大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所尼崎支部 平成9年(ワ)363号 判決 1998年8月21日

甲ないし丙事件原告(以下「原告」という。)

鹿島興産株式会社

右代表者代表取締役

山本広志

甲ないし丙事件原告(以下「原告」という。)

山本幸男

右両名訴訟代理人弁護士

西村文茂

村上公一

甲ないし丙事件被告(以下「被告」という。)

株式会社ネォ・ダイキョー自動車学院

右代表者代表取締役

太田博

右訴訟代理人弁護士

辻川正人

主文

一  被告が平成八年一一月二七日開催の臨時株主総会において行った別紙記載の決議案を可決する旨の決議を取り消す。

二  被告が平成九年二月一五日開催の定時株主総会において行った退任取締役星野恒徳及び同星野文子に対して退職慰労金を贈呈するとの決議を取り消す。

三  被告が平成九年三月二八日開催の臨時株主総会において行った別紙記載の決議案を可決する旨の決議のうち、取締役星野恒徳、同星野文子、同星野小夜子、同植田光男に関する部分を取り消す。

四  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  主文一、二項同旨

二  被告が平成九年三月二八日開催の臨時株主総会において行った別紙記載の決議案を可決する旨の決議を取り消す。

三  主文五項同旨

第二  事案の概要

本件は、被告の株主である原告両名が、被告の二回の臨時株主総会において行われた取締役の責任を免除する決議及び定時株主総会において行われた退任取締役に退職慰労金を贈呈する決議は、特別利害関係人が議決権を行使して成立したもので、著しく不当である、あるいは株主総会の招集手続が違法であるなどとして、商法二四七条一項三号、あるいは同項一号に基づき、三回の株主総会決議の取消を求めた事案である。

一  争いがない事実

1  被告は、自動車運転教習業を主たる目的として昭和六〇年二月一三日に設立された資本金二三〇〇万円、発行済総株式数四六〇株(一株の額面五万円)の株式会社である。

一方、原告両名は、被告の株主であり、原告会社は一〇〇株を、原告山本は二〇株を所有している。

2  被告は平成三年九月六日ころ、当時の被告代表者星野恒徳が代表者となっていた株式会社ネオ・ディ(以下「ネオ・ディ」という。)から、同社所有の別紙記載の不動産(以下「本件不動産」という。)を代金五億九七四〇万円で購入した(以下「本件取引」という。)。

3  原告両名は平成四年一〇月、被告が利益相反取引である本件取引によって損害を被ったとして、別紙記載の取締役星野恒徳、同星野文子、同星野小夜子、同植田光男、同太田博の五名の取締役(以下「取締役五名」という。)を被告とし、神戸地方裁判所尼崎支部にその責任を追及する代表訴訟(平成四年(ワ)第七四一号事件、以下「別件訴訟」という。)を提起し、平成七年一一月一七日、原告らの請求を全面的に認容する第一審判決が言い渡された。

4  甲事件

被告は平成八年一一月九日の取締役会(以下「一一月取締役会」という。)において、取締役五名を含む取締役全員の賛成で、同月二七日に臨時株主総会(以下「第一回総会」という。)を招集すること及び取締役五名の別紙記載の責任免除に関する決議案(以下「本件免除決議案」という。)を第一回総会に付議することを決定した。なお、星野文子は星野恒徳の母、星野小夜子は星野恒徳の妻である。

5  被告は第一回総会において、本件免除決議案を付議し、取締役五名を加えた出席株主(委任状による代理出席を含む。)一一名(株式数四六〇株)で決議したところ、取締役五名を含めた三二〇株(八名)の株主が賛成し、一四〇株(三名)の株主が反対した。この結果、出席株主の議決権の三分の二以上にあたる多数の株主の賛成があったとして、本件免除決議案は可決された(以下「第一回総会決議」という。)。

6  乙事件

被告の取締役であった星野恒徳及び星野文子は平成九年一月二二日をもって取締役を辞任し、併せて取締役太田博が代表取締役に就任したところ、平成九年二月一五日に開催された定時株主総会(以下「第二回総会」という。)において、原告両名の反対にもかかわらず、出席株主の過半数の賛成があったとして、退任取締役である星野恒徳及び星野文子に対し、退職慰労金を贈呈する旨の決議案が可決された(以下「第二回総会決議」という。)。

7  丙事件

被告は平成九年三月二八日に臨時株主総会(以下「第三回総会」という。)を開催し、第一回総会決議と同一内容の議案である本件免除決議案を付議し、原告両名を含む三名の株主を除く他の株主の賛成があったため、出席株主の議決権の三分の二以上にあたる多数の株主の賛成があったとして可決された(以下「第三回総会決議」という。)。

