中の三六日につき一日当たり金一二〇〇円が相当であるから、合計金四万三二〇〇円(一二〇〇円×三六日)となる。

4  通院交通費 金四万六五八〇円

原告本人尋問の結果によると、原告は、春日記念病院への実通院一三七日につき、一日当たり金三四〇円の交通費(神戸市営地下鉄上沢・新神戸駅間の往復料金)を要したことが認められるから、その合計額は金四万六五八〇円(三四〇円×一三七日)となる。

5  休業損害 金四六九万二五五八円

前記二で認定の事実に、前掲甲第九号証の二、成立に争いのない甲第九号証の四、原告本人尋問の結果、及び弁論の前趣旨を総合すれば、原告は、昭和二二年九月生まれの大学卒の一級建築士で、昭和五三年九月から鯉田一級建築士事務所を経営し、本件事故当時も同様であつたところ、本件事故によつて受傷し、その治療のため、昭和六〇年六月二八日から同年八月二日まで三六日間入院し、退院後も同月三日から昭和六一年一〇月二一日まで通院(実通院日数一三七日)したこと、原告の通院状況を見ると、通院開始の昭和六〇年八月三日から昭和六一年三月三一日までの二四一日間における実通院日数は合計一〇七日であつて、約二・三日に一回の割合で通院による治療を受けていたこと、また、通院治療を受けた日は、ほとんど建築士としての仕事をすることができなかつたこと、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

そうすると、原告は、本件事故発生日から昭和六一年三月三一日までの二七七日間は毎日ほとんど稼働することができず、また、その後の症状固定日までの実通院日数三〇日も同様にほとんど稼働することができなかつたものと認めるのが相当である。

そこで、次に、原告の休業損害及び後述の逸失利益を算定すべき基礎収入について判断するに、原告は、本件事故当時における前記建築事務所経営による所得が、年間金五七二万円を下回らなかつた旨を主張し、成立に争いのない甲第一三号証の記載及び原告本人の供述中には右原告の主張に添う部分があるところ、原告の右甲第一三号証に関する供述自体必ずしも判然としないうえ、これを裏付ける客観的資料もない以上、右甲第一三号証及び原告本人の供述のみから前記原告の主張事実を認めることは困難というべく、他に本件事故当時における原告の実収入額を認めうる証拠はない。

しかしながら、前記認定にかかる原告の学歴、資格、職業の内容とその経験年数等に徴すると、原告が、本件事故当時、少なくとも三七歳の大学卒男子労働者の平均賃金を下回らない収入を得ていたであろうことは、経験則上容易に推認しうるところ、昭和六〇年度の賃金センサス(企業規模計)によると、大学卒三七歳の男子労働者の年収は金五五七万九一〇〇円であるから、原告は、本件事故当時、建築事務所の経営によつて年間金五五七万九一〇〇円程度の収入を得ていたものと推認するのが相当である。

なお、被告らは、本件事故当時における原告の収入について、確定申告書添付の昭和五九年分収支内訳書記載の所得金額である金二四五万〇一六二円を基礎収入とすべきである旨を主張し、なるほど成立に争いのない甲第一〇号証によると、原告の昭和五九年度の申告額は被告ら主張のとおりの年収額であることが認められるけれども、前記認定にかかる原告の年収額は、賃金センサスに基づいて算出したものであつて、言わば平均的な所得であるから、右申告額を超過する部分を無申告所得として無視することは、かえつて損害賠償法理における公平の原則に悖るものというべく、被告らの前記主張は採用することができない。

よつて、原告の休業損害は、金四六九万二五五八円(五五七万九一〇〇円÷三六五日×三〇七日=四六九万二五五八円)(円未満切捨て)をもつて相当と判断する。

6  逸失利益 金五一万九二四六円

原告の後遺障害は、前記二で認定のとおり自賠責保険後遺障害等級一四級に該当するところ、これによる労働能力喪失期間は二年間とみるのが相当であるから、右喪失率を五パーセントとして、原告の後遺障害による逸失利益を算出すると、金五一万九二四六円(五五七万九一〇〇円×〇・〇五×一・八六一四=五一万九二四六円)(円未満切捨て)となる。

7  慰謝料 合計金二二〇万円

(一)  入・通院分 金一四〇万円

(二)  後遺障害分 金八〇万円

8  物損 金三九万三〇〇〇円

成立に争いのない甲第一二号証、原告本人尋問の結果によると、被害車は、昭和五六年二月初年度登録のホンダシビツクで、カーステレオ及びクーラーを装備していたところ、本件事故により大破し、使用不能となつたこと、本件事故当時の被害車の中古価格は金三九万三〇〇〇円を下回らないことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。よつて、被害車の全損価格は金三九万三〇〇〇円と認めるのが相当である。

