神戸家庭裁判所 昭和42年(少)64号
主文
少年を和歌山保護観察所の保護観察に付する。
理由
非行事実
少年はやくざ関係者である神戸市葺合区○○町○丁目○番地○○組こと○辺○蔵方の世話になり、同所で鉄筋工として働いていたものであるが、昭和四一年九月○○日午前一時過頃自宅附近で夕涼中、上記○辺の兄、スタンド経営○辺某が、その妻を同乗させ、酒気を帯びて運転中の乗用用に出会い、同乗したところ、同市同区○○○×丁目路上で、運転を過り、事務員脇○啓○郎の運転する乗用車と衝突事故を起し、しかも運転中の○辺某はその場から直ちに姿を消したため、少年において相手方と交渉せざるを得ぬ破目に陥つたところから、上記○辺の妻の負傷にかこつけ、相手方に対しては同女を病院に連れて行つて直ぐ帰る旨申し向け、通り合わせのタクシーに乗車、附近の病院に連れて行こうとしたが、同女が病院に行くことを拒み、自宅に帰ることを望んだため、○○町○丁目附近で下車、同女を自宅に送り、併せて事故のことを自家関係者に報告、対策を相談しようとしたが、事故現場では少年が約束通り引き返して来ないところから、同日午前二時頃前記タクシー運転手の案内により少年を探していた兵庫県警察本部保安警ら第二勤務巡査渡辺宜雄(二五歳)外一名の同乗するパトカーが前記○○×丁目附近で、少年を発見、前記渡辺巡査において少年に対し、道路交通法違反容疑の関係者として、事故現場まで同行を求めたところ、少年はこれに憤慨同巡査に対し、なにぬかしとんど、行く必要はないなどと申し向け、手拳で同巡査の顔面を殴打、或は、その足部を足蹴りにし、胸ぐらを掴んでその制服上衣のボタンを引きちぎるなどの暴行を加え、同巡査の公務執行を妨害したものである。
適条
刑法九五条一項
処遇意見
少年は昭和三八年三月さしたる問題もなく本籍地の中学を卒業、いらい工員として東京、大阪、尼崎方面を転々、昭和三九年九月頃から前記○辺○蔵方の世話になり、同所で鉄筋工として働いていたが、その間万引事件を起し、昭和四〇年七月一六日当裁判所で不処分の決定を受け、審判に出席した母に伴われて本籍地に帰つた。ところが本籍地では自家農業の手伝い位で他に仕事なく、同年一〇月初頃来阪、同市内の親戚、運送業上○原○吉方で働いていたが、仕事が暇になつたことから、昭和四一年七月頃同所をやめ、再び、前記○辺方の世話になつていたところがその間、再び本件が発生、同年一〇月一九日当裁判所で中等少年院送致の決定を受け、抗告を申立てた結果、昭和四二年一月一四日大阪高等裁判所で抗告理由が認められ、本件は当裁判所に差戻された。
少年は知能普通域(H・Q・九六・新制田中B一式)にあるが、やや無気力、自主性に欠け、周囲の影響を受け易く、その場の気分に支配されて衝動的行動に走る。少年は現に左胸から肩にかけ、かなり派手な入墨をしており、やくざに親近し、本件自動車事故についても、警察の取調べを通じ、事故当時の運転者の名を明かさず、前記○辺に義理立てをしている。少年は○辺から杯をもらうような関係ではないと弁解しているが、少年の非行は○辺方に居住する場合に限り発生しており、早急に同所の影響から切断する必要がある。幸い肩書地で運送業を営む従兄Y・Tが少年の保護に熱意を示し、少年も同人方で働くことを希望している。予後に不安を残す少年であるが、同所が遠隔地であるため、試験観察とすることは困難であるので、保護司の指導に一任することとした。
よつて少年法二四条一項一号、少年審判規則三七条一項により主文の通り決定する。
(裁判官 三輪勝郎)