二  原告両名の主張

1  本件不動産の正常価格は四億〇五七五万五〇〇〇円であったから、被告は本件取引によって一億九一六四万五〇〇〇円の損害を被った。

2  本件取引に先立ち、被告の取締役会が開催され、右取締役会の決議によって本件取引が承認されたが、右取締役会において、取締役の星野文子、同星野小夜子、同植田光男が本件取引を行うことに賛成した。取締役太田博は右取締役会で議長を務めていた。

(甲事件関係)

3  責任免除決議における当該取締役たる株主は商法二四七条一項三号にいう特別利害関係人に該当するところ、被告は第一回総会を開催し、取締役五名の本件免除決議案を付議し、特別利害関係人を含む出席株主の決議によって第一回総会決議が成立した。

4  第一回総会決議の不当性

このように、第一回総会決議は取締役五名の個人的利益のみを図ったもので、被告には何らの利益ももたらさない。ところで、取締役五名は左の持株数を有する株主でもあったところ、その議決権行使によって著しく不当な決議が成立したものであり、右議決権行使が許されなかったならば、本件免除決議案は否決されていたのであるから、第一回総会決議は取り消されるべきである。

星野恒徳  一二〇株

星野文子  四〇株

太田博  一〇株

星野小夜子 四〇株

植田光男  一六株

5  取締役会決議の違法性

被告の一一月取締役会において、取締役五名を含む取締役全員の賛成で第一回総会の招集と本件免除決議案を決定したが、取締役五名は特別利害関係人であるから取締役会の決議に参加することはできないものであり、したがって、右取締役会決議は違法である。さらに、取締役会が右のような決議をすることが被告の利益を犠牲にして取締役個人の利益を図ろうとするものであり、取締役の忠実義務及び善管注意義務に違背し、違法である。第一回総会がこのような違法な招集決議に基づき招集されたことも、第一回総会決議の取消事由にあたる(なお、右主張は商法二四七条一項一号の主張と理解される。)。

6  被告は、後記のとおり、第三回総会決議が成立したから、第一回総会決議の取消を求める甲事件の訴えの利益はないと主張するが、原告らは、第三回総会決議についても、取り消されるべき重大な瑕疵があるとして、右決議の取消を求める丙事件を提訴している。これにより、原告らは、第三回総会決議の効力についても全面的に争うものであるから、甲事件について訴えの利益がないとの被告の主張は失当である。

(乙事件関係)

7  第二回総会決議の違法性

(一) 星野恒徳及び星野文子は本件取引と一一月取締役会決議を通じて被告に重大な損害を与えた責任があるから、退職慰労金を贈呈するのは著しく不当である。第二回総会決議は右二名の個人的利益のみを図ったものであり、被告に損失をもたらすことになっても、何らの利益ももたらさない。第二回総会決議当時の株主のうち、左の者は、第二回総会決議について特別利害関係を有する者であり、左記の株式数に基づく議決権行使によって著しく不当な決議が成立したもので、右議決権行使が許されなかったならば、第二回総会決議案は否決されていたのであるから、第二回総会決議は取り消されるべきである。そうでないとしても、第二回総会決議は、大株主が自己または第三者の個人的利益を追求して、客観的にみて、著しく不公正な内容の決議を成立させ、これにより被告または少数株主の利益を侵害したものであるから、多数決の濫用であり、違法であるから取り消されるべきである。

星野恒徳   一二〇株

ネオ・ディ  七〇株

星野文子   四〇株

星野小夜子  四〇株

なお、ネオ・ディは星野恒徳経営の会社である。

(二) 具体的な金額の決定を取締役会に一任する退職慰労金贈呈の決議が許されるためには、

イ 内規や慣行による一定の支払基準が確立されていること

ロ 右支払基準が株主に知られているか、または容易に知りうるものであること

が前提条件となる(最高裁昭和四八年一一月二六日判決)。

しかるに、第二回総会決議は右イ、ロの前提条件をいずれも充たしておらず、金額について何らの限定も歯止めもないまま、取締役会に金額の決定を包括的に一任しているものであり、違法である。

仮に、右の前提条件が存在したとしても、総会の場で、会社の現実に一定の確立された基準が存在すること、それが株主に公開され、周知のものか、株主が容易に知りうるものであること、支払基準の内容が支給額を一意的に算出しうるものであることを説明する必要があり、このような説明がないときは、説明義務違反が生じる。しかし、被告は、右の説明義務を履行していない。以上の点からしても、第二回総会決議は違法である。

(丙事件関係)

8  第三回総会決議の違法性

第一回総会決議について述べたとおり、第三回総会決議は取締役五名の個人的利益のみを図ったもので、被告には何らの利益ももたらさない。ところで、第三回総会決議では、被告の株式二六九株(発行済株式総数の58.48パーセント)を有する株式会社新日ユニオン(以下「新日ユニオン」という。)が議決権を行使し、本件免除決議案に賛成しているが、新日ユニオンは従前被告の株主ではなかったものであり、次の株主が次のとおりの株式を新日ユニオンに名義変更したため、新日ユニオンが株主名義人になった。