9  以上合計 金九八〇万四八六四円

四  そこで、過失相殺について判断する。

先ず、本件事故の態様は、東行き三車線車道の第一車線を東進していた加害車が、本件交差点を信号に従い右折進行したところ、折から西行き三車線車道の第三車線を対向西進してきた被害車をして加害車の左側面前部に衝突させるとともに、右衝突の反動で被害車をその左前方に約三メートル移動させ、折から右西行車道の第二車線を対向西進して本件交差点に進入してきた大北車をして、その前部を被害車左側面後部に衝突するのを余儀無くさせたものであること、そして、加害車を運転していた被告木下としては、本件交差点を信号に従い右折進行するに当たり、同交差点東側の中央分離帯に植え込みが植栽されていて、西行車道を対向西進してくる車両の有無を見通すことができなかつたのであるから、右西行き車道に進出する直前で一時停止し、対向西進車両の有無とその安全を確認して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、右西行き車道の直前で一時停止せず、対向西進車両の有無を確認しないまま突然時速約一五キロメートルで右折進行した過失により本件事故を発生させたものであることは、前記一において認定したとおりである。

そして、右事実に、いずれも成立に争いのない乙第一号証ないし第六号証、原告本人尋問の結果(後記信用しない部分を除く。)を総合すれば、本件交差点の東側には東行き三車線車道と西行き三車線車道を区分する中央分離帯が設けられ、右分離帯には約一メートルの高さの植え込みが植栽されているため、右西行き車道を西進して本件交差点に進入する車両にとつては、進入直前まで右方の見通しが不良であること、本件事故当時、本件交差点の西側の東行き車道では同交差点手前で道路舗装工事が行われ、そのため、右東行き車道を東進する車両は、進行方向一番左側の第一車線しか走行できず、したがつて、右車両が本件交差点を右折する場合には、大回りで右折せざるを得なかつたし、加害車も同様であつたこと、原告は、被害車を運転し、右西行き車道の第三車線(中央分離帯寄り)を時速約五五キロメートルで西進し、本件交差点の二五・七メートル以上手前で対面信号が青色であるのを確認するとともに、本件交差点前方の右東行き車道で右道路工事が行われているのを認めたが、そのまま前記速度で本件交差点に差しかかつたところ、同交差点手前で、右東行き車道から左折(加害車からみて右折)して本件交差点に進入し、右西行き車道に進出しようとしている加害車を約一八・一メートル前方に認め、急制動の措置を講じたが間に合わず、本件事故が発生したこと、以上の事実が認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らしてにわかに信用できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

そうすると、原告としては、加害車のように対向車線(東行き車道)から大回りに左折(加害車からみて右折)して本件交差点に進入してくる車両のあることを予想し、かかる車両と衝突することを回避するため、適宜減速のうえ十分に前方の安全を確認して進行すべき注意義務があつたにもかかわらず、これを怠り、時速約五五キロメートルで本件交差点を直進通過しようとした過失があつたものというべきである(なお、被告らは、原告が第三車線を走行しなければ、本件事故は回避できた旨を主張するが、右主張事実を認めうる的確な証拠はない)。

したがつて、損害賠償の算定に当たつては、原告の右過失を斟酌して二割減額するのが相当と認める。

そうだとすれば、原告の損害は、前記三の9の金額九八〇万四八六四円から二割を減額した金七八四万三八九一円(円未満切捨て)となる。

五  損害のてん補

本件事故に関し、自賠責保険から金三九〇万円が支払われたことは、原告において自認するところであるから、これを控除すると、原告の有する損害賠償債権は三九四万三八九一円となる。

六  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告は、被告らが本件事故の責任を否定し、任意に損害の賠償に応じないため、原告訴訟代理人に本訴の提起と追行を委任し、相当の着手金と報酬金を支払う旨約したものと推認されるところ、本件事案の内容、審理の経過、認容額等諸般の事情を考慮すると、本件事故と因果関係ある損害として認めうる弁護士費用は、金四〇万円が相当である。

七  以上の次第で、原告の本訴請求は、被告ら各自に対し、金四三四万三八九一円及びこれに対する本件事故発生日である昭和六〇年六月二八日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから右の限度で認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 三浦潤)

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