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神戸地方裁判所姫路支部 昭和55年(ワ)102号 判決 1983年3月14日

原告 岡本正清

被告 日本赤十字社

右代表者社長 林敬三

被告 兵庫県

右代表者知事 坂井時忠

右両名訴訟代理人弁護士 大白勝

右訴訟復代理人弁護士 後藤由二

被告 日本放送協会

右代表者会長 川原正人

右訴訟代理人弁護士 林藤之輔

同 中山晴久

同 石井通洋

同 高坂敬三

同 夏住要一郎

同 間石成人

同 色川幸太郎

被告 株式会社 朝日新聞社

右代表者代表取締役 渡辺誠毅

右訴訟代理人弁護士 滝本文也

被告 株式会社 毎日新聞社

右代表者代表取締役 平岡敏男

右訴訟代理人弁護士 髙木茂太市

被告 株式会社 大阪讀賣新聞社

右代表者代表取締役 栗山利男

右訴訟代理人弁護士 塩見利夫

同 山本忠雄

同 山口孝司

同 東幸生

被告 株式会社 産業経済新聞社

右代表者代表取締役 鹿内信隆

右訴訟代理人弁護士 渡邊俶治

被告 株式会社 神戸新聞社

右代表者代表取締役 光田顕司

右訴訟代理人弁護士 水田博敏

主文

一  本件訴のうち謝罪広告をなすことの請求部分(請求の趣旨第2項)を却下する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し、連帯して金三億三、五三七万八、九〇〇円及び昭和五六年四月一日以降本判決確定に至るまで毎月末日限り金五八四万三、五〇〇円の割合による金員並びにこれらに対する昭和五五年四月一日から本判決確定に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

2  被告らは原告に対し、別紙(一)記載の謝罪文を同記載の謝罪広告の要領に従って報道せよ。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (原告)

原告は、昭和五一年五月一日から兵庫県姫路市広畑区蒲田一〇一番地にて自然科学脊椎矯正健康体育協会を設立し(同年九月二五日、原告肩書住所地に移転。)、現代医学によっても治療効果のなかった者などに対し、原告の創り上げた「治療の原点、自然の法則」及び「人体電気の漏電法」という二つの新たな学問を利用した画期的な脊椎矯正の治療を行い、宣伝ビラにより広告したこともあって毎日多数の患者が来院し多額の収益を上げていた。

2  (本件捜索)

ところが、原告の事業の発展を妬みこれを妨害せんと意図した被告日本赤十字社(以下「被告日赤」という。)姫路支社の社員又は医師、あるいは訴外森蔭龍幸が兵庫県警察姫路警察署に対し、原告が無免許の治療行為を行っている旨虚偽の事実を通報したため、同署は原告につき柔道整復師法違反の容疑で捜査を開始し、同年一〇月五日、原告方を捜索して患者の住所録や診断書を押収し、更に同月九日、再度原告方を捜索した(以下、右各捜索を「本件捜索」という。)。

3  (報道)

姫路警察署は、本件捜索開始前に被告ら報道機関の担当記者と記者会見し、原告方に対する捜素を発表したため、被告日本放送協会、同株式会社朝日新聞社(以下「被告朝日新聞社」という。)、同株式会社毎日新聞社(以下「被告毎日新聞社」という。)、同株式会社大阪讀賣新聞社(以下「被告大阪讀賣新聞社」という。)、同株式会社産業経済新聞社(以下「被告産業経済新聞社」という。)、同株式会社神戸新聞社(以下「被告神戸新聞社」という。)は、前記捜索の際、警察官と共に原告方に無断で立入り、原告のうどんを食べている姿などを無差別に写真撮影したうえ、左記のとおり、各報道を為した。

(一) 被告日本放送協会は、同五日午後六時頃、テレビニュースにて、原告がうどんを食べている姿を写し出したうえ、原告が柔道整復師法違反により捜索を受けた旨放送した。

(二) 被告朝日新聞社は、翌六日の朝刊にて、「せきつい矯正無免許で営業」との見出しをつけて別紙(二)記載のような内容の記事を掲載した。

(三) 被告毎日新聞社は、同日付朝刊にて、「“神がかり”もぐりマッサージ検挙」との見出しをつけて別紙(三)記載のような内容の記事を掲載した。

(四) 被告大阪讀賣新聞社は、同日付朝刊にて、「ムチ打ち、もぐり治療 姫路で摘発 五か月で数百人」との見出しをつけて別紙(四)記載のような内容の記事を掲載した。

(五) 被告産業経済新聞社は、同日付朝刊にて、「“天の使者”かたり治療、ムチ打ち症患者ら数百人 もぐり整復師摘発」との見出しをつけて別紙(五)記載のような内容の記事を掲載した。