二宮千代美 名義変更株式数四株

ネオ・ディ 名義変更株式数七〇株

星野恒徳

名義変更株式数一二〇株

星野文子 名義変更株式数三五株

星野小夜子 名義変更株式数四〇株

その結果、第三回総会決議時点での被告の株主構成が後記被告主張三の1の(二)のようになったことは認める。しかし、新日ユニオンは活動実態のないダミー会社であり、次の者が役員として登記されている。

代表取締役 中吉光明(平成九年二月一五日に被告取締役に選任された者)

取締役   植田光男(取締役五名のうちの一人)

取締役   高江修身(平成九年二月一五日に被告取締役に選任された者)

監査役   星野小夜子

右の中吉光明及び高江修身は、ネオ・デイのグループ会社で星野恒徳の下で働いていた者である。このように、前記取締役の交替及び株式名義変更は、星野恒徳の影響力を保持した上で、特別利害関係人による議決権の行使であると非難されることを回避するため、形式上名義を変更したにすぎない。したがって、新日ユニオンは、実質的には本件免除決議案についての特別利害関係人に該当するところ、その議決権行使によって著しく不当な決議が成立したものであり、右議決権行使が許されなかったならば、本件免除決議案は否決されていたのであるから、第三回総会決議は取り消されるべきである。

仮に新日ユニオンが特別利害関係人でないとしても、第三回総会決議は、大株主が自己または第三者の純個人的利益を追求して、客観的に見て著しく不公正な内容の決議を成立させ、これにより被告又は少数株主の利益を侵害したもので、法二四七条一項三号の脱法行為にほかならず、多数決の濫用であり、また、決議の方法が著しく不公正であるから、違法な決議であり、取り消されるべきである。

三  被告の主張

1  被告株式の移動

被告はメインバンクのさくら銀行から、支援の条件として、被告の親会社のネオ・ディとの関係を絶つことを提案された。その具体的な内容は、

(一) ネオ・ディの代表取締役の星野恒徳が被告の代表取締役を辞任する。同人の親族もできる限り被告の取締役を辞任する。

(二) ネオ・ディ、星野恒徳、星野文子、星野小夜子及びネオ・ディの取締役の植田光男が所有している被告の株式を第三者に譲渡し、被告とネオ・ディの資本関係を完全に絶つ。

というものであった。

さくら銀行からの右の要請に基づき、平成九年一月二二日、被告の代表取締役が星野恒徳から太田博に変更され、次いで、第二回総会において、取締役を辞任した星野恒徳、星野文子に代わり、山口眞一、高江修身、中吉光明、濱口典俊が取締役に選任された。

さらに、ネオ・ディ、星野恒徳、星野小夜子は所有株式全部を新日ユニオンに売却し、星野文子は所有株式のうち、三五株を新日ユニオンに、五株を中吉光明に、植田光男は所有株式のうち、五株を山口眞一に、五株を濱口典俊に、六株を高江修身にそれぞれ売却した。また、二宮千代美は、平成九年二月一五日に任期満了により被告の監査役を退任するため、全株式を新日ユニオンに売却した。以上の株式の売却は平成九年二月一五日の被告取締役会で承認された。この結果、被告の株主構成は次のとおりとなり、第三回総会における総会決議で議決権を行使したのも次の株主らである。

新日ユニオン 二六九株

原告会社   一〇〇株

原告山本   二〇株

中村敏明   二〇株

今西永見   二〇株

太田博    一〇株

高江修身   六株

山口眞一   五株

濱口典俊   五株

中吉光明   五株

2  第一回総会決議と第三回総会決議の関係

被告は、被告の株主構成が一新されたことを契機に、第三回総会において、改めて取締役五名の責任を免除すべきかの判断を求めた結果、発行済株式総数の三分の二以上の多数の賛成で、第三回総会決議が成立した。なお、既述のとおり、第三回総会決議においては、太田博以外、右決議の対象となった取締役は決議に参加していない。

3  第一回総会決議に対して原告らが主張している決議取消事由が第三回総会決議に該当しないことはもちろん、第三回総会決議には何らの瑕疵もない。第一回総会決議と第三回総会決議は決議内容が同じであり、仮に第一回総会決議が本件訴訟で取り消されたとしても、有効な第三回総会決議で取締役五名の責任は消滅している。したがって、原告らの第一回総会決議の取消を求める訴えの利益はない。

4  第一回総会決議の著しい不当性の欠如

(一) 第一回総会決議の取消についての原告らの主張は商法(以下「法」という。)二四七条一項三号に基づくものであると解されるところ、右規定によって決議の取消が認められるためには、特別利害関係人の要件と決議の不当性の要件が必要である。ところで、仮に第一回総会決議において、取締役五名が特別利害関係人に該当するとしても、第一回総会決議は著しく不当とは言えない。

