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神戸家庭裁判所 平成4年(家)931号 審判 1992年9月22日

申立人 呂慶蘭

相手方 高依仁

主文

相手方は申立人に対し、平成4年3月1日以降当事者の離婚又は別居状態解消に至まで毎月1日限り金17万4167円の割合による金員を支払え。

理由

第一申立

一  申立の趣旨

相手方は申立人に対し、平成4年3月1日以降当事者が離婚又は別居状態解消に至まで毎月末日限り金20万円の割合による金員を支払え。

二  申立の実情

1  申立人と相手方は、昭和44年11月23日、結婚し、その間に、昭和46年2月25日長女桂華(以下「長女」という。)を、昭和47年4月6日長男秋光(以下「長男」という。)を各儲けた。

2  申立入と相手方は、結婚後、大阪市内の中華料理店で働いたが、昭和47年来神し、昭和48年2月独立し、神戸市須磨区○○町×丁目に中華料理店○○(以下「○○」という。)を開店し経営してきた。

3  しかし、申立人と相手方は不仲となり、平成2年11月、申立人は長女と長男を連れ相手方のもとを出て、以来別居状態になっている。

4  別居後、申立人は、離婚を決意し夫婦関係調整(離婚)の調停の申立てをしたが不調におわり、平成3年10月、離婚訴訟を提起し、現在神戸地方裁判所に係属中である。

5  相手方は、婚姻費用の分担として、調停係属中は月額15万円を、調停不調後月額金10万円を各支払ってきたが、平成4年1月以来、それも打ち切られた。

6  現在、申立人は、長女(○○大学4年)と長男(○△大学2年)と同居し2人を養育している。

7  しかしながら、申立人ら3人の生活費を申立人の収入で捻出することは困難であるから、相手方に対し夫婦関係を維持するための生活費として申立の趣旨記載の金員の支払いを求める。

第二当裁判所の判断

一  婚姻費用分担義務

本件は、いずれも中国籍を有する当事者間の扶養義務に関するものであるところ、扶養義務の準拠法に関する法律により、扶養権利者の常居所法である日本法によりきめられる。

1  本件記録によれば、次の事実が認められる。

(一) 当事者の結婚等

第一の二の1、2の事実

(二) 別居にいたる経緯等

(1) 大阪の中華料理店(相手方の家族ぐるみで経営)で働いていた頃、その間に起きたもめごとに当たり相手方が申立人をかばわず放置したことから2人の間に、特に申立人の相手方に対する不満がつのり、そのためその後の夫婦生活に少なからず影響し、相手方の暴力を誘発するところとなり上記別居に到った。

(2) 第一の二の3の事実

(3) 申立人は、別居後、兄の居宅で実母らと同居し、仕出屋で働いたあと、現在、夜間寿司屋の店員として働き月額約11~12万円の収入を得ているが、申立人と2人の子供たちの生活費を賄えず、その足らない分は兄弟からの援助に頼っている。

平成4年1月以降、相手方からの生活費の支払いが途絶えている。(但し、長女及び長男の学費は手渡している。)

(4) 第一の二の4の事実

2  上記認定の事実によれば、別居は申立人の一方的な帰責事由によるものではなく相手方の暴力に起因するところが少なくない本件においては、相手方は申立人に対し婚姻費用の分担義務があるといわなければならない。

二  婚姻費用の分担

1  当事者の収入等

(一) 申立人の基礎収入(月額)金7万7555円

11万8750円(月収)-7745円(国保)-9700円(年金)-2万3750円

(職業費)

(一) 相手方の基礎収入(同)金8万7494円

32万3564円-(7183円(市民税等)+1万5485円)+8333円(青色申告控除)-13万0167円(2児の学費)-6万8333円(ローン)-2万3235円(地代)

(三) 2人の基礎収入(同)金16万5049円

2  分担額の算定(労研方式)

(一) 申立人世帯

16万5049×(90(申立人)+100(長女)+105(長男))/(90+100+105+105(相手方)) = 12万1723円

(二) 相手方世帯

16万5049円×105/(90+100+105+105) = 4万3325円

(三) 相手方分担額

12万1723円-7万7555円 = 4万4168円

三  以上試算したところによれば、相手方は申立人に対し、毎月、従前より支払っている長女及び長男の学費13万0167円とその余の生活費の分担額4万4000円(四捨五入)を請求のあった平成4年3月1日以降当事者が離婚又は別居状態解消に至るまで毎月1日限り支払う義務がある。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 近藤壽夫)

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