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神戸家庭裁判所 昭和52年(少)4866号 決定 1978年1月11日

少年 T・G子(昭三七・一二・四生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、家出・不純異性交遊等を内容とする虞犯保護事件により、観護措置決定で鑑別所に収容されたうえ、昭和五二年三月二四日当裁判所において不処分決定を受け、肩書住居地の養父母の許に帰つたが、その後も家出・喫煙・不純異性交遊・自宅からの金品持出しなどの不良行動を続けたため、兵庫県○○児童相談所の同年四月二〇日付の措置により、教護院○○学園に収容され、同学園の指導を継続して受けることになつた。しかるに、その後も素行修まらず、再三にわたつて無断外出を繰りかえし、その間不純な性関係を持ち、男から金を借り、万引きをするなどし、学園内においても教師反抗を重ね、他の児童にリンチを加えるなどし、同学園内における指導が困難であるにとどまらず、このまま放置すれば、その性格又は環境に照して、将来、万引きなどの窃盗・性的な犯罪などの罪を犯す虞れがあるものである。

(適用法条)

少年法三条一項三号イないしニ(虞犯)

(処遇の理由)

一  少年は生後四か月にして実母に捨てられ、実父も親としての責任を果そうとせず、そのため祖母およびおじ夫婦である養父母の許で育てられた。しかし、養父母と祖母の少年に対する躾の仕方の不一致、祖母が不憫な子として少年を甘やかしたこと、養父母が家業に忙がしく少年に十分手がまわらなかつたことなどのため、少年は、わがままで抑制の効かない少女になつてしまい、更に養父母であることを知るに及び、中学校二年時の夏ごろから家族との葛藤が激しくなり、情緒的に混乱を来たし、自分を受け入れてくれる住居地の不良少年と交際し、自らも不良化し、怠学・家出・金品持出し・不純性交などの不良行動に発展していつたものと考えられる。そして、鑑別所収容のうえでの調査・審判、児童相談所の指導、教護院に収容したうえでの指導も、少年の不良行動を抑制することにはならなかつたといわざるをえない。

二  少年は今では養母を慕つており、又養父母も少年を将来とも引き取つて育ててゆくつもりではいるが、少年が全く抑制なく再三家出・無断外出しては不良行動に走るので、現時点では逃げ出すことのできない施設に少年を収容することをむしろ望んでいる。

三  児童相談所は、強制措置をとりうる女子教護院である国立きぬ川学院に収容すべしとの意見であるが、当裁判所は、少年を遠方の同院に収容し、出所後は同地で自活の道を歩ませようとするよりも、処分の法的形式は厳しくとも、近くの初等少年院(交野女子学院)に収容し、法的な保護者である養父母にも再三少年に面会させ、親子間の葛藤を和らげ、仮限院後も養父母の保護の下に生活させ、やがては自活させるようにすべきものと考える。

四  知能は普通級あるので、怠学・家出・無断外出等によつて遅れた教科教育の徹底をはかり、自己中心的でわがまま・ひがみつぽい性格を矯正し、親子関係の改善をはかるよう努められたい。

以上のとおりであり、少年法二四条一項三号・少年審判規則三七条一項により、少年を初等少年院に送致することとし、又少年を少年院に送致した以上、教護院収容を前提とした兵庫県○○児童相談所長の強制措置許可申請の点は、その必要性がなくなつたので、認めないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判官 田中明生)

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