(二) そもそも、取締役と会社との間の利益相反行為に基づく責任について、法二六六条六項で免除要件が緩和されているのは、利益相反取引の結果発生する責任の内容が取引についての対価の不当性、会社あるいはコンツェルン全体にとって有利であるかという判定の困難な問題に関するものであるからである。本件で問題になっている責任の有無に関しても、利益相反取引の対象になった不動産の価格の妥当性という判定困難な問題が争点になっている。したがって、取締役五名の責任が最終的に認められたとしても、その責任は免除しがたいものではなく、本来法がその要件を緩和してまでも免除されることを予定していたものである。なお、責任免除の対象となる取締役の責任は訴訟によって追及され、裁判によって確定した責任も含まれる。

(三) 法二六六条六項の趣旨からすると、本件のような責任免除の決議に対象となる取締役が参加していたとしても、当該利益相反取引に明白な経営判断の誤りがない以上、第一回総会決議が法二四七条一項三号にいう著しく不当な決議と言うことはできない。また、責任免除の決議が不当か否かの判断をするについて、当該取締役の行った利益相反取引の違法性の程度は非常に重要な要素である。別件訴訟で取締役五名の責任が肯定されたとしても、その責任の違法性の程度が、法が免除を予定している程度に高くないかどうかが重要である。この意味で、本件取引の対象となった対価の当不当の判定が困難であるか否かは、責任免除が著しく不当か否かに大きく関係する。なお、右決議が著しく不当でないことは、株主構成が変わった第三回総会決議において、取締役五名の責任免除が可決されたことからも裏づけられる。

5  第二回総会決議の有効性

(一) 第二回総会決議が著しく不当であるか否かを判断するにあたっては、別件訴訟が継続中であり、第一審判決が確定したものではないこと、責任が認められたとしても、第一回及び第三回総会において、責任免除の決議がなされていること、退職慰労金は在職中の職務執行の対価であり、一回の利益相反取引に基づく取締役の責任が一部の株主により追及されていることによって、当該取締役の在職中の職務執行の対価を否定する根拠にはなり得ないこと、特に星野恒徳は、被告の代表取締役として長年にわたり被告の発展に寄与し、被告が銀行から借り入れたすべての債務について連帯保証人となっていること等を考慮する必要がある。

(二) さらに、第二回総会決議は決議に諮られる前に、議長により、別件訴訟の結果によっては、被告が星野恒徳、星野文子に対し、損害賠償請求権を有する可能性もあるので、右両名に対する退職慰労金の支払については当面留保するとの説明がされており、別件訴訟の結果が配慮されている。そのため、現在まで、退職慰労金の支給に関する取締役会決議はされていない。

以上の事実を総合的に考慮すると、第二回総会決議が著しく不当でないことは明らかである。

6  第三回総会決議の有効性

(一) 新日ユニオンは法二四七条一項三号の特別利害関係人に当らない。新日ユニオンは取締役五名の影響下にある会社ではないし、取締役五名とは資本関係は一切ない。また、新日ユニオンは活動実態のないダミー会社ではない。

(二) 新日ユニオンが被告の株主になった経緯は次のとおりである。前記1で述べたさくら銀行からの要請に基づき、ネオ・ディらは所有している被告の株式を第三者に譲渡する必要があったところ、非上場会社である被告の株式を全く面識のない第三者に売却することは不可能であるし、また、取締役の責任を追及する訴訟があって、内紛状態にある会社の株式を引き受ける第三者はいない。そこで、ネオ・ディらは、従前ネオ・ディに勤務したことがあり、星野恒徳の知り合いであった中吉光明が株主及び代表取締役になっている新日ユニオンに事情を話して株式を売却した。中吉光明は星野恒徳と面識があり、従前ネオ・ディの従業員で、かつ、監査役をしていたが、ネオ・ディを退職後、平成五年七月に有限会社ハウス・ヨシ(以下「ハウス・ヨシ」という。)を設立し、ネオ・ディとは完全に独立して不動産業を営んでいる。ネオ・ディや星野一族とハウス・ヨシとは全く資本関係はなく、中吉光明、ひいては新日ユニオンは星野恒徳の支配下にはない。新日ユニオンは、被告の株主になることが新日ユニオンにとって利益になるか否かの経営判断を経て、被告の株式を譲り受けた。第一回総会決議に特別利害関係人が参加していたとの非難を回避するために株式の譲渡が行われたものではない。

(三) 第三回総会は、取締役や株主の変更後、被告を所有経営していく新株主、新取締役らが、被告が関わっている別件訴訟をどのように評価すべきかについて独自の判断をするために開催された。新日ユニオンをはじめ、被告のために投資した新株主は、結果的に取締役五名の責任を免除することが被告にとって利益であると判断したものである。このように、新日ユニオンの議決権行使に関し、星野恒徳ら取締役五名の影響力は全くなかったから、第三回総会決議に不当性はなく、有効である。