(六) 被告神戸新聞社は、同日付の朝刊にて、「奇跡の治療 実は無免許 「脊椎赤十字」手入れ」との見出しをつけて別紙(六)記載のような内容の記事を掲載した。

4  (名誉及び信用の毀損)

前記報道は、その視聴者や読者に原告の脊椎治療法が全く治療効果のないでたらめなものであるとの印象を強く与えるものであり、これにより原告の名誉及び信用は大きく毀損された(なお、被告日本放送協会の報道は原告の肖像権をも侵害するものである。)。

5  (被告らの責任)

(一) 被告日赤について

一般に警察に対し犯罪事実を通報するに当っては、十分なる調査を尽したうえでこれを為すべき注意義務が存するにも拘らず、被告日赤姫路支社の社員又は医師は、原告が無免許で治療行為を行っている旨軽卒に思い込み、何ら調査らしきものを一切せずに警察に通報したもので、これがその後の本件捜索、報道に至る原因となったのであるから、その過失は重大である。

しかして、前記通報は、被告日赤の業務の執行として為されたものであるから、同被告は民法第七一五条に基づき原告の損害を賠償する義務を負う。

(二) 被告兵庫県について

(1) 姫路警察署警察官は、原告に対する柔道整復師法違反被疑事件(以下「本件被疑事件」という。)につき、原告やその住所地を所轄する姫路市西保健所に対し何ら調査を行うことをせず、そのため犯罪容疑も固っていない段階において、被告ら報道機関の担当記者に対し、被疑者名、被疑事件名、捜索開始日時等を事前発表したことは、人権に対する配慮を著しく欠いたもので、刑事訴訟法第一条に違反する。

(2) 本件捜索は、憲法第二二条規定の職業選択の自由及び同法第二三条規定の学問の自由に違反する。

(3) 本件被疑事件は、本件捜索後三年間も何の捜査も為されずに放置され、ようやく昭和五四年九月末に検察庁に送致されない結果で終了したが、これは事案の真相を明らかにし刑罰法令を迅速に適用実現すべき旨を規定する刑事訴訟法第一条に反するものである。

(4) 以上(1)ないし(3)に述べた姫路警察署警察官の捜査に関する一連の違憲、違法な行為は、畢竟、これらの官憲が捜査に当って、職務上、当然、守るべく要請されている注意義務を怠って、漫然と捜査を進めたことにその核心があり、これがその後の前記報道による原告の名誉及び信用の毀損を惹起したものであるから、その責任は免れない。

しかして、右警察官はいずれも公共団体たる被告兵庫県の公権力たる警察権の行使にあたる公務員であり、前記違憲、違法な行為はその犯罪捜査に関連して為されたものであるから、被告兵庫県は原告の損害を賠償すべき義務がある。

(三) 被告日本放送協会、同朝日新聞社、同毎日新聞社、同大阪讀賣新聞社、同産業経済新聞社、同神戸新聞社について

(1) 被告ら報道機関は、姫路警察署の事前発表を鵜呑みにし、原告に対する事情の聴取など報道機関として当然行うべき調査を怠り、そのため虚偽の前記報道を為したもので、その所要の注意義務を怠った過失は重大である。

(2) 前記報道は、憲法第二二条規定の職業選択の自由及び同法第二三条規定の学問の自由に違反するほか、昭和五六年頃、被告大阪讀賣新聞社、同神戸新聞社は医師の発表した脊椎矯正術を新しい治療法である旨報道したが、これは背椎矯正術を学問と認めたと解されるから、原告の脊椎矯正法のみを犯罪扱いした被告らの前記報道は憲法第一四条規定の平等原則にも違反するものである。

(3) 以上(1)、(2)の違憲、違法な前記報道は、被告ら報道機関の職員がその業務の執行として行ったものであるから、同被告らは民法第七一五条に基づき原告の損害を賠償する義務がある。

6  (損害)

(一) 原告は、自然科学脊椎矯正健康体育協会の業務により昭和五一年七月から九月の間、一か月平均金六五四万三、五〇〇円の収益を上げ広告費等の経費金七〇万円を控除すると、一か月金五八四万三、五〇〇円の純利益を得ていたところ、同年一〇月の前記報道の結果、一人の患者も来院しなくなったのであるから、原告は、同年一〇月以降毎月金五八四万三、五〇〇円の得べかりし利益を失い、同額の損害を蒙った。

(二) 原告は、名誉及び信用を毀損せられ精神的苦痛を蒙ったところ、これを慰謝するに足る賠償額は金二、〇〇〇万円が相当である。

また、原告の名誉及び信用を回復するためには、別紙(一)記載の謝罪文を同記載の謝罪広告の要領に従って報道する必要がある。

7  (結論)

