神戸地方裁判所姫路支部 昭和49年(ワ)381号 判決 1977年3月28日
主文
姫路簡易裁判所昭和四九年(ロ)第八九七号支払命令申立事件について、同裁判所がなした仮執行宣言付支払命令を取消す。
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一、当事者の求めた裁判
一、請求の趣旨
姫路簡易裁判所昭和四九年(ロ)第八九七号事件についてなされた仮執行宣言付支払命令を認可する。
異議後の訴訟費用は被告の負担とする。
二、請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第二、当事者の主張
一、請求原因
1、原告は次の約束手形(以下本件手形という)を所持する。
金額 一五〇〇万円(¥1,5000,000と記載)
満期 昭和四九年七月三〇日
支払地 大阪市
支払場所 株式会社南都銀行大阪支店
振出地 大阪市
振出日 昭和四九年四月一〇日
振出人 株式会社近畿工機
受取人 山陽技研印鑑部
裏書関係 山陽技研印鑑部
岩谷正也―野村春夫
野村春夫―猪澤昭夫
猪沢昭夫―太陽神戸銀行(取立委任)
2、被告は本件手形に拒絶証書作成義務を免除して裏書した。
3、原告(取立委任太陽神戸銀行)は満期に右手形を支払場所に呈示したが支払をえなかつた。
4、よつて原告は被告に対し右手形金一五〇〇万円及びこれに対する呈示の翌日である昭和四九年七月三一日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める(姫路簡易裁判所昭和四九年(ロ)第八九七号支払命令申立事件についてこれを認容する仮執行宣言付支払命令が発せられた)。
二、請求原因に対する認容
1、原告が本件手形を所持していることは認める。但し、本件手形の金額は、一五〇万円であるか、一五〇〇万円であるか一義的に確定することはできないから、一定の金額の表示があるとはいえないから無効である。
2、被告が本件手形に裏書したことは認める。
三、抗弁
1、被告は昭和四九年五月一〇日ころ、野村春夫に対し本件手形を金額一五〇万円の手形として、野村春夫が資力あることを銀行に示す必要があるというので対価を受けないで融通手形として裏書した。
2、本件手形は、株式会社近畿工機が被告に対する製品買受代金三五〇万円のうちの一五〇万円の支払方法として振出したものである。ところが、同社は金額欄にチエツクライターを打つにあたり、「¥1,500,000」とすべきところ「¥1,5000,000」と打ち間違え、第一コンマと第二コンマの間の0の数字を三つ打つてしまつた。被告もこれに気付かないで一五〇万円と考えて裏書したものであつて錯誤に基づく裏書である。
3、原告は、本件手形が一五〇〇万円の手形としては通用しないことを知りながら、野村春夫から隠れた取立委任裏書を受けたものである。
四、抗弁に対する認否
全部否認する。
第三、証拠関係(省略)