四  争点

1  甲事件について、訴えの利益があるか。

2  甲事件について、訴えの利益があるとして、第一回総会決議は法二四七条一項三号、あるいは同項一号によって取り消されるべきものか。

3  第二回総会決議は法二四七条一項三号によって取り消されるべきものか。

4  第三回総会決議は法二四七条一項三号によって取り消されるべきものか。

第三  争点に対する判断

一  争点1について

1  株主総会決議取消訴訟(甲事件はそうである。)は形成の訴えであるから、法律の規定する要件を充たす場合には通常訴えの利益があると解されるが、その後の事情の変化により株主総会決議を取り消す実益がなくなった場合には、訴えの利益がなくなる場合もあると考えられる。

2  これを甲事件についてみてみるに、前記争いがない事実4、7によれば、第一回総会決議がなされた後に、右決議と同一内容の第三回総会決議が行われたことが認められるところ、第三回総会決議は、第一回総会決議の取消を条件とする予備的・条件付決議と解されるが、第三回総会決議については、原告らは丙事件を提訴し、その効力を争っているから、第三回総会決議が有効に成立し、確定したと言うことはできない。したがって、以上の点からすると、第一回総会決議と同一内容の第三回総会決議がなされたからといって、第一回総会決議を取り消す実益がなくなったと言うことはできないから、第一回総会決議の効力を争う甲事件の訴えの利益は消滅しておらず、右訴えの利益はあると言うべきである。よって、第一回総会決議の取消を求める甲事件の訴えの利益が消滅したとの被告の主張は失当である。

二  争点2について

1  まず、第一回総会決議について、法二四七条一項三号による取消事由があるか否かについて判断する。法二四七条一項三号による株主総会の決議の取消が認められるためには、特別利害関係人である株主が議決権を行使したことによって決議が成立したこと及び決議の内容が著しく不当であることの要件が必要である。そこで、第一回総会決議について右の要件が存在しているか否かについて検討する。

2  まず、免責決議における当該取締役である株主は法二四七条一項三号の特別利害関係人に該当すると解されるところ、前記争いがない事実5によれば、第一回総会において、本件免除決議案の当事者である取締役五名が被告の株主として第一回総会決議について議決権を行使していることが認められる。

次に、前記争いがない事実5、甲一三、乙二、二八、証人星野恒徳の証言によれば、第一回総会の時点で、発行済株式数は四六〇株であったこと、したがって、取締役の責任を免除するために必要とされる議決権は、発行済株式数四六〇株の三分の二以上に当たる三〇七株であったこと、星野恒徳の被告株式の持株数は一二〇株、星野文子の持株数は四〇株、太田博の持株数は一〇株、星野小夜子の持株数は四〇株、植田光男の持株数は一六株であり、取締役五名の持株数の合計は二二六株であったこと、第一回総会には発行済株式四六〇株を有する株主全員が出席したこと、第一回総会決議は、原告両名を含む株主三名(持株合計一四〇株)が反対したが、取締役五名を含めた三二〇株の株主が賛成して可決されたこと、したがって、特別利害関係人である取締役五名がその議決権を行使しなかったならば、本件免除決議案は可決されなかったことが認められる。