よって、原告は、被告らの不法行為に基づき、損害賠償として、慰謝料金二、〇〇〇万円及び昭和五一年一〇月一日から昭和五六年三月末日までの逸失利益金三億一、五三七万八、九〇〇円、以上合計金三億三、五三七万八、九〇〇円並びに昭和五六年四月一日以降本判決確定に至るまで毎月末日限り逸失利益金五八四万三、五〇〇円の割合による金員並びにこれらに対する昭和五五年四月一日から本判決確定に至るまで年六分の割合による遅延損害金の支払いと、名誉回復の方法として、別紙(一)記載の謝罪文を同記載の謝罪広告の要領に従って報道することを求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  被告日赤

(一) 請求原因1項ないし3項の事実中、被告日赤の社員又は医師が姫路警察署に通報したとの点は否認し、その余は不知。

(二) 同4項の事実は否認する。

(三) 同5項(一)の主張は争う。

(四) 同6項の事実中、損害額算定の基礎となる事実は不知。損害額は争う。

2  被告兵庫県

(一) 請求原因1項の事実中、原告が自然科学脊椎矯正健康体育協会を設立し、原告肩書住所地において、脊椎矯正の治療を行っていたことは認めるが、その余は不知。

(二) 同2項の事実中、森蔭龍幸が姫路警察署に対し、原告が無免許の治療行為を行っている旨通報し、同署が昭和五一年一〇月五日及び九日の両日にわたり柔道整復師法違反の容疑で原告方を捜索し、右五日の捜索の際、患者の住所録、診断書を押収したとの点は認め、その余は否認する。

(三) 同3項の事実中、被告ら報道機関の担当記者が原告方に無断で立入り、原告のうどんを食べている姿などを無差別に写真撮影したこと及び被告日本放送協会が昭和五一年一〇月五日午後六時頃テレビニュースにて原告がうどんを食べている姿を写し出したことは不知。その余は認める。

(四) 同4項の事実は否認する。

(五) 同5項(二)の主張は争う。

本件捜索は、姫路警察署警察官が、いずれも神戸地方裁判所姫路支部裁判官又は姫路簡易裁判所裁判官より原告に対する本件被疑事件につき発付を受けた捜索差押許可状に基づき執行した適法な職務行為であって、何ら不法行為を構成しない。

また、姫路警察署警察官は、本件捜索の直前及び直後に同署記者クラブにおいて、被告ら報道機関の担当記者に対し、捜索の日時、被疑事実の要旨等につき発表したが、この点に何ら違法な点は存しない。即ち、報道の自由ないし国民の知る権利が尊重されるべきことは論を俟たないところであり、とりわけ本件は客観的嫌疑が存するうえ、その被疑事実が一般公衆の健康に重大な関係を有するものであるから、捜査の概要を明らかにすることは公益上望ましいと云わねばならないからである。

(六) 同6項の事実中、損害額算定の基礎となる事実は不知。損害額は争う。

3  被告日本放送協会、同朝日新聞社、同毎日新聞社、同大阪讀賣新聞社、同産業経済新聞社、同神戸新聞社

(一) 請求原因1項の事実中、原告が自然科学脊椎矯正健康体育協会を設立し、原告肩書住所地において、脊椎矯正の治療を行っていたことは認めるが、その余は不知。

(二) 同2項の事実中、姫路警察署が昭和五一年一〇月五日柔道整復師法違反の容疑で原告方を捜索し押収が為されたことは認めるが、その余は不知ないし否認する。

(三) 同3項本文の事実中、姫路警察署が昭和五一年一〇月五日原告方の捜索を事前発表したため、被告ら報道機関の担当記者が右捜索に随行し、原告方に立入り、写真撮影したことは認めるが、右立入りが無断のものであった点は否認し、その余は不知。同項の(一)ないし(六)の事実中、被告日本放送協会がテレビニュースにてうどんを食べている原告の姿を放映したとの点を除くその余の各報道(以下「本件各報道」という。)は、当該被告において認める。

(四) 同4項の事実は否認する。

(五) 同5項(三)の主張は争う。

(六) 同6項の事実中、損害額算定の基礎となる事実は不知。損害額は争う。

三  抗弁

1  被告兵庫県

(一) 姫路警察署警察官が被告ら報道機関に対し発表した事実は、公共の利害に関する事柄であり、もっぱら公益を図る目的で為された真実のものである。

(二) 本訴提起時は、既に、原告が主張する不法行為時である昭和五一年一〇月五日から三年を経過している。よって、被告は、本訴において右時効を援用する。

2  被告日本放送協会、同朝日新聞社、同毎日新聞社、同大阪讀賣新聞社、同産業経済新聞社、同神戸新聞社

(一) 本件各報道は、いずれも公共の利害に関する事柄を、もっぱら公益を図る目的で為されたもので、しかも、その内容は全部真実である。よって、本件各報道については違法性がない。

