神戸家庭裁判所尼崎支部 昭和34年(家イ)238号 審判 1960年2月10日
〔解説〕本件のような家事審判法第二十三条事件につき、同法第二十四条の審判をすることができるか否かは争いのあるところである(この点の詳細は家裁月報十二巻二号一二二頁長崎家裁昭三四年一一月四日審判の解説参照)。
申立人 藤川なおみ(仮名
相手方 山村民男(仮名)
主文
申立人藤川なおみが相手方山村民男の子であることを認知する。
理由
本件申立の要旨は申立人は相手方の子であるから認知を求めるため本申立に及んだというのである。
そこで当裁判所調停委員会は数回に亘つて調停を重ね事情を聴取したところ、申立人の母良子は昭和三三年七月初頃相手方と内縁関係を結び同棲していたが間もなく破綻を生じて夫婦別れをし、昭和三四年四月三〇日申立人を分娩したこと、申立人の母良子は当時他の男性と情を通じたことがなかつたことが認められ、而も相手方自身申立人が自己の子であることは終始争わなかつたので申立人が相手方の子であることについて確信が得られた。
然るに相手方は申立人の母良子が申立人を引渡すなら認知するが自分で養育できないなら親子の様な気がしないから認知しないといつて認知を拒否し続け調停成立の見込がない。
相手方の主張も親子の情としては或は理解し得ないでもないが、申立人を誰が監護教育するかは相手方が申立人を認知した上で申立人の母と協議すべき問題であつてかかる理由で認知を拒否することは法律上許されないことである。
相手方も申立人がこのまま私生子として薄幸な一生を終らねばならないことに思いを致すならこの際進んで認知に応ずるのが子の親としての当然の義務であり心情であろう。
よつて当裁判所は家事裁判法第二四条による審判をするを相当と認め主文の通り審判する。
(家事審判官 角敬)