右認定事実によれば、取締役五名は法二四七条一項三号にいう特別利害関係人であり、その議決権の行使によって第一回総会決議が成立したと言うことができる。

3  続いて、第一回総会決議の内容が著しく不当であるか否かについて判断する。

前記争いがない事実3、甲六、一〇、四一、四二、四五ないし四九、七四、乙二、三〇、証人星野恒徳の証言、原告会社代表者山本広志本人の供述によれば、被告は平成三年九月六日開催の取締役会で本件取引を承認するか否かを審議したが、右取締役会において、取締役太田博は、本件取引を承認するか否かの件について議長を務め、取締役星野恒徳は、同人が本件取引の当事者の代表取締役をしていることから議決には参加せず、取締役五名のうち、右両名を除くその余の取締役は本件取引を行うことに賛成し、本件取引を行うことが承認されたこと、ただし、取締役星野恒徳は被告の代表者として、右取締役会の冒頭において、被告として本件取引を実施したいとの意見を述べていること、取締役会の承認を得て本件取引が行われた後、原告両名は、本件取引時の本件不動産の正常価格は四億〇五五四万五〇〇〇円であるとの鑑定評価書に基づき、被告が本件取引によって本件取引価格と右鑑定評価書による正常価格との差額である一億九一六四万五〇〇〇円の損害を被ったとして、平成四年一〇月、取締役五名を被告として、神戸地方裁判所尼崎支部に別件訴訟を提起したこと、右訴訟において、鑑定が採用され、鑑定結果によれば、本件取引時の本件不動産の鑑定評価額は、前記鑑定評価書と殆ど差異のない四億〇五七五万五〇〇〇円となっていること、平成七年一一月一七日、原告両名の請求を全面的に認容する第一審判決が言い渡されたこと、右第一審判決に対して取締役五名が控訴し、別件訴訟は大阪高等裁判所に係属したこと、被告は、別件訴訟が大阪高等裁判所で審理中の平成八年一一月一二日、別件訴訟の第一審判決が認容した取締役五名の本件取引についての責任を免除するための臨時株主総会を同月二七日に開催するとの招集通知書を作成し、そのころ、被告の株主に通知したこと、右招集通知書には、本件不動産の取引価格は国土利用計画法の届出金額より低額であり、不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて定められたものであるから、取締役五名には、本件取引についての責任はないと記載されていること、被告は、第一回総会において、取締役五名の責任を免除する理由として、前記招集通知書に記載されていた理由と同内容の説明を行い、また、別件訴訟が大阪高等裁判所で審理中の右時点で責任免除の決議を求める理由として、大阪高等裁判所の第二審判決が取締役五名にとって有利になることを期待してのものであるとの説明を行っていること、第一回総会では、原告両名及び他一名の株主の反対にもかかわらず、本件免除決議案を可決する第一回総会決議が成立したこと、可決された第一回総会決議は、本件取引によって被告の被った損害に対する取締役五名の損害賠償責任を免除するというもので、取締役五名の右の責任を認めた第一審判決の結論を完全に否定するものであること、大阪高等裁判所は平成一〇年一月二〇日、取締役五名のうち、取締役太田博を除くその余の取締役四名の控訴を棄却し、取締役太田博については、第一審判決を取り消し、原告両名の取締役太田博に対する請求を棄却したこと、大阪高等裁判所の判決に対しては、原告両名及び太田博を除くその余の取締役四名が最高裁判所に上告していることが認められる。

右認定事実によれば、被告は、本件取引によって、少なくとも本件取引価格の五億九七四〇万円と前記鑑定評価書の評価額四億〇五七五万五〇〇〇円との差額の一億九一六四万五〇〇〇円の損害を被ったと認められる。

右の事実は別件訴訟の証拠により客観的に認められるものであり、したがって、この意味で、取締役五名について、被告に対する損害賠償責任を認め別件訴訟の第一審判決は基本的に首肯できると言えるから、たとえ取締役五名が控訴し、第一審判決は確定していないとは言え、第一審判決の判断結果は尊重すべき価値があると言うべきである。

このような点からすると、別件訴訟が取締役五名の控訴により控訴審に係属中であることを考慮しても、第一審判決の判断結果を全く無視する内容の第一回総会決議を行うことは、決議の内容及び決議の時期からみて、相当ではない。さらに、本件免除決議案を付議した理由が取締役五名に対する控訴審での判断を有利に導くことを意図したものであるとの前記認定事実に照らすと、第一回総会決議は単に取締役五名の利益のみを図ったものであって、被告には何らの利益ももたらさないものと言える。

以上を総合すれば、第一回総会決議は、法二四七条一項一号により取り消されるべきか否かの判断をするまでもなく、その内容が著しく不当であると言うべきであるから、法二四七条一項三号により取り消されるべきものと言える。ただし、前記認定事実によれば、取締役太田博については、本件取引を承認した被告の取締役会において、議長を務めただけであり、積極的に本件取引を行うことに賛成したものではなく、現に別件訴訟の第一審と第二審でその責任についての判断が異なっていることからすると、取締役太田博に対する控訴審判決が未だ確定せず、最高裁判所で審理中であることを考慮しても、取締役太田博に対する免責決議は法二四七条一項三号に規定する「決議の内容が著しく不当である」との要件を備えているとまでは言うことができない。

4  そこで、取締役太田博に関する第一回総会決議が取り消されるべきものか否かの関係で、原告両名の取締役会決議の違法性の主張について判断する(なお、右主張は、法二四七条一項一号の主張と理解されることは前述のとおりである。)。

(一) 法二六〇条の2の二項によれば、取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は取締役会の決議に参加することができないところ、本件免除決議案の内容からして、取締役五名は本件免除決議案については特別利害関係者であると認められるから、取締役五名は一一月取締役会の決議に参加することはできないと言える。しかるに、前記争いがない事実4及び甲六、一一によれば、被告は一一月取締役会において、取締役五名を含む全取締役の賛成で、第一回総会招集及び本件免除決議案を第一回総会に付議することを決定しているところ、一一月取締役会当時の被告の取締役は九名であると推認されるから、取締役五名が決議に参加できなければ、いずれにせよ一一月取締役会決議は成立していない。したがって、一一月取締役会はその決議方法が違法であると言うべきである。