(二) 仮に、そうでないとしても、本件各報道は、被告ら報道機関の担当記者が信頼すべき責任者からの取材に基づいて為されたもので、しかも、その取材内容について何ら疑いを挾むべき情況もなかったのであるから、被告らが本件各報道の内容について真実であると信じ、かつ、そう信じるにつき相当の理由があった。即ち、昭和五一年一〇月五日昼頃、姫路警察署警察官は、同署一階の記者クラブにおいて、報道各社の記者に対し、これより柔道整復師法違反容疑で原告方を捜索する旨発表したので、被告ら報道機関の担当記者は、右警察官らに同行して原告方に立入り捜索、差押の状況を取材した、捜索終了後、前記警察署副署長らは、前記記者クラブにおいて、右記者らに対し、被疑事実の要旨等を正式発表したので、右記者らは、右正式発表の内容と原告発行の宣伝ビラを取材源として、これに何の歪曲や誇張もせず記事にし、その結果、被告ら報道機関は本件各報道を為すに至ったのである。

四  抗弁に対する認否

全て争う。

第三証拠《省略》

理由

一  (謝罪広告をなすことの請求―請求の趣旨第2項―について)

本件記録によれば、原告は、昭和五五年三月二七日付訴状により被告らに対し、損害賠償として金二億六、五二九万四、七〇〇円の支払い及び名誉回復処置として謝罪文の広告を求める申立を行うとともに、同日付にて右各請求に対する訴訟救助の申立を為し、当裁判所は、右申立中謝罪文の広告請求部分につき、謝罪文の内容など謝罪広告の方法が特定していなかったため、訴訟物の価額算定不能として訴額を算出したうえ、同年四月一五日、右各請求に対し訴訟上の救助を付与したところ、その後、原告は、損害賠償請求を拡張したほか(不足の収入印紙追貼済み)、数度の謝罪広告の内容及び方法変更申立を経たうえ、最終的に、第九回口頭弁論期日において、昭和五七年五月一七日付謝罪文破棄訂正願と題する書面により別紙(一)のとおり謝罪広告の内容及び方法を特定するに至ったこと、そこで、当裁判所は、右内容及び方法による謝罪広告請求について不足の収入印紙(三、九四八万三、〇〇〇円)を昭和五八年一月一〇日までに追貼すべき旨の補正命令を発し、該命令は、昭和五七年一二月二二日、原告に送達されたが、右期日までに印紙の追貼が為されなかったことが認められる。

してみると、本件訴のうち謝罪広告をなすことの請求部分は、補正命令に従った欠缺の補正が為されないのであるから、民事訴訟法第二〇二条に則り却下せざるを得ないと云うべきである。

二  (損害賠償請求について)

1  本件捜索、報道の経緯等

(一)  原告が自然科学脊椎矯正健康体育協会を設立し原告肩書住所地において脊椎矯正の治療を行っていたこと、昭和五一年一〇月五日姫路警察署は柔道整復師法違反の容疑で原告方を捜索し押収を為した(なお、右捜索に先立って森蔭龍幸が姫路警察署に対し原告が無免許の治療行為を行っている旨通報し、同署が右捜索の際、患者の住所録や診断書を押収し、更に、同月九日、再度、原告方を捜索したことは、原告と、被告兵庫県との間において争がない。)が、事前に、被告ら報道機関の担当記者に右捜索を事前発表したため、右記者らは警察官に同行して原告方に立入り、写真撮影したことは、原告と、被告日赤を除くその余の被告全員との間において争がなく、また、被告日本放送協会、同朝日新聞社、同毎日新聞社、同大阪讀賣新聞社、同産業経済新聞社、同神戸新聞社が本件各報道を為したことは、原告と、被告兵庫県及び当該被告との間において、それぞれ争いがない。

