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神戸地方裁判所姫路支部 昭和61年(わ)726号 決定 1987年4月06日

少年 G・S(昭43.6.27生)

主文

本件を神戸家庭裁判所姫路支部に移送する。

理由

本件公訴事実の要旨は、

被告人は

第一  反覆継続して自動車を運転しているものであるが、昭和61年4月3日午前零時50分ころ、普通乗用自動車を運転して、大阪府公安委員会が最高速度を40キロメートル毎時と指定した同府泉大津市○○町○○付近道路の○○車道第一車線を時速約100キロメートルで東進していたが、自動車運転者としては、右指定速度を遵守はもとより、絶えず前方、左右を注視して進路の安全を確認しつつ進行し、もつて追突等の事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、何ら減速しないばかりか第一車線を同方向に向け疾走する普通乗用自動車を前方約150メートルに認めるや時速約110キロメートルに加速して同車を追い上げることにのみ気を奪われ、自車進路の第一車線を先行する車両の有無の確認を欠いたまま、約197メートルの間漫然進行した過失により、折から同車線を進行するA(当時21年)運転の普通貨物自動車を前方約20.5メートルに接近して初めて発見し、右方に転把したが及ばず、同車右後部角に自車左側面部を追突させ、右A車をしてその衝撃により左前方の歩道のガードレールに激突させ、よつて自車同乗者B(当時18年)に頚髄胸髄損傷の重傷を負わせ、同日午前零時55分ころ、同所において、右傷害に起因して死亡するに至らしめたほか、同C(当時18年)に全治約10日間を要する頭部打撲、左膝打撲等の傷害、右Aに全治約1過間を要する外傷性頚部症候群の傷害、同人車同乗者D(当時20年)に全治約10日間を要する外傷性頚部症候群、右頚背部打撲等の傷害、同E子(当時20年)に加療約23日間を要する顔面挫創、頚椎捻挫、両下腿挫傷等の傷害、同F子(当時20年)に加療約1か月間を要する両下腿挫創兼筋不全損傷等の傷害をそれぞれ負わせ

第二  公安委員会の運転免許を受けないで、前記日時ころ、同所において、右普通乗用自動車を運転し

たものであるというのであつて、右の各事実は本件記録に綴つてある各証拠によつて明らかである。

そこで被告人を刑事処分に付するのが相当であるかどうかにつき考察すると、本件無免許運転に至つた動機、被告人の本件事故車運転の態様等からみると、犯情は必ずしも軽いとはいえないけれども、被告人の父母の仲は悪くそのため、母は昭和58年12月ころ、被告人の妹M子を連れて別居し、父のみによつて養育監護を受け、その境遇上愛情に欠け、温かい保護指導を受けられず、悪友と交わり、生活の指針を失つて、昭和61年7月ころには覚せい剤を使用し、警察、検察庁で取調べを受けたのち、大阪家庭裁判所堺支部で審判を受け、同年11月20日中等少年院送致の保護処分となり、爾来、肩書住所地所在の加古川学院に在院するものであるが、本件は右大阪家庭裁判所堺支部のなした右保護処分前の非行であること、被告人は加古川学院に収容せられたのを転機にこれまでの生活態度等を深く反省し、院内での厳しくかつ規則正しい生活その他の矯正教育に耐える等して立派な人間になるように努力をしていること、かつて問題視せられた家庭環境問題も、本件起訴を契機に父母の仲も好転をし、現在復縁の話も進んでおり、父母の協力で被告人の将来は保護に万全が期待できること、父は本件の被害者及びその遺族に謝罪をすると同時に慰謝に奔走していること、被害者Bの遺族において被告人の更生を願つていること等から鑑みるとき、比較的画一的な処遇に終りやすいこれまでの一般行刑機関よりも、むしろ個別的処遇に習熟した少年保護機関に対してその収容期間が他の者に比してある程度長くなることは止むを得ないものの(家庭裁判所裁判官による処遇意見等による)継続して被告人の性格矯正を委ねる方がより妥当であると考えられる。

よつて、被告人を保護処分に付するのを相当と認め、少年法55条に従つて本件を神戸家庭裁判所姫路支部に移送することにし、なお訴訟費用は刑事訴訟法185条、181条1項但書を適用して被告人に負担させないこととする。

(求刑 懲役2年以上3年以下)

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 重村和男)

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