神戸地方裁判所姫路支部 昭和42年(わ)236号 判決 1969年7月08日
主文
被告人中須義男を懲役一年六月に、
被告人中村恭麿、同菅野政夫を各懲役一年に、
被告人前田坦を懲役一〇月に、
被告人奥山晴隆、同藪三郎を各懲役八月に、
処する。
ただし、右被告人らに対し、この裁判確定の日から一年間それぞれその刑の執行を猶予する。
訴訟費用中、鑑定人岩井重久、同山本貞治に支給した分を除くその他の分は、差し戻し前の第一、二審を通じ、被告人らの連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人中須義男は、当時高砂市の市長をしていたものであるが、同市は当時の印南郡大塩町(現在の姫路市大塩町)との間の将来の合併を考慮して、昭和二九年一二月頃より同町に対し水道浄水を原価を切つて供給し、その便宜を計つていたにもかかわらず、たまたま昭和三二年三月七日に開かれた同町議会において姫路市との合併が決議された旨を同日午後八時頃聞くに及んで、憤激の余り、同町に送水している送水管を壊して一時的に断水して、同町の理事者を困らせてその反省を求めようと決意し、当時高砂市水道課業務係の責任者であつた被告人中村恭麿に対し、その計画を告げて水道課員の召集を命じ、同日午後一〇時過頃同市高砂町所在の当時の高砂市役所三階委員会室に、同被告人、被告人前田坦(当時同市水道課工務係技手)、同奥山晴隆、同藪三郎(両名とも当時同市水道課工務係技術員)及び他の同市水道課員五名くらいを集合させ、その席上これらのものに対し、自然漏水個所の修理工事にことよせて大塩町に対する給水を一時止めるために、同市曾根町立場地内から大塩町に通ずる上水道の送水管を破壊したうえその修理工事を行うよう命令し、同所に集合した全員がこの命令を諒承し、更に、被告人中村、同前田及びその後加わつた同菅野政夫(当時同市水道課工務係技師)は、中井寛一(同市水道課員)らと共に、同日午後一一時三〇分頃同市荒井町所在の当時の高砂市役所荒井支所内水道課事務室において、前記送水管の破壊方法などについて協議し、もつて被告人らは順次共謀のうえ、まず、被告人前田、同奥山、同藪において、翌八日午前一時過頃同市曾根町立場地内浜県道(現在の国道)に赴き、つるはし、スコツプで同所地面を掘り下げ、バールで同所地下約一メートルの個所に敷設してあつた上水道送水管(エタニツト・パイプ、内経一〇センチメートル)に穴を開けて破壊し、ついで同日午前二時三〇分頃前記中井寛一、被告人奥山、同藪らにおいて同所附近の制水弁を閉鎖した後、同日午前一〇時過頃被告人奥山及び浜野宏司(当時同市水道課員)らにおいて、右破壊した送水管を掘り起して徹去し、もつて公衆の飲料に供する浄水の水道を損壊したものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人らの判示所為は、いずれも刑法第六〇条、第一四七条に該当するので、被告人中須義男、同中村恭麿及び同菅野政夫についてはその所定刑期の範囲内で、同前田坦、同奥山晴隆及び同藪三郎については犯情を考慮し、同法第六六条、第七一条、第六八条第三号により酌量減軽をした刑期の範囲内で、被告人らを主文第一項の刑にそれぞれ処し、情状により同法第二五条第一項を適用して被告人らに対し主文第二項のとおり各刑の執行をそれぞれ猶予し、鑑定人岩井重久、同山本貞治に支給した分を除くその他の訴訟費用については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条を適用して、差し戻し前の第一、二審を通じ被告人らの連帯負担とする。
よつて、主文のとおり判決する。