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神戸地方裁判所伊丹支部 昭和41年(ワ)31号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件家屋(編注、木造瓦葺平屋建居宅174.94平方メートル、附属建物約三〇平方メートル)が、原告らの所有に属すること、および被告がこれを借受けていることは、当事者間に争いがない。

本件家屋の貸借が、賃貸借か使用貸借かについて、争いがあるので、この点につき以下判断する。

<証拠>によると、被告は、本件家屋の貸借につき、借受当初である昭和二五年四月から昭和四〇年ごろまでの間、原告らに対し月額五〇〇円宛支払つてきていることが認められる。

<証拠>によると、被告は、本件家屋借受当時、京都の住家の明渡を迫まられていたので、そのころ被告が顧問をしていた株式会社甲工務店の代表取締役であつた原告に懇請して、本件家屋を借受けるに至つたこと、その際、使用料として本件家屋および敷地の固定資産税相当額として、前記金額を被告に負担させることとし、原告らから明渡を求められた場合には、三ケ月以内に明渡すという口約束をしたこと。本件家屋の固定資産税は、昭和二六年度三、五四二円、昭和二八年度六、六四〇円、その後は少し宛増加しており、これに敷地部分の固定資産税を加えると、昭和二六年ごろまでは被告の支払額が固定資産税額を若干上まわるが、昭和二八年以降では被告の支払額が右税額よりかなり不足していることが認められ、右認定事実に反する被告本人の供述は、前掲各証拠と対比してたやすく信用できず、ほかにこれを覆えすに足りる立証はない。

以上の認定事実に徴すると、被告の支払つている金額は、一般社会の家賃相当額と較べて著しく低廉で、本件家屋の維持費の一部程度にしかあたらないものというべく、これをもつて本件建物使用の対価としての賃料の支払とみることは甚だ困難であるのみならず、その貸借の経緯に照しても、本件家屋の貸借関係をもつて、借家法の企図する保護を与えるべき賃貸借であるとは言えず、結局単なる負担付の使用貸借関係に過ぎないものと解するのが相当である。

なお、被告は、本件家屋敷地に連らなる広大な原告ら所有地の管理を被告において担当したから、この費用も又本件家屋使用の対価に含まれると主張し、証人Aの証言および原告本人の供述によれば、右敷地につきある程度の保存行為を行つていることが認められる。けれども、かかる保存行為が単に被告の好意に基づいて行われたか、或は原告らの委託に基づいて行われた(同趣旨の原告本人の供述では、いまだ認めるに足りない。)かは明らかでなく、これをもつて本件貸借の対価たる賃料として算定する根拠に乏しいのみならず、かりにこれを貸借の対価に加えたとしても、いまだ本件家屋使用の対価的意義を具有するに至るものではないと解されるから、右被告の主張も又理由がないものといわざるを得ない。

更に、本件家屋の貸借が、被告が顧問をしていた株式会社甲工務店からの現物給与的な意義を有するか否かについて考える。証人Aの証言によると、被告の顧問としての職務は、会社に対して被告の教え子を紹介することを主とし、依頼があればときたま会社の仕事を手伝う程度であり、顧問としての報酬は、当初月額三千円であつたが、その後月額六千円になつたことが認められる。

右の認定事実に照らすと、被告の顧問として仕事の性格上非常勤であつて、前記顧問料のほかに本件家屋を現物給与として貸与すべき性質のものではないことが推定できるのみならず、ほかに本件貸与が会社からの顧問料の現物給与的性格があつた点についての立証はない。従つて、かかる観点からみても、本件貸借を賃貸借と解する余地はないのである。

(安田実)

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