(二) 進んで、本件のような決議方法が違法な取締役会の決議に基づいて招集された株主総会の決議の効力について判断するに、取締役会決議は株主総会招集行為の前提要件であるから、違法な取締役会の決議に基づいて招集された株主総会の決議は、その前提要件である招集手続の瑕疵のため、決議は成立しているものの、その効力は有効と言うことはできない。したがって、このような株主総会の決議は、その招集手続が法令に違反しているものとして、法二四七条一項一号の取消事由になると解するのが相当である。

以上によれば、原告両名のその余の主張について論ずるまでもなく、被告太田博に関する第一回総会決議は法二四七条一項一号によって取り消されるべきと言える。

三  争点3について

1  まず、退職取締役に対する退職慰労金贈呈決議における当該退職取締役である株主は法二四七条一項三号の特別利害関係人に該当すると解されるところ、前記争いがない事実6、乙三、原告会社代表者山本広志本人の供述によれば、取締役星野恒徳、同星野文子は、第二回総会前の平成九年一月二二日をもって被告の取締役を辞任したこと、第二回総会において、第二回総会決議案の当事者である星野恒徳、星野文子が被告の株主として第二回総会決議について議決権を行使していることが認められる。

次に、甲一三、六二、乙三、一二、二八によれば、第二回総会決議時点での星野恒徳の被告株式の持株数は一二〇株、星野文子の被告株式の持株数は四〇株であったこと、第二回総会には、発行済株式四六〇株を有する株主全員が出席したこと、したがって、退職慰労金を贈呈することを可決するために必要な議決権の過半数は出席株主の株式数四六〇株の二分の一を上回る二三一株であったこと、第二回総会決議は、原告両名等一四〇株を有する三名の株主が反対したが、退任取締役である星野恒徳、同星野文子の株式合計一六〇株を含めた三二〇株の株主の賛成で可決されたこと、したがって、特別利害関係人である星野恒徳、星野文子がその議決権を行使しなかったならば、第二回総会決議案は可決されなかったことが認められる。

右認定事実によれば、退職取締役である星野恒徳、同星野文子は法二四七条一項三号にいう特別利害関係人であり、その議決権の行使によって第二回総会決議が成立したと言うことができる。

2  続いて、第二回総会決議の内容が著しく不当であるか否かについて判断する。

争点2に対する判断で認定したように、本件取引によって、被告が少なくとも一億九一六四万五〇〇〇円の損害を被ったことは客観的な証拠により明らかである。また、取締役星野恒徳、同星野文子は取締役会において本件取引を行うことを積極的に賛成したものであり、別件訴訟の第一審判決が右両名について、被告に対する取締役としての損害賠償責任を認めたことは別件訴訟の証拠に照らし、理由がある。この意味で、第一審判決は確定していなくとも、その判断結果は十分に尊重されるべきである。このような点からすると、控訴審で審理が行われている最中に、第一審判決の趣旨を減殺するような内容の第二回総会決議を行わなければならない必要性があるとは思われない。

また、第二回総会決議は退職取締役星野恒徳、同星野文子の個人的利益のみを意図したものであり、被告には何らの利益ももたらさないだけでなく、本件取引についての右両名の責任を考えると、納得が行かないものである。被告としては、第一審判決の結果を踏まえ、右両名に対する損害賠償責任の追及も考慮すべきであったと思われる。

以上の点からすると、第二回総会決議はその内容が著しく不当であると言わざるを得ない。

3  たしかに、甲一二、乙五ないし七、証人星野恒徳の証言、被告代表者太田博本人の供述によれば、星野恒徳は長年にわたって被告の代表者として被告のために貢献をしてきたことが認められるが、その点を考慮しても、第二回総会決議の不当性がなくなるものではない。また、乙三によれば、退職金の支払は別件訴訟との関係から当面留保するとされたことが認められるが、そうだからといって、第二回総会決議の不当性が否定されるものではない。

4  以上によれば、原告らのその余の主張について判断するまでもなく、第二回総会決議はその内容が著しく不当であるから、法二四七条一項三号により取り消されるべきものと言える。

四  争点4について

1  争点1に対する判断で述べたように、第三回総会決議は、第一回総会決議が取り消されることを条件とする予備的・条件付決議と解されるところ、争点2についての判断で論述したように、取締役五名についての第一回総会決議は取り消されるべきものである。したがって、第三回総会決議は、条件が成就し、効力が生じていると言えるので、以下、第三回総会決議について取消事由があるか否かについて判断する。