(二)  《証拠省略》を綜合すると、次の事実が認められる。

(1) 原告は、昭和四五年四月二四日頃、トラックの座席から頭部を下にしてコンクリート上に転落し、頭部外傷、頸椎捻挫の傷害を受け、頭部、両手及び両足にしびれを感じ、右手が頭部に僅かに届く程度で、歩行は五〇メートルの限度にとゞまり、各地の病院を廻ったが、治癒しなかったところ、昭和四九年頃、医師の指摘はなかったが、前記事故によって首の骨が歪んでいることが自己の病気の原因であると思い付き、首を反対の方向に捻ったり、背中を叩いたり、強く押えれば病気が直るのでないかと考え、かゝる行動を繰り返しているうち、一年程経過して、たまたま、前記しびれも薄らぎ、歩行距離も伸延してきたので、右の方法をムチ打ち症等で体の異常を訴える知人等に試み、昭和五一年五月一日、会員制(入会金二、〇〇〇円、治療費初回金四、〇〇〇円、二回目以降金三、五〇〇円)の自然科学脊椎矯正健康体育協会を設立し、自然科学脊椎赤十字の名称を用いて兵庫県姫路市広畑区蒲田一〇一番地にて開業し、『天の使者、奇跡の治療』との見出しで、「肩こり・腰痛・肝臓病・糖尿病・不感症等あらゆる原因不明、あるいは現代医学で治癒しない疾患の九〇パーセント以上が頸椎の歪みが原因で発現するものであり、原告は、『或る日神の夢見せた霊験』により新たな治療法を編み出し、これによれば、すべての疾患が治癒する」との趣旨の宣伝ビラを『天師飛翔院天空』なる名称にて播州地方一円に配付し、その宣伝効果もあって毎日、多数の患者が来院し、多額の収益を上げていた。その治療方法は、ほぼ、前記のとおりで、ムチ打ち症の患者に対しては同人の頭部を左右に傾けたり、首を捻ったりした上、横に寝かせて足と腰を原告の手で圧迫したり、患者をうつ伏せに寝かせて両足を持ち上げ腰を原告の足で踏んだりしていた。ところが、同年五月頃、原告の治療方法につき姫路市医師会から西保健所に対し苦情が申込まれ、原告は同保健所から呼び出しを受けてその治療法等につき事情を聴取されたが、その際、自己の方法は治療ではなく体操である旨弁明し、その後の同保健所からの再々の呼出しに応じず、又、同保健所の治療中止勧告の行政指導にも従わずにいた。ついで、原告は、同年八月頃、姫路赤十字病院庶務課長より、赤十字の名称使用は法律上禁止されているので使用しないで欲しい旨の申入れを受けたものの、これも拒否し、同年九月頃、原告肩書住所地に移転してのちも、原告方建物の外壁に「脊椎赤十字」の横幕を掲げ、従前通りその治療法を継続し、同月頃までに来院患者の総数は数百名にものぼっていた。

(2) 昭和五一年九月九日、姫路警察署は、柔道整復師の森蔭龍幸より原告が出鱈目な治療をしている旨通報を受けたことから捜査を開始し、森蔭龍幸や原告の治療を受けた訴外甲野花子から事情聴取をする一方、原告の身上照会、前科照会のほか内偵による原告の業務の実態の確認並びに兵庫県知事に対する原告の柔道整復師等の免許保有の有無の照会及び西保健所への照会など捜査を進めたところ、原告が柔道整復師等の免許を保有せず患者の首を捻ったり腰を足で踏みつけるなどの治療を業として行っている事実が判明したため、原告につき柔道整復師法第一五条違反の嫌疑を抱くに至ったが、原告が西保健所の呼出しにも応じていないことや前記広告の内容に照らしても任意捜査だけでは事案の十分な解明が困難であると考え、同年一〇月四日、神戸地方裁判所姫路支部に対し、原告の甲野花子に対する同年七月一〇日の施術に関する被疑事実につき、それまでの捜査の結果収集できた証拠を疎明資料として捜索差押許可状を請求し、同日、右裁判所裁判官より①捜索すべき場所・・原告肩書住所地、原告方住居兼施術開設所、差し押えるべき物・・カルテ類・診察券類・施術器具類・広告紙類・金銭出納簿類、②捜索すべき場所・・姫路市蒲田一〇一、原告の元住居兼施術開設所、差し押えるべき物・・右①に同じ、との二通の捜索差押許可状の発付を受けた。

