神戸家庭裁判所姫路支部 昭和36年(家イ)16号 審判 1961年3月20日
申立人 大沢房子(仮名)
相手方 三原立久(仮名)
主文
申立人と相手方との間において男女関係解消に伴う身分上財産上の法律関係が存在しないことを確認する。
理由
申立人は「申立人と相手方との内縁関係を解消する」との調停を申し立て、事件の実情として「申立人は相手方と昭和三四年一月内縁関係に入り、相手方宅で同居生活をしていたが、性格の相違等から申立人は昭和三五年四月一〇日相手方との関係を解消して郷里の九州へ帰つた。しかしその後又申立人が姫路へ来て相手方と出会つて以来相手方は内縁関係が解消されていないと主張してやまないので、両者の関係を解消するよう調停の申立に及んだ次第である」と申述した。
当裁判所調停委員会は、種々調停を試みたが、相手方は申立人が、昭和三五年四月一〇日相手方のもとを立ち去つたのは相手方に無断で家出したのであつて、相手方との関係はまだ解消されていない。それであるのに申立人は他の男と通じている模様であるから、申立人との関係を解消するとしても、これまでに要した生活費及び慰藉料として五万円又は少くとも三万円の支払を受けるのでなければ、調停に応じられないと主張して譲らないため、昭和三六年三月八日調停は不成立に帰した。
しかしながら当裁判所は事件の実情から判断して、申立人と相手方との関係は一時夫婦のようにして同居していたけれども、相手方には法律上の妻及び三人の子があり、申立人との関係は正当な夫婦とは認め難いこと、従つてその解消は一方の自由であり、かつは望ましいものであること、そのため申立人がその意思で相手方のもとを立ち去つた昭和三五年四月一〇日限り申立人と相手方との男女関係はすでに解消したものといわねばならないこと。又、申立人と相手方に関する限り、これが解消について、双方又はいずれから一方より金品を給付しなければならないような特段の法律関係はないものと認められる。よつて本件については調停不成立に拘らず、職権で解決をはかり、もつて当事者双方をして新生活に出発させるのを相当と認め、調停委員の意見をきいたうえ家事審判法第二四条を適用して主文のとおり審判する。
(家庭審判官 坂東治)