2  第三回総会決議の被告の株主構成が次のとおりになったことは双方間に争いがない。

新日ユニオン 二六九株

原告会社   一〇〇株

原告山本   二〇株

中村敏明   二〇株

今西永児   二〇株

太田博    一〇株

高江修身   六株

山口眞一   五株

濱口典俊   五株

中吉光明   五株

そして、乙一によれば、第三回総会決議についての議決権を行使したのは右各株主であることが認められる。

3  原告らは、新日ユニオンは、第三回総会決議との関係では特別利害関係人である旨主張するので、判断する。

甲一二、五八、五九、六三、六五、六七、乙一、一二、証人星野恒徳の証言によれば、新日ユニオンは不動産の売買、賃貸、管理及び仲介斡旋を行う会社であるところ、代表者の中吉光明は星野恒徳の妻である星野小夜子の弟であり、かつ、平成九年二月一五日に被告の取締役に選任されており、また、ネオ・ディの監査役を勤め、さらに、ネオ・ディに専任取引主任者として勤務していたと思われること、他の新日ユニオンの取締役は、取締役五名のうちの一人である植田光及び平成九年二月一五日に被告の取締役に選任された高江修身であること、高江修身はいわゆるネオ・ディグループの一つである大商建設株式会社の代表取締役をしていること、また、取締役五名のうちの一人である星野小夜子は新日ユニオンの監査役をしていること、なお、大商建設株式会社の事務所はネオ・ディの建物の中にあること、新日ユニオンは宅建業者登録や建設業者登録をしておらず、実質的な営業活動は行われていない可能性が大きいことが認められる。

右の認定事実によれば、新日ユニオンの代表者の中吉光明は星野恒徳と姻戚関係にある上、第二回総会が開催された平成九年二月一五日に被告の取締役に選任されたのみならず、本件取引の一方当事者であるネオ・ディに勤務したり、その監査役をしていたこともあるもので、星野恒徳や被告を含めたネオ・ディグループとの関係は極めて深いものと言える。さらに、中吉光明以外の新日ユニオンの取締役も星野恒徳や被告と密接な関係にあると言える。したがって、このような中吉光明や同人以外の新日ユニオンの他の取締役と星野恒徳及び被告との関係から考えると、新日ユニオンは星野恒徳の極めて強い影響下にあるものと推認され、第三回総会決議についても、被告及び星野恒徳の意向を受けて議決権を行使したものと推認するのが相当である。

以上によれば、第三回総会決議について、新日ユニオンは実質的には星野恒徳と同一視できるものであり、第三回総会決議について、特別利害関係人と認めるのが相当である。

4  なお、証人星野恒徳の証言によれば、星野恒徳は新日ユニオンの株主や取締役になったことはないこと、新日ユニオンとネオ・ディとの間には、双方の株式の保有関係はないことが認められるが、右事実によって、新日ユニオンが特別利害関係人であることが否定されることにはならない。

5  前記1で認定したところによれば、第三回総会決議時点の発行済株式数は四六〇株であるから、議決権の三分の二の株式数は二三〇株であったと言える。ところで、乙一によれば、第三回総会議決は、新日ユニオンの株式数二六九株を含めた賛成の株式数が三二〇株、反対の株式数億一四〇株で可決されたことが認められる。したがって、特別利害関係人である新日ユニオンがその議決権を行使しなかったならば、第三回総会決議は可決されなかったと言える。

6  以上によれば、新日ユニオンは法二四七条一項三号にいう特別利害関係人であり、その議決権の行使によって第三回総会決議が成立したと言うことができる。

7 次に、第三回総会決議が著しく不当であるか否かについて判断するに、前記争いがない事実7のとおり、第三回総会決議は第一回総会決議と全く同一内容のものであるから、争点2の第一回総会決議の不当性について述べたことがそのまま当てはまると言える。

したがって、取締役太田博を除くその余の四名の取締役に関する第三回総会決議は法二四七条一項三号により取り消されるべきである。しかし、取締役太田博に関する第三回総会決議は、決議の内容が著しく不当であるとまでは言うことができないから、同号による取消は許されない。

8  なお、原告両名は、第三回総会決議について、多数決の濫用の主張(右は法二四七条一項三号の主張と解される。)もしているが、「仮に新日ユニオンが特別利害関係人でないとしても」との原告両名の主張からも明らかなように、右主張は、特別利害関係人の要件を充たしていないとしても、第三回総会決議の内容が不当であることを前提としているものであるところ、既述のとおり、取締役太田博に関する第三回総会決議の内容は著しく不当であるとは認めがたいから、取締役太田博に対する多数決濫用の主張も理由がない。さらに、原告両名は、第三回総会決議の方法が著しく不公正であるとも主張しているが、前記争いがない事実7で認定した決議方法から、直ちに第三回総会決議の方法が著しく不公正であると言うことはできず、他に右決議方法が著しく不公正であることを認めるべき証拠はない。

9  以上によれば、結局、取締役太田博に関する第三回総会決議については取消事由を認めることはできないと言わねばならない。

四  結論

よって、原告両名の請求のうち、取締役太田博に関する第三回臨時株主総会の決議の取消を求める部分の請求を除くその余の請求を認容し、取締役太田博に関する第三回総会決議の取消を求める部分の請求を棄却して、主文のとおり判決する。

(裁判官武田和博)

別紙議案の表示<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例