神戸家庭裁判所 昭和52年(少イ)22号 決定 1978年5月26日
被告人 松永昇
主文
被告人を罰金二万円に処する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、少年であるが、A(当時三四歳)と共謀のうえ、B子(昭和三六年四月八日生で、当時一六歳)が満一八歳に満たない児童であることを知りながら、昭和五二年六月二六日午前二時ころ、神戸市兵庫区○○○×丁目×番××号ホテル「○○○○○○○○」付近路上において、同女に対し、「社長と一緒に寝てくれ、ことわつたらひどいめに会うんや、小遣いやるというとる。」などと申し向け、よつて同女をして、同日、同ホテル客室において、社長ことC(当時三四歳)と性交させ、もつて児童に淫行させたものである。
(証拠の標目)(編略)
(確定裁判)
被告人は、昭和五三年四月二一日神戸地方裁判所で監禁・強姦・強姦未遂罪により懲役二年六月以上四年以下に処せられ、右裁判は同年五月七日確定したものであつて、この事実は神戸地方裁判所宛起訴状謄本二通・刑執行指揮通知書一通および被告人の当公判廷における供述によつて認める。
(法令の適用)
刑法六〇条・児童福祉法六〇条一項・三四条一項六号(該当法条)(罰金刑選択)
刑法四五条後段・五〇条(併合罪の処理)
(量刑などについて)
被告人は、本件を犯したころは、仕事もせず無為徒食の生活を送つていたが、自己が女の子に持てるのをよいことに、知り合いの女の子・その子に紹介させた女の子・更には通りがかりの女の子らを誘つては、不良仲間と共に同女らを姦淫していたところ、その一連の行為の一部が、確定裁判欄記載の事件(監禁一件・強姦五件・同未遂一件で、被害女性は五人)として、或は本件として地家裁に分れて起訴されたもので、本件が当時の被告人の生活態度からすれば起るべくして起つたものであることを考えれば、犯情はよくないが、既に主たる罪につき実刑判決が確定し、刑の執行を受けている以上、本件罪については懲役刑は避け罰金刑をもつて処断するのが相当である。なお、弁護人は少年法五五条により本件を家裁に移送すべきものと主張するが、既に右のとおり受刑中の少年を保護処分に付することは相当でなく、家裁への移送決定はしない。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 田中明生)