(3) 翌五日昼頃、本件被疑事件の捜査主任官であった姫路警察署保安係長大西誉人は、捜索に出発するに先立ち、被告ら報道機関の一部に本件捜索実施の情報が漏れていたことから素破抜き合いによる捜査の支障を防ぐため、且つ、原告の治療法が公衆の健康に係わるものであるにも拘らず、科学的根拠のない危険な施術であることを啓発する目的をもって、上司の許可を得たうえ、同署記者クラブにおいて、被告ら報道機関の担当記者に対し、被疑者名、被疑罪名、捜索場所を発表したうえ、数名の警察官とともに原告肩書住所地の原告方に赴き、同日午後一時頃、原告方二階建建物に上り込み、一階診察室にてうどんを食べていた原告に対し、前記①の捜索差押許可状を示そうとしたところ、同人が食事中であることを理由に拒んだため、一旦、これを中止し、同人の食事終了後の午後一時一五分より同人に対し右令状を呈示したうえ、本件捜索を開始し、金銭出納帳、患者名簿、診察券等を押収した。前記発表を受けて右記者らも警察官らに同行して原告方に立入り、約一五分間、一階診察室及び患者待合室にて写真撮影するなどの取材活動を行った。もっとも、その写真撮影は、右捜索、押収の状況が中心であったが、右記者の一部には、うどんを食べている原告が警察官より令状を示され、これを拒否している姿を撮影する者もいた。しかしながら、原告は、警察官の右捜索に対しては、「わしは違反しとらん。免許いるんやったら取らせろ。」等と大声で文句を述べていたが、右記者らの原告方への立入や写真撮影には何の苦情も申し立てなかった。右捜索終了後、前記記者クラブにおいて、姫路警察署副署長、同保安課長及び前記保安係長大西誉人は、被告ら報道機関の担当記者に対し、捜索の結果を正式発表し、右記者らの質疑に応じた。その内容は、原告の前記業務内容を中心とし、その他柔道整復師法の説明や今後の捜査の見通し等であった。右記者らは、これらの取材資料と原告発行の前記宣伝ビラを参考にして原稿を作成した結果、被告日本放送協会は同日午後六時四〇分のテレビニュースにて原告が柔道整復師法違反により捜索を受けた旨放送し、被告朝日新聞社、同毎日新聞社、同大阪讀賣新聞社、同産業経済新聞社、同神戸新聞社は翌六日の朝刊にてそれぞれ原告主張の記事を掲載した。

(4) 姫路警察署は、前記捜索後、神戸地方検察庁姫路支部検察官と本件被疑事件に関する今後の捜査の基本方針等につき検討したうえ、同月六日、前日に原告の治療を受けた訴外山口和之の母親訴外山口ますみから事情聴取したうえ、右山口知之への施術に関する被疑事実につき、同月八日、姫路簡易裁判所に対し捜索差押許可状を請求し、同日、同裁判所裁判官より③捜索場所・・原告肩書住所地、原告方住居兼施術開設所、差し押えるべき物・・テンカフ(天花粉の意味)・広告紙の納品書・新聞折り込み広告の代金領収書等・施術補助者勧誘に関する新聞広告の代金領収書及び補助者の履歴書類、とする捜索差押許可状の発付を得、翌九日、右③の令状により原告肩書住所地の原告方を捜索し、ブリキ罐入り領収書及び納品書を押収し、これに引き続き、前記②の令状により姫路市広畑区蒲田一〇一番地の原告の元住居兼施術開設所を捜索し、厚紙メモを押収した。

(5) その後、姫路警察署は、昭和五四年九月頃、原告の治療法は民間療法の一種で柔道整復師法第一五条に違反しないとの理由で、本件被疑事件の検察庁への送致を断念し、原告が赤十字の名称を使用していた点につき赤十字の標章及び名称等の使用制限に関する法律違反として検察庁に送致したが、結局のところ、右送致事件も不起訴処分(起訴猶予処分)に終った。

以上の事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。

2  以上認定事実にもとづいて、以下、被告らの責任の有無について検討する。

(一)  被告日赤について

原告は、被告日赤の社員又は医師が姫路警察署に対し原告が無免許で治療を行っている旨通報し、これが本件捜索、各報道の原因となったと主張しているが、右主張を認めるに足る証拠は全く存しない。かえって、前記認定のとおり、姫路警察署が本件捜査を開始するに至ったのは被告日赤以外からの通報によるものであることが明らかであるから、被告日赤に責任が存しないことは明白である。

(二)  被告兵庫県について

(1) 本件被疑事件が嫌疑なしとの理由で検察庁に送致されなかったことは前記認定のとおりであるが、右結果から直ちに当初よりそのような嫌疑をかけ、捜索すること自体違法であったと断ずるのは相当でない。捜査は、もともと、流動的性格を有し、時間の経過に従い被疑者に有利な、あるいは不利な資料が順次収集、蓄積され、嫌疑の有無、大小も変化していくのであるから、捜査の違法性の有無は、その時期におけるそれに供せられた証拠資料その他一切の事情に基づいて判断されねばならない。

これを本件についてみるに、原告は、自己の疾病につき事故のために首が歪んだことが原因で、これを反対方向に捻ったり、背中に圧迫を加えれば直るものと思い至り、右方法を継続しているうち、自己の症状が小康状態に至ったところから、原因不明あるいは現代医学によっても治癒しなかった病気のほとんどが首の骨が歪んでいることに原因あると断定し、ムチ打ち症等の患者に対しても首を捻ったり腰を足で踏みつけるなどの行為を治療と称し業として行っていたことは前記認定のとおりである。

ところで、柔道整復師法にいう「柔道整復」とは、打撲・捻挫・脱臼・骨折等の疾患治療の方法として、患部その他を揉み、撫で、引伸す等する施術を意味するところ、前記認定のとおり、原告はムチ打ち、即ち頸椎捻挫をもその治療の対象となし、その治療として首を捻ったり、腰を足で踏みつけるなどしていたのであって、右方法は危険な行為でもあり、単に疲労回復又は健康増進を目的とするマッサージ等とその性格を異にすることは明らかである。そうだとすれば、姫路警察署が原告に対し無免許で柔道整復の業務を行っているとの嫌疑を抱いたことには相当な理由があり、十分首肯できるところである(本件捜索後、姫路警察署が如何なる資料を収集し、どのような検討を経たうえで嫌疑なしとの結論を出したのかは本件証拠上明らかでないが、前記認定の原告の業務内容に鑑みると、現時点においても、依然としてその嫌疑を完全に払拭することは出来ないと云うべきである。)。

しかも、姫路警察署において本件被疑事実を裏付けんが為に捜査資料を取捨歪曲したり、あるいは当然に予想される被疑事実に反する資料の捜査を懈怠した等の如き事情は本件においては窺われず、検察庁と密接に連絡をとりながら捜査を進め、様々な捜査資料を収集のうえこれを疎明資料として裁判所の令状を得て本件捜索を行ったものであるから、捜査上、何等の違法な点は認められないと云うべきである。

もっとも、原告は、姫路警察署は本件捜索前に原告から事情聴取すべきであったにも拘らず、これを怠ったのは違法である旨主張する。確かに、捜査は、その強制力を要求するものであればあるほど、被疑者その他の関係人の人権を侵害する危険もまた大きいことから、なるべく任意捜査の方法によって行うべきであるが(刑事訴訟法第一九七条第一項、犯罪捜査規範第九九条)、本件では、前記認定のとおり、原告が西保健所からの呼出しにも応じなかったこと及び前記広告の内容に照らしても姫路警察署が任意出頭を求めても原告の出頭を期待できず、従って、任意捜査では事案の真相を十分に解明することが困難であると判断して、本件捜索に着手したことが明らかであるから、本件捜索前に原告から事情聴取しなかったことをもって違法と判断することは到底出来ない。

(2) 次に、姫路警察署警察官が本件捜索を事前発表した点につき判断する。

職務上捜査官は被疑者の名誉を害しないよう注意すべき義務があり(刑事訴訟法第一九六条)、捜査中の事件を発表するに当っては、慎重なる配慮が要求され、従って、捜査官の主観的嫌疑に基づいて断定的に発表し、これが真実に符合しない場合には過失責任を免れないが、裁判所より令状の発付を受ける程度に嫌疑が客観化し、それを相当な方法と表現により発表した場合には、過失責任を免れると解すべきである。

本件捜索の事前発表は、前記認定のとおり、裁判所より捜索差押許可状の発付を受けたのち、本件被疑事件の捜査主任官が、その上司の許可を得たうえ、捜査の支障排除と啓発的観点という公益上の目的をもって、被疑者名、被疑罪名、捜索場所を何の歪曲もせず発表したのであるから、その発表に何ら違法の廉も存しない。

(3) 次に、本件被疑事件が、本件捜索ののち約三年後に検察庁に不送致処分となった点につき判断する。

捜査においては、被疑者の嫌疑の有無をすみやかに解明し、嫌疑が認められない場合は被疑者を早急に捜査から解放することが被疑者の人権保障上望ましいと云えるが、他方事案の真相解明のためには、あらゆる資料の発見収集に努めるべく捜査は慎重に進められねばならないから、犯罪の性質、被疑者の社会的地位、性格等諸事情から捜査が長期化する場合も当然あり得るところである。本件被疑事件においては、事案の内容と原告の性格に鑑み、姫路警察署が慎重に捜査を進め、犯罪成立の有無を検討していたことが推測されないではなく、姫路警察署において原告の業務を不当に妨害せんとする意図等特段の事情も認められない。そうだとすれば、前記のとおり捜査がある程度長期化したことをもって違法とするに足らないものと解すべきである。

(4) 当裁判所の判断は以上の如くであるから、原告に対する本件被疑事件に関して為された姫路警察署警察官の捜査全般及び被告ら報道機関の担当記者への事前発表には何らの違法なく、憲法の各条項に違反するとの原告の主張を認めるに足る証拠は全く存しない。従って、被告兵庫県に賠償責任は存しないと云うべきである。

(三)  被告日本放送協会、同朝日新聞社、同毎日新聞社、同大阪讀賣新聞社、同産業経済新聞社、同神戸新聞社について

(1) 前記認定に徴し、本件各報道は犯罪の容疑に関するものであるから、これがテレビや各新聞により報道された結果、その容疑者として氏名を公表された原告の名誉、信用が毀損されたことは明らかである。しかしながら、報道機関の報道が他人の名誉、信用を毀損する場合であっても、その内容が公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的で報道したものであるときは、摘示された事実が真実であったことが証明される限り、右行為は違法性を欠き不法行為は成立せず、また、右事実の真実性が証明されなくとも、その報道する側において右事実が真実であると信じ、かつ、そう信じるにつき相当の理由がある場合には、右行為には他人の名誉、信用を毀損するにつき故意、過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、本件各報道が、いずれもいまだ公訴を提起されていない原告の犯罪行為に関するもので、公共の利害に関する事柄につき、もっぱら公益を図るためにされたことは、本件各報道の内容及び弁論の全趣旨により認めることができ、本件証拠上これを左右するに足る証拠はない。

(2) そこで、以下において本件各報道の内容が、真実に合致するものであるか否か、真実に合致しないとしても、被告らがその内容を真実と信じ、かつ、そう信じるにつき相当の理由があったか否かについて検討する。

前記認定のとおり、本件各報道は、原告に係る本件被疑事件に関し、捜査当局の正式発表及びこれに対する質疑等による確認並びに原告発行の宣伝ビラに基づいて為されたものであり、しかも、その内容は、各報道機関により差は存するものの、被疑事実の要旨、原告の略歴、その治療内容、治療費の内訳、宣伝方法、本件捜索の際の状況等で大綱において前記二の1(二)認定事実に合致している。もっとも、本件各報道のうち各新聞記事の見出しの中には、「“天の使者”かたり治療」、あるいは「“神がかり”もぐりマッサージ検挙」などの表現が存するものの、これも原告発行の前記宣伝ビラの内容がことさらに煽情的な表現を採っていることに対比すると、表現上の潤色以上に出でて事実を歪曲、あるいは誇張したものとは解せられないと云うべきである。

してみると、本件各報道の内容のうち、原告が柔道整復の業務を行っていたとの点を除くその余の事実は真実を報道したものであり、右柔道整復の業務を行ったというに該当するかどうかは、多分に、法的評価が必要であって、少くとも、被告らにおいて、捜査当局の正式発表等の確実な取材源に基づき、これをそのまま報道したのであるから、被告らには、その内容を真実と信じ、かつ、そう信じるにつき相当の理由があったものと云うべきである。

もっとも、原告は、被告らは本件各報道を為すに当って原告より事情を聴取すべきであったのにこれを怠った過失がある旨主張するが、本件の如く捜査当局の正式発表といった信頼すべき筋を取材源とした場合に、その内容に特に疑いを挾むべき事情の存するなら格別、さような事情もないのに、報道機関がさらに自主的な調査を行い、被疑者からの事情聴取を必ず為さねばならないとすることは、記事の正確性を強調する余り報道の迅速性を犠牲とするもので組みすることは出来ない。また、本件では、被告らは、原告からの事情聴取は行っていないものの、原告発行の宣伝ビラを調査しており、一応裏付取材も為されている。

従って、以上の点から被告らが本件各報道を為すに当って原告から事情を聴取しなかったことをもって、落度が存するものとは到底解せられない。

以上のとおり、本件各報道には何ら違法な点は存せず、その他右報道が憲法の各条項に違反するとの原告の主張を認めるに足る証拠は全く存しない。

(3) なお、原告は、被告ら報道機関の担当記者が原告方に無断で立入り、原告がうどんを食べている姿などを無差別に写真撮影(とりわけ被告日本放送協会はうどんを食べている原告の姿をテレビニユースにて放映)し、原告のプライバシーや肖像権を侵害した旨主張しているが、右記者らは、犯罪容疑を社会に報道する目的をもって原告方に立入ったが、同所は居住のみに使用される純然たる住宅ではなく、第三者の来集をも当然に予定した部屋をも含む建物であったこと、同人らは、約一五分間、右建物のうち患者待合室及び診察室に留まって令状の執行状況を写真撮影するなど取材活動を行ったこと、もっとも、右記者らの一部に、原告がうどんを食べている姿を撮影した者もいるが、これはあくまで令状による執行開始直前の状況を撮影した際にたまたま原告の右姿が写ったにすぎないこと及び原告は右記者らの行動に何ら苦情を申立てていないことは前記認定のとおりである。

そうすると、右記者らの原告方立入及び写真撮影は、その目的、方法及び態様とも穏当を欠くものとは認められず、且つ原告が右立入等を欲せず拒否しようとすれば十分その機会があったにも拘らずこれを黙認した事実に照らすと、右立入及び写真撮影を以って原告のプライバシーや肖像権を侵害する違法なものとは到底評価できないと云うべきである。

三  (結論)

以上の次第であるから、原告の本訴請求のうち、謝罪広告をなすことの請求部分は民事訴訟法第二〇二条により却下することとし、その余の損害賠償を求める部分はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中村捷三 裁判官 加藤幸雄 東尾龍一)

<以下省略>

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